■記号は、時=日時 場=場所 対=対象 定=定員 持=持ち物 ¥=費用 申=申込み 問=問合せ IP=IP電話 ■key word 泊まるだけじゃない。  近年の観光の潮流は、パッケージ化された団体旅行から個々の志向を重視した個人旅行へと変化しており、滞在についても単に泊まるだけでなく、体験・交流できるプランが人気を集めています。  今月号は、泊まるだけでなく、さまざまな体験ができる民泊を実践する居永友多可さんの取組と東近江市の滞在型観光の取組について特集します。 ■地域のポテンシャルを生かした民泊 ファームステイ近江 居永 友多可さん(平林町)  6年前、実家に戻り農業を始めた居永さん。「お金をかけても作れないこの地域の自然や農業、歴史を多くの人に伝えたい」と1年前からさまざまな体験ができる民泊をスタート。「泊まるだけじゃない」を体現する居永さんの取組を紹介します。   目の前に田園が広がる平林町。ここに居永さんが自宅を活用し運営する民泊「ファームステイ近江」があります。平成30年6月に施行された「住宅宿泊事業法」に基づき、同年11月に開業されました。  居永さんは、大学卒業後金融機関に就職。その後、実家を離れて農業や福祉の関係の仕事に携わられました。そして6年前、一念発起され、実家に戻って農家となり水耕栽培を始められました。  「地元を離れていましたが、実家が所有する田んぼのことなども気になり実家に戻ることを決意し、会社勤務時代に経験があった水耕栽培をスタートさせました。地元に戻ってきて改めて感じたのが、この地域の『自然の素晴らしさ』『農業の素晴らしさ』です。都市にある大きな建造物はお金をかければ建てることができますが、自然は人の手で作ることができません。深呼吸するだけで気持ちがいいぜいたくな地域です」と居永さんは振り返ります。  地域の素晴らしい自然や農業を多くの人に体感してもらいたいという思いから、約1年前には、水耕栽培に加えて民泊を開業されました。国内の中高生の修学旅行の受入れをはじめとして、全国各地からの個人旅行者、さらには海外からの旅行者も受け入れ、1年間で約100人が滞在されました。中には3週間も滞在する人もいるそうです。利用する皆さんは、単に泊まるだけでなく、居永さんが水耕栽培している小松菜や自宅の裏山にあるタケノコの収穫、また里山や農道の散歩などを楽しまれます。  昨年12月11日、12日には台湾の精誠高校生4人を受け入れ。4人は、居永さんと一緒に小松菜の収穫や植付けを行ったり、火をおこしてピザ作りをしたりしました。二日間の滞在でしたが、高校生4人は、「みんなで作るご飯はとてもおいしかった」「ここの地域のゆったりした心地よい雰囲気が大変気に入りました」「居永さんの温かい歓迎は忘れられません」などと大変満足そうな様子でした。  「国内をバイクで旅行する皆さんにも頻繁に利用していただいています。中には、滞在後にソーシャルメディアやブログで体験された内容を発信してくれる人もいて、口コミでもお客さんが増えています。滞在される皆さんは、農業体験や自然体験を楽しまれ、周囲の歴史にも触れられます。お客さんの様子を見て改めてこの地域のポテンシャルを感じています。大都市からのアクセスもよく、まだまだ可能性があると思います。地域の中にもっと体験ができる民泊を増やし、地域全体で盛り上げていきたいと考えています」と居永さんは展望を話します。  「泊まるだけでなく、さまざまな体験を通して地域のファンを増やす」という居永さんのチャレンジはこれからも続きます。 ■また帰って来たくなるまちに ただいまステイ東近江  東近江市内では、9年前から市内各家庭や地域団体の協力のもと、全国各地の中学校の教育旅行を受け入れています。この取組は、各家庭に3、4人の生徒を受け入れて食事や生活の体験をしてもらうものです。  各家庭では、子どもたちと交流をしながら、家庭料理づくり体験、農作業体験、地域の歴史を学べる体験や季節によってはホタルの観察などの自然体験などが行われます。子どもたちにとってはかけがえのない思い出となり、受入れ家庭の皆さんにとっても地域の魅力に改めて気付くキッカケになっています。当初から受入れを行っている奥村とよ子さん(妹町)は、「受入れ後も生徒の皆さんと交流が続いています。家族みんなで楽しみながら受け入れています」と話します。  また、近年は国内の教育旅行のみならず、海外から教育旅行に来られたり、個人旅行客からの問合せが増えたりしています。  教育旅行の受入れのほか、民泊や体験メニューの造成といった滞在型観光を推進し、地域の魅力をより伝えるため、昨年9月に、「ただいまステイ東近江運営委員会」を立ち上げ取組を強化しました。  