新春対談 これまでの10年に学び、これからの10年に生かす 東近江市の可能性を探る 田中敏彦さん(八日市商工会議所会頭)・小椋正清(東近江市長) 進行:岡崎みゆき(東近江スマイルネットキャスター) 撮影協力:あけくれ  平成27年が幕を開けました。  今年は、東近江市が誕生して10年の節目の年を迎えます。  そこで今回の特集は、この10年の東近江市の振り返りと、今後のまちづくりへの思いなどについて、八日市商工会議所会頭の田中敏彦さんをお迎えして、小椋市長とお話しいただきます。 写真=右から、椅子に腰掛ける小椋市長、田中会頭、岡崎キャスター ◆プロフィール 田中 敏彦(たなか としひこ) 八日市青年会議所理事長、日本青年会議所滋賀ブロック協議会会長、八日市南ロータリークラブ会長、八日市商工会議所副会頭を経て、平成19年11月1日から八日市商工会議所会頭。現在3期目。 2度にわたる東近江市の合併では、合併協議会委員として東近江市の誕生に尽力されるとともに、東近江市都市計画マスタープランや東近江市道路整備マスタープランの委員としても活躍された。 現在、(株)山彦 取締役会長。趣味は旅行、ゴルフで、休日には家族とともに楽しむ。 市長 市民のみなさん、新年あけましておめでとうございます。いつも市政へのご理解ご協力を賜り、心から感謝申しあげます。今年もよろしくお願いいたします。 田中 あけましておめでとうございます。平成27年が市民のみなさんにとって素晴らしい年であることをお祈り申しあげます。 ●市制10年を振り返って 岡崎 それでは早速ですが、合併以降これまでの10年間を振り返って、お話しいただけますか。 市長 はい。旧1市6町それぞれが、合併という英断をされたことを大変重く受け止めています。しかし、東近江市として合併のスケールメリットがまだ生かしきれていないのではないかと思っています。旧市町が築いてきた素晴らしい歴史と文化と伝統に、さらに磨きをかけていきたいと思います。また、一体感のあるまちづくりのためにも、例えば幹線道路の整備や、にぎわいのある中心市街地の活性化に取り組まねばなりません。強く豊かなまちを実現できる要素はあると考えていますので、頑張っていきたいと思っています。 岡崎 まだまだ可能性は無限大にありますよね。では、田中会頭は、この10年の地域経済について、どのようにご覧になってこられましたか。 田中 そうですね。私も合併協議会のメンバーとして関わり、いろいろと考えた市の名前も10年が経ち、東近江市という名前に愛着が湧いてきています。  経済的には、失われた20年といわれる日本経済の衰退の中、東近江市では比較的落ち込みが少なかったように感じています。おそらく近江商人の、堅実さと一方では積極的、さらに三方よしの精神が息づいているからではないか。そういう意味では、経済的にも可能性があると思っています。 ●自治体が消滅する? 岡崎 昨年、人口減少により全国でおよそ半数の自治体が2040年までに消滅するおそれがあるという報道がありました。そのリストに東近江市は入っていませんが、楽観視はできないですよね。  市長 そうです。これからは、特に若い人たちにとって魅力のあるまち、自己完結能力を備えたまちにしないといけません。子育て、教育、若者の出会い、そして結婚、出産、さらに雇用といったキーワードが一つずつ充実して、「東近江市に住んでみたいね」「私の人生って良かったね」と言っていただけるまちづくりに挑戦したいと思っています。 田中 2040年には東近江市の人口が10万人を切るという話もありますので、人口増加策としての企業誘致、住宅政策を充実していただき、東近江市の魅力をアピールして、ここへ住みたいと思えるようにしてほしいですね。  一方、これからは「定常型社会※1」という考え方もあり、頭には入れておくべきかなと思います。 ※定常型社会…経済成長や人口増加を前提としない社会。 ●交通網の整備と活用 岡崎 さて、石榑トンネルや、名神高速道路には湖東三山・蒲生の2つのスマートIC(インターチェンジ)が開通しました。東近江市は、近畿圏、中部圏との関わりの中ですごく良い位置にあると思いますが、交通網の活用についての可能性はどのようにお考えですか。 田中 これらのインフラをどのようにうまく使って発展させるかですが、例えば、県外からの観光客が近江八幡市や彦根市に行き、そのまま帰ってしまうことを何とかしなければなりません。  ハードルは高いですが、蒲生スマートIC付近に東近江市の物産を買えるような施設の整備が必要だと思います。また、五個荘地区への新幹線新駅整備など、その可能性をうまく見い出して現実のものとすることが大事だと思います。 市長 大阪経済圏、名古屋経済圏の真ん中に立地しているメリットをまだまだ生かしきれていないと思いますので、企業誘致を進めていきたいと思っています。 写真=蒲生スマートIC 《コラム》力注ぎます!交通インフラの活用(蒲生スマートIC・道の駅)  蒲生スマートICが開通して1年が経過しました。現在では、当初想定していた交通量を上回る1日当たり約2,800台の利用があり、市民や事業所、さらには来訪者に広くご利用いただいています。  また、国道421号の蓼畑町地先では、道路利用者の休憩の場、地域の情報発信基地や防災拠点としての「道の駅・奥永源寺渓流の里」が今年春のオープンをめざして工事を進めています。 イラスト=道の駅・奥永源寺渓流の里完成予想図 ●観光施策と中心市街地活性化 岡崎 東近江市は、観光についても注目されていますね。四季折々にある地域の特産を生かした観光を今後どのように取り組んでいこうと思われていますか。 市長 旧市町それぞれが持つ歴史、文化、伝統を、ストーリーとしてつないでいくことと、地元の人が温かくお迎えする気持ちが必要になってくると思います。  そして、例えば能登川の湖岸は整備したら水泳場としてよみがえるのではないか。あるいは市域の56%が森林ですから、鈴鹿の山は資源の宝庫なのです。材木や燃料の資源、さらに山そのものは登山道をきちんと整備して世界中から人が訪れるよう発信していきたいと思います。 田中 市長はよく「東近江は宝物殿(ほうもつでん)」という言い方をされますが、私もまさにそのとおりだと思います。たくさんある素材をいかに引き出してPRするか、資源に対しては常に手を加えていくことが必要です。例えば、かつて八日市にあった飛行場や湖南鉄道に関するものを集めるのもひとつだと思っています。  観光協会と商工会議所、商工会が、さらに連携を深めるべきだと思います。 岡崎 一つの目標に向かってみなさんでタッグを組んでいくというようなことですね。  では、中心市街地の活性化についてはどうお考えですか。 田中 東近江市には八日市と能登川、大きく2つの市街地があります。八日市は、八日市駅の近くの空き地を有効利用しなければ、中心市街地活性化は掛け声だけで終わるのではないか。そして能登川駅は乗降客が減らないように、まず市民が声を掛け合って利用していかないといけませんね。 市長 洋服一つ買うにしても、市外、県外のお店で買う人が多いんですよ。なぜかと聞くと、買うものがないとおっしゃるのです。イベントには大勢の人が集まり、潜在的には購買力があるのに、それを満たせる魅力的な供給がない。少しの工夫でお客さんは集まってくると思うので、ぜひ、魅力的なものを供給をする努力もしていただきたいと思います。  また、能登川駅は新快速が止まるという利便性が極めて高く、ベッドタウンとして人口が増えていく、まさに副都心です。能登川にお住まいのみなさんにも、市内で遊びや買い物をしていただかないと、ひとつのまちの一体感は生まれないと思っていますので、実現していきたいと考えています。 田中 若い人が集まるよう、明るい展望、希望を持ち、楽しいことを考えながらまちづくりをするのも良いと思います。 《コラム》力注ぎます!中心市街地の活性化  近江鉄道八日市駅を中心とするエリアは、聖徳太子が開いたと言い伝えられる市場町で、古くから栄えてきました。