特集 里山を元気にしよう 友達と夢中で拾い集めたドングリ 親子で朝早くから探しに出かけたカブトムシ 私たちの原風景ともいえる里山 いつの間にか、この里山が姿を消しています 里山に人や生き物のにぎわいを取り戻そう そんな『里山づくり』が始まりました 写真:建部北町の河辺林「河辺いきものの森」で里山の保全活動に取り組む「遊林会」のみなさん ◆里山は人や生き物が集う場所  豊かな自然の中でも、最も身近で、人や生き物がふれあえる場所、それが里山です。里山には、かつて生活に必要な「まき」や「しば」を採りに、多くの人が訪れました。市内には、平地や山のふもとに多いアカマツ林をはじめ、カブトムシが樹液を求めてやってくるクヌギ、ドングリが実るアベマキが茂る雑木林、竹林など様々な里山があります。樹木があるだけでなく、里山にはカマキリやバッタ、タマムシなどの昆虫が動き回り、カワセミやキツツキなど野鳥の声や音も聞こえます。また、キツネや野ウサギ、フクロウをはじめ、危険なヘビやスズメバチなど、多様な生き物が暮らしています。このように、里山は、動植物に関係なく生き物が集い、仲間として暮らす場所です。(左図参照) ◆人が離れ、消える里山  里山に人が訪れたころは、利用者が手入れをするなど、豊かな自然が守られてきました。しかし、生活の変化とともに「まき」や「しば」を採る必要がなくなると、里山から人は離れ、次第に荒廃が進みました。利用されなくなった里山は、動植物の姿がなくなるだけでなく、不法投棄や犯罪、獣害などが懸念される場所へと変わりました。以前のような自然豊かで人が訪れる里山は、その姿を消しつつあります。本市は、面積の約6割が山林で、里山にも恵まれています。将来に向けて、市の財産ともいうべき豊かな自然を残していくためにも、里山を守り育てていくことが必要です。 ◆里山に「にぎわい」を取り戻そう  そんな里山を守り、人と生き物のにぎわいを取り戻そうと、市内各地で市民による活動が始まっています。現在では、10団体以上が活動しています。活動の規模や内容は、毎月あるいは季節に応じて作業をする団体もあれば、人数は数人から数十人まで。作業も樹木や竹の伐採、下草刈り、落ち葉かき、炭焼きなど様々です。作業に取り組む市民は、仲間とともに汗を流し、里山を人が訪れる明るい場所に変えていきます。市内には、こうした団体による取り組みで、子どもたちが遊んだり、家族や友人と訪れたり、にぎわいが生まれた里山もあります。 元気な里山はこんなところ!!のイメージ図 めざすは『里山づくり』 ○里山を保全するだけでなく、活用します  保全した里山が、地域の人や子どもたちが訪れ、風景を楽しんだり、仲間と交流したり、体験学習ができる場になるよう活用します。 写真:愛東中学校の生徒が枝打ちや下草刈りを体験(市ヶ原町) ○にぎわいのある里山を増やします  里山を守ろうと人が集まることで「人のにぎわい」を、また保全活動により「生き物のにぎわい」を生み出します。 写真:市内にはキツネやクワガタに出会える里山もあります ◆県内で初めての『里山づくり』  本市では、市民とともに里山ににぎわいを取り戻すための本格的な取り組みを始めます。その柱となるのが、このほど制定した「にぎわい里山づくり条例」です。里山は、これまで法律で保全の対象ではなかったため、次々と開発が進み、その姿を消していきました。そのため全国には、里山の保全を目的とする条例を制定したところがあります。本市の条例は、里山の保全だけでなく、人と自然が結びつく場として活用する『里山づくり』を目的としたもので、県内では初めて、全国でも数例しかない条例です。市では、このような『里山づくり』をめざして、次の取り組みを進めていきます。 1.里山保全活動の支援  里山の保全と聞くと、「木を切らないこと」を想像する人が多いかもしれません。しかし、里山を守ることは、木を切ることから始まります。以前の里山は、「まき」や「しば」を採るため、木が切られたり、草が刈られたりして、明るい光が差し込んでいました。そのような里山には、草花が育ち、生き物が集まり、人が訪れます。一方で、保全作業が途切れてしまうと、木や草がすぐに里山を覆ってしまいます。