特集 遊びから育む 生きる力     育ちあう遊び場づくり ■記号の説明・・・時=日時 場=場所 問=問い合わせ IP=IP電話  長い人生の中で、子どもでいられるときは、ごくわずか。しかし近年の社会環境の変化は、子どもたちの大切な「遊び」の時間を奪ってはいないでしょうか。  今回は、子どもたちの遊びと、そこから育まれる「生きる力」や人の絆(きずな)について考えます。 写真=冒険遊び場「はらっパーク」の風景(五個荘中央公園) 写真=県内のプレーリーダーが集まって意見を交わす(五個荘中央公園で開催された「しが冒険遊び場づくり体験フィールドワーク」) 写真=看板には子どもたちの自由な遊びを保障するためのモットーが書かれている(大水児童公園) ●子どもの「遊び」は、生きる力を育む大切な時間  本市では、「遊び」をキーワードに、まちづくりや次世代の育成に取り組む市民活動団体と協働で、遊び場づくりを始めています。本市のめざす「遊び」とは、かつて当たり前のように自然の中を駆け回っていたような、屋外での友達との遊びです。  少子化が進み、子どもたちが社会の少数派になる中で、自然にできる子どもたちの集団は、地域から消えつつあります。また、習い事や塾通いの過熱、テレビゲームなどの遊び道具により、外で群れて遊ぶ光景も少なくなっています。  一方、親をはじめとする大人のかかわり方はどうでしょうか。危ないことや汚れるようなことはさせない、子ども同士のやり取りをリードするなど、遊びは親によって管理、指示されがちです。さらに、友達づくりも親同士の親しさや関係に影響を受けています。  こうした遊び方では、子どもたちに「生きる力」はなかなか育まれません。今の子どもたちは、生きる力を育む三間(体験をする「空間」、体験に費やされる「時間」、体験をともにする「仲間」)が得にくくなっているといえます。 写真=屋外でみんなで食べるとおいしい流しそうめん(プレーパーク「ポップコーンタイム」) ●「だめ!」を少なくすれば、もっと自由に遊べるんだ  そうした中、本市でもここ数年で浸透してきたプレーパーク。別名、冒険遊び場とも呼ばれるこの遊び場は、普通の公園とは少し違います。子どもたちがのびのびと思いきり遊べるように「あれはだめ、これもだめ」といった禁止事項をできるだけなくして、「自分の責任で自由に遊ぶ〜けがと弁当は自分もち〜」をモットーにする、子どもたち自身が遊びを生み出す空間です。  ここでは、廃材、工具、ロープ、鍋、バケツなどと自由に遊べる「雰囲気」が用意され、子どもたちは、水遊び、木登り、廃材工作、野球やサッカーなど、それぞれのペースで思い思いに遊んでいます。大人はその遊びをゆったり見守っています。  時には、服が破れたりけがもしますが、この体験の積み重ねが、子どもたちの成長につながるのではないでしょうか。 ◆プレーパークで大切にしたいこと ・プレーパークで子どもの自由な遊びを実現するためには、次の5つのことが必要 1.子どもの生活圏にあること 2.いつでも遊べること 3.だれでも遊べること 4.自然素材豊かな野外環境であること 5.つくりかえができる手づくりの要素があること ・それらを実現するためには、次の3つの方法を実践することが重要 1.住民によって運営すること 2.住民と行政のパートナーシップを築くこと 3.専門職のプレーリーダーがいること 写真=子どもたちの元気な声が響きわたる大水児童公園 ◇ゲームはおもしろい。でも、プレーパークもおもしろい!  カードゲームやテレビゲームもおもしろいけど、いろんなことができて、友達に出会えるプレーパークはもっとおもしろい。(子どもたちの声) ●ここでは、子どもの魔法で、廃材がおもちゃに変わる  では、そもそもプレーパークは、いつ、どのようにして生まれたのでしょうか。  1943年、デンマークの造園家が、整備された遊び場よりも、ガラクタのころがっている空き地や資材置き場で子どもたちが大喜びで遊んでいることに気づき、「廃材遊び場」をつくりました。その後「冒険遊び場」と名前を変えて、ヨーロッパ各地やアメリカなどに広がっていき、1970年代には東京で取り組みが始まりました。その後、草の根で全国に広がり、特に地域住民による運営での広がりは、日本のプレーパークづくりの大きな特徴です。  本市では、平成19年2月、子どもたちの日常の遊び場になるような自由な遊び場をつくろうと、地域の有志が集まり、「八日市冒険遊び場プロジェクト」を立ち上げ、きっかけづくり講座を経て、「一日プレーパーク」を開催したのが始まりです。 ◇広く高い空の下で大らかな気持ちに!  普通の公園では、遊びが決まっていて、子どものすることについ口を出してしまう。でもプレーパークには、大人も楽しめる遊びがあって、何よりほかに見守ってくれる大人や一緒に遊ぶ子どもたちの存在が、大らかな気持ちにさせてくれますよ。