■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 特集 みんなで防ごう土砂災害 6月は土砂災害防止月間 写真=平成26年8月豪雨による広島市で発生した土砂災害 【資料提供 NPO法人土砂災害防止広報センター】 ●突発的に発生する恐ろしさ  近年、局地的豪雨が多く発生し、土砂災害による被害が多発しています。昨年8月20日未明には広島県広島市で1時間に100ミリを超える記録的豪雨により、大規模な土砂災害が発生しました。大量の水分を含んだ土砂が一瞬にして住宅地を飲み込み、74人もの尊い命が奪われたことは、土砂災害の恐ろしさを再認識するとともに、その衝撃を鮮明に記憶に留めている人も多いでしょう。  また県内では、栗東市において一昨年9月、台風による豪雨で土砂災害が発生し住宅が倒壊、1人が亡くなられました。  土砂災害は、降雨量だけでなく、地形や地質状況など、複数の要因が絡み合うため、発生場所や時刻を予測することが困難です。一方で大きな破壊力をもって突発的に発生するため、人命に関わる被害が生じやすい特徴を持っています。 ●土砂災害は3種類  土砂災害には、次の3種類があります。 @がけ崩れ  地面にしみ込んだ雨水が原因で、急な斜面の土砂が崩れ落ちる現象です。崩れ落ちるスピードが速いため、発生すると回避が困難です。 A土石流  谷底などに溜まった土砂や、山腹から崩れ出した土砂が水と混ざり合って一体となり、谷を一気に流れ下りる現象です。自動車と同じくらいのスピードで流れ下り、破壊力がとても大きいため、住居や田畑を押し流し大きな被害をもたらします。昨年の広島市での土砂災害では、この土石流が猛威を振るいました。 B地すべり  山すそや丘陵地などの斜面で、地中の滑りやすい地層を境に地面が動き出す現象です。一度に広い範囲が動くため、広範囲に被害をもたらします。 ●全国で土砂災害は増加傾向に  図@は、過去30年間で土砂災害が発生した件数をまとめたものです。昭和59年から平成5年の10年間で7711件の土砂災害が発生しています。その後、発生件数は増加傾向をたどり、平成6年から平成15年の10年間で8390件、さらに平成16年から平成25年の10年間では1万1839件に増加しています。  この原因には、降水量の増加が挙げられます。図Aは、同じく過去30年間で地域気象観測システム「アメダス」が観測した1時間当たりの降水量が50ミリを超えた回数です。昭和59年から平成5年の10年間では1818回に対し、平成16年から平成25年の10年間では2407回に増加しています。  このように、近年の気候変動により、土砂災害の発生件数は増加の一途をたどっており、また、災害の規模も大きくなることが懸念されています。つまり、今までに例のない災害や、今まで起きていなかった箇所での災害がいつ起きてもおかしくない状況です。「これまで裏山が崩れたことはないから大丈夫」といった過去の例が通用しない時代と言えます。 図@=土砂災害発生件数(全国) 昭和59年〜平成5年 … 7,711件 平成16年〜平成25年 … 11,839件 図A=1時間当たりの降水量が50ミリを超えた回数(全国) 昭和59年〜平成5年 … 1,818回 平成16年〜平成25年 … 2,407回 ●市内で土砂災害の危険性がある区域を指定  土砂災害による被害を食い止めるため、行政では砂防工事などの土木事業を進めています。しかし土砂災害が起こるおそれのある箇所は全国で約52万箇所あり、工事には多大な時間と費用が必要です。そこで平成13年に土砂災害防止法が施行され、土砂災害で危害が生じるおそれがある区域を「土砂災害警戒区域」に、そのうち建物が破壊され、住民に大きな被害が生じるおそれがある区域を「土砂災害特別警戒区域」に指定するための調査が始まりました。事前に災害の危険性をはらむ地域を明確に示すことで、その地域にお住まいの人に、普段からの危機意識や、万が一のときに避難する意識を持ってもらうことを狙いとしています。  2015年3月現在、本市では「土砂災害警戒区域」に242箇所が、またそのうち「土砂災害特別警戒区域」に147箇所が指定されています。指定箇所は鈴鹿山脈周辺の中山間地域に限らず、里山の裾や丘陵地のほか、愛知川の河岸段丘沿いも含まれています。 土砂災害警戒区域 対象:土砂災害が発生したときに危害が生じるおそれがある区域 指定箇所数:市内242箇所 効力:警戒避難体制の整備を図る。 土砂災害特別警戒区域 対象:建物が破壊され、住民に大きな被害が生じるおそれがある区域 指定箇所数:土砂災害警戒区域のうち、市内147箇所 効力:特定の開発行為に対し許可が必要になったり、建築物の構造規制に及ぶ場合がある。  