●特集 三方よし 「お陰にて人となり、有難きことなり。…鳥は野山の木にとまる、人はなさけの下にすむなるべし。」  この一節は、明治初年に主家から分家を許され、一人前の近江商人となった小杉元蔵(五個荘竜田町出身)が報恩の心情を日記につづった一文です。  江戸時代後期以降、本市から多くの商人や企業家が輩出しました。立身出世を果たした商人たちは何を思ったのでしょうか。その成功は、自らの力だけでなく、地域社会や多くの人びとの「お陰」によって成し得たことを深く感じた瞬間があったのかもしれません。  この感謝の思いが、「売り手よし・買い手よし・世間よし」という「三方よし」の実践という形になり、公共工事や社会福祉事業を積極的に支援し、地域社会の発展に大きく貢献したのではないでしょうか。  今回は、近江商人の精神を手本にした「現代の三方よし」の実践例をご紹介します。 ◆三方よし手帳  東近江圏域では、脳卒中を発症した人が医療機関や福祉施設の連携によって継続的な治療を安心して受けられるシステム(地域連携クリティカルパス)ができています。  このシステムで使っているのが三方よし手帳。「患者よし」「病院よし」「地域よし」の近江商人の家訓である三方よしを目標として安心できる医療体制をめざします。 写真:患者が発症以後、継続的な治療を受けられるように記録できる「三方よし手帳」 問=東近江保健所  電話=0748−22−1253 ◆三方よしの教育  教育委員会では、『東近江市人づくりプラン』に取り組んでいます。これは、生涯学習を推進することで、市民活動が活発になり、家庭や地域の教育力が向上するとともに、親や大人の言動・姿勢が次代を担う子どもたちの生き方の模範となる市民性を築きます。  各校園では「三方よし」の理念のもとに、「自己実現(自分よし)」、「思いやり(相手よし)」、「社会貢献(社会よし)」として自然環境保全、伝統文化の継承、豊かな心と健やかな体づくりなど、特色ある学校教育を行っています。(下記<1><2>)  地域環境を生かしつつ、みなさんに支えられながら、特色ある教育活動を進めています。  また、「三方よしでいじめゼロ!」を合言葉に子どもたちによるいじめ根絶運動も展開しています。 問=教育委員会  電話=0748−24−5672  IP=050−5801−5672 <1>写真:「愛植えよう宅急便」で地域の高齢者世帯に花と手紙を届ける(甲津畑小学校) <2>写真:地域美化の取り組みで近江鉄道の駅舎清掃(朝桜中学校) ◆遊びあふれる子育て三方よしのまちづくり  八日市地区まちづくり協議会では、「外遊び」をとおして子どもが地域の中で自ら育つ環境をつくり、子育てが楽しくなるまちをめざしています。 写真:冒険遊び場で手作りのパンをつくる(大水公園) (1)外で群れて遊ぶことで、子どもの中にある自ら育つ力を引き出す「子によし」 (2)子どもとともに親が育つ、子どもを生み育てる人を支える「親によし」 (3)元気な子どもを、わたしたちのまち(地域)で育てる「世間によし」 問=まちづくり推進課  電話=0748−24−5623  IP=050−5801−5623   ◇  ◇  ◇  三方よしを実践することで、自分だけでなく、相手のこと、社会全体のことを考えて行動できる人が育ち、地域のまちづくりに生かされることが、近江商人の精神を引き継ぐことになるのではないでしょうか。  日常生活の中でも三方よしは実践できます。さあ、身近なところからはじめてみましょう。 問=近江商人博物館  電話=0748−48−7101  IP==050−5802−3134