特集:文化政策『受け継ぐ文化 芽生える文化』 写真:政所町での新茶の摘み取り 写真:300年以上の歴史がある「近江八日市の大凧揚げ習俗」 写真:百済寺で開催される「さつきコンサート」 写真:歴史の道・千草街道を歩く「わがまち探訪フィールドワーク」  みなさんは、「文化」というとどんなイメージをもちますか。文化とは、芸術をはじめ、自然や生活、地域など私たちの身近なところにあるものです。本市では、豊かな文化をいかした魅力ある文化都市をめざしています。今回の特集は、文化の魅力や市の取り組みを紹介します。 ◇文化は心を豊かにする  文化は、人と自然とのかかわりや風土の中で生まれ育つもので、私たちに楽しみや感動、安らぎを与え、心を豊かにしてくれます。 祭りなどの伝統行事、音楽や美術などの芸術、神社・仏閣などの文化財をはじめ、生活の中の衣食住やまちづくりの活動まで、文化は幅広く、私たちは常に文化と一緒に過ごしているのです。 ◇文化を育てる歴史と風土  本市は、豊かな文化に恵まれています。多くの文化が生まれ、地域固有の文化が育ってきたのは、特色ある歴史や風土が残っているからです。市内には、豊かな自然の中に多くの街道があり、人や物が行き交うことで文化が育まれてきました。現在でも、聖徳太子ゆかりの地や万葉文化の地、木地師発祥の地として受け継がれたり、山越商人や近江商人の活躍など歴史の舞台となった場所が数多く残っています。  また、本市は、作家・外村繁、洋画家・野口謙蔵、謄写版(ガリ版)を発明した堀井新治郎父子などを輩出し、探検家・西堀榮三郎ゆかりの地でもあります。 ◇特色ある本市の文化  これらの歴史や風土から生まれたのが、今日まで受け継がれてきた多くの文化です。  本市の文化の特徴の一つが文化財。現在326の指定文化財(国指定65、国登録45、県指定35、市指定181)があり、県内市町の中で2番目に多く、市指定でみると最多です。この中には、国選択無形民俗文化財に指定されている「近江八日市の大凧揚げ習俗」や「近江のケンケト祭り・長刀振り」をはじめ、神社・仏閣などの建造物、絵画、彫刻、史跡、伝統的建造物群などがあり、市内全域に広がる文化財は、大切に保存されるとともに、活用が進められています。  また、生活や地域の文化に特色をみることができます。例えば、「市」で栄えた八日市の町場の文化をはじめ、山村や農村、水郷の文化、また中山道や御代参街道、千草街道といった街道文化、永源寺や百済寺などの門前文化などです。  そして、愛郷の森(和南町)、河辺いきものの森(建部北町)など山や河川、湖など豊かな自然をいかした場所に人のにぎわいがあるのも本市の文化の特徴です。 ◇文化政策ビジョンの推進  本市では、このように豊かで特色ある文化をいかしたまちづくりを進めようと昨年、平成28年度までの10年間を計画期間とする「文化政策ビジョン」を策定しました。 今後、このビジョンを基本にして、総合計画に示している「心豊かな文化都市」をめざして、取り組みを進めていきます。その基本となるのが、左欄の5つの柱です。 ◇実現へのプロジェクト  市では、この柱に沿って、具体的な取り組み(プロジェクト)を進めます。「知」「食」「木と水」「光」「風」をテーマに、市民、団体、企業と行政が協力しながら実現に向けて取り組んでいきます。  まず、「知」をテーマにしたものは、市内の文化資源を広く知ってもらうため、文化をいかしたまちづくりへのアイデアを出す場、市民による「文化の森会議」の設置や身近な文化資源に触れてもらう探訪ツアーの開催、文化のガイドブック『東近江市百科』の発刊です。  「食」のテーマでは、地域で育てたものをその地域で消費する地産 地消や食育を進めるための給食への地元食材利用、「食と農」をテーマにした催しの開催。  