特集 子どもを 『三守る(見守る)』ひとりにしないで!  近年、子どもが犠牲となる事件が多発し、毎日のように新聞やテレビなどで報道されています。本市においても、子どもを狙った不審者や変質者が跡を絶ちません。地域や学校、家庭などでは、子どもたちの安全を守るための取り組みが行われています。  今回は市内の不審者や変質者の状況や、地域などでの取り組みを紹介します。   狙われやすい下校時間帯  本市で把握している不審者や変質者の数は年々増加しています。平成17年度中に市に不審者などの報告があった件数は62件で、その内容を見ると、曜日別では授業がある月曜日から金曜日が多く、時間帯別では下校時が特に多くなっています。(下表参照)  また、夏休み中は不審者などの報告はなく、主に通学時の子どもたちが狙われていることが分かります。  不審者などの行為は、声かけが最も多く、具体的には「駅までの道を教えてほしい」などの誘いかけや突然怒鳴る・卑わいな言葉をかけるなどです。続いて「下半身の露出」や「つきまとい」などの事例が多く報告されています。  これらのことから、学校から自宅までの子どもたちだけになる時間帯が特に危険であることが分かります。 三つの守る 其の一 『地域』で守る  各地域では、子どもたちの安全を守るため、独自の取り組みが進んでいます。例えば、地域ボランティアによる通学路の見守りや声かけ、老人クラブによるパトロールなどの活動です。また、地域や企業の協力を得て市が設置している黄色の三角コーンでおなじみの「子ども110番事業」も、子どもたちが緊急時、安心して避難できる場所として被害の未然防止に効果を上げています。(下図参照)  緊急時、躊躇なく「こども110番の家」に駆け込めるよう、子どもたちがコーン設置のお宅を訪問したり、学校などでお互いの交流会を行うなど普段からコミュニケーションを図っています。実際に、不審者に後をつけられ怖くなって「こども110番の家」に飛び込み、保護してもらった事例もあります。地域で子どもたちを守るためには、身近なことから始めていくことが大切です。  例えば、「毎日の散歩を子どもたちの登下校時に、そしてできるだけ通学路を歩く」「いつもの花の水やりを登下校時の時間に合わせて行う」「地域の中で死角になりやすい場所を見やすくする」など、このような取り組みが、不審者が入りにくいまちをつくることにつながります。 三角コーンが目印だよ こども110番の家 小寺善雄さん(札の辻二丁目)  「こども110番の家」を引き受けるきっかけとなったのは、仕事で学校や子どもと接する機会が多く、いつも身近にいる子どもたちを危険から守ってあげたいという気持ちからでした。三角コーンを見て、子どもたちには安心感を、また大人には子どもを見守るという意識をもってもらえたらと思います。登下校時には、「おはよう」や「おかえり」などの声かけをして顔なじみになるよう心がけています。声かけを続けることで、子どもたちは下校途中にトイレを借りに来たり、落し物を見つけてどうしたらいいか相談に来てくれるようになりました。地域での積極的な声かけなどを通して、子どもたちが安心できるまちにしていきたいですね。いざというときは、すぐに駆け込んでおいで。黄色い三角コーンが目印だからね。 写真=通学路付近にある「こども110番の家」には、目印となる三角コーンが設置されています ちょっとアドバイス   東近江警察署生活安全課  まず第一に、子どもたちは大人が守るという責任感と自覚を持つことが必要です。そして、子どもをひとりにしないよう、学校や地域が連携し、「みんなの目」を子どもたちに集めることが重要です。子どもたちに、次のことを教えてください。 @一人では遊びません。 A知らない人には付いて行きません。 B連れて行かれそうになったら大きな声で助けを呼ぶ。 C「誰と」「どこで遊ぶか」「何時に帰るか」 おうちの人に言ってから出かける。 Dお友だちが連れて行かれそうになったら、大人にすぐ知らせる。 市内の「子ども110番事業」の状況(平成18年7月1日現在) こども110番の家(ハウス)1329か所 こども110番のくるま112台、バイク166台 こども110番のバス40台 三つの守る 其の二 『学校』で守る  地域だけでなく学校でも取り組みが進んでいます。前年度から新たに通学路の危険箇所や危険物の点検なども含めたパトロールを地域の人が行う「スクールガード」約1500人が、各校区で活動されています。また、県では元警察官によるスクールガードのリーダーを県下に8人配置し、各学校のスクールガードの指導や子どもたちの安全対策の支援を行っています。さらに、県下の各小学校区には各警察署長から委嘱された「子ども安全リーダー」が、通学路や公園などを巡回しています。一方、市では学校に不審者から身を守るための道具「さすまた」と、不審者の浸入などの異常事態を教職員から職員室に通報できる緊急通報装置を今年度中に全小学校に設置します。