■記号は、時=日時 場=場所 問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファクス ■特集  近江鉄道の響きが住みたいまちを「創り」「つなぐ」  線路を走る電車の音に由来した「ガチャコン」の愛称で親しまれている近江鉄道は、創立から120年を超える歴史がある全国で最も古い鉄道の一つです。  しかし、マイカーの普及や少子化などにより、近江鉄道の利用者数は最盛期から半減し、経営面でも赤字が続くなど、その存続が心配されています。  東近江市をはじめとする周辺地域は、近江鉄道とともに発展してきました。私たちの日々の暮らしや将来のまちづくりに欠かすことのできない近江鉄道をどうすれば守っていくことができるのか。  今回、皆さんと一緒にできることを考えたいと思います。 ■近江鉄道とまちづくり  近江鉄道株式会社(以下「近江鉄道」という。)は、1896年(明治29年)に湖東・東近江・甲賀地域の発展を願う県下の近江商人や有志によって設立された県内で最も古い私鉄です。  また、明治から令和へと創立以来120年以上もの間、社名も変わらず続く全国でも歴史のある鉄道会社の一つです。  現在、近江鉄道の総延長は約60キロメートル。駅は33駅ありますが、そのうち13駅が東近江市内にあり、本市公共交通の要となっています。  この近江鉄道を中心に、かつては八日市駅前の本町商店街をはじめ駅周辺には多くの人が集まり、にぎわいをみせていました。今でも通勤・通学・旅行など、私たちの生活にはなくてはならないものです。  現在、市が進めている八日市駅前周辺の中心市街地のにぎわいの再生も、将来にわたって近江鉄道が存続することを前提としています。  近江鉄道は、沿線の地域だけでなく、県民の日々の暮らしや県全体の発展にとっても欠かすことができない重要な交通インフラです。 ■近江鉄道を取り巻く現状  近江鉄道は、より多くの皆さんに利用していただくため、イベント列車の運行や割引きっぷの販売など、これまでさまざまな取り組みを行ってきました。  しかし、年間の利用者数は、1967年度(昭和42年度)の約1,126万人をピークに減り続け、2019年度(令和元年度)は、475万人と最盛期の半分以下となっています。  利用者が減り続けると、経営も厳しくなります。鉄道事業では、1994年度(平成6年度)以降赤字経営が続いており、前年度決算では、5億円を超える赤字になりました。  これは、利用者が減ったからといって、私たちが安心・安全に電車に乗るための設備の維持や更新の費用を減らせないことが主な要因です。  2017年(平成29年)、「今後の近江鉄道単独の経営努力による鉄道事業の存続は困難である」との新聞報道がありました。これを受けて滋賀県と沿線の5市5町では、現状の把握や将来予想される課題、代替えになる交通手段の検討などさまざまな議論を重ねてきました。  昨年11月には、教育、福祉の関係者や学識者も加わり、国の助言や支援を得ながら近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会(以下「法定協議会」という。)を立ち上げ、より踏み込んだ議論を始めました。今年3月25日に開催された第2回法定協議会では、全会一致で「近江鉄道全線を存続する」ことを確認しました。  今後、超高齢社会や人口減少がさらに進む中、市民の皆さんの暮らしにこれまで以上に欠かせないものとなる近江鉄道を守っていくために、県や各市町がどのように責任を果たしていくのか、また、それぞれのまちづくりに近江鉄道をどのように活用していくのかという具体的で重要な議論を重ねています。 ■今回の特集記事発行に当たり、メッセージを頂きました!  近江鉄道株式会社 代表取締役社長 飯田則昭さん  地域のみなさまとともに  東近江市民のみなさま、日ごろから近江鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。  近江鉄道線は、開業以来、当地における交通の一翼を担い、みなさまに安全に気持ちよくご利用いただけるよう努めてまいりました。  現在、コロナ禍の中で車両の消毒や駅への消毒液設置など、さらなる安全の確保に取り組んでおります。  ご覧いただいてお分かりいただけると思いますが、鉄道は車両も大きいですし、線路は一度敷くと簡単に付け外しができません。それだけ手のかかる設備ですが、逆に一度に多くのお客さまに乗っていただけ、高速で運転することができるという利点を持っています。この点を生かしてほかの交通手段とともに、よりよい形で地域のみなさまのお役に立ちたいと考えております。 ■〜乗って、知って、さらに考えます〜近江鉄道沿線フィールドワーク開催  駅を中心としたまちづくり 7月25日(土)と8月6日(木)の2日間にわたって、県知事や沿線の市町長をはじめ、法定協議会の委員による「近江鉄道沿線フィールドワーク(現地踏査)」が行われました。  これは、近江鉄道が運行する路線や駅の現状をはじめ、沿線市町が駅を中心に取り組んでいるまちづくりを実際に見聞きし、今後の法定協議会での議論をさらに深めることを目的としたものです。  