■記号は、時=日時 場=場所 ¥=費用 問=問い合わせ IP=IP電話 特集 家族介護者の会     介護者に寄り添う -大切なあなたへ-  介護者の悩みに耳を傾け、互いに支えあえる仲間づくりをめざす「家族介護者の会」をご存知でしょうか。会員は介護の経験をされた人ばかりで、市内には8団体が地域に根ざした活動を行っておられます。  今号は、永源寺地区で活動する「カタクリの会」のみなさんにお話を伺いました。介護者からの相談に、自身の介護の経験を役立てながら、時にあの頃の自分の介護が正しかったのかを問いかけながら、介護者の心に寄り添い続けます。 ●介護者に寄り添う、家族介護者の会  人生において、介護はとても身近なものです。大切に育ててもらった両親や、長年連れ添ったパートナーなどに、突然介護が必要になるかもしれません。誰もが介護者になる可能性があります。  介護は、自分にとって大切な人の人生を支える重要な役割です。しかし介護者は、介護の責任や周りからの意見にプレッシャーを感じ、時に心の中に悩みを抱えてしまいます。介護の心労により、介護を受ける人とともに無理心中を図るといった事件が、全国で発生しています。  そんな介護者の声に耳を傾けようと、市内には8つの家族介護者の会が活動しています。そのうちの1つが、永源寺地域で活動する「カタクリの会」のみなさんです。会員は10人で、全員が介護の経験をお持ちです。月に1回、介護者から寄せられる相談に応じています。 ●「介護者へのケアが抜け落ちているのでは」  カタクリの会会員の吉田正道さんは、「少しずつ介護の質は向上しています。介護を受ける人には、周りから気遣いの目も向けられます。しかし、介護をする人へのケアの視点が、抜け落ちているのではないでしょうか」と心配します。  近年、介護を受ける人を見守る体制はより強化されました。家族の介護やご近所からの配慮だけでなく、介護施設や訪問介護などの整備が進み、病院や診療所との連携も始まっています。しかしそれに比べると、介護者を対象にしたサポートは充分ではありません。介護者が心おだやかに介護を行うためには、家族やご近所、あるいは親族の気遣いが必要となります。ところが、その家族やご近所からのそれとない一言が、介護者のストレスの原因となる場合があります。 写真=吉田正道さん ●頑張ってね≠謔閧熈ほどほどにね  例えば、近所での立ち話の別れ際に、あなたしかいないんだから、頑張ってね!≠ニ励ましたとします。しかし既に頑張っている介護者は、多くを背負い込んでいるかもしれません。吉田さんは「頑張っていると思うけど、ほどほどにね≠ニ話してもらえると嬉しいですよね」と話します。  また、介護者に、ああしたほうがいいんじゃない?∞テレビでこうするほうがいいって言ってたわよ≠ニ、介護を気遣い、助言したとします。しかし介護者には考え込む要素が増え、重圧となるかもしれません。助言よりも、まずは介護者の話をじっくりと聞くことが大切です。  さらに、介護者への視線は、メディアなどから流れてくる介護のワンパターンな理想像を当てはめがちになり、時に評価的になる場合があります。  ご自身だけで介護をこなし、施設のよりよいサービスも受けさせてあげたい、その利用料を払うために仕事も精一杯頑張ろうという選択をされた介護者に、「家に介護する人がいて、施設に入らなあかんのは、悲しいなぁ≠ニいう言葉がご近所さんから届いてしまうと、果たして介護者はどのように受け止めるのでしょうか」と吉田さんは問いかけます。  家族による介護が一番という考えにこだわらず、介護者や介護を受ける人の状態に合わせ、色々なサービスを組み合わせることも大切だという考えを、私たちが持つことも必要です。 ●気遣う声につらいと感じることも  カタクリの会会員の小坂ますみさんも、こうした心への負担を経験された1人です。「妹と2人で認知症の母親の介護をしている時に、2人もいれば大丈夫よね≠ニいう言葉には重圧を感じました」と話します。  また、子育てと仕事を同時に行いながらの介護で、近所から母親のことをかわいそうだ≠ニ気遣う声を聞くこともあり、つらかったと言います。  そんな中、小坂さんは家族介護者の会に相談することで、ずいぶんと心にゆとりを持てるようになったそうです。 写真=小坂ますみさん ●まずは、傾聴から すべてを吐き出してほしい  カタクリの会の活動には、「傾聴」という約束事があります。指示や指導は行いません。肯定的にうなずき、介護者に寄り添いたいという思いから生まれています。相談を受けるメンバー全員が介護の経験者だからこそ、私もそうだったのよ≠ニ同意することができ、理解をしてもらえているという心の安らぎを、介護者に抱いてもらえるそうです。