■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファックス ●東近江市のオンリーワンみいつけた。VOL.5 ものづくりの原点、木地師文化。東近江市から全国へ広がった木の文化 写真=木地製品 ■木地師〜木とともに生きる、職人〜  轆轤と呼ばれる工具で、とち・ぶな・けやきなどの原木から主に椀や盆などの木地をつくる職人のことを木地師と言います。かつて木地師は、日本各地の深山に入って轆轤を引き、良材を求めて新しい山へと移住し、木とともに生きる暮らしを送っていました。  木地師は、轆轤で回転させた木材に、「手カンナ」をあてて製品を削り出します。  製品の微妙な表面を削り出すために、刃の形や柄の長さの異なる手カンナを駆使します。この手カンナは、木地師が自ら刃を鍛え研いでおり、木を削る技術とともに鍛冶などの技術も持っていたと言われています。 写真=木地師の作業風景、手カンナ ■木地師文化発祥の地  全国各地を移住しながら活動する木地師を保護・統轄する場所が、かつて蛭谷町と君ヶ畑町にありました。蛭谷町の筒井公文所、君ヶ畑町の高松御所から役人が全国各地の木地師を訪ね歩く「氏子かり」を行っており、氏子料や初穂料を徴収するほか、神札や鑑札(営業許可書)などを配布していました。  蛭谷町には、筒井公文所の名で、全国の木地師を保護・統轄していた筒井神社があります。筒井神社は木地師・轆轤の祖神とされ、その境内には木地師資料館があり、木地製品や氏子かりを行った際に発行していた古文書などが展示されています。  君ヶ畑町には、同じく木地師・轆轤の祖神とされる大皇器地祖神社があります。また、高松御所とも呼ばれる金龍寺という寺院には、氏子かりに関する古文書が所蔵されています。  蛭谷町の木地師資料館 要予約。入館料300円。  君ヶ畑町のミニ展示館 予約不要。入館料無料。 ■VOICE 「私たちのふるさとの地」  長野県南木曾町漆畑で木地屋やまとを営んでいます。私の曽祖父も含め、20軒ほどの木地師が明治時代に長野県の伊那谷から木曽谷に移住していきました。毎日使っていただけるうつわを作り、店舗で販売しています。年に数回東京などの都市部や海外で展覧会を行っています。  東近江市へは2年に1回程度訪問しています。訪問時には、地域の皆さんが親切にしてくださり感謝しています。また、訪問した際に私の祖先の名前が氏子かりに関する古文書の中に載っているのを見つけ感動しました。  蛭谷町、君ヶ畑町は私たち木地師のルーツであり、「ふるさとの地」として、歴史や文化を大切に守っていただき、市町村や県を飛び越えて移動した木地師の祖先に小さな光があたって欲しいです。  〜Profile〜  昭和42年生まれ。長野県南木曾町漆畑で有限会社ヤマト小椋商店・木地屋やまとを営む。先祖代々、木地師の家系であり4代目。  小椋正幸さん(長野県南木曾町漆畑) ■VOICE 「世界に通用する木地師文化」  廃村となった旧永源寺町の茨川で生まれました。木地業は営んでおりませんでしたが、幼少期から蛭谷町・君ヶ畑町とは深く関わりをもって生活してきました。愛知県内で日本史の高校教師を務め、現在は浜松学院大学で講師をしています。教師時代から全国様々な地に赴き、民俗学の研究や各地の郷土史編纂に関ってきました。  全国様々な文化・伝統と比較しても、千年以上続き、今なお全国につながりのある木地師の文化的な価値は非常に高く、世界に通用するものだと考えています。今後、全国の木地師やその子孫の皆さんとのつながりをより強くし、市内外に情報発信する必要があります。私のふるさとである東近江市の取組を応援したいと思っています。  〜Profile〜  昭和31年、旧永源寺町茨川生まれ。浜松学院大学で非常勤講師を務める。文学博士。全国各地で歴史文化の講演会などで講師も務める。  筒井正さん(愛知県清須市) ■ものづくりの原点  木地師の轆轤技術を生かした製品には日用食器や茶器などのほか、コマやけん玉、こけしといった民芸品などもあります。近年は、ボールペンやスピーカーなど、木の素材を生かした様々な製品が作られています。また、木工製品だけではなく、轆轤の技術は金属加工の分野にも活用されており、まさに日本のものづくりの原点の技術と言え、私たちの生活を支えてきました。 ■全国に広がる木地師のネットワーク  木地師文化の全国への伝承については、第55代文徳天皇の子である惟喬親王が轆轤技術を伝え、全国に伝播したという伝説があります。全国の木地師にとって惟喬親王は職業の祖であり、蛭谷町と君ヶ畑町は自分たちのふるさととして認識されていました。木地師やその子孫の皆さんの思いは今なお強く、神事やイベントには遠方からも参加されています。  本市では、全国に広がる木地師のネットワークをまちづくりに生かすため、子孫の皆さん約6300人へのアンケート調査や全国各地で活躍する木地師へのヒアリング調査を実施しました。今後は、全国の産地や子孫の皆さんと連携し、木地師文化を全国に発信していきます。 問=企画課 電話=0748‐24‐5610 IP電話=050‐5801‐5610 ファックス=0748‐24‐1457 ■木地師のふるさとのイベント 第5回春の奥永源寺山歩道  新緑が広がる奥永源寺地域で開催されるイベントです。轆轤体験や木地師の作品販売などが行われます。  時=5月4日(祝)から7日(日)まで 10:00〜16:00  場=奥永源寺地域一体  問=山歩道実行委員会(北野さん)  電話=090−6558−7548