特集:新型インフルエンザ 流行への備え 世界の4人に一人が感染するといわれている「新型インフルエンザ」。流行すると本市では、最大で約6百人の死者が出ると予測されています。みなさんも新型インフルエンザについて正しい知識をもち、発生への心構えをしましょう。 ●世界的大流行の危険 ◎新型インフルエンザとは・・・  世界で猛威を振るうことが予測される「新型インフルエンザ」。これは、これまでヒトに感染することがなかった鳥インフルエンザが、ヒトからヒトに感染するようになる新しい種類のインフルエンザです。  新型インフルエンザウイルスに対して、ヒトは免疫をもたないため、過去の例からも、ヒトへの感染拡大が急速に進み、世界的な大流行(パンデミック)が予測されています。 ◇過去にも新しい種類のインフルエンザが流行し、世界で多くの人が死亡しました。90年前のスペインかぜでは、世界中で25〜30%の人が感染し、日本では39万人が死亡したと記録されています。当時に比べて人口の増加や都市への人口集中が進み、交通機関も発達している現在、どこで発生しても世界中に急激に広がることが懸念されます。新型インフルエンザの感染の強さや症状は、現在ではわかりませんが、重症化することが予測されます。WHO(世界保健機関)では、新型インフルエンザの危機管理を6段階に分けています(図あり)。現在は「フェーズ3」の段階で、世界で鳥からヒトへの感染が確認されていますが、ヒトからヒトへの感染は確認されていない状況です。日本では、鳥インフルエンザのヒトへの発症は確認されていません。 ●本市の死者、6百人と予測  新型インフルエンザが発生した場合、本市の患者数は最大で3万人、死亡者数は同様に6百人と予測され、大きな社会影響や混乱が考えられます。 例えば、医療機関には患者があふれますが、医療関係者が感染することもあります。ほかにも、労働力が失われ、物流停滞による医療品・食料品の不足、電気・水道・ガスの供給やゴミ処理への影響をはじめ、情報の氾濫による混乱などが予測されます。また、世界的に流行することから近隣地域からの支援も期待できません。  これらの事態を想定して国ではワクチンの研究が進み、発生に備えた新型インフルエンザ対策行動計画も策定しています。また、私たちも日ごろの健康管理などで、影響を最小限にすることができます。 ●今できる、流行への備え  新型インフルエンザに備えるためには、まず、十分な休養やバランスのよい栄養をとり、体力や抵抗力を高めることが大切です。  また、季節性インフルエンザへの対策を基本にして、次のとおり備えてください。 ◎手洗い、うがい、マスクの着用  せき、くしゃみ、つばなどにより、ウイルスが飛び散って感染するため、手洗い、うがい、マスクの着用をしてください。また、せきエチケット(図あり)も大切です。 ◎2週間分以上の備蓄  海外での発生による輸入停止や国内外での物流の停滞などが予想されます。その対応と不要不急の外出を避けるため、最低でも2週間分以上の備蓄品(図あり)をそろえましょう。 ◎事前に家族で相談、地域で準備  家族が感染した場合に、ほかの人への感染を防いだり、生活を維持していくために、どのように役割を分担し対応するのか、相談しておきましょう。また、地域でも発生時の安否確認や連絡体制などについて準備しておきましょう。 ◎情報の収集  正確な情報を収集し、流行時にあわてないよう準備しておきましょう。インターネットからの情報収集は、図を参考にしてください。   ●正しい知識で、冷静に行動  本市では、新型インフルエンザに変化する鳥インフルエンザの発生を想定した訓練や職員への研修を開催するなど準備を進めています。今後も市民の健康を守り、影響を最小限にするため、発生時の体制整備や行動計画の策定にも取り組みます。  みなさんも正しい知識を身に付け、発生時には落ち着いて行動できるよう、家族での情報共有など今から準備を進めましょう。 問=健康推進課   電話=0748−24−5646   IP=050−5801−5646 図:新型インフルエンザとスペインかぜ 感染拡大期間の比較   ◎は主な交通手段と感染経路 ◇スペインかぜ(1918〜1919年)◎船、鉄道 ◇新型インフルエンザ◎航空機、新幹線、自動車  スペインかぜは、7〜11か月で世界中に感染が拡大しましたが、新型インフルエンザは交通機関の発達などにより、当時に比べ急激な拡大が予測されます。 図:新型インフルエンザと季節性インフルエンザの比較 ◇季節性インフルエンザ ・時期=晩秋から早春に流行 ・死亡者の年齢層=高齢者が多い ・感染者の特徴=幼・小児や高齢者、免疫の低下している人 ・主な症状=38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、のどの痛み、鼻水など、ほかにも気管支炎、肺炎、中耳炎、熱性けいれんを併発 ◇新型インフルエンザ ・時期、死亡者の年齢層、感染者の特徴=流行するウイルスにより特徴が異なるため、現在では予測できません。 ・主な症状=(予測)38℃以上の発熱、鼻血、筋肉痛、多臓器不全、肺炎、下痢、腹痛、心筋炎、呼吸困難など 図:新型インフルエンザの流行まで(絵で感染ルートを表示) 図:新型インフルエンザの発生段階*WHOの資料を基に作成 段階 新型インフルエンザの発生状況 ------------------------------------------------------------- フェーズ1 ヒトに感染する可能性のあるウイルスが鳥に出現 フェーズ2 ヒトに感染する危険性の増大 フェーズ3 (現在)鳥インフルエンザがヒトに感染 フェーズ4 限定された範囲でヒトからヒトへ感染 フェーズ5 ヒトからヒトへの感染の増大 フェーズ6 世界的な大流行(パンデミック) ※感染の拡大方向はフェーズ1から6へ 図:新型インフルエンザによる感染者の予測(最大の予測値) 区 分  死亡者  患 者  入院患者   外来患者 ---------------------------------------------------------- 国    64万人  3200万人 200万人    2500万人 滋賀県  7000人   35万人  2万人     27万人 東近江市  600人   3万人  1920人   2万4000人 *厚生労働省の新型インフルエンザ対策行動計画を基に、患者数を人口の25%、死亡者数を同0.5%で計算(東近江市の人口は12万人で計算) 図:備蓄品の準備 ◎食料品 米、インスタントラーメン、乾パン、調味料、レトルト食品、缶詰、菓子、水(ミネラルウォーター含む)、ペットボトル飲料、栄養補助食品など ◎感染予防・医薬品 常備薬、マスク、消毒用アルコール、使い捨てゴム手袋、水枕、保冷剤、カイロなど ◎日用品 懐中電灯、乾電池、ろうそく、マッチ、ライター、紙コップ・皿、ラジオ、カセットコンロ、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ラップ、アルミホイル、洗剤、石けん、シャンプー、ビニール袋など 図:せき エチケット  他人への感染を防ぐため、次のことに注意しましょう。 @せきやくしゃみが出る場合は、マスクをするか、ティッシュで口元を覆い、ほかの人から顔をそむける。 A鼻水、たんなどが付いたティッシュは、すぐにフタ付きのゴミ箱に捨てる。 Bせきをしている人にはマスクを着用してもらう。 ※マスクは外科用やウイルス防止用のものが効果的 図:インターネットからの情報収集 ◎厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/ ◎滋賀県ホームページ http://www.pref.shiga.jp/ ◎厚生労働省検疫所 http://www.forth.go.jp/ 図:発生 そのときの行動は…  新型インフルエンザが発生すると、感染者に近距離で接触することで感染が広がります。冷静な行動で拡大を防ぐことが大切です。 ◇まず、電話相談  新型インフルエンザ発生時に発熱・せき・全身痛など季節性インフルエンザのような症状が出た場合は、まず保健所などに設置予定の発熱相談センターに電話相談をしてください。事前連絡なく医療機関を受診すると、新型インフルエンザであった場合、ほかの患者が感染する恐れがあります。なお、本市でも相談窓口の設置などについて検討しています。 ◇外出を避ける  感染の拡大を防ぐため、流行地への渡航や人混みへの外出は避けてください。地域での催しや会合の開催も控えてください。また、不要不急の医療機関受診を控えることで医療の確保に協力してください。 ◇治療薬と治療方法  ワクチンについては、国で準備が進められていますが、実際に発生しなければ製造できないものもあります。治療薬や治療方法については、国などから提供される情報を随時確認してください。 ◇正確な情報収集  発生時には情報の氾濫が予測されます。虚偽の情報に惑わされないよう、正確な情報収集に努め、冷静に行動しましょう。 図:新型インフルエンザについて学び、発生への備えを  写真:65人が参加した総沖野自治会の学習会(11月) ・総沖野自治会会長 小藤正則さん(沖野二丁目)  新型インフルエンザについて、正しい知識を身に付け発生に備えようと、自治会や子ども会の関係者を対象に学習会を開催しました。講師の前田博明 東近江保健所長から、「どんな病気なのか」「どのように発生するのか」「どのような対策が必要か」などの説明をしてもらいました。参加者からもワクチンや流行時期、マスクなどについて質問があり、関心の高さを感じました。これをきっかけに、今後も継続して多くの人に学んでもらう機会ができればと思っています。