新春対談 歴史と文化に磨きをかけて 輝き誇れる東近江市の創生  平成30年が幕を明けました。  東近江市には、鈴鹿山脈から琵琶湖に広がる豊かで多様性のある自然や暮らしと、長年受け継がれてきた歴史と文化があります。東近江市が誇る奥深い歴史と文化をいかにまちの活性化につなげていくか。  五個荘竜田町にある書の文化にふれる博物館 観峰館を訪問し、同館を運営する公益財団法人 日本習字教育財団 理事長の甲地史昌さんをお客様として、小椋正清市長とお話しいただきます。 甲地史昌(公益財団法人日本習字教育財団 理事長) 小椋正清(東近江市長) 進行 岡崎みゆき(東近江スマイルネット キャスター) 撮影場所:観峰館 澹泊敬誠殿 小椋 新年明けましておめでとうございます。本市は地方創生という競争の中で重要な時期を迎えようとしています。今年も市政の発展のために、市民の皆さんと協力して素晴らしいまちにしてまいりたいと思っております。 甲地 明けましておめでとうございます。観峰館と淡海書道文化専門学校は、東近江市と市民の皆さんの深いご理解のもとに五個荘竜田町で長年歩んでまいりました。    市民の皆さんが希望を持てる年、輝ける年になりますようにご祈念を申し上げます。 奥深い歴史と文化のなかに惣村文化が残る 岡崎 東近江市の歴史と文化について、どのような魅力をお感じでしょうか。 小椋 本市は、合併して13年を迎えます。名前は新しいですが、長年受け継がれてきた歴史と文化を持っています。    鈴鹿山脈の源流から琵琶湖までを愛知川や日野川が結ぶ多様性のある自然のなかに、古い歴史と文化が積み上がり、とりわけ聖徳太子が開いたと言われる八日市のまちを中心に日本でも有数の豊かな地域が形成されてきました。    例えば、1万3千年前の縄文時代にさかのぼる相谷熊原遺跡、天乞山古墳や久保田山古墳、雪野山古墳などの古墳群、額田王と大海人皇子の相聞歌などは、歴史の古さや豊かさを象徴しています。    轆轤で椀や盆といった木地製品をつくるとともに、森林資源を適正に管理してきた木地師発祥の地、三方よしの近江商人発祥の地でもあり、各地区の個性が残っています。    また、惣村文化と呼んでいますが、お互いに思いやり助け合う文化が色濃く残っており、農耕民族の原点がこの地にはあります。    歴史と文化、現在の私たちの生活とのつながりを、しっかりと磨いて後世に伝えていかなければいけないという思いを、正月に改めて感じています。 甲地 私は福岡県に住んでいます。福岡県から見ますと、滋賀県は歴史の表舞台にたびたび登場する奥深い歴史と文化がある地域だと思います。    東近江市は自然があり、歴史があり、文化があり、素晴らしいまちだなという印象があります。 まちの歴史を知り祖先の生活を想像する 岡崎 なぜ観峰館を東近江市に開館されたのか、いきさつを教えていただけますか。 甲地 観峰館は書道文化を全国に普及するため、運営する公益財団法人 日本習字教育財団の創立者 原田観峰が開館したものです。    過疎化が進行していた当時の蛭谷町から要請があり、静寂で素晴らしい適地だということで、昭和52年にすめら学園を創立しました。    名前の由来は、第55代文徳天皇の第一皇子の惟喬親王の御陵に近いということで、すめらというお名前をいただきました。そのご縁が続いて、平成7年に書道を中心とした収蔵品を展示公開する観峰館を開館しました。 岡崎 観峰館には展示物がたくさんあって驚いています。これまでにどのような展示をされてきたのですか。 甲地 中国の書画を含めて3万点を収蔵しており、今後も継続的に調査研究を続けていきます。    書の文化にふれる博物館としてだけではなくて、地域に根ざした博物館としても積極的に活動を行っています。一昨年は、『永源寺に伝わる書画』で重要文化財を中心に展覧会を催しました。    昨年は、『近江商人・野口家十一屋コレクション展』で野口家の貴重な作品を公開しました。    今年2月1日からは『近江仏画めぐり』と題して、東近江市の各寺院に伝わる仏教美術を紹介します。秋の特別展では東近江市の博物館とコラボして、国の重要文化財である雪野山古墳の出土品を紹介する予定です。    まちの歴史を知る、そして祖先の生活を想像する、またとない機会かなと思っています。私も待ち遠しい思いで一杯です。 民間と公共の博物館が連携した文化財の活用 岡崎 書の文化にふれる博物館としてだけではなく、地域に根ざした博物館としての取組について、どうお感じでしょう。 市長 観峰館の活動は誠にありがたいことだと思っています。    観峰さんが言っておられたのは、書道を通じて、日本人の心、道徳、倫理を学んでほしいということです。    殺伐とした科学技術優先の時代、日本人の道徳観や倫理観が希薄になってきているときこそ、書を通じて人を育てていくという観峰館がわがまちにあることは誇りです。    