■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファックス 東近江市の伝統工芸・地場産業  〜いにしえの時を超え、暮らしに根付く技・精神〜  平成22年、永源寺相谷町の集落遺跡相谷熊原遺跡から縄文時代草創期(約1万3千年前)の国内最古級の土偶が発掘され話題になりました。市内にある他の遺跡などからも、地域の豊かな自然環境や地の利を生かし、古くから人々が定住して生活を営み、文化が形成されてきたことを垣間見ることができます。  市内には、代々続く伝統工芸や地場産業があり、それらからも脈々と受け継がれてきた伝統や文化を感じ取ることができます。  布引山系の自然を生かした陶芸、豊富な水資源によって発達した近江の麻、祈りの文化を支える鋳物、江戸時代に旅人のお土産として一世を風靡した小幡人形、日本唯一の手織りで作る真田紐、発祥の地として全国につながりを持つ木地師文化など。  伝統工芸・地場産業の担い手は、この地域の環境に感謝をしながら、代々受け継がれた技術や知恵を生かし、精力的に活動されています。  伝統工芸・地場産業の知恵や精神を知ることで、古くから続いてきた地域の文化や営みを知ることができ、地域の未来を考えるヒントにもなります。市内で活躍する7人の担い手の思いを紹介します。 ●布引焼 布引焼窯元 代表取締役 小嶋 一浩さん  本市の陶芸の文化はあまり知られていませんが、約1000年の歴史があります。当時、布引山系では須恵器や緑彩陶器が焼かれていました。その後、歴史が途絶えていましたが、昭和46年に父である小嶋太郎がこの地に窯を開きました。  布引焼の特徴は、七彩天目と呼ばれる独特の色彩と工房周辺の森に住むふくろうをモチーフにした作品です。最近では、ふくろうが縁で東京都豊島区との交流も始まりました。  布引焼を縁に様々なつながりができました。今後も、陶芸教室や陶器祭りを続けたり、市内各所に作品を展示したりし、今まで以上に地域に密着した窯元になれるよう取り組みます。 ●近江の麻 湖東繊維工業協同組合 副理事長 株式会社大長 代表取締役 大橋 富美夫さん   周囲の山々、琵琶湖からの湿気、愛知川の伏流水による豊かな水。能登川・五個荘地区は、繊維業にとって好条件が揃った場所です。約500年前からここが麻織物の産地となり、この地の人々の生活に寄り添い地場産業として発達しました。  「染め、織り、仕上げ」の各工程を地域内の様々な企業が分担し近江の麻を作っています。小さな産地内において全工程を行っているのは、全国的にも珍しく大変希少です。  一時期、綿やウールといった他の繊維の台頭で需要は減りましたが、近年は、本物志向が高まり、少量多品種の需要が伸びています。この地域に受け継がれてきた文化・技術を生かし、新しいものづくりに挑戦し続けます。 ●梵鐘 株式会社金壽堂 工場長 黄地 浩さん  長町の鋳物は約700年の歴史があります。大国庄(現愛荘町)の寺院の梵鐘を鋳造したことが始まりとされています。都にも近く、中国大陸や朝鮮半島から文化が入り、周囲に鉱山があったため、この地域で鋳物文化が発達し、かつては多くの鋳物師がいました。  しかし、アルミ製品の普及や戦争による梵鐘の供出などの影響で伝統的な鋳造所は少なくなり、ここが県内唯一となりました。  梵鐘の音色は、長年、日本人に親しまれてきたもので、心を穏やかにします。人々の心に響く音にこだわり、丹精込めて鋳造しています。  最近では、海外からの注文もあります。この地域の伝統技術・文化を広く発信していきたいです。 ●小幡人形 細居 源悟さん  約300年前、初代が京都で伏見人形作りを学び、五個荘小幡町で小幡人形として技術を確立させました。当時、中山道が通るこの地域は旅人などで賑わい、土産品として人気を博しました。  小幡人形は、はっきりとした色使いが特徴です。また、人形の型は300年前から受け継がれていて、それぞれの人形から当時の人々の生活様式をうかがい知ることができることも面白さの一つです。  