また、言葉に出し続けてもらうことで、悩みや葛藤の底に潜んでいるものを、少しずつ自分の力でつかんでいくことにも繋がります。同会の岡田一子会長は「思っていることを、ここですべて吐き出してもらいたいです」と話されます。  また、相談で知り得た情報は、決して外に漏らしません。時に行政や民生委員に、困っておられる内容を伝える場合があるそうですが、それは相談者にとってメリットが得られる時だけ。相談者本人に承諾をもらい、安心して話してもらえるよう気をつけられています。 写真=岡田一子さん ●自分に問いかけながら、介護者に寄り添う  同会のメンバーは、介護者に思いつめないでほしいというあたたかい気持ちで、ボランティア活動を続けています。  実際に3人は介護者として、小坂さんと吉田さんは認知症の母親を、岡田さんも義父を看取られました。小坂さんは、仕事や子育てを行いながらの介護で、認知症や介護と向き合う時間がないまま母親を看取られたそうです。吉田さんも、実の母親だからこそ、認知症になる前の姿との違いに戸惑い、時に厳しくあたってしまう時があったそうです。みなさんの過去の介護の経験の中には、人生を全うしてもらえたという思いだけでなく、大切な人への後悔とおわびの気持ちも一緒に存在しています。  介護者からの相談に応じるために、3人は県内外の講演に参加したり、地区内の福祉団体と交流したりして、日々、介護や介護者へのケアについて学習されています。しかしそれは時に、過去の大切な人への見守り方が間違っていたのではないかという思いも呼び起こします。「学べば学ぶほど、あの時こうしてればと後悔します。もう十数年も前なのに、忘れられないですね」と小坂さんは心情を話してくださいました。  カタクリの会の活動を行わなければ、心の中に介護の後悔を引きずることはなかったのかもしれません。それでも小坂さんは、「介護者の方の話を聞いていると、涙がこらえられなくなる時があります。でも、お互いに涙を流しながら話していると、最後にすっきりした、ホッとした顔で帰られるんです。そうした顔を見ると、まだまだこの活動を続けなければと思います」と振り返ります。 ●介護者自身も、大切な人  まずは、ちょっといっぷくという気持ちで、相談会に立ち寄ってみてください。同じ介護者だからこそ、支えあうことができます。そしてちょっと心が楽になった時、困っていることを少し、家族やご近所のみなさんに話してみてください。介護に悩んでいることに気付き、優しい手を差し伸べてくれるかもしれません。悩まないでという思いは、きっと誰しもが持っています。大切な人を介護するあなたも、大切な人なのだから。 写真=お話を伺った、岡田さん、吉田さん、小坂さん。 ■家族介護者の会は、介護者という同じ立場の人が集まり、介護について自分の悩みや思いを出し合ったりして、お互いに支えあえる仲間づくりをめざしています。現在、ともに活動する仲間を募集しています。 ○家族介護者の会 一覧 ミモリの会  10月の相談日時:9日(水)9:30〜11:30  相談場所:高齢者やすらぎ交流ハウス(八日市上之町)  問い合わせ先:いきいき支援課 電話=0748-24-5641 カタクリの会  10月の相談日時:24日(木)10:00〜12:00  相談場所:永源寺コミュニティセンター  問い合わせ先:永源寺支所 電話=0748-27-2185 じゃがいもの会  10月の相談日時:9日(水)9:30〜11:30  相談場所:五個荘コミュニティセンター  問い合わせ先:五個荘支所 電話=0748-48-7311 「ちょっと、いっぷく」の会  10月の相談日時:(※)  相談場所:愛東コミュニティセンター  問い合わせ先:愛東支所 電話=0749-46-2260 コスモスの会 10月の相談日時:18日(金)10:00〜12:00  相談場所:湖東コミュニティセンター  問い合わせ先:湖東支所 電話=0749-45-3715 ほっとミルク  10月の相談日時:(※)  相談場所:能登川保健センター  問い合わせ先:能登川支所 電話=0748-42-8700 NPOほほえみ  10月の相談日時:随時受付  受付窓口:能登川保健センター 電話=0748-42-8702   問い合わせ先:能登川支所 電話=0748-42-8700 ほのぼの会  10月の相談日時:(※)  相談場所:せせらぎ(市子川原町)  問い合わせ先:蒲生支所 電話=0748-55-4883 (※)10月は相談日がありませんが、11月以降は実施されていますので、詳しくはお尋ねください。