市内で指定されている両区域の詳しい場所は全戸配布している「東近江市防災マップ」をご覧ください。土砂災害警戒区域の指定以前に現地調査などにより把握された土砂災害のおそれのある箇所を示す「土砂災害危険箇所」も記載しています。 写真=東近江市防災マップ ●【土砂災害から身を守るために@】情報を積極的に収集する  降水量が1時間に20ミリ、また降り始めから100ミリを超えると土砂災害が起こりやすくなります。テレビやラジオ、インターネットを使って積極的に気象に関する情報を収集する必要があります。その中で避難の目安となるのが防災情報です。特に土砂災害警戒情報は、大雨警報が発表されている状況で、土砂災害発生の危険度がさらに高まったときに、避難の目安となるよう市町別に県と気象庁が共同で発表する防災情報です。土砂災害警戒区域や土砂災害危険箇所に住まれている人は、早めの避難が大切になります。また、土砂災害についてさらに詳しい情報を収集するには、滋賀県土木防災情報システムの「土砂災害降雨危険度」を確認してください。5キロメートル四方の地域別に、土砂災害発生の危険度を4段階で判定するシステムです。周囲の状況や雨の降り方にも注意し、危険を感じたら迷わず自主避難をお願いします。 大雨注意報→今後の雨に注意 大雨警報→避難準備開始の目安 土砂災害警戒情報→避難開始の目安 ・土砂災害警戒情報とは  大雨警報の発表後、さらに土砂災害の発生する危険度が高まったときに発表される防災情報です。 ・土砂災害発生の危険性に関し、詳しい情報を収集するには、滋賀県土木防災情報システム(http://shiga-bousai.jp)をご覧ください。 ●【土砂災害から身を守るためにA】土砂災害の前兆を知る  土砂災害が起こる前には、【図@】のような前兆現象が見られる場合があります。  このような現象が見られたら、速やかに安全な場所へ避難してください。夜間で周りが見えなかったり、指定避難所までの経路に危険な箇所がある場合は、公園や知人の家など、より安全な場所への避難や、2階など同じ建物内の安全な場所での待避など、状況に応じて避難の判断をしてください。 土砂災害の主な前兆現象【図@】 @がけ崩れ ・木が揺れたり傾いたりする。 ・小石がパラパラ落ちてくる。 ・斜面にひび割れができる。 ・斜面から水がわき出る。 A土石流 ・地鳴りや独特な臭いがする。 ・水が急ににごる。 ・石や岩がぶつかる音がする。 ・雨が降り続いているのに、 川の水が減る。 B地すべり ・わき水が増える。 ・木がさける音や、木の根が切れる音がする。 ・地面にひび割れや段差ができる。 ●毎年6月は土砂災害防止月間  土砂災害による被害を最小限に食い止めるため、毎年6月は土砂災害防止月間と定められています。これは、昭和57年7月に長崎県で299人の死者、行方不明者を出す土石流やがけ崩れが発生したことから、この教訓を生かすため、雨量が多くなる梅雨の時期を前に啓発活動を実施するため制定されました。同月間に合わせ、国や県、市では土砂災害に対する知識や理解を深めるための各種啓発活動を実施するほか、土砂災害が発生するおそれがある箇所の点検などを行います。  本市でも、同月間に合わせ、県や砂防ボランティアとともに土砂災害のおそれがある箇所を巡回します。また、昨年の広島市での土砂災害発生を受け、土砂災害警戒区域に指定されている自治会を回り、改めて市内の危険箇所を確認するほか、防災に関する情報収集の周知に努めています。 写真=危険箇所の確認 取材:地域の防災力(愛東地区)  本市の愛東地区では、地域ぐるみで防災力の強化に努められています。3年前から滋賀県立大学の専門家と連携し、水害や土砂災害に関する出前講座を開講されています。3年前は1つの自治会での開催でしたが、本年度は4つの自治会で開催を予定されています。契機は一昨年襲来した台風18号で、愛東地区でも路肩の崩壊やがけ崩れなどの被害が発生しました。出前講座受講者へのアンケートでは、災害発生時の避難などについて不安を感じる人が多く見られたそうです。出前講座のほか、愛東外町自治会では防災マップ作成に向け準備を進められています。 ●油断せずに避難する意識を  土砂災害は予測が難しい災害です。大雨に襲われたら、積極的に情報を収集すること、危険を感じたらすぐに避難行動を取ることが重要です。そして平時には、災害に対する知識を身につけることや、地域で防災力を蓄えることが必要です。  土砂災害防止月間を定めるきっかけとなった長崎県の災害は、活性化した梅雨前線の影響で連日大雨警報が発表され、結果的に「慣れ」が生じ警報が軽んじられたことも被害の拡大を招きました。100回避難をして大丈夫でも、101回目も油断せずに避難する意識を持つことが、大切な命を守る第一歩です。 問=管理課 電話=0748-24-5654 IP=050-5801-5654