この団体は、東近江市観光協会が事務局を担うもので、各受入れ家庭の皆さんとの調整などをする「エリアマネージャー」(NPO法人愛のまちエコ倶楽部、一般社団法人がもう夢工房、栗見出在家町魚のゆりかご水田協議会)と共に、地域の皆さんと連携を密にしながら取組を進めます。 ■「受入れ家庭」、「民泊開業希望者」、「エリアマネージャー」 募集中  教育旅行の受入れ家庭、民泊開業希望者、エリアマネージャーとなっていただく団体を随時募集しています。皆さんも「ただいまステイ東近江」に参画しませんか?  問=ただいまステイ東近江運営委員会事務局(一社)東近江市観光協会   電話=0748-29-3920 FAX=0748-29-3922 ■地域も元気になる取組です!   エリアマネージャーとして、各地域の受入れ家庭の皆さんのサポートをしています。皆さんからは、「普段家に子どもがいないので、子どもと接するのは楽しいです」「私たちにとってもよい思い出になり、お別れのときには思わず涙が出ます」「受入れ後も交流が続き、大学生になった時に改めて訪問してくれました」などと好評をいただいています。  学生などを受け入れることで、何気ない日常の中にある魅力に気付くことができます。また、自治会、地域が協力して取り組むため、地域の仲がよくなり地域の活性化にもつながります。皆さんの地域でも受入れを始めてみませんか。 ■地域の歴史・文化を後世につなぐ 古民家などを活用した 分散型ホテル   近江商人のふるさと五個荘金堂地域。ここに所在する近江商人屋敷を活用した分散型ホテルの整備に向けて地域の皆さんと共に取組を進めています。分散型ホテルとは、地域に点在する複数の古民家などを宿泊施設として再生し、地域ぐるみで観光客を呼び込み活性化を図るものです。現在、住民の皆さんや関係機関などによる協議会を立ち上げ、分散型ホテルに関する講演会や先進地研修などを行っています。  1月には、岐阜県美濃市にある商家を活用したホテルを視察。見学後、現地スタッフと意見交換を行い、ホテル整備のイメージを膨らませました。協議会会長の山脇勝さんは、「多くの地域の皆さんにホテルの検討に関わってもらえるようにして、近江商人の歴史を次代に伝えられる取組にしたい」と話します。  木地師のふるさとであり、政所茶など多彩な地域資源がある奥永源寺地域。ここでも空き家の活用に向けて取組が始まっています。住民の皆さんや関係機関などによる協議会が立ち上がり、地域ぐるみで取り組むことができないか検討が進められています。  1月には、地域資源を再確認するワークショップが行われ、地域にある自然や文化、食文化など多岐にわたる魅力について話されました。「空き家が増えているので、古民家の新たな活用策となるようにしたい。また、地域の皆さんが地元のよさに気付き、地域が盛り上がるキッカケになるようにしたい」と協議会会長の仲谷正敏さんは話します。  商家や古民家を活用することで地域の歴史、文化が後世につなげられるように、今後も地域の皆さんと取組を進めます。 ■生徒の受入れを始めてみませんか?教育旅行受入れ講習会  民泊の開業などさまざまな滞在型観光の取組がありますが、まずは自宅を使い学生の皆さんの教育旅行の受入れを始めてみませんか。  教育旅行などの現況が学べ、受入れ家庭の皆さんの体験談などが聞ける講習会を開催します。お気軽に申し込んでください。  ◆内容  講演((株)体験教育企画 藤澤安良さん)、先輩受入れ家庭による相談受付など  時=3月28日(土)13:30〜16:30  場=八日市文化芸術会館  申=3月25日(水)17:00まで  申問=ただいまステイ東近江運営委員会事務局(一社)東近江市観光協会   電話=0748-29-3920 FAX=0748-29-3922 ■滞在型観光を通して 地域の未来をつくる  体験・交流ができる民泊の取組、全国各地や海外からの滞在者の受入れ、歴史を生かした分散型ホテル。今回、紹介したようにさまざまな滞在型観光のチャレンジが行われています。  どれも単に宿泊客を増やすのではなく、鈴鹿から琵琶湖まで広がる本市の多様な自然や奥深い歴史・文化を体感できる取組を行い、東近江市のファンを増やすものです。さらに、これらの取組に関わっていただくことによって、改めて市民の皆さんがまちの魅力に気付くきっかけにもなっています。  市外からのファンが増え、市民の皆さんも自分のまちに誇りを持つことで、歴史や文化を未来につなぐことができます。これからも、滞在型観光を通して地域の未来づくりに取り組みます。  問=観光物産課  電話=0748‐24‐5662  FAX=0748‐23‐8292  (取材:広報課 谷 佑一郎)