特集   平成19年度から新しい農業制度が始まります。 農業が変わる 農業を変える 問い合わせ 市農林振興課 電話0748−24−5660 平成19年度から新しい農業制度が始まります。 この制度の大きなポイントは、助成金などの支援を受けられる対象が、すべての農業者から、「担い手」と呼ばれる一定の基準を満たす農業者に限られることです。 今回は、東近江市の農業の現状と課題や制度の内容について紹介します。 東近江市の農業の現状と課題 有数の「農業都市」 本市は合併により、農家戸数・耕地面積・農業生産額が県下第一位となりました(グラフ@)。 これは、人口や面積などといった市の形態だけでなく、農業においても本市が滋賀県の中核を担う「農業都市」となったことを示すものです。 グラフ@ 農家戸数・耕地面積・農業生産額の県に占める割合(上位3市の占める割合) 資料:平成16年度農林水産統計・2005年農林業センサス 農家戸数  1位 東近江市5245戸(15.4) 2位 甲賀市3261戸(9.6) 3位 高島市2616戸(7.7) 耕地面積  1位 東近江市9460ha(16.5) 2位 甲賀市5833ha(10.2) 3位 高島市5228ha(9.1) 農業生産額  1位 東近江市118億円(17.1) 2位 甲賀市69億円(10.0) 3位 高島市60億円(8.7) 農業経営 本市の農業者および農家戸数は年々減少傾向にあります(グラフA)。 また、農業収入がある人の約65%が60歳以上と、農業者の高齢化が進み、後継者の育成が深刻な問題です。 さらに、米価の下落や米の生産調整などにより農業所得は減少し、農業経営は厳しくなっています。 グラフA 東近江市の農家戸数の推移 資料:2005年農林業センサスより 平成2年度 専業農家7438 兼業農家など294 農家戸数合計7732 平成7年度 専業農家6398 兼業農家など489 農家戸数合計6887 平成12年度 専業農家5978 兼業農家など353 農家戸数合計6331 平成17年度 専業農家4907 兼業農家など338 農家戸数合計5245 すべての農業者支援から「担い手」支援に 将来の農業を支える農業者の育成と確保のため、新しい制度では、一定の基準を満たす農業者を「担い手」(※)として支援を行います。 これまで、すべての農業者を対象としていた一律の支援制度が、今後は「担い手」を対象に重点的に支援する制度へと変わります。 今までと同じように農業をしていても、支援を受けられる人と受けられない人とに分かれます。 ※「担い手」とは 新しい制度で、重点的に支援を受けることができる農業者のこと。 担い手は大きく3つに分けられます。 @認定農業者A特定農業団体B一定の要件を満たす集落営農組織です。 それぞれ、経営面積など各種条件を満たすことが必要となります。 @認定農業者 農業経営に意欲と能力があると市が認定した「農業経営のスペシャリストをめざす」農業者(農家や法人)のことです。 支援を受けるには、次の条件などを満たすことが必要となります。 ●経営面積が4ヘクタール以上である ●米・麦・大豆・でんぷん原料用ばれいしょのいずれかを作付 ●農業経営改善計画(※)の作成 農業者は農業経営をどのように発展させ、改善していくのかなどの農業経営改善計画を作成します。 作成した計画が達成可能であるかなどを審査し、市が認定農業者として認定します。 ※農業経営改善計画とは 経営規模や生産方式などについて、今後5年後の目標や達成するための取り組みについて立てた計画のことです。 「もっと経営規模を大きくしたいなぁ」「農業生産のムダを省きたいなぁ」 本市の認定農業者数(平成18年1月現在) 合計227人 八日市46人 蒲生33人 永源寺14人 五個荘17人 能登川80人 愛東34人 湖東3人 A特定農業団体 農作業を農地の所有者から引き受け、まとめて利用し、経営規模の拡大や効率化などを図ることができると市が認定した団体です。 本市では、平成18年1月現在で32団体が認定を受けています。 B一定の要件を満たす集落営農組織 集落営農組織とは、集落などを単位に小規模の農家が集まって一緒に経営をする組織です。 例えば、地域ぐるみで統一された品種を用いた農地の有効利用、農業機械や施設の共同利用、農作業の共同化などに取り組みます。 一定の要件を満たす集落営農組織になるには、左図(図@)の条件などを満たすことが必要です。 図1 一定の要件を満たすためには・・・ 経理の一元化 主たる従事者の所得目標 農業生産法人化計画の作成 農用地の利用集積目標 規約の作成 「担い手」が受けられる支援とは では、「担い手」になると、どのような支援が受けられるのでしょうか。 