●特集 新春対談  輝かしい平成22年が幕を開けました。  今回は、西澤市長と希望都市づくり行動計画策定市民委員会(以下、委員会)の委員長である土山希美枝龍谷大学准教授との、希望都市づくり行動計画(以下、行動計画)をテーマにした対談の内容をお伝えします。(場所 近江商人屋敷 藤井彦四郎邸) ◆西澤久夫市長の新年の挨拶(写真あり)  東近江市民のみなさん、あけましておめでとうございます。東近江市長として二年目を迎える平成22年は、さまざまな問題点をしっかりと見つめて改革し、みなさんにとって住みよい、安心できる希望都市に向ての、いわば基礎づくりをしていく年だと思っています。全力で取り組みますので、よろしくお願いします。 市長 土山先生、今日はよろしくお願いします。 土山 こちらこそ、よろしくお願いします。 ◇なぜ行動計画を立ち上げたのか 市長 私は、今後の市政の指針となる行動計画を策定するにあたり、市長選挙で掲げたマニフェストを盛り込んでいくことについて、市民のみなさんの評価を得る必要があると思っていました。そこで、新春対談にお招きした土山先生をはじめ12人の委員会の委員さんに、この行動計画について議論をお願いしました。土山先生には、委員長を務めていただいているわけですが、まず最初に、委員長をお引き受けいただいたときのお気持ちをお聞かせいただけますか。 土山 はい。最初は正直、大変なことになってしまったと思いました。政治家として市長にとってきわめて重要であるマニフェストを、市民が検証し評価する議論の機会をお預かりするということ、また時間的にもできるだけ早くその結果をお見せする必要があるということは、重い責任がともなうことですので。同時にすごく意義があるとも思いました。 ◇マニフェストは幕の内弁当? 土山 マニフェストは幕の内弁当のようなものだとおっしゃったかたがいましたが、それでたとえてみましょう。そこには、いろいろなものが詰め合わされていて、多くの人はメインのおかずを見て買うでしょう。一方、そこについているお漬物が何かはあまり気にしていません。だとすると、メインのおかずがいきなりトンカツからさばの味噌煮になれば、それは違うと思うでしょう。しかし、福神漬けがたくあんになるくらいなら、それは受け入れられるのではないでしょうか。  そのように、マニフェストの中には、その選挙の重要な争点となったものと、そこまでではなかったものとが混在していますので、誰にとって何が「お目当て」で、全体としては何が「メインのおかず」つまり、優先すべき課題かを、検証する機会が必要だと思います。選挙をして「幕の内弁当」が決まった後に、おかずが変わりましたとなると、市民から見れば「あれ?」と思いますよね。そうならないように、一人の政治家の提案であったマニフェストを、市政の中に織り込んでいくときに、委員会で議論や検討をして市民から評価され、それが議会によって承認されるという過程を経ることは、非常に意義があることだと思いました。 市長 私も自分のマニフェストが百点満点だとは思っていません。ですから、市民のみなさんにしっかりと見直してもらい、その中で優先順位をつけていただくべきではないかと思ったんです。また、お弁当の例でいえば、限られた財源の中でお弁当を作ることも大切で、それができないと確かなマニフェストにならないと思います。 土山 そうですね。また、実際にお弁当を作ってみて、予算を超えることがわかったとき、逆に市民の側に、「どうしたらいいですか?」と問われることもあり得ると思います。どこに資源を重点的に配分するのかということに、市民と市長と議会とが責任を持つことが、非常に重要だと思います。 ◇行動計画の中間報告 土山 昨年の11月にまとめました希望都市づくり行動計画中間報告の中では、市長が行財政改革にあげられた課題以外の部分について、私たちの委員会なりにABCという三つの重要度をつけさせていただきました。(下部の◆公約重要度一覧を参照) 市長 中間報告を見せていただきましたが、その中で、すべての学校へのエアコン設置については、重要度がCになっていました。