かつては年賀切手や年賀ハガキの図柄にもなった小幡人形。日本の庶民の文化を表す文化的にも価値のあるこの技術を、絶やすことなく次代につないでいきたいです。 ●手織真田紐 西村 幸さん(母)、西村 操さん(娘)  真田紐とは、機で縦糸と横糸を平たく織った紐のことで、戦国武将の真田幸村が考案したとされています。社寺仏閣の装飾や桐箱の紐などとして使われています。  約100年前に祖父が京都で修行し、この地で業を始めました。京都などには真田紐を作るところは多いのですが、手織りで作っているのはここだけです。手織りならではの結びやすい腰のある質感が人気で、文化庁や老舗のお店から注文を受けています。  祖父が立上げ、両親が礎を築いた手織真田紐の伝統を継承しようと決意し、母から技を習っています。時代に合う価値を生み出し後世につないでいきたいです。  ※お話は操さんに伺いました。 ●木地師 ろくろ工房君杢 小椋 昭二さん  木地師発祥の地である君ヶ畑町で生まれ、22年前から木地師として活動をしています。家業が製材所だったので、暮らしの一部に森林があるような生活を送っていました。  木は一つ一つ香りや質感、手触りなどの特徴が違います。木の個性を引き出せるように木と対話をしながら作品を作っています。最近は木から離れた生活をしている人が多いと思いますので、作品を手にとって木を身近に感じ、森のことを考えていただけるとありがたいです。木地師の発祥の地で活動することの重みを感じながら、これからも木に寄り添って活動していきたいです。 ●木地師 筒井ろくろ 北野 清治さん  17年前、木地師の発祥の地である蛭谷町に移住し、木地師となりました。試行錯誤を繰り返しながら自己流で轆轤をまわし、漆を塗り、器やぐい飲みなどを作っています。  発祥の地で木地師を続けていけることは、非常にありがたいことだと感じています。責任感を持って、使い手のことを考えながら一品一品に魂を込めて作っています。  5年前から、毎年、秋に地域内外の作家が集まる作品展「匠の祭り」を開催しています。志のある作家が出会い、共感できる場を作ることで、ものづくりの聖地として奥永源寺地域にさらに注目が集まると嬉しいと思います。 ●次代に継承するために  伝統工芸や地場産業を次代に継承するために、それぞれの担い手は、様々な取組をされています。  梵鐘を鋳造する金壽堂では、地元の小学生を招いて工場内の見学会を行い、鋳物文化が根付いた地域の歴史や鋳造技術を伝えています。ろくろ工房君杢へは、毎年、地元の小学生が訪れ、工房の見学や轆轤を使って木を削る体験を行っています。実際に体験する子どもたちの眼差しは真剣で、伝統技術を肌で感じることができます。  その他、筒井ろくろでは地域内で作品展を開催し、近江の麻関連事業者で構成される湖東繊維工業協同組合は、海外で展示会をするなど、地域内外へ発信をしています。  どの伝統工芸や地場産業にもライフスタイルの変化や安価な代替品の普及による需要の低下、後継者の不足などといった様々な課題があります。  市としても伝統・文化を次代に継承するために、職人の技術を見学や体験をすることができ、歴史に裏打ちされた産地のストーリーを学習できる体験型観光を推進するとともに、伝統工芸や地場産業を広く知っていただけるようPRを実施しています。  市民の皆さんも伝統工芸品や地場産品を手にとり、本市の伝統・文化を感じてみませんか。  写真=真剣な眼差しで木地師体験をする小学生 ●伝統工芸・地場産業の詳しい情報は市ホームページに掲載しています  伝統工芸・地場産業の詳しい情報は市ホームページの特設ページ「東近江ジャーニー」にも掲載しています。ぜひ、ご覧ください。  検索 東近江ジャーニー  http://www.city.higashiomi.shiga.jp/journey  問=商工労政課   電話=0748‐24‐5565   IP=050‐5802‐9540   FAX=0748‐23‐8292