◎特集「第13回介護保険推進全国サミットinひがしおうみ」開催  地域に生まれ 地域とともに暮らし 地域のなかで看取る ◆東近江市では、「第13回介護保険推進全国サミットinひがしおうみ」を10月4日、5日に開催します。  このサミットでは、全国から集まった介護やこれからの地域づくりに関心のある人たちが、今後の課題などを議論します。  今回の特集は、市内で医療福祉や介護の活動をされている人に、日ごろの活動内容や思いと、サミットへの意気込みについてお話しいただきます。 ◆座談会 西澤久夫   東近江市長      小鳥輝男さん 三方よし研究会 世話人代表、 小串医院 院長      太田清蔵さん NPO法人 結の家 代表、あいとう福祉モール 代表      外村俊夫 地域包括支援センター(いきいき支援課 主幹) ◆「第13回介護保険推進全国サミットinひがしおうみ」ロゴマーク= サミットの開催地を琵琶湖の形と市章で表現し、ピンク色の翼で地域住民の安心と介護保険が広がっていく様子をイメージしました。 ◇本文中の役職名・敬称は一部省略しています ■「東近江市の地域包括ケアのレベルアップを図りたい」 写真=西澤久夫市長 ◆誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるように ◇進行:「第13回介護保険推進全国サミットinひがしおうみ」開催に向けての意気込みと、テーマを「人と地域の絆の中で、地域包括ケアを〜誰もが安心して看取られる顔の見える地域を創る〜」とした理由を聞かせていただけますか。 ◇西澤:介護保険制度が始まるずいぶん前ですが、認知症の身内を介護し、看取りました。このことは私にとって、老いてからどのような最期を迎えるかを考えるきっかけとなりました。  認知症の介護は、多くの人が経験してきた道であり、これからも増えると思います。そして、介護を経験した誰もが、これで良かったんだろうかと感じながら看取ったのではないかと思います。  平成12年に介護保険制度が開始した時から、この制度は大切であり、少子高齢化社会の日本では、介護保険制度を充実させることが重要だと感じていました。  ちょうど、本市で介護のことをもっと理解してもらい介護保険にまつわる環境の水準を上げたいと考えていた時に、サミットのお話をいただきました。  サミットのテーマは、「地域で暮らす」ことを基軸に、「地域包括ケア※1」「看取り」「認知症」を取り上げました。本市や東近江圏域では、すでに医療の分野で「三方よし研究会」、福祉の分野で「あいとう福祉モール構想」など、地域包括ケアの取り組みを始めていただいています。  サミットでは、今後の介護のあり方や課題を議論し、その内容を参加者がともに理解し合うことで、本市のレベルアップはもちろんのこと、全国にも取り組みが広がるようにアピールしたいと思います。 ※1「地域包括ケア」とは、そして本市の取り組みは  現在の介護保険のサービスは、暮らしの中で必要な医療や、配食・見守りなど生活を支えるためのサービスと十分に連携できていません。また、急速に進む高齢社会では、高齢者のニーズの増大・多様化、高齢者単独世帯や高齢者2人世帯、認知症の人の増加が予測されます。  これらの問題を解決するためには、地域の助け合いとともに地域で医療福祉や介護などすべてのサービスや支援を切れ目なく受けるしくみができ、地域で安心して暮らしながら看取られる「地域包括ケア」の体制を作らなければならないと考えています。 写真=座談会の様子(西澤市長と小鳥さん) ■「三方よしに終わりはなく進化あるのみです」 写真=小鳥輝男さん ◆すべては「患者さんの視点で考えよう」から始まった ◇進行:医療福祉や介護に携わる人同士の、顔の見える関係を大切にされているのが、「三方よし研究会」です。三方よし研究会世話人代表の小鳥輝男さん、活動についてお話しいただけますか。 ◇小鳥:三方よし研究会は、患者さんの視点に立って医療福祉や保健、介護の各分野を縦割りで分断せず、横につながることで、切れ目のないサービスが提供できる体制を確保しようと設立しました。そのためにまず顔の見える関係を作り、お互いが話しやすい環境をつくろうと、平成19年から医療福祉や保健、介護、行政関係者のほか、患者さんや一般市民も参加して研究会を開催しています。  ありがたいことに、この活動が評価され、医学の質・安全学会の「第6回新しい医療のかたち」賞をいただくことになりました。  この活動では、年をとっても認知症になっても、病気になっても、地域で安心して暮らせるまちづくりと在宅看取りについて考えています。考えた内容は医療行政や保健所、三方よし研究会が互助・共助の精神で実践していこうというものです。この取り組みはまちづくりの発想であり「地域包括ケア」そのものだと考えています。  サミットでは、三方よし研究会の活動を全国のみなさんに紹介します。この取り組みを全国に広め、多くの地域で顔の見える関係を作っていただきたいと思います。 写真=「三方よし研究会」の様子(提供:三方よし研究会)  三方よし研究会は、近江商人の家訓「売り手よし、買い手よし、世間によし」にならい「患者よし、医療機関よし、地域よし」をめざし命名されました。 ■「『ごちゃまぜ』、この形しかない」 写真=太田清蔵さん ◆地域に暮らす人のしあわせにつなげたい ◇進行:次に、介護の事業所「結の家」の代表を務めておられる太田さん、毎日のお仕事を通じて「地域包括ケア」について感じておられること、また、これから取り組もうとされていることなどをお話しいただけますか。 ◇太田:暮らしは、経済や健康、家族関係、地域関係などが複雑に絡み合い成り立っています。  地域包括ケアは、すべての住民を対象に、高齢になろうとも障がいを持とうとも地域の中で安心した生活ができるように、必要なときに必要な医療、保健、福祉、介護サービスを一体的に利用できるよう連携することが大事だと思います。介護保険は生活支援の一部であり、訪問介護や訪問看護、デイサービスなど介護保険サービスを利用しても暮らしを支えきれるものではありません。また、家族の中には、介護保険サービス以外の支援を必要とされている場合もあります。働く場所を求めておられる高齢者や障がい者の人がいるのなら働く場や就労支援が必要です。地域包括ケアは丸ごとケアだと思います。それを追求すると、今後取り組む「あいとう福祉モール構想」の形が見えてきます。  福祉モールの「地域で安心して暮らす応援拠点施設」では、通所介護やお泊まり、さらには訪問看護ステーションを持ち、高齢者の介護を支えます。「福祉支援型農家レストラン」では食を支えますが、元気な高齢者が作った作物を利用し、生きがいを感じてもらうことで介護予防につなげられるのではないかと考えています。また、高齢者や障がい者などの働く場「高齢者の働き実践、地域交流施設」と連携することで暮らしを支える。このようにつながり暮らしを創造する場を作りたいと思います。 ◇小鳥:いろんな制度があってもどうしても隙間ができる。その隙間を少しでも埋めることが必要ということですね。 図=あいとう福祉モール構想図 写真=デイサービスの様子、顔なじみが増え、おしゃべりしながらゆったりと過ごします。 ■「私たちは下地部分で、主人公は市民のみなさんです」 写真=外村俊夫主幹 ◆周りの人とつながりながら生活することが大事 ◇進行:高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるようにと、相談や関係機関との調整などの支援をしていただいている地域包括支援センターの外村さん、地域包括支援について話していただけますか。 ◇外村:地域包括支援センターは、高齢者の生きがいづくりの応援や、介護が必要になった人の求める支援が適切に利用できるように、ケアマネジャーや関係機関と連絡調整するなどの相談業務を行っています。私たちは、地域の状況に応じた支援を心がけています。また、一方的に支援するだけでなく、利用者やご家族の力を発揮できる場所があり、応援される側にも「できることがある」ということを感じてもらうことが、とても大切だと思っています。  地域包括支援に関してはいろいろな考え方がありますが、市内でもそれぞれの地域ごとのやり方があっても良いと思います。大事なのは、支援活動を伸ばす「核」となる人がいることです。そうした人たちの活動をセンターが応援できればと思います。私たちは支援する役割の部署ですので、主人公がいてこそ成り立つものだと考えています。  また、介護保険法で定められた「地域包括支援センター」は高齢者が対象ですが、本市では、同じ課(いきいき支援課)で障がい者の相談支援も行っています。ひとつの家庭で介護が必要な高齢者と障がい者がおられる場合などは、複数の支援者で関わりを持たせていただくこともあり、一体的に行うことで支援に幅が生まれると考えています。 写真=座談会の様子(全員) ◆認知症の人を地域で見守る ◇進行:認知症もサミットのテーマとなっています。小鳥先生の地元の五個荘地区や建部地区、能登川地区の一部では『行方がわからなくなった認知症の人を早期に発見・保護する』訓練をされていますね。 小鳥:この訓練は、認知症の高齢者が行方不明になったと想定し、地域住民などが協力して早期発見・保護するものです。五個荘地区は、今年で4回目となりますが、地域での認知症の理解が変わってきました。  訓練で、認知症について勉強する機会ができ、家族や地域で探している認知症高齢者を見つけるためのノウハウも構築されてきました。  訓練が役立って、実際に地域の認知症高齢者の人を発見したこともあります。そのように実績が出るとモチベーションが上がり、地域で取り組まなければという気持ちになっています。 ◆サミットが終わりではなく始まりなんです ◇西澤:それこそ地域からという発想ですね。東近江市は、地域のコミュニティー機能が生きている土地柄です。そうした良いところをもっと打ち出し、その力を活用しなければいけません。  本市は全国の1000分の1の姿、日本の縮図のようなところです。東近江市の「地域で支え、地域で最期まで暮らすことができる取り組み」を標準にすればもっともっと地域包括ケアのレベルがあがるよ、ということを伝えられる介護サミットにしていきたいですね。 ◆クールビズ効果も! ポロシャツでサミットをPR  介護サミットのロゴマークが入ったポロシャツを作成しました。  7月から職員が着用(自費購入)し、サミットをPRしています。市民のみなさんも購入いただくことができます。また、売上金の一部は震災復興支援へ寄付します。 問=介護保険サミット推進室 電話=0748-24-5572  IP=0505-802-9951 写真=ポロシャツを着ている職員 ■記号の説明・・・問=問い合わせ IP=IP電話