また、小学生全員に防犯ベルを配布・携帯させるとともに、中学生には学校に備え付けの防犯ベルを必要に応じて貸し出しています。そのほか、今年度は小学生を対象に、自ら身を守るために何ができるのかを考える学習会「CAPのワークショップ」を実施しています。 「CAP」とは・・・Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)の略で、子どもがさまざまな暴力(いじめ・虐待・誘拐・性暴力など)から、自分を守るために何ができるかを考える教育プログラムのこと。 地域との連携が大切ですね 愛東北小学校(百済寺本町)白石芳子 校長  本校では、PTAの協力を得て、通学路で家が途切れたり子どもが一人になったりするところや危険箇所、子どもSOSハウス(こども110番の家)などを載せた「校区安全マップ」を作成し、通学路の安全確保に取り組んでいます。また、「自分の子どもは自分で守る」という意識をより強く保護者にもっていただき、その上で地域の人たちの協力をお願いしていこうと、昨年12月に「子ども安全連携会議」を立ち上げました。これは、PTAはもとより、老人クラブや子ども安全リーダー、スクールガード、少年補導員、駐在所など約40人で構成されており、地域全体で安全に下校できる体制づくりに努めています。そのほか、通学路沿いにある企業や商店などにも下校見守り機関として協力を求め、子どもの安全確保の強化を図っています。子どもの安全を守るためには、やはり地域のいろんな立場のみなさんと連携を図っていくことが大切ですね。 写真=子どもたちが携帯している防犯ベル 写真=平成17年度から各学校区で始まった「スクールガード」による登下校時の見守り活動 三つの守る 其の三 『家庭』で守る  家庭は、子どもたちにとってどこよりも安心できる場所であり、家族は誰よりも信頼できる人であるべきです。この家族の愛情に包まれて子どもたちは命の尊さ、大切さを学びます。しかし、昨今の子どもを巻き込んだ事件を考えてみると、家族間のコミュニケーション不足が大きく影響していると思われることが多くあります。「悪い人には気をつけて」「知らない人から声をかけられたら返事をしないように」など、親の目線で子どもに話しかけていませんか。子どもにすれば、どのように気をつけるのか、また、知らない人は誰でもすべて不審者なのかと、人間不信になってしまいます。子どもに言い聞かすことも大切ですが、子どもの目線に合わせて親子で通学路や遊び場を実際に歩いて回り、危険なところはどこか、どうすればよいのか、お互いに話し合ってください。また、親が進んで近所の人と交流を図ることで、子どもも安心して地域の人とふれあうことにもつながります。夏休み中、子どもだけで行動する時間も増えます。「今日は誰とどこで遊ぶのか」「何時に帰るのか」など、親子で確認しあう習慣をつけ、子どもの行動を把握するようにしましょう。 だれにでも大きな声であいさつを 小林さん一家(五個荘河曲町)右から、伸行さん、圭佑さん(小4)、祐太さん(中2)、めぐみさん  家族で最も心がけていることは、あいさつです。あいさつがしっかりとできる子どもには、不審者も声を掛けにくいのではないかということもあり、子どもには知っている人にも知らない人にも、大きな声であいさつをするようにと言っています。また、以前は登下校で送り迎えをすることはありませんでしたが、ここ数年は毎朝、「気を付けて」と声を掛けて、子どもの姿が見えなくなるまで見送ったり、下校時に合わせて近くまで迎えに行ったりするようにしています。子どもが遊びに行くときには、行き先や帰宅時間を聞くのはもちろんですが、友達が遊びに来ているときも、「家の人に行き先や帰る時間を言ってきた?」と確認し、帰る時間が遅くならないように気を付けています。ほかにも、地域の行事に参加することで、お互いに顔見知りになるようにしています。そのため、家の近くでは、地域の人にも見守っていただいているので安心です。 大きな声で助けを呼びます  帰るときは、一人ではなくみんなで一緒に、あやしい人には注意しながら帰るようにしています。もし変な人に出会ったら、大きい声で助けを呼びます。「こども110番の家」も知っています。 情報の共有化による二次被害の防止  本市では、子どもが不審者や変質者の被害に遭った場合、迅速に情報収集を行い、警察や学校など関係機関に情報を提供し二次被害の防止を図っています。また、市民のみなさんにより早くその状況をお知らせするため、市のホームページへの掲載やコミュニティラジオ放送(FMひがしおうみ)などによる情報提供も行っています。  子どもを取り巻く環境が厳しい状況にさらされている今日、子どもを守る手段はやはり地域での防犯です。身近でできる活動を地域全体へ、そして市全体へと広げ、地域の宝である『子ども』をあらゆる角度から見守り、安心安全なまちにしていきましょう。  そのためには、市民みなさん一人ひとりの防犯に対する日ごろからの心がけと協力が何よりも大切です。地域・学校・家庭の三つの力で子どもを守りましょう。