特集 地産地消 食の恵みいただきます。  「あなたの食事に市内で採れた食材がどれだけありますか」「旬の食材は入っていますか」− 。いつでも、どこでもあらゆる食材が手に入り、味わうことができる「飽食の時代」。地域で育てられた食材を味わう機会は、以前と比べて少なくなりました。   そんな時代に、自分が暮らすところで育てられた「食」の恵みについて考え、その価値を再発見しようと、地産地消の取り組みが全国で広がっています。  今回は、本市でも本格的にスタートした農産物の地産地消の取り組みを、ご紹介します。 写真:直売所への野菜や果物の出荷に励む、川合寺町の南喜代さん(後列右)家族 ●豊富な食材を味わう  地産地消とは、地域で生産されたものを、その地域で消費することを言います。そして、そのことをきっかけとして、地産地消は、食べる立場や作る立場から地域の「食」の良さに気づいたり、地域の人と人とをつなげるなど幅広い効果をもたらす取り組みです。  生産されたものとは、野菜や果物をはじめ肉や魚など、素材をそのまま食べるものから、漬け物や佃煮などに加工したものまで広く意味します。  豊かな自然に恵まれ、農業が盛んな本市には、豊富な種類と量の農産物があります(図参照)。  では、それらのものを市内で消費することが、なぜ必要なのでしょうか。 ●高まる「食」への関心  私たちの「食」は、流通網が整うにつれて、国内だけでなく世界各地からの食材が、いつでもどこでも手に入る便利な時代になりました。そのため、消費者と生産者の距離が広がり、購入時に産地などが分からず安全性に不安を感じたり、野菜や果物の旬を知らないという人が増えています。  また、日本で消費される食料が国内で生産されている割合は約40%。残りの60%は外国からの輸入ということになり、農業が盛んな滋賀県でも50%は輸入に頼っているのが現状です。  地域の食材を使うなど、給食で地産地消の取り組みが進む市内の小中学校の保護者を対象にしたアンケートでは、野菜や果物を購入するときに、旬や安全性、産地や生産者で選ぶと答えた人が58%。また、地域で採れた野菜や果物が並ぶ直売所を利用する人の割合も65%と地域の農産物への関心が高いことが分かります(グラフ@A)。 ◇グラフ@ 「野菜や果物を選ぶ基準」  項目:価格26.1%、旬19.8%、安全性19.0%、産地16.8%、色・形11.3%、生産者1.9%、そのほか5.1% ◇グラフA 「直売所を利用する人の割合」  項目:ときどき利用する54.2%、よく利用する10.9%、利用しない31.5%、そのほか3.4% ●地域にある「食」の良さ  地産地消が進むと、消費者と生産者の距離が縮まり、双方がつながることで、地域の農産物の消費と生産が高まります。  また、自分が暮らす風土や気候を感じながら食材を育てたり、味わったりすることは、地域にある「食」の良さに気づくきっかけにもなります。  地産地消には、いくつかのかたちがありますが、最も身近で、地域の農産物の良さを実感できるのが市内にある直売所です。直売所での地産地消が私たちの暮らしにもたらすものは、次のとおりです。 ●消費者の「食べる喜び」  消費者の立場からは、大きく次の三つがあげられます。  まず、新鮮さと旬の味です。生産と販売する場所が近いため栄養価の損失が少なく、新鮮な旬の食材を味わうことができます。また、輸送の費用と時間を省くことで、低価格での購入ができるだけでなく、燃料の消費を抑えて環境負荷の軽減にもつながります。  次に、生産者の顔が見えるため、安心感があります。販売される商品への産地名や生産者名の表示はもちろん、中には、生産者の顔写真や農産物の特徴が表示されているものもあります。「だれが、どこで、どのように作っているのかが分かること」で、消費者は安心して購入できます。  そして、三つ目には地域の良さを再発見できます。市内には、生産者が売り場で商品の説明をしたり、選ぶときのポイントや調理方法を教えてくれる直売所があります。地域の食材を使った郷土料理の作り方や、試食と合わせて味付けの秘訣を教えてくれるところもあり、食文化の伝承にもつながります。このように、生産者と顔を合わせ、話をすることで、「食」を通して自分が暮らすところの良さを再発見したり、地域の人との交流を深めることもできます。 写真:売り場に立つ生産者から、野菜や果物の話が聞けるのも直売所の楽しみのひとつ(五個荘竜田町の青空市場) ●生産者の「作る喜び」  生産者の立場からも、大きく次の三つがあげられます。  まず、売れ行きに応じた作業ができます。直売所は生産者の近くにあるため、出荷に訪れたときに自分が出した農産物の売れ行きを知ることができます。中には、携帯電話を使って、売れ行きを随時確認できるところもあり、出荷を調整することで効率的な作業ができます。また、大量に作る必要もなく、少量多品目で対応できる利点もあります。  次に、農産物に生産者名を表示することで、地域の人から「おいしかったよ」と声をかけられるなど、消費者の声を直接聞くことができます。