特集:新春放談  東近江市の4年間をふりかえって  平成17年2月に東近江市が誕生。ひとつの市として歩み始めて4年が経ちました。  中村功一市長がこの4年間をふりかえり、その想いを語ります。  (聞き手は、東近江スマイルネットキャスターの中村梨絵さん) ー市長、明けましておめでとうございます。 市長 明けましておめでとうございます。市民のみなさまには、輝かしい新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。 ー東近江市が誕生して4年が経ちましたが、ふりかえっていかがですか。 市長 平成17年2月28日に市役所へ初登庁いたしました。その年は、雪も多く寒かったことを思い出します。  そして、平成18年1月には、さらに2町との合併により、人口12万人、面積388平方キロメートルという大きな市となりました。そのため、できるだけ早く東近江市としての一体感をもつことが大切だと思っていました。それぞれの地域で育んでこられた様々な取り組みを大切にし、それを新市のまちづくりに活かすことで、市民が誇りをもてるまちでありたいと思ってまいりました。 ー一体感をもつために色々な事業に取り組まれましたが、その一端をお聞かせいただけますか。 市長 地域の垣根を越えて一つのまちをつくるには、どのように進めるべきかと考え、合併していち早く、市内14地区すべてにまちづくり協議会を設立していただきました。市民のみなさんが中心となり、行政がお手伝いをしながら子育てや健康、環境、安全安心のまちづくりなどについて自ら考え、活動されています。 今は、活動をさらに充実、発展させていただく時期です。  各まちづくり協議会が、地域の活動だけでなく、その垣根を越え、お互いに交流を図り、意見交換や勉強会を通じ、一体感のあるまちづくりの一躍を担っていただければうれしいですね。 ー広い市内の交通手段として、「ちょこっとバス」が走っているのを見かけますね。 市長 最初は、お年寄りなどが通院や買い物など、自由に外出される手段にしてもらえばと思い、運行を始めました。運行当初は、どれだけの人が利用されるか心配でしたが、最近では、多くの人に利用していただき、喜ばれています。 ーちょこっとバスは、環境にも配慮されていますね。 市長 環境面から、燃料に廃食油からできたBDFを使っています。また、バスのほかに小型車両を使った予約制の「ちょこっと号」も運行し、幅広くご利用いただいています。 ー市長は次代を担う子どもたちの育成にも、大変熱心に取り組んでおられると思いますが。 市長 合併により市内の公立教育施設は小学校23校、中学校9校、幼稚園23園、そして保育園11園と大変多くなりました。耐震や老朽化、また教室の不足など様々な問題を抱えている施設も少なくありませんでした。  より良い教育環境をつくるため、この4年間に約70億円をかけて、順次整備を進めてきました。  現在、児童数の増加や老朽化などに対応するため八日市南小学校では、保護者や地域などのご理解をいただきながら、校区を分け、新校舎の建設を進めています。ほかの施設についても今後、計画的に整備を進めていく予定です。  また、子どもたちの自然体験ができる施設として「河辺いきものの森」があります。行政だけでなく市民のみなさんが一緒に活動し、人や自然との交流ができる場所です。この施設は、子どもたち同士でも学べますが、施設職員から植物や生物について学んだり、オリジナル図鑑を使って勉強もできます。今では、年間延べ7千人もの小学生に利用していただいています。 ー子どもたちが集まる場所のひとつとして、図書館があります。昨年、蒲生図書館が開館し、市内の図書館も充実しましたね。 市長 本市の図書館は、人口一人当たりの貸出冊数は全国平均の2倍以上、蔵書数も県内市町で最多であり、まちづくりへの積極的な関わりをもつなど、全国的にも有数の図書館として評価されています。子どもの将来のためにも図書館がいつもにぎわっているまちでありたいと思います。  これまで、蒲生地区には図書館がなく、市民のみなさんが待ち望んでいた施設であり、蒲生支所の1階に整備できたことをとてもうれしく思っています。  