両日とも50人近い参加があり、本市在住の鉄道フォトライターである辻良樹さん(佐野町)のガイドのもと、鉄道を生かした特色ある取組事例の紹介や、にぎわいの再生に取り組まれている地域住民の皆さんとさまざまな意見交換が行われました。  本市では、力を入れる八日市駅前を中心とした中心市街地活性化の事業や今年から取り組む観光と連携した太郎坊宮前駅周辺整備事業などを紹介しました。また、今年開駅120周年を迎える桜川駅では蒲生地区の皆さんによる近江鉄道を活用したこれまでのイベントなどの紹介、座談会では、近江鉄道の利用促進をテーマとするびわこ学院大学地域調査プロジェクトチームの学生から、大学最寄り駅の駅名変更や授業時間に合わせたダイヤ改正なども提案され、参加者から高い関心が寄せられていました。  ほかにも愛知川や豊郷、尼子、米原、日野、貴生川の各駅では市町長や団体の代表から駅を住民の交流の拠点として活用されている事例の紹介があり、近江鉄道の車両基地では担当社員から毎日の車両点検や整備状況の報告がありました。 ■近江鉄道とともにいつまでも安心して暮らせるまちに  滋賀県PTA連絡協議会会長 塚本晃弘さん(八日市町)  近江鉄道には、まちのにぎわいという視点と子どもたちを巻き込んだ地元愛を育む地域づくりといった視点での取り組みに期待しています。  そして、近江鉄道が私たち市民にとって、 「地域にある鉄道」から「地域に愛される鉄道」となり、近江鉄道を利用する気運が高まればと思っています。 ■9月4日(金)スタート! ワンコインで1日乗り放題近江鉄道全線乗車キャンペーン!  本市が中心となり、滋賀県や沿線市町とともに沿線住民の皆さんをはじめ、できるだけ多くの皆さんに広く近江鉄道を利用する機会を持っていただくため、一日に何度でも利用できる近江鉄道全線乗車キャンペーンを実施します。  お出かけの際には、ぜひ近江鉄道をご利用ください。  ●内容 近江鉄道線全線を1日何度でも利用できるきっぷを数量・期間限定で特別価格で販売します。  ●期間 令和2年9月4日(金)から11月3日(祝)までの毎週金・土・日曜日、祝日限定  ●対象者 近江鉄道を利用される人(市内外は問いません。)  ●金額 大人500円 (通常900円)、 小児100円 (通常450円)  ●購入場所 近江鉄道有人駅窓口および車内 ■学生の皆さん!定期券購入支援補助金の申請はお済みですか?  新型コロナウイルス感染症への市独自対策として、近江鉄道が運行する鉄道や路線バスを利用して通学する中学生以上の学生がいる世帯を対象に、学生一人5,000円分(最大10,000円)の三方よし商品券を交付する近江鉄道定期券購入支援補助金の受付を行っています。  まだ手続きがお済みでない対象の人は、9月30日(水)までに申請をしてください。  詳しくは、公共交通政策課まで問い合わせてください。 ■好評です!近江鉄道ミュージアム  「気軽に見る (歴史を楽しむ)、触れる(体験を楽しむ)、知る (沿線地域を楽しむ)」をコンセプトに、近江鉄道の魅力を体感できます。   時=10:00〜16:00(年中無休)   場=近江鉄道八日市駅2階(改札内)  ※入場無料。入場のみの場合は、八日市駅の改札で「ミュージアム記念入場券」をお受け取りください。 ■高校生活の楽しい思い出  八日市高等学校に通う3年生の皆さん 龍山 絢さん、山中千明さん、浦谷未雅さん  私たちは、高校への通学手段として、近江鉄道を利用しています。  ガチャコン、ガチャコンと揺れる電車の中は、いつも友達とのおしゃべりタイムです。  朝は「がんばってね〜」、部活帰りには「お疲れさま〜」と改札口で駅員さんから優しく声をかけられ、ホッと心が癒やされています。  きっとこれからも、近江鉄道を見るたびに楽しい高校時代を思い出すことができると思っています。 ■近江鉄道に乗ろう  例えば、近江鉄道沿線市町の住民約50万人が、年3回最短区間を往復乗車すれば、一年分の赤字を解消できる可能性があることを皆さんはご存知でしょうか。  現在、コロナ禍による移動自粛の中で全国の公共交通は、利用者が激減し、深刻な経営状況となっています。近江鉄道も例外ではありません。  私たちはこれまで、「赤字の改善は近江鉄道が考えること」、「近江鉄道がなくても自分にはマイカーがあるから大丈夫」と考えていなかったでしょうか。  統計では、2024年(令和6年)には、日本の人口の3人に1人が65歳以上になるという予測もあります。昨今の高齢者による痛ましい交通事故のニュースを見聞きすると、私たちはマイカーに頼りすぎない、鉄道をはじめとする公共交通を利用した生活を考える時期を迎えています。  本市では、これからも公共交通を軸とした住みよいまちづくりを進めていきます。ぜひ、毎日の暮らしの中で「近江鉄道がもっとこうなればいいのに」という皆さんの思いをお寄せください。  皆さんの思いの積み重ねがよりよい形で近江鉄道を将来世代につないでいくための大きな支援になります。  一人でも多く、そして一度でも多く近江鉄道を利用してください。私たちが行動を考え変えることで、将来の東近江市を支える子や孫の世代に近江鉄道をよりよい形で存続させ、まちの発展につなげることができます。皆さんの行動で未来に「ガチャコン」をつないでいきましょう。  問=公共交通政策課   IP=050‐5801‐5658   ファクス=0748‐24‐1249 (取材:広報課 片山晴紀)