■新春対談 中心市街地のにぎわい創出 小椋正清 昭和26年、旧永源寺町生まれ。同志社大学法学部を卒業後、滋賀県警察、外務省、滋賀県庁などを経て、平成25年に第3代東近江市長に就任(現在3期目)。住み心地の良さを実感できるクオリティの高いまちを目指し、まちづくりを推進中 村 潔 昭和27年、旧八日市市生まれ。青山学院大学卒業後、京都信用金庫勤務を経て、現在、株式会社シガ建装取締役会長。八日市ライオンズクラブ会長を務めるなど地域奉仕に勤しみ、社会福祉法人慈照会理事長として高齢者福祉に尽力。平成28年八日市商工会議所第11代会頭(現在2期目)、同年市中心市街地活性化協議会会長就任。地域の企業発展と活性化を目指し奮闘中 【市長】 明けましておめでとうございます。昨年はコロナ禍で大変な一年でしたが、市民の皆さんには、市政各般にわたりご理解とご協力を賜りましたことを心からお礼申し上げます。皆さんが健康で素晴らしい一年になりますよう、ご祈念申し上げます。 【村】 明けましておめでとうございます。商工会議所は、今年も皆さんのお役に立てますよう役職員一丸となって取り組んでまいります。本年もよろしくお願いいたします。 ■一年を振り返って −昨年はどのような一年だったか− 【市長】 コロナ禍への対応に終始した一年でしたが、医師会や医療関係者の皆さんの協力のおかげでワクチン接種が順調に進みました。大変厳しい状況ではありましたが、必要な施策は進めることができたと思っています。  今後も感染拡大に備えるとともに、落ち込んだ経済を支援するさまざまな施策を講じていきたいと考えています。 【村】 社会経済に大きな影響があった中で、会員事業者を対象に行ったアンケート調査でも、「業績のマイナス幅は縮小しているが、コロナ禍以前と比較して、依然として低い水準にある」というものでした。  商工会議所では、相談窓口を増設し、広く情報を発信することで相談対応に努めてきました。非常事態とも言える状況で、地域の事業者の皆さんにしっかりと寄り添った活動こそが商工会議所の本分であると改めて認識しました。消費を喚起するための東近江市太子クーポンや雇用を守るための雇用維持支援金などは、大変有効であったと思っています。 ■自己完結能力のあるまちづくり −コロナ禍の状況を踏まえ、これからのまちづくりに必要なものは− 【市長】 東近江市で生まれて、過ごして、良い人生だったと言ってもらえるような質の高いまちを目指しています。その中核をなすのは、都市機能の充実・強化です。  現在、中心市街地の活性化を推進するとともに、市民の安全安心の観点から、医療政策の充実と子育て環境の整備に力を入れています。特化した診療科目を持つ市内の病院や診療所が横につながる「地域でつくる総合病院構想」を描いています。昨年10月には、がん治療の拠点となる蒲生医療センターがん診療棟を開設しました。これらの実現には、経済界との連携が極めて重要な要素になってくるため、今後もより一層連携を強化していきたいと思います。 【村】 私は日頃から「安心」が大きなキーワードになると考えています。コロナ禍で社会経済情勢が厳しい中、市長が先頭に立ってさまざまな支援策を展開されてきたことは、まさしく「安心」につながります。  商工会議所は、地域の商工業者の皆さんの意見や要望に真摯に耳を傾けながら、商工会議所の本分を全うすることで、皆さんに安心していただける存在でなければならないと思っています。  少子高齢化・人口減少が進む中、「健康経営」という視点が注目されています。これは、企業が従業員の健康を財産として捉え、健康課題に向き合うことで人材が定着し、企業の維持・発展につなげるものです。地域医療を守る各病院が手をつなぐ総合病院構想は、大変有効な施策であり、市民の皆さんが安心して暮らせる大きな支えになります。 ■中心市街地の活性化 −これまでの取組や今後の方向性について− 【市長】 11万3千人のまちには、楽しみがある、飲食ができる、買い物ができるワクワクするエリアが必要です。それが近江鉄道八日市駅周辺に広がる中心市街地です。  これまでホテルの誘致や延命新地の街なみ整備などの取組により、5年間で47の新規出店がありました。現在、官民連携で建設している14階建ての分譲マンションを含む複合ビルは、中心市街地のランドマークとして起爆剤になることを期待しています。  そのような中で、私が市長就任以来大切にしていることは、1市6町がそれぞれ積み重ねてきた歴史や文化、伝統です。これらの地域資源を磨き上げ、まちの活性化を図る必要があります。その上で、市民の皆さんが我がまちの核として誇りを持てる中心市街地を官と民が連携してつくり出していきたいと思います。 【村】 今年は、中心市街地活性化基本計画の2期目が始まる年でもあります。その戦略は、交通結節点である近江鉄道八日市駅を中心とした商店街や延命新地などに、かつてのにぎわいを取り戻すことです。そして、行政ニュータウンや図書館などの公共施設周辺と結び付けることで、周辺地域へにぎわいを波及させ、「暮らしたい・訪れたい・商いしたいまちの創造」を目指すものです。  