新春対談 東近江市の魅力 引き出す協働       聞き手:岡崎みゆきさん(東近江スマイルネットキャスター) 写真=東近江市長 小椋 正清 写真=東近江市観光物産振興ビジョン推進委員・東近江市市民協働推進委員会委員 北川 陽子さん profile 北川陽子さん 東近江市生まれ  東近江市観光物産振興ビジョン推進委員、東近江市市民協働推進委員会委員。  市民と作家が出会う場所、つくる喜びに触れる場所としてカフェやギャラリーを備えるファブリカ村(佐野町)を主宰。   地域ブランド「近江の麻」「近江ちぢみ」といった湖東の麻織物をはじめ、市内物産の全国PRも務める。  新年あけましておめでとうございます。  輝かしい平成26年が幕を明けました。小椋市政も2年目を迎えます。  昨年本市では、観光・物産を盛り上げ、地域活性化につなげる行動計画「観光物産振興ビジョン」を3月に策定しました。また、蒲生スマートICが12月に開通し、観光や産業の振興が期待されています。今年は、市民のみなさんとともにつくるまちづくりを推進するため、「協働のまちづくり条例」の制定も計画しています。  そうした中、今回の新春対談では、市の観光物産振興ビジョン策定や市民協働推進計画に携わってくださった北川陽子さんをお迎えしました。それぞれの委員会での会議を通して見えた本市が持つ魅力や、それを引き出す協働のまちづくりについて、お二人に語っていただきます。 ―さっそくですが市長、就任されて10か月が経ちました。振り返られて、どのような印象をお持ちですか。 市長:12万人規模の市のトップに立つという職責の重さ、市民のみなさんからの期待を日々感じました。とにかく必死にやってきたという印象です。 ◆本市の魅力を伝えること ―東近江市には豊かな財産がたくさんありますが、特に素晴らしいと思われる部分はありますか。 市長:歴史と文化と伝統に加え、自然を含むその素晴らしさをひとつずつ取り出してみると、大変多くあります。しかしその素晴らしさを市政に生かしきっていないと感じています。全国から人を呼び込めるような政策を打ち出していく時期に来ているのではないか。またそれらの魅力を発信するためにも、みなさんには各地域がそれぞれに奥深い歴史と伝統を持っていることを、ぜひ知っていただければと思います。 ―北川さんは、市の観光物産振興ビジョンの策定に、委員として携わってくださいました。東近江市の魅力を改めてどう感じておられますか。 北川:いろんな人が、いたるところで活発に活動されていることです。ただそれが当たり前すぎて、みんなが誇りに思っていないのかなと思います。いかに自分たちの活動として魅力を発信していくか、そして点在している活動をつなげる仕掛け、つなぎ役がもっともっと必要です。 市長:点から線へ、そして面へ。観光資源という点で言えば、雪野山古墳が発掘されて25年となります。蒲生スマートICの目の前です。しかしその価値が伝わっていないのは、行政のPR不足でもあります。そこで、今年記念イベントを計画しています。改めて価値を問い返して、そして「すごいものがあるんだな」という自覚のもとで、点を面につないでいく施策を考えたいですね。 写真=蒲生スマートIC  昨年12月22日に開通。産業活性化や観光振興などが期待できます。 写真=雪野山古墳  全長約70mの前方後円墳「雪野山古墳」は1989年、全国的にも珍しい未盗掘の状態で雪野山山頂付近で発見されました。出土した三角縁神獣鏡を含む副葬品は2001年に国が重要文化財に指定、古墳自体も昨年11月15日に国指定史跡に答申を受けました。 北川:そうですよね、気付かず当たり前になっているんですよね。昨年11月、「ええほん東近江〜NUKUTOI(ぬくとい)市〜」という、本市で活躍する手工芸作家やカフェなどが集う催しをガリ版伝承館周辺で行いました。古い蔵が散在する会場の雰囲気に来場者からは、「こんないい場所があったんだ」との意見をいただきました。    住んでみないとわからない魅力が東近江市の特徴です。「物」ではない、「物語」としてどう伝え、表現していくかが大切ですね。 写真=手工芸作家らがつながったNUKUTOI市(蒲生岡本町) ―見てわかる「物」でないものを伝える。難しい課題ですね。  今、北川さんは「近江の麻」でできた素敵なお召し物を着ていらっしゃいますが、そういった目に見えるもの、あるいは話に出ていた目に見えないもののPRをどう展開していこうとお考えですか。 北川:体感できる「場」を増やしていくことです。夏になると近江商人屋敷で麻の展示をしたり、クールビズで市役所のみなさんに着ていただいたりしています。まずは体験し、実感してもらわないことには、そのよさは絶対に伝わりません。    また、地域の素材を地域の人に触れてもらうことも意識しています。近江の麻が滋賀のウェアとして定着し、みなさんが誇れるブランドになるよう努力したいと思います。 ―力強い市民のみなさんがどんどん発信してくださることが心強いですね。さて、同ビジョンでは、観光物産の発展を地域経済の活性化につなげるという考えがあると伺ったのですが。 北川:今、観光の考え方が変わってきています。名所を歩くというよりも、例えば地元の人が愛する食堂というような、その場所独特の隠れざる魅力、それって東近江市にはたくさんあると思います。