里山を守るために最も大切なことは、保全活動を「続けること」です。そのため、市では継続して活動する市民団体などを対象に活動費用を助成します。すでに活動をしている団体だけでなく、これから活動しようとする団体も対象にして支援することで、市全体に活動を広げていきます。 2.守り育てたい里山の指定  市内には広大な里山があることから、団体の活動ですべての里山を守ることはできません。そこで、本市では将来に残すべき大切な里山を「守り育てたい里山」として指定します。里山は、土地の所有者が保全する必要がありますが、自ら保全できない場合もあります。指定を受けた里山の保全が困難な場合は、市が活動団体を紹介します。これにより、保全の人手を探す土地の所有者と活動場所を探す団体とが結びつき、大切な里山を守り育てることができます。 『里山の指定には、一定の条件がありますが、市民の提案を受けて指定することもできます。みなさんが指定を希望する里山があれば、ぜひご提案ください。』 3.里山の資源を有効活用  保全活動により生じた樹木などの活用にも取り組みます。伐採した樹木は、炭に加工したり、木工工作に利用したりできますが、使う量には限界があり、大半はそのまま山に放置されてしまいます。そこで、市全体で里山の資源が有効活用できるように、伐採した樹木を利用する「まきストーブ」などの器具の購入費用を助成します。 ◆『里山づくり』でまちを元気に  里山は、保全活動で美しくなると、活動に携わる人だけでなく、地域の人や子どもたちが集う交流の場としてもにぎわいます。このような『里山づくり』により、里山だけでなく、市全体を元気にすることができます。そして、地域の自然を自分たちで守り育てることは、まちづくりのひとつにもなります。「退職後に地域で活動がしたい」「仲間と汗を流したい」「親子で花を楽しんだり、昆虫を観察したい」など、きっかけはどんなことでも結構です。一度、好奇心を持って、近くの里山を訪れてみてください。仲間として暮らす動植物と一緒に、美しい四季を楽しむことができるはずです。人や生き物が集い、元気な声が響くことを楽しみに、里山はみなさんを待っています。 写真:五個荘・能登川両地区にまたがる繖山では、「きぬがさ山里山に親しむ会」のみなさんが里山の保全活動を続けています。 写真:蒲生幼稚園の子どもたちが、秋の里山でドングリ集めを楽しみました。(河辺いきものの森) コメント 写真:NPO法人 愛のまちエコ倶楽部 村山英志さん(東沖野二丁目)『みんなの力で、人が訪れる里山に』 「人が訪れる里山を取り戻そうと、昨年から里守隊(さとまもりたい)を結成し愛東地区で活動を始めました。腐葉土を取り除いたり、細い雑木を伐採する作業をしています。作業をする場所がたくさんあるため、活動する人数や回数を増やすことが必要です。ほかにも、里山の大切さを知ってもらおうと、中学生に作業を体験してもらったり、小学生のクラフト教室を開いたりしています。今後は、ほかの地域にも活動を広げるお手伝いができればと考えています。また、市内で活動する人たちと交流して、里山について学んだり、保全に必要な技術を高めたりできるといいですね。」 写真:野田さん家族(建部堺町)左上から右に、達也さん・美由紀さん・竜馬さん(小2)・あすかさん(小4) 『自然があるだけで楽しめる場所』 「 サークル活動で利用したことがきっかけで、河辺いきものの森を訪れるようになりました。家の近くにあり、自然があるだけで楽しめる場所です。冬には、家族で雪合戦や雪すべりを楽しんだり、キツネやウサギの足跡を見つけたりしたこともあります。子どもたちは、小さいころは、お弁当を持って出かけるのが楽しみでしたが、今では友達と遊びに行ったり、学校の授業で訪れたりするようになり、家族に遊んだことや見つけたことを話してくれます。里山は、歩くだけで四季が楽しめる気持ちのいいところです。市内にあるほかの里山にも、一度訪れてみたいと思っています。」 ※特集に掲載している動植物の写真は、すべて市内の里山で撮影したものです。 お問い合わせ先 花と緑の推進課(河辺いきものの森内)電話0748−20−5211 ※活動を始めたい人もお気軽にお問い合わせください。