■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファックス 特集 空き家に新たな息吹を  人口減少と核家族化の進行などにより、近年、空き家の数が増えています。一方で、空き家を活用し、新たな事業を始めたり、移住したりする事例も生まれてきました。  空き家活用の事例から、空き家の活用方策や対策方法について考えます。   問=住宅課 電話=0748‐24‐5669 IP=050‐5801‐5691 ファクス=0748‐24‐5578 ■日本の手仕事・暮らしを体感 田舎暮らし体験ハウス むいむい  およそ築40年の民家。中に入ると糸車や唐箕といった懐かしい道具が並びます。畳の間には、いろりがあり、暖をとったり、食事をしたりできます。  情緒ある雰囲気が漂う「にほんの田舎暮らし体験ハウスむいむい(梅林町)」は、約4年間空き家になっていた民家を藤田治恵さんと馬場敦子さんが借り受け改修した施設で、農業や手仕事の体験、体験型宿泊ができます。  開設したのは約2年前。自然の中での暮らしや手仕事に興味を持たれていた藤田さんが、空き家を活用して、さまざまな体験ができる施設を作りたいと考え、建築のノウハウを持つ馬場さんと一緒に拠点となる空き家を探しました。「出身は東近江市ではありませんが、市内で行われる農業体験事業などに参加するなどし、まちに関わりを持っていました。自然豊かで環境への取組が進んでいる東近江市で事業を始めたいと思い、空き家バンクを運営する一般社団法人東近江住まいるバンクや就農支援をする特定非営利活動法人愛のまちエコ倶楽部に協力してもらい拠点となる空き家を探しました」と藤田さんは振り返ります。  しかし、拠点となる空き家は簡単には見つからなかったそうです。「当初数軒候補がありましたが、家や土地の大きさなどの条件が合わなかったり、家屋の傷みがひどかったりして探すのに苦労しました。諦めかけたときに運良く今の家に出会い、借り受けました」と話す馬場さん。借り受けた後、約3カ月をかけて庭木を剪定し、水回りや内装などの修繕を行い、平成29年10月に手仕事の体験ができる「手仕事工房むいむい」としてオープンしました。  ●心温まる体験が人気  現在は、手仕事体験に加えて、体験型宿泊の受け入れやワークショップの開催などを行われています。特に、3大都市圏に住んでいる人や国内の中学生の教育旅行、外国人観光客に人気があり、多い月には3組程度が体験型宿泊を利用しています。  5月3日には、大阪市から家族3人で東近江市を訪れた山田武史さんご家族がお茶づくりと宿泊体験をされました。山田さんは、「自分で摘んだ茶葉でお茶を作るのは初めての体験で大変楽しめました。民家も落ち着いた雰囲気でリラックスできました」と満足した様子でした。  ●空き家が地域の拠点に  「ここはいろりもありゆったりとした時間が流れます。昔の機械で綿糸を作る体験や薪風呂体験もできます。今の生活はさまざまな作業が分業になっていますが、ここでは一からの体験ができます。日ごろの暮らしを見つめ直し、本当の豊かさとは何か考えるきっかけになればと思っています。今後は、2階を活用して、東近江市へ移住を希望する人などが、お試しで長期滞在できるような取組にもチャレンジしたいです」とお二人は思いを話します。  かつては空き家だったこの場所。民家ならではの雰囲気を生かし、新たな価値が付け加えられ、地域ににぎわいをもたらす拠点となっています。 ■東近江市の空き家事情  東近江市では、市内の空き家状況を把握するため、各自治会と連携しながら独自調査を行っています。  ●市内の空き家軒数   空き家の軒数は年々増加しています。  ●空き家の状態(平成30年度)   大規模な修繕や解体などの対策が必要な傷みがひどい空き家が20%程度あります。  ●空き家所有者の所在地(平成30年度)   空き家所有者の半数以上が市外在住者です。 ■古民家暮らしをみんなで楽しむ 奥田さん一家  「自然の中で地域とともに暮らしたい」と願い、奥田さん一家が上二俣町にある古民家を購入したのは1年前のことでした。夫の好信さんが滋賀県へ転勤することになったことがきっかけで、神奈川県からご夫婦とお子さん1人の3人で転入。  「地域の中でさまざまな世代がふれあえる環境がないか探しました。上二俣町は自然が豊かで農業しながら助け合う暮らしがあり、その生活にひかれて移住を決めました。一般社団法人東近江住まいるバンクさんに協力してもらい家を見つけました。家を購入することに不安はありましたが、以前東近江市に住んでいたことや、神奈川県で借家の古民家に住んでいた経験もあり決断しました。 