新春特集 2012 first special feature 子どもたちの夢を 実現する希望都市へ【新春対談 西澤久夫市長・市川純代教育長】  輝かしい平成24年が幕を開けました。  今年は、希望都市実現への仕上げの年度。7中学校での給食提供や、教育施設の整備などを着実に進めていくことになります。  新年のまちづくりの展望を、西澤市長と市川教育長が語ります。 写真=雪野山から眺める蒲生地区の日の出。蒲生地区では今年、給食センターが完成するとともに、蒲生スマートインターチェンジの建設が進みます。 *この新春対談は東近江ケーブルテレビでもご覧いただけます。放送時間は、14ページをご覧ください。 市 長 市民のみなさん、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。 教育長 あけましておめでとうございます。よろしくお願いいたします。 写真=布引グリーンスタジアム前に並ぶ市長と教育長 ●教育への思い 市 長 今回は、布引グリーンスタジアムに来ています。天然芝の陸上競技場や多目的広場、子どもたちが楽しく遊べる大型遊具やグラウンドゴルフのコース、ウェイトトレーニング室があると同時に、防災施設や備蓄施設もあります。市民の憩いや体力の向上の場であるとともに防災機能を備えています。市民のみなさんにも、ぜひ積極的に使っていただければと思います。  さて、昨年10月に教育長に就任されましたが、教育にかける思いをお聞かせください。 教育長 「三方よし」の理念を基本に据えて、学校教育、教育行政にあたりたいと考えています。子どもは好奇心旺盛、活動的で、人によって差はありますが、群れて遊ぶことが大好きです。さまざまな体験の中で新たな自分を発見し、自分の成長を求めていると思います。  そういう意味で、整えられつつある本市の教育環境で、地域の人たちとともに、子どもたちがのびのびと活動でき、信頼される開かれた学校づくりを進めたいと考えています。 市 長 昨年3月の東日本大震災は本当に驚きましたが、私たちは教育の場、子どもたちの命を預かる場として、校舎の耐震を急いで整えないといけません。子どもたちや保護者のみなさん、市民の安心に応えるためにも、平成27年までの合併特例債を用いて整備していきたいと考えています。 教育長 津波が学校にも押し寄せて、建物が押し流されていく映像にショックを受けました。同時に、学校が被災された人たちの避難所として、心のより所、生活の拠点になっている姿も目にして、学校施設の耐震化の必要性を改めて感じたところです。  合併以来、校舎や体育館などの大規模改修は、計画的に進めていただいています。教育施設は数多いですが、地震や災害に強い建物をめざしたいと思っています。 写真=市長と教育長の対談の様子 ●公の施設改革 市 長 一方、合併により、多くの施設を抱えることになりました。よく似た施設もあり、「公の施設改革」で少しずつ整理していかなければならないと思っています。  特に、これからの経済情勢や政府の借金の状況を見ていると、大変厳しい状況が予想され、施設の維持管理費を少しでも軽減することで、生み出された財源を可能な限り教育や福祉に充てたいと思っています。市民のみなさんには多少のご不便を感じていただくこともありますが、福祉や教育の財源を確保しないと、将来に誇りを持って引き継げる東近江市にならないと考えています。  一方で、市民全体が使われる施設はしっかりと残して、管理運営費も確保していかなければなりません。 教育長 教育施設には、コミュニティセンターや図書館、体育施設など、市民生活につながっている施設が多くあります。老朽化が進んで維持が難しい場合に今後どうするのか、新たな引き受け手や活動場所なども含めて考えなければならないと思っています。 市 長 この改革は、「今まで使っていたのになぜ使えなくなるんだ」という、市民のみなさんの痛みを伴う改革です。しかし、平成22年の国勢調査で明らかになった人口の減少が進めば、子どもたちや働く人たちの数が減り、そして高齢者は増えていきます。我慢をしあうと同時に、自分のことは自分で守る「自助」、市民のみなさんが共同で取り組む「共助」、お互いに助けあう「互助」ということを大切にしなければならないと思っています。  学校教育は教育委員会や行政が担いますが、学校教育以外の部分については「自助」「共助」「互助」でしていただくということが大切で、同じように、公の施設改革でもこうした考え方が大事になってくると思うのです。 教育長 「自助」「共助」「互助」は、三方よしの教育にも通じています。本市は、自然や歴史・文化がとても豊かな地域ですので、それらの教育環境を活(い)かしながら、地域のみなさんと一体になってつくる学校でありたいと思っています。  子どもたちは、いろいろな経験の中で社会性や協調性を育みます。地域のみなさんの協力で、体験の場を提供していただければありがたいと思っています。  そして教育の基本である、確かな学力、豊かな心、たくましい健やかな体づくりを、ともに進めていきたいと思っています。 ●学校給食と地産地消 市 長 地域でのさまざまな学習とともに、命にかかわる「食」も大切なことだと思っています。