「物」ではなく、その時代背景や、込められた人の思いといった「物語」、それらを一つに捉え体験できる「事」として伝え、体感、感動してもらうために、着地型観光(※1)もやっていけたらと思います。それが地域を活用し、地域にお金を落とすことになればいいのではないかと思います。    (※1)着地型観光:観光客を受け入れる側の地域が、自分たちの持つ観光資源を生かして企画する観光形態。 ―お話に出ている観光を含め、地域経済の活性化という点で、湖東三山スマートICと蒲生スマートICの開通による期待が持てそうですね。 市長:はい。昨年10月、愛荘町に湖東三山スマートICが開通し、12月には蒲生スマートICが開通しました。また3年前に石榑トンネルも開通しています。本市は関西圏の中で、大阪から見れば、Far East、つまり極東と私は言っています。    しかし、2つのスマートICと石榑トンネルが開通したことで、中部経済圏との交流を意識しています。現に、三重県ナンバーの車をこちらで多く見かけます。滋賀県、三重県の交流は市民レベルで広がっています。      昨年11月に八日市公設地方卸売市場を一般のお客さんに開放する「おいでやす日曜市」を催し、三重県のいなべ市や南伊勢町からお茶や新鮮な海産物を出品してもらいました。するとあっという間になくなって、出品した両市町とも、今後もやってほしい、呼んでほしいとの声をいただきました。鈴鹿山脈を挟んで、実は本市は関西経済圏と中部経済圏との真ん中なんだという発想をすれば、これから大きな展望が持てるでしょう。 写真=卸売市場を開放したおいでやす日曜市 写真=北川陽子さん、小椋市長、聞き手の岡崎さんの対談の様子 ◆協働のまちづくりを高らかに ―なるほど、ありがとうございました。では次に、市民との協働という点に関して触れたいのですが、市民協働推進委員会に参画いただいた北川さん、代表的な議論には何がありましたでしょうか。 北川:それぞれの立場が自覚を持ち、自分のことだと捉え関わっていくことの重要性が挙がりました。そして市民、市民活動団体、行政が各活動を共有し、それぞれが一緒になって盛り上げていく。その中で各個人が本当にやりたいことになっていけば。その盛り上がりを築くためにも、つなぎ役が重要な役割を担うことになります。そこには行政の役割もあるかもしれません。 市長:昨年10月に市民協働推進委員会からまちづくり条例の答申をいただきました。早く条例化したいと思います。地方自治の根底を担う自治会と、まちの創造を担うまちづくり協議会の役割を条例の中で明確にし、一緒にまちづくりをやっていこうと。また、自分たちのまちは行政とともに、自分たちでつくっていくんだという高らかな意思表示でもあります。 北川:近所のお付き合いのような、基本だけど忘れられてしまったものを取り戻す。難しく考えず、簡単なイメージとして捉えてほしいです。 市長:その通りですね。定住型の農耕文化が栄えたこの地域は、田仕事、祭りの文化の中に助けあいの精神、今で言う共助の精神がありました。市内の均衡ある発展と私は常々口にしていますが、「均衡」は「均質」ではありません。本市にはそれぞれ特徴、財産のある地域で構成されています。その特徴が生きた発展をしていきたい。そのように思っています。 写真=昨年12月に行われた協働のまちづくりフォーラム。各種団体の間で情報共有が行われた ―市長、まちづくりには人づくりが大切な要素になってくると思います。各分野の担い手育成についてはいかがお考えでしょうか。 市長:非常に難しい問題です。しかし、今やっている仕事が、生活している地域が、素晴らしいんだという自覚があれば、背筋も伸びるし目も輝いてくると思います。そしてそれらを本気で磨いて伝えないといけないという真剣さが出てくれば、お子さんやお孫さんは背中を見ていますので、後継はそう甘いものではないとわかっていますが、しかし受け継いでくれる道となるでしょう。 ―では最後に北川さん、地域の活性化やまちづくりへの期待についてお聞かせください。 北川:点在している「物」を「事」につなげる役割の人が出てきてほしいと思います。私が出会った主に30代くらいの人たちの活動やそのライフスタイルを見ていると、ひとつの東近江スタイルとして可能性があると感じています。5年10年とかけて、いろんな人がつながって、発展していきたい。私自身も、つなげる人になりたいと思います。 ―今までのお話を受けて、今後のまちづくりの意気込みをお聞かせいただけますか。 市長:どこかに行かなくても、ここで生まれて、適度に遊び場があって、大学があって、職場があって、そして最期の時を迎えるまで、ここで充実した人生が送れる。そういった自己完結型のまちを作ることが目的です。そして魅力を感じ全国から人が集まるまちにするのが私の夢です。そのために、「強く豊かに」という私のセールスをどんどん実践していきます。どうか今年もよろしくお願いします。 ◎新春対談の様子は東近江スマイルネットで放送します。(各15分間) 放送日:1月1日(祝)8:30、22:30〜 放送日:1月2日(木)18:30〜 放送日:1月3日(金)12:30〜 放送日:1月4日(土)10:30〜  5日(日)〜12日(日)も放送します。詳しくは東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。