中村市長が描く   東近江市まちづくり 初代東近江市長に当選しました中村功一市長に市政に対する基本姿勢などについてインタビューしました。聞き手は、ニュースキャスターとして活躍中のますみさんです。   7万9千市民のかじ取り役として 向 このたびは、ご当選おめでとうございます。初代東近江市長として当選を果たされました今のお気持ちをお聞かせください。 市長 市民のみなさんの温かいご支持により当選させていただきました。本当にありがとうございます。 旧1市4町ががんばって、この合併にこぎつけることができました。首長さん、議員のみなさん、そして住民のみなさんが本当に理解をしてくださった、そのおかげだと思っています。 緊張感を持って、これからの仕事に取り組んでいきたいと思っています。 向 さて、、中村市長はどのような基本姿勢で市政に臨んでいきたいとお考えですか。 市長 政治家として、まちづくりに対する気持ちは、どこまでも清潔でありたいし、誠実、公正にやりたいと思っています。そして、市民のみなさんの声に耳を傾け、みなさんとスクラムを組んでまちづくりを進めたいと思っています。  また、1市4町のみなさんの思いの集大成というべき「新市まちづくり計画」をつくり上げてきましたから、それを具体化して実行するのが私の仕事だと思っています。 向 東近江市は1市4町が合併したわけですが、今後最も大切なことは、各地域の垣根を取り払って融和を図っていくということだと思うのですが。 市長 そうですね。これまで日本の市町村は、それぞれが何度か合併を繰り返して現在に至っていますけれども、いまだに地域意識というものが根強く残っていますね。 私は旧市町の意識というものの垣根を低くして、みんな同じ市民だという意識の高揚が必要だと考えています。「おらがまち」、「おらが村」ばかり言っていたら、なかなか一体的なまちづくりができません。少し時間はかかりますが、このことが一番大事なことではないかと思っています。  もちろん、地域固有のすばらしい文化や蓄積された歴史遺産もあるわけですから、それは大切にしながら、みんなで新しい東近江市をつくっていく。7万9千人が力を合わせたいですね。そのた めにも、行政のかじ取り役としての私の責任は大きいと思っています。 向 融和を図っていくための事業は、何かお考えですか。 市長 具体的にはこれからですが、全市的な交流イベントや情報の共有などを通して、早く一体感をもってもらえるような取り組みを進めたいと思っています。 健全な財政運営 向それでは、合併特例債の活用を含めて、東近江市のまちづくりについてはいかがでしょうか。 市長 財政的に厳しい環境にありますので、特例債を有効に活用したいと考えています。しかし、それを限度いっぱい使ってはダメですね。後世の人に負担として重くのしかかってくるわけですから、そのことを十分考えなければいけません。 ただ、下水道や道路などの公共事業について言えば、後年に利用する人がその恩恵を受けるわけですから、ある程度の後年度の負担は仕方ありませんが、不要不急のものはできるだけ避けて、健全財政を維持していきたいと思っています。 向 市民のみなさんにも関心があるかと思いますが、ケーブルテレビの活用については、どのようにお考えでしょうか。 市長 市の人口が、今で言えば7万9千人、能登川町と蒲生町が加われば12万人近くになるので、一体感のある市民意識を醸成(じょうせい)するには、同じ情報を共有するということは大事なことです。 そのためにケーブルテレビの効果は大きいと思っています。 向 行政改革についてのお考えはいかがでしょうか。 市長 行政改革は、不断の努力が必要です。今何が必要なのかを見極め、効率的な予算の使い方をしなくてはなりません。 また、職員の削減計画を立て、これを着実に実行し、合併の効果をあげていきたいと思っています。初登庁の日にも、職員に職場での身近な改革から取り組むよう指示いたしました。 多様な価値と活気あるまちづくり 向 東近江市の将来像については、どのようにお考えですか。 市長 関西と中部圏との接点になるのが、この東近江市だと思っています。今、三重県境となる国道421号の峠のトンネル化など道路整備が進んできていますが、その道路の延長線上に東近江市があって、将来の市域は琵琶湖畔の能登川町 まで到達することになるのです。 そうしたことを考えますと、これからのまちの可能性というのは、非常に大きくて多様な価値が出てくると思います。  さらに、琵琶湖京阪奈鉄道計画というのがあって、米原からこの東近江市を通って、信楽から大阪方面へとアクセスできることになります。 こういった計画が具体的になってくれば、この地域全体のポテンシャルが上がり、将来に大きな夢が持てると期待しています。 向 活気あるまちづくりのためには、観光というのも一つのポイントになってくるかと思うのですが、観光対策についてはいかがですか。 市長 観光というのは、まちづくりの大きな素材だと思います。 合併により、観光の素材は随分豊富になりました。例えば、永源寺や湖東三山がありますし、それから探検の殿堂、五個荘は近江商人発祥の地として風格のある町並みの景観など、すばらしいものがありますね。 また、八日市は「大凧と緑のまち」、あるいは江州音頭の発祥の地と言われてきましたし、昔から街道文化の栄えた土地柄ですから、御代参街道や八風街道という道の歴史・文化が漂っています。   そういう素材を組み合わせ、うまく情報発信をして全国からも、あるいは外国からも来ていただけるような努力をしていかなければなりませんね。 