駅前の分譲マンションを含む複合ビルには、観光交流施設が計画されていることや商工会議所が同ビル内に移転することに伴い、人の往来や定住人口の増加が期待されます。現商工会議所会館は、大学のキャンパスとして生まれ変わる予定です。多くの学生が中心市街地に集まることで、新たなにぎわいが生まれることを大いに期待しています。 ■今後さらなる活性化に向けて −アフターコロナを見据え、今後の取組やまちづくりについて− 【村】 商工会議所では、小規模事業者の皆さんへの伴走型支援を軸に、「経営発達支援事業」を展開しています。これは、事業者の皆さんに寄り添い、課題解決を進めるものです。コロナ禍の影響で、事業者の皆さんは、さまざまな課題に直面しており、これまで以上に景気動向調査や経営状況の分析、販路開拓などに取り組み、支援を進めていきたいと考えています。  昨年は、近江鉄道線の将来像が法定協議会で協議され、三日月知事や小椋市長の強いリーダーシップのもと、存続を決定していただきました。近江鉄道線は中心市街地活性化の基盤と認識しており、大きな決断をしていただきました。このことを肝に銘じて、これからは皆さんと近江鉄道線を利用し、盛り上げていかなければなりません。 【市長】 今お話のあった近江鉄道線の維持存続と乗降客の増加は、喫緊の課題です。今後も市民の皆さんの協力をより一層呼びかけていきたいと思っています。  東近江市は、日本列島のほぼ中央に位置し、東西を分ける鈴鹿山脈から琵琶湖まで「森・里・川・湖」がつながる多様性のある自然の上に千年を超える歴史・文化資源が身近なところに数多くある全国でも稀な地域です。この極めて高い優位性をいかしたまちづくりを進め、昨年は、百済寺の木造十一面観音立像が国の重要文化財指定の答申を受けました。また、(仮称)黒丸スマートインターチェンジの整備事業が決定し、交通インフラや河川整備なども順調に進んでいます。  農業施策では、市内農業協同組合と連携して地域商社「株式会社東近江あぐりステーション」を平成30年に立ち上げ、農家の皆さんを応援しています。これまでの水稲中心から収益性の高い作物へ転換を図り、「儲かる農業」の実現に向けて取り組んでおり、地域商社の取扱量も増えてきています。  こういった多様性のハーモニーを奏でることができる本市の優位性をコントロールし、自己完結能力のあるまち、クオリティの高いまちを目指していきます。  これを最も実感していただけるのは、やはり文化・芸術、そしてスポーツの充実です。いつも文化のあふれる環境を整備することで、市全体としてのクオリティも向上します。市内には、図書館や体育館、グラウンドが7つずつあり、市民ホールも充実しています。このことを市民の皆さんに素晴らしいメリットだと認識していただきたいです。  今後も商工会議所、経済界と連携し、さらに磨きをかけていきたいと思っています。 ■誇りを持てるまちを目指して −市政に期待すること− 【村】 中心市街地では、新規店舗も増え、少しずつ人の流れが戻ってきたと感じています。商工会議所では、毎年「起業塾」を開催しており、創業意欲のある人の支援を行うとともに、空き店舗の活用に力を注いでいかなければと思います。  交通インフラでは、近江鉄道線のほか、(仮称)黒丸スマートインターチェンジ、国道8号バイパス整備、名神名阪連絡道路、御河辺橋の架け替えなど、大きなプロジェクトが動きつつあります。この交通インフラをはじめ、さまざまなネットワークによって東近江市が一つになり、その中に医療・福祉・教育・商業施設が適正に配置されています。市長の言葉をお借りすると、「自己完結能力のある、生き残っていけるまち」に一歩ずつ確実に動いている鼓動のようなものを私は感じています。  これからも行政と経済界が連携して進めていきたいと思いますので、ご支援とご協力をお願いします。 −市民の皆さんへメッセージ− 【市長】 市民の皆さんにお願いしたいことは、東近江市が本当に素晴らしいまちだと認識していただくことです。全国にこんなに素晴らしいまちはないと確信しています。  私には、「東近江市をこんなまちにしたい、こうすべきだ」という夢があります。その夢を持ち続け、夢に向かって一歩でも二歩でも進んで行く。この思いを皆さんと共有したいと思っています。  今年もコロナ禍で、厳しいこともあると思いますが、市民の皆さんとともに、市民生活や地域経済の回復・発展に向けて一生懸命頑張りますので、ご支援をお願いしたいと思います。どうか素晴らしい一年をお過ごしください。 ■新春対談の様子は、東近江スマイルネットで放送します。(15分番組) ◆1月1日(祝)午前7時30分、午後1時、午後6時 ◆1月2日(日)午前10時30分、午後3時30分、午後8時30分 ◆1月3日(月)午前7時30分、午後1時、午後6時 ※詳しくは、東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。