現在では商店街やショッピングセンター、行政機関など都市機能が集積する本市の中心市街地となっています。  特に、近江鉄道・バスのターミナル駅でもある八日市駅周辺は、市民のみならず市外から多くの来街者が集い、交流することによるにぎわいの創出に向けた駅前の空地活用や商店街の活性化が求められています。  市では、中心市街地のまちづくりを進めるため、内閣府が認定する「中心市街地活性化基本計画」の策定に取り組み、事業者や地域住民を主体とした中心市街地の活性化をめざします。 写真=溢れんばかりの人で賑わう二五八祭 ●災害対策と東近江市の強み 岡崎 さて、ここ数年、全国的に土砂災害などの被害が発生しています。東近江市も、被害の想定がされると思いますが、安全安心のまちづくりはどのようにお考えでしょうか。 市長 そうですね。平成25年の台風18号で床上浸水した地域には、排水ポンプなどを購入して備えました。また昨年の台風では鈴鹿の県境で時間雨量90ミリという推計値も出ておりますので、局地的な集中豪雨への対応も想定していかなければと思っています。  一方、地震対策では、琵琶湖西岸断層帯、鈴鹿西縁断層帯という大きな二つの断層帯がありますが、本市に限って申しあげますと、比較的地震に強いと言われており、企業誘致をするときの大きなメリットになります。また、避難者を受け入れるなど広域防災の考え方に立つことで、道路などの整備が図りやすくなります。 田中 地盤が強いということで進出している企業もあることは大きな強みですね。私は、企業誘致のためには、地震に強い東近江市というテーマでPRをするべきだと思っています。 ●市制10周年の節目を迎え、これからの可能性を探す 岡崎 さて今年は、市制10周年を迎えるということで、2月の記念式典など、催しを企画されていると伺っていますが。 市長 10周年にあたっては、合併の良し悪しという議論ではなく、現状の課題を検証することで今後の方向性を見据えていきたいと思います。今後10年何をすべきか、あるいは10年の節目に取り組むようなアイデアを職員から出してもらいましたので、それらも踏まえて予算編成を進めています。  また、2月11日には市制10周年を記念して式典をさせていただくほか、2年間にまたがる周年事業によって市民のみなさんの一体感を図りたいと思います。そして、攻めの行政をできるきっかけになればと期待しています。 岡崎 私たちも期待しています。  では田中会頭、今後の東近江市に期待することを教えて下さい。 田中 実は、非常に可能性のあるまちだと言った反面、八日市商工会議所1100、東近江市商工会1600の会員にアンケートを取ったところ、そのうち4割が後継者がいない、自分の代で廃業する可能性があるというショッキングな結果が出ています。それに対しては商工会議所、商工会が全力で取り組みたいと思っています。  また、われわれ経済団体には青年部や女性会があり、ロータリークラブやライオンズクラブ、青年会議所などの奉仕団体もあります。中小企業の経営者が、ボランティアでまちづくりを一生懸命頑張っていますので、市民のみなさんには、ぜひ応援をお願いしたいと思います。 岡崎 最後に、市民のみなさんへ、市長からメッセージをお願いします。 市長 強く豊かな東近江市をつくるために、今年もみなさんのご支援を賜りますようお願い申しあげますとともに、平成27年がみなさんにとって素晴らしい年になりますことを心からお祈りいたします。 ◆新春対談の様子は東近江スマイルネットで放送します。(各15分間) 1月1日(祝)7:00、19:00 1月2日(金)7:00、15:00、21:00 1月3日(土)11:00、23:00 1月4日(日)7:00、13:00、21:00 5日(月)〜11日(日)も放送します。詳しくは東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。