本市では中学校までの給食をめざしており、今年の4月には7つの中学校で給食を提供できるようになります。同時に、給食での地産地消にも取り組み、お米、野菜、果物など、地元の安全な食べ物で給食を提供していきたいと考えています。 教育長 学校給食は教育の一環でもあり、収穫や運搬、調理など、給食に携わっていただく人々の気持ちも大切にしたいと思っています。そして、いろいろな人の手をくぐってきた食べ物をありがたくいただく、という感謝の気持ちを子どもたちに伝えることも大事だと思います。 市 長 現在、本市の給食における農産物の市内自給率は全体で30%しかありません。農家のみなさんも、自分たちの子どもや孫に食べさせる食べ物は自分たちで作ったものを食べさせたい、と思っておられるのでしょうけど、なかなか上手くいきませんでした。  そこで、市内にある4つの農協、民間企業、行政で、東近江市フードシステム協議会*1を立ち上げ、そうした仕組みづくりの研究をしています。今年は、産業としての農業を念頭に入れながら、地産地消に取り組んでいきます。 写真=話をする市長 *1 農の新たな連携の仕組み「東近江市フードシステム協議会」  市内産農作物の持続可能な生産・流通システムを構築することを目的に立ち上げられたこの協議会では、野菜の生産拡大や販売先の調査、加工・業務用野菜の低コスト栽培の実証調査などに取り組んでいます。 写真=東近江市フードシステム協議会による野菜の実証栽培 ●環境教育と実践 教育長 話は変わるのですが、私が以前いた能登川南小学校では、環境教育、エコ・スクール活動*2のモデル校として取り組んでいました。「見つけて、考えて、連携する」、地域と連携して取り組む環境教育です。  特に、学校横の猪子山が竹に侵されてきたため、森林再生プロジェクトを立ち上げて、まちづくり協議会、地域教育協議会、博物館、八日市南高等学校の生徒さんや職員のみなさんと一緒に、元の猪子山に戻そうと取り組んでいます。また、愛東北小学校の6年生は、ケナフを栽培して、世界にひとつしかない自分の卒業証書を作っています。  環境保全、環境教育は、持続可能な社会を実現するための人づくりであり、大切にしていきたいと思っています。 市 長 東近江市は人口も面積も日本のほぼ1千分の1で、日本の縮図のような地域ですので、本市の環境教育や環境保全の方向性が、日本全体のモデルになると思っています。  これまで産・官・学の連携で、環境教育に取り組んできましたが、教育長のおっしゃるように「市民がどう参画するか」が一番大事なのかもしれません。将来を担う子どもたちが、自分たちの身近なところで、環境に関することに取り組むことも大切だと思っています。  能登川南小学校や愛東北小学校、あるいはあいとうエコプラザ菜の花館などで取り組んでいる環境教育、環境学習を、先進事例として全国に発信していきたいと思っています。 写真=ケナフでの卒業証書づくり 写真=話をする教育長 *2 「エコ・スクール活動」  平成13年度から始まった滋賀県のエコ・スクールは、児童生徒が地域の人たちの協力を得ながら、主体的に環境学習や環境保全活動に取り組むプログラムです。  子どもたちのアイデアと気づきを大切にしながら、テーマや目標、活動などを決め、身の回りの生活環境調査、計画、実行と評価などに学校全体で取り組みます。 写真=エコ・スクール活動で竹垣づくり ●未来を担う子どもたちのために 教育長 菜の花館や河辺いきものの森での学習を、計画的に授業の中に取り入れている学校や幼稚園もたくさんあります。環境を守ることは自分たちの未来を守ることでもあり、そして地域のみなさんに働きかけて一緒にやるという視点もなくてはならないと思っています。  「まちづくりは人づくり」とよく言われています。物を作るのも人ですし、作った物を活用するのも人です。そして何より、人を人として育てるのも人しかない、本当に人は大事な存在だと思います。  子どもたちを育てていく「人」は、教職員、保護者、地域の人たちですが、学校ではやはり教職員です。自己研鑽に努めながら、子どもたちが「毎日学校へ行きたい」「自分にはこれだけのことができた」という自己肯定感、あるいは「自分が人の役に立つんだ」という自己有用感※1が持てる学校教育を進めていきたいと思っています。 市 長 私も、行政として学校教育をしっかり支援していきたいと思います。教育委員会には、教育の専門職が責任を持って子どもたちを育てていただくことをお願いしたいと思います。  この布引グリーンスタジアムからは、鈴鹿の山から琵琶湖まで、市内をほぼ一望できます。この地域を希望のもてるまちにすることが、私の使命だと思っています。新しい年に、希望のもてるスタートを誓うという意味で、この場所を選ばせていただいた意義をかみしめながら、頑張っていきたいと思います。  今日はありがとうございました。 教育長 ありがとうございました。 写真=エコプラザ菜の花館でのBDFカート体験 写真=定期的に実施される教職員の研修会 写真=スタジアムのスタンドから市内を眺める市長と教育長 ※1 自己有用感…自分の属する集団の中で、自分が周囲から大切にされ、みんなの役に立っているという実感。本市の教育現場では、すべての児童生徒が自己有用感を持てるような教育を推進しています。