新春対談 東近江市の創生 原石に磨きをかけて 川瀬重雄さん(東近江市商工会会長)・小椋正清(東近江市長) 進行:岡崎みゆき(東近江スマイルネットキャスター)  平成28年が幕を開けました。  地方創生が叫ばれる中、「住んでよかった!」と言えるまちに、「住みたい!」と言われるまちにしていくためにどうするか。  東近江市商工会会長の川瀬重雄さんをお迎えして、小椋正清市長とお話しいただきます。 写真=右から、椅子に腰掛ける小椋市長、川瀬会長、岡崎キャスター ◆プロフィール 川瀬 重雄(かわせ しげお) 家業の製材業を継ぎ、昭和31年に川重木材(現川重)を設立し社長に、平成13年からは会長に就任。 経済界活動は、愛東町商工会(前東近江市愛東商工会)会長を経て、合併と同時に東近江市商工会会長。平成12年から滋賀県商工会連合会会長。現在、6期目。 全国商工会では筆頭副会長を務め、現在は全日本火災共済協同組合連合会会長。 趣味は旅行と果樹園の手入れ。 市長 新年あけましておめでとうございます。昨年は市制10周年を迎え様々な行事を開催したところ、市民の皆さんのご理解ご協力そして絶大なるご支援を賜わり改めて御礼申し上げます。今年も全力で市政を推進してまいりますので、よろしくお願いいたします。 川瀬 あけましておめでとうございます。平成28年が皆さんにとって飛躍の年になりますようお祈り申し上げます。 ◆人口減少に歯止めをかける 岡崎 早速ですが、東近江市の「人口」についてお伺いします。全国的な問題となっている人口減少問題について、東近江市の取り組みを教えていただけますか。 市長 現在、東近江市の人口は約11万5千人ですが、国の社会保障人口問題研究所が発表した推計によると、2040年には10万人を切り、2060年には7万8千人になると予測されています。まずは東近江市から転出する20〜30歳代の若者を東近江市にとどめる施策が第一です。そして、合計特殊出生率を上げるために、まずは結婚のための出会いの場をつくり、そして結婚して出産しても働きやすい職場づくりと子育て支援が必要です。様々な施策を展開する中で、国の予測を裏切り、2040年には10万人を、2060年には9万人を維持したいなという将来構想をたてています。 岡崎 人口減少は商工会としても危機感を持たれていると思いますが。 川瀬 商工会は合併して5年を迎えますが、この間、会員数が100人以上減っています。退会者のほとんどが廃業によるもので、後継者がいない、または後継者がいても事業を継続していけない状態にあります。  景気は全国的にも滋賀県でも上向きと言われますが、実際には大企業の一部であって、小規模事業者にとってはまだまだ厳しい状況が続くと思います。 岡崎 今後の対策としては、どのようなことをお考えでしょうか。 川瀬 商工会では担い手育成を推進しています。若手経営者と地域の持続的な発展をめざして経営計画書セミナーを開催したり、家業の強化について各自で考えてもらうなど、創意工夫を持ってがんばってもらっています。 岡崎 昨年は東近江市商工会と八日市商工会議所が実施されている「創業支援」の取り組みで功績が認められて、内閣府の大臣表彰「女性のチャレンジ支援賞」を受賞されたんですよね。おめでとうございます。 川瀬 ありがとうございます。市内の雇用を維持・増大していくためには、中小事業所対策や創業支援などを進めていくことが求められます。そんな中で、女性が雑貨店やカフェなど小さなお店を開くためのノウハウを学ぶ「女性のための創業塾」という取り組みを始め、3年間で74人が受講され、25人が実際に創業されました。女性の創業塾を成功させたのは全国で初めてで、この表彰をいただいたことは東近江市商工会にとっても名誉なことであり、商工会会員の活性化にもつながると喜んでいます。 写真=エトコロdeあつマルシェ 「女性のための創業塾」第4期修了生が自分のお店を持つ前のステップとして、趣向を凝らしたお店が期間限定で開かれました。 ◆観光施策で人を呼び込む 岡崎 さて、次に観光施策という部分で、現在の取り組みを教えていただけますか。 市長 市内に点在する観光資源を線でつなぎ、面にしていくことが大切だと考えています。 ひとつは市域の56%を占める森林資源です。昨年、道の駅「奥永源寺渓流の里」のオープンにあわせ、鈴鹿10座認定事業を実施しました。これに磨きをかけ、トレイルを整備することにより、山岳遭難対策や土砂災害の防止のほか、登山やハイキングをすることで健康寿命を延ばす効果があると見ています。もう一度、森林資源を見直して観光政策にもつなげていきたいと考えています。  また市内には、聖徳太子にまつわる瓦屋寺や渡来人文化にゆかりのある石塔寺などの社寺仏閣があるので、しっかりと磨き上げたいと思います。昨年4月には全国で18か所の日本遺産が認定され、滋賀県では琵琶湖をテーマにした日本遺産が認定されました。本市でも、能登川地区の「伊庭の水辺景観」と五個荘地区の「五個荘金堂重要伝統的建造物群保存地区」の2か所が認定されたので、これをひとつの起爆剤にしたいと思います。  文化面では、現在、近江商人博物館に、日本画家で東近江市名誉市民の中路融人さんからいただいた絵画を展示するスペースを整備しています。近くには観峰館という書と中国文化に関する施設もあるので、もっと行政とタイアップしてつなげていかなければならないと思っています。