このことは、素直に受け止めるべきだと思っています。しかし、その中間報告の中には、ゴーヤなどの植物で太陽光を遮断して涼を求めればいいのではないか、また、さらにそれを環境教育などに生かしてはどうか、という参考になる意見もありました。そういう発展的な意見をもらえたということを含めて考えると、私はCという評価を悲観していません。むしろそういう評価をうけたことについて、市民ともう一度、あるいは子どもたちも一緒になって議論をしていければ、意義があると思っています。 土山 その通りですね。今の点は、委員会でも活発な議論があったとろで、子どもにエアコンはぜいたくだという短絡的な結論ではないんです。熱中症で倒れるという例が毎年各地で報告されていますし、保健室には特に必要だという意見は出ています。一方、たとえば校庭で子どもたちが汗だくになって遊んだ後、教室に入って体が急に冷えるのはどうなんだろうかという意見などもありました。最近はかなり夏の暑さが厳しいですし、快適な環境を子どもたちにという市長の気持ちはくみつつも、先程のゴーヤのような回避方法もあるよね、また現場の議論も必要だよね、という意味でのCでした。 市長 私としては、ABCで評価されたその結果がすべてだということではなく、中の議論がどのような形でされてきたかということを吟味して、そこをもう一度市民のかたがたと一緒になって考えていければと思っています。 土山 そうですね。私たちがしたことは、ある意味では一つの指標であり、市長と議会が最後の場面で政策決断をしていただくための論点整理でもあると思っています。 ◇マニフェストの実現 市長 最初の頃に委員さんから、市長が作ったマニフェストだから全部実現するのが当たり前だと言われたりしたのですが、そのあたりはどういった議論がされたのかお聞かせいただけますか。 土山 はい。委員会の議論の中では、今、市長がおっしゃられたような意見も、また、限りある財源の中で全部やるのは無理なんだという意見もありました。マニフェストは市民とかわす約束ですから、簡単に変えていいとは思いませんが、限りある財源の中で優先順位をつけたり、あるいは緊急性のあるものから先にやっていくなどという制御は必要だと思いました。そして、それは議論の中で自然と委員の中にも共有されていったと思います。 市長 今、国においても、政府がマニフェストを実行する中で、財源のやりくりに頭を悩ませていますが、私は面識のある国会議員のかたに、今東近江市で行われているこの行動計画策定の手法を、国も取り入れるべきではないかと提案しています。このやり方は、一つの方法として今後確立されてくるのではないでしょうか。 土山 自治体によってはマニフェスト用予算というものを別にとっているところがあるんですが、市長のマニフェストでの提案を市政にどう編成するかという議論がないと、単に使えるお金を余分にとっておくだけで終わってしまいます。  そうではなく、市が持っている資源はこれくらいで、これをどのように使うのか、そしてそれについて市民はどう評価するのか、そういう議論が必要になってきたと思います。また、今はその必要性が理解されてきた時代だとも思います。その中で、今回市長がこの委員会を立ち上げられたことは、この意味でも新しい取り組みだと受け止めています。 市長 そういう評価をしていただいているのは非常にありがたいことです。ただ、これはまだ最初の導入部分だけで、これから、策定いただいた行動計画を実行していくという重要な役割があります。市民のみなさんや、あるいは委員のみなさんに、実行に対する評価についても何らかの形でお願いしなければならないと思っています。先生には可能な限り、かかわっていただければと思います。 土山 はい、その時はぜひ。 市長 先生、今日はどうもありがとうございました。 ◇新年の抱負 市長 今日は土山先生と行動計画のことについてお話をさせていただきました。今年は、可能な限り市民のみなさんと話し合いをしていく姿勢を持って、さまざまな問題を乗り越えていきたいと思っています。