「木と水」のテーマでは、菜の花を利用したリサイクルシステム「菜の花エコプロジェクト」を市内全域や全国に拡大したり、愛知川河辺林を保全した「河辺いきものの森」を自然学習の場として活用する取り組みを進めます。また、本市の豊かな自然を象徴する伊庭内湖の魅力づくりや、市民とともに水辺環境の保全、再生に取り組みます。  そして、「光」のテーマでは各地域で開催される「灯り」の取り組みをとおして、まちづくりを進めます。  最後に、「風」のテーマでは、将来に残したり、大切にしたい「東近江市の美しい文化的景観」を選定し、ふるさとへの愛着を深めてもらい、街道を歩くツアーも開催します。 ◇受け継ぎ、芽生える文化  このように「文化」は私たちの身近にあり、その価値を今一度見直してみることも大切です。それが、受け継がれてきた文化の良さに気づいたり、新しい文化が芽生えるきっかけになるかもしれません。  そして、その文化を将来に継承することが私たちの大切な役割です。市でも、各地域で育まれた文化を受け継ぐことはもちろん、新しい東近江市の文化を創造し、文化の薫る魅力あふれるまちづくりを進めていきます。 写真:全国で注目される、菜の花エコプロジェクト 写真:幽玄の世界が広がる、石塔フェスティバル 写真:地域住民などにより催された12万個の電球で彩るイルミネーション(林町) 問=文化政策課 電話0748-24-5625 IP=050-5801-5625 ●心豊かな文化都市実現への道しるべ(5つの柱) ◇文化のまちづくり  伝統文化や文化財など地域の文化資源の保存、継承、活用をはじめ、文化芸術の振興や文化に親しむ機会の拡大などをめざします。 写真:織田信長の子孫で川合寺町出身の女流画家、織田瑟々(しつしつ)の「桜画展」を同町のみなさんが開催(西蓮寺で) ◇文化の基盤整備  文化的景観や自然環境の保全・活用、歴史風土をいかした美しいまちづくりをめざします。 写真:土蔵、舟板塀が残る町並みをいかした催し「ぶらっと五個荘まちあるき」 ◇文化の拠点形成  既存の文化施設の有効活用や連携を図り、幅広い利用促進をめざします。 ◇文化の経済・産業育成  地域資源を活用し、食文化や産業、観光の活性化や、文化を継承する人材の育成をめざします。 ◇協働型の自治文化の構築  まちづくり協議会をはじめ、市民やボランティアなどによる活動の活性化を図り、市民と行政の協働による取り組みで新しい自治文化の創造をめざします。 写真:市(いち)の伝統を今に伝える『二五八祭』 ●市民とともに「文化施設でまちづくり」  現在、本市には、文化ホールや博物館、公民館、図書館など60の文化施設があります。市では、これらの施設の機能を十分にいかし、活用できるよう、専門家や市民からなる「文化施設検討委員会」を設置し、今後の方向性を検討してきました。  委員会では、『文化のエコミュージアムの創造』を基本に、市民参加による文化施設の活性化と有効活用を図る「文化施設活性化計画」を策定していただき、施設のネットワーク化や市民の施設運営への参加、市民が交流できる文化拠点などについて、次の内容などが提案されました。 ◇施設情報のPRや施設予約システムの導入 ◇スポーツ施設や民間施設をはじめ、大学やNPOとの連携 ◇市民参加の運営委員会や市民文化プロデューサーの設置 市では計画をもとに、文化施設をいかした魅力あるまちづくりを進めていきます。 写真:21人の委員により、ワークショップなども取り入れて、様々な角度から検討されました。 ●発刊/東近江市百科  市内の神社・仏閣や史跡、伝統行事や景観、自然や伝統工芸などを約300ページにまとめた『東近江市百科』を発刊しました。郷土史家や市民などの協力によるわかりやすい解説や、写真も数多く掲載した東近江市のガイドブックです。各図書館や博物館などでご覧いただけます。(写真あり、「宝くじは豊かさ築くチカラ持ち」のイラスト付)