永源寺展や野口家展、仏画展、雪野山古墳展の開催など、地元に対して目配りをしていただいていることもありがたいと思っています。    行政としても観峰館をもっと支援していかなければならないと考えています。    能登川博物館、西堀榮三郎記念探検の殿堂、近江商人博物館・中路融人記念館などの公共の施設と観峰館などの民間の施設がばらばらで存在するのではなく、公共の施設を民間の施設と連携させて線でつないでいきたいと考えています。    これから必要なのは、文化財であれ、有名な価値のある芸術品であれ、これを保護して守り、市の発展のためにどう活用していくかということです。    ぜひ理事長にもご協力をいただいて、レベルの高い、クオリティの高いまちづくりのために連携していただければと思っています。 甲地 私どもは、創立者 原田観峰の教育理念である「正しい美しい愛の習字」をもとに、生きがい、喜び、人づくりを目指しています。    東近江市とご縁があって、行政とも連携しながら文化も教育も次世代に伝えていかなければならないという思いで一杯です。 観光政策を通じて本市の宝物を磨いてつなぐ 岡崎 民間の施設と公共の施設が連携して地域が盛り上がっていくことが理想的ですね。理事長から市政に期待することやご意見がありましたらお聞かせください。 甲地 東近江市は、自然も歴史も文化も教育も非常に素晴らしい地域だなと思っています。市長をはじめ市民の皆さんの地道な活動が花開いているのだろうと思っています。    教育機関の一つとして、豊かで恵まれた環境を生かしながら活動していければいいなと思っています。東近江市は、知れば知るほど魅力的な地域です。 岡崎 では、市長から市民の皆さんにメッセージをお願いします。 小椋 いよいよ地方創生の終盤にさしかかり、人口減少社会への挑戦ということで地方自治体は全力で競争しています。    本市は潜在的に素晴らしい自然、歴史、文化という宝物がたくさん存在しており、それらに磨きをかけて、つないでいくことが必要です。    宝物に磨きをかけ、次世代につなげるため、昨年から観光政策を強力に進めています。本市はまだ合併して13年ですので、全国的に名前は知られていません。    観光政策を通じて、日本全国から、インバウンドを含め世界各国から、本市を訪れていただいて、「ここに住みたいな。」「ここで人生を過ごしたいな。」という人を一人でも増やしていかなければと思っています。    本市の歴史と文化をテーマに理事長からありがたいお言葉をいただきました。    市民の皆さん、ぜひ観峰館を訪れてください。本当に素晴らしい展示物があります。すぐ近くにある近江商人屋敷や重要伝統的建造物群保存地区との連携も考えています。    今年も、さまざまな政策を通じて、本市の発展に努めてまいります。この一年、市民の皆さんのご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。 地域で継承されてきた文化財に関心を  地域で継承されてきた文化財は、その存在や価値を広く知ってもらうことで、文化財としての真価を発揮します。本市では、歴史文化基本構想を策定し、地域で継承されてきた文化財の保存・活用方針を定めています。  重要文化財雪野山古墳出土品の展示、中路融人画伯の遺作展、五個荘金堂地区の重要伝統的建造物群保存地区選定20周年事業など、平成30年度も、文化財にふれていただく機会を市民の皆さんに提供していきます。  問=歴史文化振興課 電話=0748-24-5677 IP=050-5801-5677 ファクス=0748-24-1375 地域に愛される博物館を目指して  観峰館は、大本山永源寺や近江商人野口家、仏画、雪野山古墳など、東近江市の文化をテーマとした特別展覧会を開催し、地域に根ざした博物館として地域の文化の発展に貢献したいと考えています。  また、新春書き初め大会やジャズ、中国楽器などによる演奏会、オルゴール鑑賞会、講座など、年間を通して気軽に訪れていただけるよう、いろいろな楽しいイベントも開催しています。  皆さんのご来館をお待ちしています。  問=観峰館 電話=0748-48-4141 ファクス=0748-48-5475 プロフィール 甲地 史昌  公益財団法人 日本習字教育財団 理事長、観峰館館長、日本習字学術研究助成運営委員長、九州・山口地区青森県人会会長、学校法人 淡海文化学園 評議員 (淡海書道文化専門学校)  青森県生まれ、福岡市在住。大学卒業後、日本習字に入職。平成20年に理事長。平成22年に観峰館館長就任。  日本習字創立者 原田観峰の提唱した「正しい美しい愛の習字」を基本理念とした書道教育、文化の普及に努める。趣味は読書、旅行   新春対談の様子は東近江スマイルネットで放送します。 ◆1月1日(祝) 8:00、13:00、20:30  1月2日(火) 10:30、15:30、23:00  1月3日(水) 8:00、13:00、18:00 ◆1月4日(木)〜8日(祝)も放送します。