東近江市のあり方というものを市民のみなさんと一緒になって対話していく、そんな市長でありたいと思っていますので、みなさん、どうぞこれからもよろしくお願いします。 ◆希望都市づくり行動計画策定市民委員会(会議の写真あり)  市では、厳しい財政状況の中、今後の市政の運営の指針となる「希望都市づくり行動計画」を策定するため、「東近江市希望都市づくり行動計画策定市民委員会」を設置し、策定作業を進めています。  委員は、学識経験者、公募委員、関係団体からの委員など12人で構成されていて、任期は平成22年3月31日まで。月に1〜2回程度の会議を行っています。 ◆土山希美枝(つちやま きみえ)さんプロフィール(写真あり) 北海道芦別市出身。 現在、龍谷大学法学部政治学科の准教授。 専門分野は、地方自治、公共政策、日本政治。研究分野は、社会科学、政治学。 東近江市希望都市づくり行動計画策定市民委員会委員長。 ◆近江商人屋敷 藤井彦四郎邸(写真あり)  「スキー毛糸」の製造で知られる豪商・藤井彦四郎氏の生家で、琵琶湖を模した池や築山を配した池泉回遊式の大庭園をはじめ、主屋、客殿、洋館、土蔵などが並んでいます。一歩、館内に足を踏み入れると、かつて全国を行脚した五個荘商人が行商に用いた多くの資料も展示されています。 所在地 宮荘町681番地 開館時間 午前9時30分〜午後4時30分 休館日 月曜日・祝日の翌日・年末年始 入館料 大人300円、こども100円 ◆公約重要度一覧(東近江市希望都市づくり行動計画 中間報告)  公約項目:重要度  ■安心の3重奏   ◇安心して子育てできる・子どもが元気に育つ東近江づくり    1 中学校まで医療費無料化:B    2 全中学校で給食を提供:A    3 校舎の耐震改修:A    4 校舎へのエアコン設置:C    5 保育所・学童保育の待機児童の解消:A   ◇高齢者や障がい者が安心してくらせる東近江づくり    6 退職者の地場産業への再就職と就農を斡旋支援:B    7 障害者自立支援法を上回る独自の支援:A    8 高齢者の生活習慣病・介護予防・歯の健康対策の充実:B   ◇命と健康を守る包括地域医療で安心の東近江づくり    9 能登川病院・蒲生病院の医師確保と経営力を強化:A    10 私立病院、個人病院と連携して地域包括医療水準の向上:A    11 国立滋賀病院の充実を支援:A  ■発展の5重奏   ◇交通網の整備    12 (仮称)石榑峠トンネル開通で東海地方との交流強化:B    13 蒲生・湖東三山スマートインター設置で物流強化:B   ◇地元産業・商工業の振興    14 信用保証支援による融資制度の拡大と充実:B    15 学校給食には東近江産の農作物を使用:A   ◇東近江ブランドを世界へ    16 商社・広告会社とIT活用で地場産業の育成強化:C    17 東近江ブランド規格の厳格化と遵守で信用力向上:B   ◇コミュニティビジネスの創造    18 拠点観光地域(五個荘地区旧家の町並み等)支援:B    19 グリーンツーリズム、スローフードで過疎対策の充実:B   ◇クリーンエネルギーの活用    20 ソーラーパネル設置補助等で太陽光利用促進:B    21 菜の花やひまわり栽培とてんぷら油の燃料化:B  ■マニフェストの重要度について   A・緊急度が高いもの    ・お金がかかってもぜひやるべきもの    ・4年後には確実に実現するもの   B・今すぐではないが、しっかり取り組むべきもの    ・総合計画に入れて実行してほしいもの    ・4年後には、実現または進捗がみられるべきもの   C・重要度が低いもの 希望都市づくり行動計画中間報告、およびこれまでの会議の内容については、市のホームページでご確認いただけます。 ◆この新春対談は東近江ケーブルテレビでもご覧いただけます。  放送日:1月1日(祝)〜1月3日(日)  放送時間は、東近江ケーブルテレビでご案内します。 【写真】  ・対談をする西澤市長と土山先生  ・対談中の西澤市長  ・対談中の土山先生  ・藤井彦四郎邸の庭を散策する西澤市長と土山先生