このように、すでに東近江市にあるたくさんの宝に地元の私たちが気付いて、それを磨き上げることが大切です。 岡崎 観光業界が盛り上がってくると企業の皆さんのチャンスも増えるかと思いますが、そのあたりはいかがですか。 川瀬 東近江市を含め県全体がPR不足だと感じています。東近江市といえば近江商人発祥の地ということで、私もいろんなところで宣伝をして、全国の商工会などに来ていただいています。実際に訪れてもらうと、近江商人は三方よしの精神で質素倹約により成功したのだなということを学んで帰っていただいています。そしてこれを伝えていってもらうことで、また新たな人に来てもらうことができます。このように、東近江市だけでなく県内で共有して観光客を呼び込めるようなPRをしていただきたいですね。 写真=日本遺産に認定された「伊庭の水辺景観」と「五個荘金堂重要伝統的建造物群保存地区」 ◆交通政策で利便性を高める 岡崎 観光客誘致には道路の整備が欠かせないと思いますが、石榑トンネルが開通してから三重県ナンバーの車が増えましたよね。合併で広くなった東近江市内のネットワーク化について、幹線道路の整備など地域間を便利につなぐということも必要になってくると思いますがいかがですか。 市長 市内には、高速道路、JR、国道と主要幹線道路、そして近江鉄道があるわけですが、利便性ということになるとまだまだ足りないと感じています。昨年は、太田元国土交通大臣に国道8号御幸橋付近の渋滞状況を見ていただき、改善の必要性を訴えました。11月には東近江市、近江八幡市、愛荘町、竜王町で国道8号(東近江区間)整備促進期成同盟会を立ち上げ、市内を分断する国道8号の整備について、ようやく一歩を踏み出せたかなと思っています。  また、年を重ね運転できなくなったとき、いずれは公共交通機関に頼るんだということも考え、5市5町にまたがる近江鉄道やちょこっとバスなどの利便性の向上も政策の中で考えていかなければならないと思っています。 写真=太田元国土交通大臣に国道8号の渋滞状況を説明する市長 ◆足元にある宝を磨く 岡崎 さて、これまでのお話の中で、さまざまな取り組みをされていることが分かりましたが、これからの東近江市の可能性についてお話いただけますか。 市長 可能性は無限にあると思います。鈴鹿の山から琵琶湖まで多様性があり、さらに山間の一部を除いてまんべんなく人家があるという市は県内でもそう多くはありません。どの地域でも歴史と文化と伝統が積み重ねられています。万葉の時代を伝える山部赤人神社や雪野山古墳のほか、奥永源寺地域の木地師文化など、行政が主体的に磨くことで将来展望、発展性が無限にあるのではないかと思っています。また、永源寺ダム周辺道路を拡幅するなど、道路インフラを整備することで産業、経済界にも大きく貢献できると思っています。 岡崎 川瀬会長は東近江市の可能性について、いかがですか? 川瀬 先ほどから市長が言われているとおり、東近江市には観光も含めて宝の山がいっぱいあります。この宝を有効利用して東近江市の活性化につなげたいと思っています。あとは東近江市には宿泊施設がまだまだ少ないので、例えば空き家を利用したり農家民泊を推進したり、創意工夫をして宿泊施設を増やしていただくことをお願いしたいです。 ◆皆さんとともに地方創生を進める 岡崎 では、川瀬会長、今後の東近江市に期待することやまちづくりについての意見を教えてください。 川瀬 東近江市に住んで良かったと言われるまちづくりを期待したいですね。商工会も合併して5年が経過しますが、東近江市商工会に加入してよかったと言われるように役職員一丸となって努力していきたいと思っています。 岡崎 最後に、市長から市民の皆さんへメッセージをお願いします。 市長 全国1700あまりの地方公共団体が地方創生の施策を練っており、地域間競争はすでに始まっています。自然の豊かさと歴史文化が凝縮した東近江市は、競争に打ち勝てる素材をたくさんもっています。今年は、市民の皆さんとともに地方創生を強力に進めていかなければならない年だと思っています。素晴らしい東近江市のまちづくりに向けてがんばりますので、どうか市民の皆さんのご協力をよろしくお願い申し上げますとともに、平成28年が皆さんにとって素晴らしい年になりますことを心からお祈りいたします。 ≪市長's VOICE≫  先日、市立小中学校の校長先生との懇談会でこんなお願いをしました。子どもたちは、将来、進学や就職で東近江市を出ていくことがあるでしょう。でも、結婚や就職の時には東近江市に帰っておいでよということを一生懸命言ってほしいと。  外へ出て初めて東近江市の良さに気づくことがあります。市民の皆さんにもぜひ地元に帰っておいでよと言ってほしいんです。自分の子どもが東京の大学に行ったとして、「就職は東近江でしなさいよ。」あるいは「市内から通勤できるところで就職しなさいよ。」と親御さんからも言ってほしいんです。  このまちに生まれて暮らし、生涯を終えるときに、「本当にすばらしいまちでいい人生を過ごしたなぁ。」と実感してもらえるのがまちづくりの究極の目標です。 ◆新春対談の様子は東近江スマイルネットで放送します。 1月1日(祝)〜3日(日) 6:00、8:30、10:30、13:00、15:00、17:30、19:30、22:00 4日(月)〜10日(日)も放送します。詳しくは東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。