■記号は、対=対象 問=問合せ IP=IP電話 時=日時 場=場所 申=申込み 自然と向き合い、価値を磨く。 共に生きるために。 株式会社モンベル代表取締役会長 辰野 勇 東近江市長 小椋正清 新春対談2023 Nature×Higashiomi 森里川湖の恵みをいかした地域創生 【市長】あけましておめでとうございます。昨年は東近江市政に対して深いご理解とご協力を賜りましたことを心からお礼を申し上げます。依然として厳しいコロナ禍ではありますが、今年も頑張りますのでよろしくお願いします。 【辰野】あけましておめでとうございます。新春にこうして市長と対談させていただくことは、非常に名誉なことです。今日は楽しみにしております。 一年を振り返って  -昨年はどのような一年だったか 【市長】大変厳しい年でしたね。コロナ禍が続く中、ウクライナ問題であらゆる物価が高騰しました。市として本当に困っている人をどう支援するか大変苦慮しました。  一方で、夏の聖徳まつりを皮切りに、ジャズフェスや秋まつりなど、長い間我慢してきたイベントが開催され、経済活動や、市民活動を取り戻す兆しが見えた一年でした。 【辰野】我々もコロナやウクライナ問題、そして円安の影響を大きく受けました。  一方で、東近江市の素晴らしい自然環境の中で、3年ぶりにSEA TO SUMMITを開催することができました。これは、琵琶湖から鈴鹿山脈の頂上まで登る環境イベントですが、本当に多くの人が楽しみにされていて、「参加して良かった」という声をたくさん聞いてます。また、年末には東近江市と包括連携協定を結ばせていただきました。東近江市の豊かな自然環境を活用しながら、何らかのお手伝いができることを楽しみにしています。 【市長】3年ぶりのSEA TO SUMMITに私も参加し、本当に感激しました。昨年は竜ヶ岳という標高1000メートル余りの山に登りました。辰野会長は、強風が吹く頂上で横笛を吹かれていましたね。最初は雲に隠れて見えなかった景色も、途中から雲が晴れ、素晴らしい眺望でした。 東近江市の豊かな自然について -自然がもつ魅力や可能性とは 【市長】鈴鹿山脈は、日本を東西に分ける大きな分水嶺です。上質な軟水が地下に浸み込んでいるので水の味が良い。したがっておいしいお米やお酒、近江牛といった食の文化があります。さらに、雄大な自然の中に森・里・川・湖を有する多様性こそ東近江市の大きな魅力です。  そして、本市には多くの森林資源があります。木は、建築資材や燃料になり、最終的に土に還り、その土が次の木を育てるという究極の循環型資源です。  また、自然が人間の心身に与える影響や自然とともに生きるということの重要性を辰野さんとのお話の中で勉強させていただきました。そういう効果を本市の里山保育や小学校の環境学習に反映していきたいと思っています。 【辰野】東近江市の大きな特徴は、市町合併によって琵琶湖から鈴鹿山脈まで、一つの大きな自治体として完結していることです。  私は、「エコツーリズム」とは「人ツーリズム」だと考えています。我々アウトドア愛好家にとっては、市外からお邪魔したときに地元の人がどう受け入れてくれるかが重要です。美しい自然は日本各地にありますが、そこに人がいて、営みがあって、初めて山の価値が問われます。登山道も人間の手を入れないと維持できません。その点、この間の竜ヶ岳は、大雨が降ってもうまく排水して崩れない登山道になっていました。その場にある材木や石を使ってメンテナンスするといった地元の皆さんの工夫を凝らした工法には感動しましたね。そういう知恵やノウハウを全国に紹介していきたいです。 ■SEA TO SUMMIT  人力で、海・湖(カヤック)から里(自転車)、そして山頂(登山)を目指す中で、自然の循環に思いを巡らせ、かけがえのない自然について考えようという環境スポーツイベント。令和4年は全国11カ所で開催されました。 包括連携協定を締結 -自然の魅力を磨き上げる取組 【市長】平成27年に「森と水政策課」を新設し、本市の豊かな自然や文化の活用に向けて取り組んできました。森林政策として、一次産業としての林業の展望や対策を森林組合や県などと連携しながら進めています。森林を手入れすることで、木が根を張って保水力を高め、土砂災害を防ぎます。そして育てた木で収益を得るという、活用と保全の両面からしっかりと政策を推進していきたいと考えています。難しい事業ですが、市が率先して進めてきた自負心はあります。  また、昨年10月には、市全体をエコツーリズムの対象とする全体構想が国からの認定を受けました。まだまだ時間はかかりますが、しっかり具体的な政策を推進していきたいと考えています。 【辰野】エコツーリズムの定義は難しく、「エコ」は環境省、「ツーリズム」は国土交通省という相いれない問題を一つのテーマとして掲げているわけです。開発か自然保全か。自然環境を考慮しながらうまく取り組んでいかないと、持続性がないと考えています。  このような中で、我々は「ジャパンエコトラック」という、カヌーや自転車、ウォーキング、登山で日本国中を旅する仕組みを作り上げ、全国に推進しています。また、登山道やトイレといった整備情報を全国に110万人いるモンベル会員の皆さんに発信し、普及していくサポートができればと考えています。これだけ大きな湖があって、山があって、文化があって、原風景が残る場所は、日本中探してもありません。