地域の人に温かく接してもらって、ここに決めて良かったなと思っています」と話す弘美さん。  家には離れもあり、今後、ここを「つながりの場」として活用する計画をお持ちです。「さまざまな世代が寄り添う暮らしは、子どもにとっても生きる力となる多くの学びがあります。同志の人と一緒に自分たちの力で離れを改修して、地域の人に使ってもらうなど循環型の暮らしをみんなで楽しめる拠点にしたいです」と弘美さんは展望を話します。  地域の皆さんの温かい受け入れにより、移住後の生活を楽しまれる奥田さんご家族。これからも自分らしい生活を満喫されることでしょう。 ■東近江市空き家バンクとは  東近江市空き家バンクとは、空き家の所有者と空き家の活用希望者をつなげる取組です。運営は、市内で空き家の活用などに取り組む一般社団法人東近江住まいるバンクと連携し行っています。  空き家をお持ちの人や空き家を活用したい人からの相談をお待ちしています。  ●設立から4年間で約30件の空き家活用のお手伝いをしました。市内の不動産、建築、設計業者や司法書士などが参画する団体なので専門的な相談にも対応できます。ささいなことでも気軽に相談してください。   一般社団法人東近江住まいるバンク吉原遼さん  問=一般社団法人東近江住まいるバンク   〒527-0029 東近江市八日市町4番3号   電話=0748-22-3366 FAX0748-25-0058    URL:http://higashiomi-akiya.net ■空き家の活用と対策を進めるために  空き家を活用した地域の拠点や新たな暮らしが始まった事例も増えていますが、空き家が地域の安全を脅かす事例も増えています。  3ページに掲載しているように市の調査で把握している空き家の軒数は年々増加していて、平成30年には1,564軒にものぼり、その中で解体などの対策が必要な傷みがひどい空き家は20%程度あります。それらは修繕や解体などの対策をとらなければ、防犯や防災、景観、衛生の観点で悪影響が出てくることが懸念されます。  平成27年5月には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。管理者や所有者に空き家の管理責務があることが明確化され、屋根や外壁が落下するなどして他人がケガをした場合、損害賠償を問われる可能性があります。  市では、平成28年3月に「東近江市空家等対策計画」を策定し、空き家などの適正な管理の促進や活用の促進に関する取組を進めています。  具体的には、一般社団法人東近江住まいるバンクなどと連携して空き家所有者や空き家活用希望者向けの相談会の開催や、空き家活用の補助金制度を制定しています。また、対策が必要な空き家所有者からの相談受付や、対策が必要な空き家の所有者に対しては、必要に応じて助言・指導などを行っています。  ●「我ごと」として考える  空き家を活用したいという相談や危険な空き家があるので対策してほしいという相談は、市に多く寄せられます。しかしながら、空き家を所有している人の理解や協力がなければ、活用も対策も進められないのが現状です。  空き家のことを「我ごと」として考えていただき、空き家を地域のリスクではなく、地域活性化のための資源とできるよう空き家の活用・対策を進めていきます。 ■空き家等の可能性を生み出すモデル事業  空き家などの新たな活用方法の提案を募集し、優れた提案に対して、実現に必要な費用の一部を市が助成します。  ●応募対象事業  自治会やまちづくり協議会、市民活動団体などが取り組む事業で、空き家などの活用を通して、地域の活性化が図られるなど公益性があり、新たなまちづくりのきっかけとなりうる事業  ●補助金額  補助対象となる改修費用の3分の2(最大500万円)  ●補助採択数  予算の範囲内で若干数  ●応募期間  7月1日(月)〜8月30日(金)(郵送の場合必着)  ※申請に必要な書類を持参または郵送で提出 ■空き家総合相談会  毎月1回、空き家(空き店舗)に関する相談会を開催しています。  空き家(空き店舗)を活用したい、売りたい、貸したいといった相談や維持管理に関する相談などを受け付けます。東近江市の補助制度や空き家(空き店舗)バンクの制度の紹介も行います。  開催日     場所  6月7日(金) 市役所新館2階212会議室  7月8日(月) 市役所新館3階315会議室  8月8日(木) 市役所新館2階212会議室  所有者の部:10:00〜12:00 家に関する資料  活用希望者の部:13:00〜15:00