■特集 まちに飛び出す高校生〜若者の地域での実践〜  今月の特集記事は、情報発信や情報伝達に取り組んでいる八日市高等学校新聞部と滋賀学園高等学校メディア研究同好会の皆さんとの協同で進めてきました。若者のフレッシュな視点で事前打合せから取材・記事の作成。  そんな高校生ライターの記事をお楽しみください。  また、能登川高等学校、八日市南高等学校の皆さんが地域で活躍している様子も取材しましたので、紹介します。 ●東近江市発祥 ガリ版の文化を受け継ぐ  八日市高等学校新聞部・滋賀学園高等学校メディア研究同好会  ◆明治時代からの印刷技術  明治27年、本市蒲生岡本町出身の堀井新治郎父子は、謄写版、いわゆる「ガリ版」を発明しました。これは、エジソンが発明した簡易印刷機をもとにしたものであると考えられています。また、この発明は、明治期の印刷技術が大きく発展するきっかけとなりました。  その後、ガリ版は、官公庁や企業、教育現場などで幅広く活用され、学校のプリントなどもガリ版によるものが主流となりました。昭和50年頃までは、手書きの印刷物は、ほとんどがガリ版で印刷されたとのことです。  このように、ガリ版が広く普及した要因は、当時のほかの活版印刷は、書き入れた文字が反対を向いて印刷されるのに対して、ガリ版印刷は、書いた文字がそのまま写るという利便性によるものだと言われています。  ◆受け継がれる文化  ガリ版は、今でも多様な分野で使用されています。そんなガリ版文化を伝承していくため、平成20年に「新ガリ版ネットワーク」という組織が設立され、蒲生岡本町にあるガリ版伝承館を拠点に情報を発信しています。  また、新ガリ版ネットワークでは、不要になったガリ版の引き取りも行っており、毎年、多くの器材がガリ版伝承館に寄贈され、受け継がれています。  ガリ版は、文章などの印刷物だけでなく、芸術作品にも使用されています。絵本や絵画、世界地図のような大作まで世代や分野を問わず、幅広く活躍しています。  ◆文化を語り継ぐ  ガリ版文化の伝承に貢献しているガリ版伝承館では、ガリ版で作られた印刷物やガリ版に関する資料が保存展示されています。また、当時のガリ版以外の印刷文化についても情報発信されており、ガリ版について幅広い視野から理解を深めることができます。  取材当日は、ガリ版ネットワークの事務局長の田中浩さんにお話を伺うことができました。田中さんは、ここで語り部という役割も担っておられ、県内外から訪問者を受け入れ、ガリ版文化を後世に伝えるため精力的に活動されています。ガリ版について語る田中さんからは、ガリ版伝承に対する熱意が感じられました。  ◆新ガリ版ネットワーク事務局(連絡先)蒲生岡本町663(ガリ版伝承館内)IP=050-5802-2530(土・日曜日のみ)  ◆ガリ版印刷にチャレンジ!   下絵を描き、ロウ原紙に写し取る→先端が鉄でできた鉄筆で文字や絵を刻む→インクをつけてローラーを転がす→オリジナル年賀状の完成  ガリ版印刷を体験して・・・田中さんに丁寧に指導してもらいながら、ガリ版で年賀状を作ることができました。パソコンなどと違い、手書きで失敗できないところが難しかったです。  今はコピー機などですぐに印刷できますが、昔は、時間や労力を必要としたことを体感できました。  ◆取材を終えて  今回の取材を通して、私たちは、ガリ版について学ぶだけでなく、本市発祥の昔の印刷技術に触れることで、日々の活動への良い刺激も受けました。  実は、取材メンバーの半数以上は、ガリ版という名前すら知りませんでした。取材した者として、初めてガリ版に触れ、この文化を受け継ごうとする人の話を聞いたことを大切にし、多くの人に情報発信していきたいと思いました。  貴重な体験をありがとうございました。  【取材メンバー一同】 ●〜わがまちから交通事故をなくしたい〜交通安全の願いを込めハンドプレートを製作  能登川高等学校生徒会  12月21日、能登川高等学校生徒会メンバー13人・東近江警察署・市が協同で交通安全の啓発を行いました。  これは、自分たちが通う学校周辺が、「思いやりゾーン」(※)に指定されていることから、交通事故を少しでも減らしたいという生徒たちの思いが形になったものです。  市が提供したプレートに、生徒たちが交通安全の願いを込めたメッセージやイラストを絵具で描き、ハンドプレートを完成させました。  その後、製作したハンドプレート30枚とのぼり旗を掲げて、JR能登川駅の改札口前で啓発活動を行いました。生徒たちは、大きな声で「安全運転をお願いします」など、改札口から出てくる人に交通安全を呼びかけていました。  製作したハンドプレートは、東近江警察署に寄贈され、今後の交通安全啓発活動に活用されます。  生徒会長の森野椋太さんは、「ハンドプレートは、一つ一つ願いを込めて製作し、完成度の高いものができたと思います。啓発活動は、慣れないことで緊張したけど、積極的にみんなで取り組むことができました」と笑顔を見せました。  また、活動を共にした東近江警察署の山口智津子巡査長は、「若者ならではの発想で素晴らしいハンドプレートに仕上げてくれました。彼らの思いを継承し、これからも交通安全の啓発活動を進めていきます」と意気込みを語りました。  ※思いやりゾーン  滋賀県警察本部では、高齢者が関係する交通事故が予測される地域を「思いやりゾーン」に指定し、そのゾーンを中心に交通安全教育などを集中的に行っています。 ●〜高校生がメニューを考案〜自分たちが育てた食材を使用「八南レストラン」開店  八日市南高等学校  12月25日、26日の2日間、八日市南高等学校の生徒たちが運営する「八南レストラン」が八日市文化芸術会館内のカフェにオープンしました。  これは、食品流通を学ぶ生徒の実習成果を発表する場として平成22年から毎年開催するもの。メニュー考案から調理、提供まで全ての工程を生徒が行いました。12回目となった今回は、同校食品科の3年生12人が店員となり、学校の農場で育てた食材や地元産の食材を使った料理で来場者をもてなしました。  今年のメイン料理は、『梅しそつくね』。「全体的に優しい味付けでおいしい」、「普段、味噌が苦手だったけど、今日はおいしくいただけました」など、来場者からの高評価に生徒の顔にも笑みが浮かびます。  ホールを担当した寺田唯華さんは、「今日のために約1年間、旬の食材をどう使うか、みんなで考えてきました。お客さんから『おいしかったよ』と声を掛けてもらい、うれしかったと同時に安心しました」と思いを寄せました。  また、カフェスタッフの安藤望さんは、「この取組への熱意に加え、学校でマナー講座も受けられた皆さんなので、安心してお店を任すことができました」と高校生を温かく見守っていました。 ● 一人一人が輝けば地域が輝く  今回、高校生ライターの話を八日市高等学校新聞部の皆さんに呼びかけたところ、「昨年、先輩も経験したので、ぜひ参加したい」と快諾いただきました。高校生ライターに限らず、取材した高校生の皆さんは、自分の得意なことや興味のあることで、「地域を元気にできる、地域に貢献できる」と実感したのではないでしょうか。  こうした若者たちを応援できる仕組みや活躍の場作りが必要だと取材を通して感じました。そのために本市では、「一人一人が輝けば地域が輝く」という発想で、今後もさまざまな取組を展開していきたいと考えています。  問=広報課  IP=050‐5801‐5611  ファクス=0748‐24‐1457 (取材:広報課 片山晴紀) ◆高校生の活動は、フォトニュースでも紹介しています。