また、消費者が産地だけでなく「○○さんの作った野菜はないですか」といったように生産者の名前で購入することや、新鮮なうちに食べてもらえることで生産者の意欲が向上し、農業の活性化にもつながります。  そして、三つ目には生産者が自ら価格を決めるため、農産物のでき映えを価格に反映することができます。つまり、品質の良いものを作れば、価格に反映できるため、技術の向上や新しい品種の生産などにもつながります。安全性への関心も高まっているため、農薬を少なくして作ることで、PRすることもできます。また、市場には出荷できない大きさや形のものも販売できるため、無駄を減らすことができます。 ■ズラリと並ぶ食材の宝庫 直売所  市内には、新鮮な旬の野菜や果物が並ぶ直売所が11か所あります。「新鮮、おいしい、安全・安心」の食材ばかりです。生産者から直接、選び方やおいしい食べ方などの話が聞けるのも魅力です。ぜひ一度、訪れてみてください。 名称=八日市やさい村    所在地=八日市緑町   電話番号=0748-25-0831 名称=万葉の郷ぬかづか   所在地=糠塚町     電話番号=0748-23-6898 名称=永源寺ふるさと市場  所在地=山上町     電話番号=0748-27-2133 名称=JA五個荘青空市場  所在地=五個荘竜田町  電話番号=0748-48-2404 名称=ごきげん館      所在地=五個荘塚本町  電話番号=0748-48-6678 名称=あいとうマーガレットステーション  所在地=妹町  電話番号=0749-46-1110 名称=湖東味咲館      所在地 横溝町   電話番号=0749-45-0335 名称=朝市JAグリーン近江能登川  所在地=山路町 電話番号=0748-42-2131 名称=JA東能登川ふれあい朝市   所在地=垣見町 電話番号=0748-42-1345 名称=フレッシュファーム味菜    所在地=宮川町・市子殿町  電話番号=0748-55-1317 ※開設日や時間などは、直売所にご確認ください。 ■「旬の食材を、安心して食卓に」  西堀朱実さん(横溝町)  直売所を週2〜3回利用していますが、その良さは新鮮な旬の食材と、家の近くにある便利さです。旬の食材は価格が安いだけでなく、採れたてのものが並ぶため、新鮮さがよく分かります。生産者名や収穫日が表示されているため、毎日安心して食卓に出すことができます。子どもたちも、季節の野菜や果物が食卓に並ぶのを楽しみにしています。  市内には、豊富な農産物があるので、ほかの直売所にも、ぜひ訪れてみたいですね。 写真:子どもたちも旬の野菜や果物にふれることができると話す朱実さん(娘の真衣さんと湖東味咲館で) ■「買いに来る人が、喜ぶ直売に」  田井中忠明さん(福堂町)  直売所を立ち上げる話があったときに誘われたことがきっかけで、朝市に採れたての野菜を出し始めて8年になります。  現在は、12人の会員農家のみなさんとともに、農薬と肥料を減らした安全・安心な野菜や四季折々の花を販売しています。買いに来る人に喜んでもらえるよう、栽培時期を工夫することで旬を先取りした長期間の販売や、少量多品目の栽培に心がけています。 写真:新鮮な野菜を出すため、出荷直前にラベル貼りや袋詰めの作業をする田井中さん     ◇   ◇  直売所だけでなく、まちづくりのひとつとして、地産地消が広がりをみせる地域もあります。また、保育園や幼稚園、小中学校などでも取り組みが進み、子どもたちが「食」の大切さを学んでいます。 ●食の恵み、いただきます!  本市での地産地消の本格的な取り組みは、始まったばかりです。自分が暮らす地域で育ったものを食べる。それは、新鮮でおいしいものを「食べる」ということだけでなく、消費者と生産者をつなげ、暮らしを見直すきっかけにもなります。「食べる喜び」と「作る喜び」。この喜びを与えてくれるのが、地産地消です。  みなさんも、もっと地域の「食」を味わうことで、喜びを感じてみませんか。  食べる人も、作る人も「食の恵み、いただきます!」。 『学ぼう!! の大切さ』 ●育てる  作物を育てたり、収穫したりする喜びを感じてもらおうと、市内の小学校や地域で、児童などが田植えや稲刈りを体験しています。「食」や農業の大切さを学ぶ機会となっています。 写真:読合堂町では、田んぼのオーナーを募り、参加者が農業体験 ●作る  保育園や幼稚園の園児と保護者を対象に、食と健康をテーマにした講座を開催しました。栄養士のみなさんを講師に迎え、地域の農産物の調理方法を学んだり、紙芝居で「食」への知識を深めたりしました。 写真:八日市寺幼稚園では、地域の食材で料理に挑戦 ●食べる  昨年から永源寺・愛東両地区の小学校などで、地域で収穫された米を使用した給食が始まりました。米飯給食への使用だけでなく、生産者から作り方の話を聞いたり、一緒に給食を味わって交流を深めたりしています。今後は施設などの環境が整い次第、各校にも広げていきます。 写真:児童と生産者との交流会(市原小学校で) ■お問い合わせ先 地産地消推進室 電話0748−24−5660