新しい支援は、大きく2つに分けられます。 1つは「外国との生産条件格差を是正するための対策」(図A)、もう1つは、「収入変動の影響を緩和するための対策」(図B)によるものです。 「担い手」のみがこれらの支援を受けることができるのです。 この支援によって、高齢化・国際化に十分対応できる強い日本の農業や、将来の農業を支える農業者の経営基盤は大いに安定するものと期待されています。 ■外国との生産条件格差を是正するための対策(図A) 外国と比べ労働賃金や経営規模の違いから、輸入農作物と国内農産物の間に生じたコストの差額を補てんする対策です。 これまでは、すべての農業者が対象でしたが、平成19年度からは、「担い手」を対象として、その年と過去の生産実績に基づいた補てんを行うこととなります。 本市における補てんの対象は、米、麦、大豆、でんぷん原料用ばれいしょの4品目です。 図A 現在  すべての農業者  品目ごとに毎年の生産量と品質に基づいた補てん 平成19年度以降  「担い手」のみ 過去の生産実績に基づく補てん・毎年の生産量と品質に基づく補てん  ■収入変動の影響を緩和するための対策(図B) 農作物の価格下落などにより、農業収入が少なくなった場合に、減収の影響を少なくするための補てんです。 これまでの品目ごとの価格を基準とした補てんから、収入を基準とした補てんの仕組みへと変わります。 本市における補てんの対象は、米、麦、大豆、でんぷん原料用ばれいしょの4品目です。 図B 現在  すべての農業者  『各品目などに応じたそれぞれの制度による補てん』 平成19年度以降  「担い手」のみ 『基準収入(過去5年間のうち、収入額が最高と最低の年を除いた3年分の平均額)』合計1000万円(米700万円・麦200万円・大豆100万円) 『当該年の収入』合計900万円(米610万円・麦180万円・大豆110万円) 品目ごとの収入差額を合計 差額合計▲100万円(米の差額▲90万円・麦の差額20万円・大豆の差額10万円)×9割 『補てん金』100万円×9割=90万円 ●例えば−「基準収入」1,000万円の農業者が当該年の収入が900万円になった場合、100万円の収入が減りますが、90万円の補てんがされることになります。 ほかにもこんな支援があります 農業資源の保全を共同で 農地や農業用水路など農業資源の保全が今後の課題となっています。 また、農業者の高齢化による人材不足などにより、農業資源を維持管理することが困難になってきている状況です。 新しい制度では、水路の掃除や農道の補修など、農業資源の保全に向けた地域ぐるみによる共同活動の取り組みへも支援が行われます。 子どもたちに農業の大切さを伝えています 田植えや稲刈りなどの農業体験を通して収穫の喜びを味わったり、食べ物の大切さを学んだりしてもらおうと、子どもたちに農業の大切さを伝える取り組みを行っています。 読合堂町での田植え体験(昨年5月) 私たちは、地域ぐるみで こんな取り組みをしています。新制度に向けた取り組み タイトル『将来につながる組織に』 東市辺営農組合 組合長 中澤和義さん(市辺町) 2年前に営農組織を立ち上げ、新しい制度を活用しようと『特定農業団体』の認定に向けて手続きを進めています。 営農組織を立ち上げると加入者が少なくならないかと心配していましたが、現在では加入者も順調に増え喜んでいます。 また、将来に向けた作業の効率化やコスト削減のため、農業倉庫を建てたり機械を購入したりする取り組みも進めています。 規模の拡大により不作時のダメージも大きくなることなど心配はありますが、新しい制度を活用し、地域ぐるみで将来につながる組織にしていきたいと思っています。 タイトル『面積確保と法人化で強い基盤づくり』 特定農業団体「栗見新田営農組合」 組合長 いかごきよしさん(栗見新田町) 5年前、地域ぐるみで営農組織を立ち上げた後、地域農業の「担い手」として支援が受けられる『特定農業団体』をめざして取り組み、昨年12月に認定を受けました。 昭和40年代後半にライスセンターを集落内に建設するなど、先人が作業の共同化を進めてきたことでスムーズに組織化が図れたと思います。 今では105ヘクタールの経営面積を保有し、水稲の約80%で環境こだわり米の作付けに取り組んでいます。 今後は、離農者の農地も自分たちで引き受け、水稲の経営面積を国の基準まで増やすことで面積確保を図るほか、安定した経営とするため法人化に向け取り組んでいきたいと考えています。