(参加の大人の声) 写真3枚=プレーパークの光景(おしゃべりする大人、廃材で遊ぶ子ども、水遊びする子ども) ●遊び場づくりを楽しむことが、地域の人づくり、まちづくりの接着剤になる  プレーパークには、子どもの遊びを見守るプレーリーダーをはじめ、保護者、地域住民、地域で働く人たち、行政など、立場を超えた多くの人がかかわっています。  つまり、プレーパークづくりの活動は、単に子どもの遊びや体験を豊かにするだけのものではありません。その活動が地域コミュニティと密接にかかわっていることが特徴であり、大人も子どもも育ちあう、地域で暮らすあらゆる世代を巻き込んだ運動なのです。  特に、近年の家庭や地域社会の変質や崩壊が原因の一つといわれている、子どもへの虐待や育児放棄、青少年の不登校やひきこもり、凶悪犯罪の低年齢化などの社会問題などを、地域から解決できるきっかけになるのではないでしょうか。 ◇外遊びのおもしろさを子どもたちに感じてもらいたい  ひとりで遊んでいても楽しいと思う子どもが増えてきたといいますが、ひとりよりは仲間と遊んだほうが何倍も楽しいという実感を、子どもに体験してほしいですね。(プレーリーダーの声) ------------------------------------------ つながる、ひろがる 東近江市のプレーパーク ------------------------------------------ ◆八日市☆冒険遊び場  子どもたちは大人にガミガミ言われずのびのび遊び、日ごろ仕事で忙しいお父さんは童心に返ってボールを追いかけ、お母さんたちは食べ物を囲んでおしゃべりでストレス発散、地域の人たちもいろいろな形で協力してくれる遊び場です。 時=毎月第3日曜日、第4土曜日(通年)10:00から日が暮れるまで ◇冒険遊び場「ちびぱーく」※乳幼児の親子対象 時=毎週金曜日(3月〜12月)10:00〜14:00 場=大水(おおずい)児童公園(八日市緑町) ◆冒険遊び場「はらっパーク」  木工体験や昔遊び、ドッジビーなどのニュースポーツ、べっこう飴やマシュマロなどを持ち寄って食べてみたり・・・。今、野外ステージでの発表グループを募集しています。  さあ!五感をフルに使って思いっきり遊ぼう!! 時=毎月第4日曜日 13:30〜16:00 場=五個荘中央公園(五個荘小幡町) ◆いのこ山冒険あそびば  能登川地区の猪子山のふもとで、週1回みんなで元気に外遊びをしています。  めいっぱいの自然、子どもたちの笑顔。楽しむのは子どもだけじゃずるい、親たちだって楽しもう!「みんなで楽しく子育て」をめざしています。 時=毎週水曜日 10:00〜13:00 場=老人福祉センター繖寿苑(さんじゅえん)前公園(伊庭町) ◆プレーパーク「ポップコーンタイム」  毎回、「子どもたちのやりたい!」こと、「大人のやりたい!」ことを、みんなで相談しながら、遊んだりアウトドアクッキングをしたりしています。子どもも大人も、「ポップコーン」のように、はじけて遊んでいます。 時=毎月第2、第4土曜日 9:30〜12:00 場=ハートピア八日市(今崎町) 写真4枚=各プレーパークの紹介写真 ------------------------------------------ ◆プレーパークにかかわる大人 ・プレーリーダー、世話人  プレーリーダーとは、冒険遊び場に欠かせない存在で、子どもの興味関心を引き出します。子どもの遊びに「指示」や「指導」をするのではなく、周囲の状況に常に注意を払いながら子どもたちに声をかけます。そして何よりも子どもと一緒に思いきり遊ぶことで、子どもたちから厚い信頼をよせられています。  また、情報発信などで遊び場の様子を広く知らせるなど、地域の中で遊び場を広げていくためには、世話人の役割も重要です。  なお現場の後片付けやトラブル、苦情などは、プレーリーダーや世話人が責任を持って対応します。 ・父母、保護者  子どもと一緒に遊びに来る父母もたくさんおられます。最初は緊張していても、おしゃべりすればすぐにパパ友、ママ友に。また、中には子ども顔負けで遊ぶお父さんや、写真のように特技を生かしての協力もあります。 ●プレーパークでは、子どもと大人とまちが育ちあえる  プレーパークづくりは特別なことではありません。子どもがのびのび外で思いきり遊ぶためには、子どもの視点に立った、大人の意識が大切です。  また、子どもたちには、仲間と一緒に遊ぶことの楽しさを、実体験として経験してほしいと考えています。大切なことは、大人から物事を学ぶだけではなく、友達と教えたり教えられたりしながら共有した、具体的で直接的な体験なのです。  本市では、野外遊びの重要性を社会に広めていくとともに、こうした取り組みを応援し、子どもが地域の中で豊かに育つ環境づくりを進めていきます。  さあ、あなたのまちでも魅力的な遊び場を作って、一緒に育ちあいませんか。 問=こども家庭課  電話=0748-24-5643 IP=0505-801-5643