向 それでは、市民のみなさんの生活に大きな関わりを持つ都市基盤整備については、どのようにお考えですか。 市長 やはり、道路や排水ですね。下水道はずいぶん整備されましたが、道路整備あるいは排水対策、それから愛知川の橋の新設、三重県境の道路整備、これが非常に大事だと思います。  また、愛知川流域全体の農業用水の確保も重要な課題です。 これまでの第2ダム建設計画についても、さらに検討を加えていただいておりますが、市域にある穀倉地帯をうるおす農業用水が非常に不安定な状態にあります。水の確保という点では、基盤整備と言えるのではないでしょうか。 向そのほかに活気あるまちづくりということで取り組んでいきたいことは何かお考えですか。 市長 周辺の農村地域の元気を回復すること、それから中心市街地の活性化なども大事なことで、真剣に取り組まなければならない課題だと思っています。 雇用対策にも力を入れていきたいと考えています。 企業誘致に一段と力を入れ、立地企業向けの優遇制度など条件整備を行っていきたいと思っています。 能登川町と蒲生町が加わるまちづくり 向 来年1月に予定されています能登川・蒲生両町との合併についての意義と今後の進め方についてはどのようにお考えでしょうか。 市長 この3月1日に、法定協議会を立ち上げまして、両町と東近江市が、どのような形でまちをつくっていこうかという議論を始めました。 もちろん、それまでにも任意協議会で十分話し合ってきました。その上に立っての協議でありますから、比較的スムーズにいくのではないかと期待しております。  そして、両町とも、これまで一部事務組合や広域行政の事業を一緒に進めてきた仲間ですので、まちづくりについて特に大きな変化があるとは考えておりませんし、議論が大きくかみ合わないといった事態は起こらないものと思っています。 住んでよかったと実感できるまちに 向 いろいろなお話を聞かせていただきましたが、まず取り組みたいことは何でしょうか。 市長 市民のみなさんが集う場所、あるいは、NPOやボランティアの方々に活動の拠点にしていただけるような施設、簡単に言えば、従来の市民会館に市民のみなさんが活動しやすい機能を持ち合わせた「市民活動拠点施設」とでも言いましょうか、そういった施設 を早くつくり上げたいと思っています。 県立の文化芸術会館がありますが、その利用も含めて早く手がけたいと思っています。 向 さて、今日は市長の市政にかける思いをたくさん聞かせていただきましたが、最後に、市民のみなさんに一言お願いします。 市長 選挙期間中、山間部へ行きますと、高齢者の方が「ここは山村ですが、東近江市になっても放っておかないでくださいね」というお話がありました。何度かそういう言葉を耳にしておりましたが、私はそんな気持ちは毛頭ありませんの、ご安心ください。 どこに住んでおられようと、また、女性も男性も、障害をお持ちの方も健常者の方も、また赤ちゃんから高齢者まで、さまざまな人たちが、この新しい東近江市に住んで良かったなと、そんな思いを実感してもらえるような東近江市をめざしたいと思っておりますので、市政へのご理解、ご協力をいただきますよう、よろしくお願いします。 向 市長の手腕に期待をいたしまして、今後の東近江市の展開に注目してまいりたいと思います。市長、本日はどうもありがとうございました。 市長 どうもありがとうございました。 ※合併特例債=合併特例法に基づく、特別な財政支援。 この記事は、3月12日にびわ湖放送で放映された「初代東近江市長が語る」の番組内容を基に、広報紙用に編集したものです。 プロフィール 中村 功一 市長  滋賀県神愛高等学校卒。滋賀県農林部長、政策監を経て八日市市助役に就任。平成6年に八日市市長に当選後、3期を務め、先の東近江市長選挙で初当選。趣味はウォ−キングと家庭園芸。 向(むかい) ますみ さん  キャスター。京都橘女子大学卒。三重県在住。テレビの情報番組などキャスターとして活躍中。CMにも出演。趣味はジャズダンス・英会話・編み物など。 市民が望む 夢いっぱいの東近江市 村松弘章(むらまつひろあき)さん(林田町)  安心、安全に暮らせる情報をすべて詰め込んだ市民手帳を作ってはどうですか。みんなが名前や連絡先を書いて、いつも持っていれば、もっといいまちになりますよ。 小坂ますみさん(山上町)  観光ボランティアガイドをしています。観光客の案内だけでなく、地域の若い人や子どもたちにも、地元の良いところを知ってもらえるような学習の機会があればと思いますし、そのような場が与えられることを願っています。 小杉佳正(こすぎよしまさ)さん(五個荘竜田町)  同じ市内でも、地域によって高齢者の比率などが異なり、実情は様々です。 多様化するニーズに応じた事業、特に、介護予防に力を入れてもらい、いつまでも元気で健康に暮らせるまちづくりを願っています。 真野芳子(まのよしこ)さん(下中野町)  梨を作っています。うちは主人が亡くなってからは家族が手伝ってくれるので助かっていますが、多くの農園では後継者不足に悩み、農家数も減ってきています。後継者に悩む農家への支援対策に力を入れてほしいですね。 加藤彬仁(かとうあきひと)さん(横溝町)  高齢者から子どもまで、ふれあえるまちになってほしい。若者と地域社会とのつながりが離れているように思うので、地域を身近に感じて生活できるまちになってほしい。一方で、もっと若者の働く場所があればいいですね。