ぜひ、発信していくお手伝いがしたいです。 −昨年には東近江市と包括連携協定も結ばれましたね。 【辰野】我々モンベルは、アウトドア事業を通じて社会に貢献していくことを考えた結果、7つの連携事業に行きつきました(※8ページ参照)。これらは、21世紀の大きなテーマになるのではないかと考えています。これまで10の県、90を超える市町村、さらに企業、大学など多分野にわたり結んできた包括連携協定がやがて点と点ではなく面で広がっていくと期待しています。その中で、行政は一番重要な役割を果たし、ネットワークの中核になると思っています。民間だけでは進められないことも、行政と力を合わせることで、実現していく。特に、自治体が実際に汗を流して、アクションを起こす役割になるわけですから、そこに一番期待しています。 −アウトドアには自然ならではの危険もあります。自然との向き合い方をどう考えますか。 【市長】昨年夏には、愛知川の上流で、大雨による水難事故が続きました。もちろん行政は、防災あるいは危機管理上の観点から最悪の事態を予測し、さまざまな防災対策や避難のあり方を計画立てて指導します。しかし、突然の出来事に人はパニックに陥って冷静に判断ができなくなる。だから山や川を楽しまれる人は、ぜひとも最悪の場面をイメージしておいていただきたいと思います。二度とこのような被害が出ないよう、さまざまな観点から対策を講じていきたいと考えています。 【辰野】確かに自然の危険というのは、一人一人が認識しないといけません。自分の身は自分で守るということがまず一番です。  次に大切なのは、助け合いです。 私は、阪神淡路大震災と東日本大震災のときには被災地にトラックで乗り込み、けが人を救出したり、救援物資を運び込んだりしました。これは、人間として当然のことをしただけで、皆で協力し合えばより大きな力で援助できるということにつながったわけです。包括連携協定を結んだことで、何か有事が起こったとき、モンベルだけでなく、協定を結んだ仲間と一緒に協力していけると思います。 これからのまちづくりに向けて -自然と共生し質の高いくらしを 【市長】今の世界情勢やコロナの状況を見ていると、大きな価値観の変化が起こっていると思っています。昔はお金持ちが豊かで幸せだという認識がありましたが、その価値観はこの数年で変わってきたと感じています。次の豊かさとは一体何かと考えたとき、まず第一にその日々の暮らしが安全安心であること。その過程で重要な要素は、自然系だと考えています。  森・里・川・湖という多様性を有する本市は、まさにその豊かさの価値観を転換して、次の世代、次の時代に提供すべき土壌が十分ある、そんなまちです。そういう意味でも今回の包括連携協定は、大変大きな価値があると思っています。そして、量より質の高さを求め、本物の自然に触れることに価値を置き、実体験が出来る豊かさというものをこれから目指していきます。 【辰野】75歳になって振り返ってみると「人生」とは、「生きる」とは、「自分の居場所探しの旅」ではないかという気がします。私は子どもの頃は勉強ができず、学校ではなかなか居場所がありませんでしたが、なぜか山に行くとフッと救われました。それが自分の居場所として、これまでずっと続いてきたような気がします。山の上から都会の景色を見ると、ちっぽけなことに結構悩んでいたんだなあと思うことがあるわけです。  たまに空を見上げてみるとか、雲を見てみるとか、そういう機会を作る。そういう意味で、東近江市にはその全てがあります。そういう素晴らしいまちで生まれ育って生活していることに気付いていただき、また来訪者にもそれを共有して、心を解き放っていただく場にしていきたいと思っています。 最後に -市民の皆さんへメッセージ 【辰野】自然環境をいかした、また、アウトドアをいかしたまちづくりを推進されていく中で、我々がお手伝いさせていただけることを一生懸命見つけて、モンベルと包括連携協定を結んで良かったと思ってもらえる年にしたいと思っています。 【市長】ここ数年は、やりたいこと、やるべきことが大変多く、滞っている感がありますが、コロナの収束が見えてきたら、猛烈にダッシュしたいと思っています。「東近江市で生まれ育って良い人生を送っている」と言ってもらえる、質が高く居心地のいいまちを作りたいと思っています。今年もどうぞよろしくお願いします。 ■辰野 勇(たつの いさむ) 国内有数のアウトドア総合メーカー株式会社モンベル(mont-bell)の創業者であり会長。約4,500点の製品の開発・製造を手がける一方、災害時の被災地支援や環境保全、エコツーリズムを通じた地域活性化など、幅広く社会貢献に取り組んでいる。 ■小椋正清(おぐら まさきよ) 昭和26年、旧永源寺町生まれ。同志社大学法学部を卒業後、滋賀県警察、外務省、滋賀県庁などを経て、平成25年に第3代東近江市長に就任(現在3期目)。住み心地の良さを実感できるクオリティの高いまちを目指し、まちづくりを推進している。 新春対談の様子は、東近江スマイルネットで放送します。(15分番組) 1月1日(祝)午前8時、正午、午後6時 1月2日(休)午前8時、正午、午後6時 1月3日(火)午前8時、正午、午後6時 ※詳しくは、東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。