■里山へ行こう。 里山は、古くから人の暮らしに欠かせない森林資源を得るための場所でした。また、新緑から紅葉、落葉まで四季折々の風景の中をさまざまな野鳥や昆虫が飛び交い、ノウサギやキツネが走る里山は、四季の移ろいを感じられる憩いの場でもありました。里山は、人々の営みの中で適切に管理されていましたが、化石燃料の普及とともに人と里山の関係は失われていきました。その結果、「明るく、四季の変化に満ちた、人を受け入れる森」は、「暗く、うっそうとした、人を拒む森」へと大きく変化していきました。 ●里山を保全するための活動 昔ながらの親しみやすい里山が失われていくことに危機感を覚えた市民の皆さんが、仲間たちと共に里山保全活動を始めました。本市では、里山保全活動に取り組む団体を「にぎわい里山づくり団体」として認定し、活動を支援しています。これまでに28団体を認定しており、5年間の支援期間を過ぎても8割近くの団体が活動を継続していることから、東近江市民の里山保全に対する熱意を感じ取ることができます。 ●里山を守るひとびと インタビュー ◆梵ジュール里山保全クラブ  安部 春造 代表  蒲生岡本町にある梵釈寺の裏山で保全活動を続け、2021年に「梵ジュール里山保全クラブ」を立ち上げました。多様な動植物が生息・生育する里山の自然をいかした、四季折々のツアー開催や保全のために伐採した材木を薪にして販売することで、活動資金を得て、持続可能な保全活動を目指しています。  これからも多くの人に親しんでもらえるようなツアーを企画し、里山の魅力を伝えていきたいと思います。 ◆中野地区まちづくり協議会50年森整備班  谷口 和男 代表  東近江市福祉センターハートピアに隣接する里山「50年森」で活動しています。整備前の50年森は、木々がうっそうと生い茂り、大量のゴミが放棄された放置林でした。この森を子どもたちが遊べる森にしようと、10年前から環境整備に取り組んでいます。  身近な自然の中で遊ぶ子どもたちは、生き生きとした姿を見せてくれます。50年経ってもカブトムシに出会えるような森をみんなで残していきたいです。 ◆東近江さとやまNannies  モリコーニ 直美 代表  里山保育が広がることを目指し、2019年に発足した団体です。Nannyとは、英語で「乳母」という意味。市内の主婦を中心に現在23人のメンバーで、里山保育の下見やプログラムの作成を行うとともに動植物や危機管理などについて学んでいます。  自然に接することの楽しさや、そこから生まれる探求心、想像力。自然の中で時間を忘れ、夢中で過ごせる機会を子どもたちに贈りたいという思いで活動しています。 ●里山の魅力 家を出れば、ふと目に入る里山。さまざまな生き物や植物が息づき、私たちの暮らしに潤いを与えてくれる自然が、すぐそこにあります。 そんな里山の大きな魅力は、子どもから大人まで幅広い世代の人が、さまざまな形で関わり、その恵みを受けることができることにあります。今回は、現代における人と里山の関わり方の一部を紹介します。 ●人との関わりが、里山を元気に。 ◆里山に触れ、地域への愛着心を育む。 里山保育  本市は、幼稚園などを対象に、身近な自然の楽しさを体験することを通じて地域の自然が持つ価値を認識し、地域への愛着心を育む「里山保育」を平成27年度から実施しています。当初は1つの園で開始した取組も、7年目を迎えた今年度は、9つの幼稚園などに広がっています。 ◇VOICE 〜里山保育現場の声〜  子どもたちには、身近なよく知っている場所も、出かけた回数分だけ新たな発見があり、自然の中での出会いは感動と発見の連続です。また、園児らが、そういった瞬間を共有することで、より充実した経験を得られます。一方で自然には危険が潜んでいることも事実で、正しく知って、正しく恐れ、対処することが大切です。自ら考え・感じ・学び、さまざまなことを自らの力として吸収することができる里山保育。これからの生きる力の源となっていくことと思います。 永源寺もみじ幼児園 園長 野田 克子 ◆さまざまな世代が、里山を歩いて楽しむ トレイル  「トレイル」という言葉をご存じでしょうか。英語で“Trail”森林や里山にある「歩くための道」を指す言葉です。  こうした道を旅をするように歩くことで、これまで見えなかった風景や歴史、文化をじっくりと感じとることができ、さまざまな自然との出会いもあります。旅をする中では、人との触れ合いもまた魅力。地元の人との触れ合いやともにトレイルを歩く仲間同士の絆も生まれます。 ◇東近江トレイルツアー  東近江トレイル実行委員会が開催する繖山と箕作山を舞台としたトレイルツアー。自然だけでなく、豊富な歴史文化遺産にも触れられ、ガイドによる心のこもった説明に時間を忘れて歩くことができると好評です。毎年春・秋ごろに開催。 問=東近江トレイル実行委員会 電話=0748-48-7303 ◆里山保全を越えてつながりに気付く 川とのつながり  遊林会は、本市里山保全活動団体のパイオニア的存在。長年にわたり里山で自然体験や環境学習の場を提供する中で、森と川のつながりに気付き、令和2年から「川ガキ育成塾」を開塾。日が暮れるまで川と戯れる元気な子どもたちを、親しみを込めて「川ガキ」と呼び、川で遊び、川の自然を再生する取組です。人と里山、川とのつながりを感じ、その川を育む鈴鹿の山々へと思いを馳せる人を育成します。 ◇NPO法人里山保全活動団体遊林会  1998年から愛知川河辺林にある「河辺いきものの森」で、里山の保全を目的に活動している市民団体。  河辺いきものの森の運営にも携わっており、環境学習の受け入れや、女性や親子を対象としたエコツアーなども開催。 問=遊林会 電話=0748-20-5211 ●人が関わってこその里山 人と自然の関わりが途絶え、かつての豊かな里山の風景は失われていきました。現在、多くの団体が里山保全活動に取り組んでいますが、私たちにも里山のためにできることがあります。それは、近くの里山に出かけ、自然の恵みを感じたり、楽しんだりすることです。  四季折々の草木花は、見るものの心を魅了し、季節の移ろいを五感で感じさせてくれます。このような暮らしは、自然の乏しい地域では望んでも実現できません。  本市には、鈴鹿の山々から琵琶湖まで「森・里・川・湖」がつながる多様性のある自然があります。その自然にいざなう入り口となるものが、私たちの暮らしに身近な里山であると言えます。  まずは里山に関心を持ち、足を踏み締めてみることで、本市の多様な自然に関わるきっかけになるのではないでしょうか。 問=環境政策課里山活用推進室 IP=050‐5802‐9542 ファクス=0748‐24‐5692