また、1歳の誕生日に絵本をプレゼントするブックスタート事業をこども未来夢基金を活用して始めました。この基金は、次代を担う子どもたちの施策のために記念日などの節目に寄附をしていただいています。この善意を活用させていただき、これまでに小中学校の図書の充実などにも取り組んできました。 ー総合型地域スポーツクラブをはじめとする、団体や地域などのスポーツ活動も盛んですね。 市長 現在、布引運動公園の整備を進めており、平成22年秋に完成する予定です。  この運動公園は、9レーン、1周400メートルの3種公認陸上競技場を備えるなど、質の高い施設となりますが、ひとりでも多くの市民のみなさんが気軽に利用できる施設にしたいと考えています。日本を代表する、あるいは世界的なアスリートを招き、トラックを走っている一流選手の姿を見て子どもたちが感動し、夢をもつことにより、将来、素晴らしい選手が東近江市から生まれることを期待しています。ほかにも多目的グラウンド、グラウンドゴルフ場、散策路など充実した施設もあります。完成時には、この陸上競技場で、近畿の高校駅伝や元旦健康マラソンなどの開催を今から計画しています。  この運動公園は、災害時の防災拠点としての機能も備えています。そのため、名神高速道路・黒丸パーキングエリアの緊急開口部から災害時に救援物資の出し入れができるように準備もしています。   ー昨年度から「伊庭の里湖づくりにも取り組まれていますね。 市長 私は、琵琶湖について市民のみなさんにもっと知ってほしいと思います。本市には、琵琶湖に接し、自然豊かな伊庭内湖があります。市の貴重な宝物として河辺いきものの森と同じようにボランティアのみなさんと行政が一緒になって内湖を自然遺産として引き継いでいきたいと思っています。  河辺いきものの森などを里山とすれば、伊庭内湖は里湖になります。そして、琵琶湖に山の水が流れ込むことからも山・川といわず、湖も大切にしていきたいと思います。 ー今の豊かな自然を未来に引き継いでいくことは、今生きている私たちの使命でもあると思うのですが。 市長 そうですね。本市には、地球温暖化防止対策への取り組みとして、全国に先駆けて推進した「菜の花エコプロジェクト」があります。  また、廃材などを利用して電気を起こす「木質バイオマス化発電システム」の実用化に向けて、企業との共同研究も進めています。こうした取り組みは、子どもたちに、よりよい地球環境を残すためにも積極的に進めていきたいと思っています。 ー永年の懸案でありました国道421号石榑峠道路の整備も着々と進んでいると聞いていますが。 市長 この道路は長い年月と多くの先人たちの努力により、小さな林道が国道まで昇格したものです。トンネル化を含めた事業がここまで進み、本当に感無量の思いです。  1月30日には4・2キロメートルのトンネルが貫通します。道路が整備され開通すると、三重県とつながります。東近江市が近畿の東の玄関口となり、中部国際空港などへのアクセスも飛躍的に向上します。 ー市長にこの4年間をふりかえっていただきましたが、最後に東近江市の将来についてはどのようにお考えですか。 市長 東近江市の基礎が4年間でできたとは思いません。やはり、何十年もかかって、ようやくひとつのまちになると思います。  道路や学校などの整備も大切ですが、これからの時代でより重要なことは、市民がもっと互いを知るために交流したり、助け合いの心をもっていただくことだと思います。  そして、今以上に市民が豊かな感性を養い、自分の郷土を誇れるようなまちになってほしいと思っています。 【写真】 ・布施のため池(布施町)から日の出を望む ・中村キャスター(左)のインタビューにこたえる中村市長 ・議論が尽きない、まちづくり協議会交流会 ・身近な交通手段として利用されるちょこっとバス ・校区を分け、移転改築する八日市南小学校 ・四季を通じて体験学習ができる河辺いきものの森(散策する中野幼稚園児) ・1歳の誕生日に絵本をプレゼントするブックスタート事業 ・全国に広がった菜の花エコプロジェクトを学ぶ学生 ・多くの役割と魅力を持ち合わせている伊庭内湖 ・貫通間近の石榑峠トンネル