特集 水害から身を守ろう  今夏も各地で集中豪雨や台風などによる洪水、土砂崩れが発生し、大きな被害をもたらしました。災害はいつどこで起こっても不思議ではありません。  9月1日は防災の日。この機会に、今一度水害をはじめとした災害への危機意識を高めましょう。 (写真:平成2年の台風19号のつめあと(今町)) ◆滋賀県で想定される水害  滋賀県は全国的にも自然災害の少ない県の一つですが、地形的には洪水の危険性は高いといえます。琵琶湖を取り囲む山地から流れ出る河川の多くは短く流れも速いため、短時間に水位が上昇し、一時的に洪水が起こりやすくなっています。急な流れが山を削り、その土砂によって河床が周辺地より高くなる天井川が多いのも特徴の一つで、堤防が決壊した場合、大きな被害が想定されます。  また、多くの河川が琵琶湖に注ぐ一方で、流れ出る河川は瀬田川のみであるため、長雨が降ると琵琶湖の水位自体が上昇して洪水が発生したり、琵琶湖の水位が高いため流れを阻害された河川があふれたりと、さまざまな水害の危険性がある地域といえます。 ◆東近江市の水害に対する地域防災力は?  県により、平成19年度に県内の各自治会を対象に、水害に対する地域防災力のアンケート調査が行われました。その結果をもとに地域防災力を点数化したものが下記の表になります。  その中身を見てみますと、市の平均点は、水害危険認知度が県平均に比べて低いほかは、ほぼ県平均並となっています。しかし、総合点で百点満点中の31点と、県平均並とはいえ、残念ながら市の地域防災力は低いと言わざるを得ません。  また、自治会によっても差が大きく、総合点で最高が64点、最低が1点となっています。  災害時には、行政だけでなく、地域の防災力も非常に重要になってきます。まず水害の危険を認識し、どこでどのような水害が起こる可能性があるのかを地域で話し合うところから始めてみてください。 項目      県平均点 東近江市平均点 総合点      32    31 監視警戒力    41    42 自主避難判断力  66    68 情報伝達力    49    50 避難誘導力    20    19 防災体制整備度  42    39 水害危険認知度  31    17 救助・救援力   23    23 水防活動度     7     5 ◆近年目立つ局地的大雨・集中豪雨による被害  1960年代までの日本における気象災害による死者、負傷者の最大の原因は台風でした。しかし、災害対策基本法が制定され、防災のためのインフラが整備されてくると、事前予測が可能な台風の被害は減少し、その一方で、予測が困難で突然発生する局地的大雨や集中豪雨の被害が近年目立つようになってきました。  実際、昨年の国内の水害被害額は、台風の上陸がなかったこともあり、過去10年間で最も低い額になっているものの、「7月末豪雨」による被害額が全体の約12%、「8月末豪雨」による被害額が約42%と、集中豪雨による被害が占める割合が高くなっています。  もちろん、台風が脅威であることはなんら変わっていませんが、今回は意外と見落とされがちな局地的大雨・集中豪雨について、詳しく見ていきたいと思います。 ◆局地的大雨と集中豪雨の特徴  雲は、空気が上昇気流によって上空に押し上げられて発生します。上昇気流が強まり雲が成長を続けると、積乱雲となり雨を降らせるようになります。  このとき、単独の積乱雲から降る雨による影響は、短時間で局地的な範囲に限られます。このような雨は、急に降り出し短時間で降り終わることが多く、にわか雨となります。  そして、大気の状態が不安定な場合、積乱雲は発達し、より強い雨をもたらします。局地的大雨は、単独の積乱雲が発達することによって起きるもので、一時的に雨が強まり、局地的に短時間でも数十ミリメートル程度の総雨量となります。  また、集中豪雨は、前線や低気圧などの影響や雨を降らせやすい地形の効果によって、積乱雲が同じ場所で次々と発生・発達を繰り返すことにより起きるものです。激しい雨が数時間にわたって降り続き、狭い地域に総雨量数百ミリメートルもの雨をもたらすこともあります。  短時間にまとまって降る強い雨は、局地的大雨でも集中豪雨でも発生します。局地的大雨ではそれが一過性であり、集中豪雨はそれを繰り返すという違いがあります。結果的に集中豪雨は、局地的大雨に比べ、大雨の継続時間が長く総雨量は多くなります。 局地的大雨と集中豪雨  積乱雲が発生する →  大気の状態が不安定なとき → 前線や低気圧などの影響や地形効果によって               ↓              ↓   ↓          単独の積乱雲が発達する    積乱雲が同じ場所で次々と発生、発達を繰り返す               ↓              ↓  雨は短時間に降りやむ  雨が一時的に強まる      雨が数時間にわたって降り続く   ↓           ↓              ↓  雨量は多くない     局地的に数十mmの総雨量となる 狭い範囲に数百mmの総雨量となる    にわか雨        局地的大雨          集中豪雨 ◆局地的大雨や集中豪雨による災害  局地的大雨や集中豪雨により引き起こされる災害の代表的なものには次のようなものがあります。 ・河川のはん濫  河川のはん濫は、大量に降る雨によって引き起こされ、家屋の床上や床下への浸水被害をもたらします。はん濫した水が地下街などへ流れ込み、被害を起こすこともあります。 ・急な増水  河川、渓流などの急な増水は、短時間にまとまって降る強い雨によって引き起こされ、その場所に居た人が流される被害が起きています。 ・低地の冠水  低地や道路の立体交差など水のたまりやすい場所での冠水は、局地的大雨や集中豪雨によって引き起こされ、自動車の走行不能や水没などの被害が起きています。 ・がけ崩れ  がけ崩れは、地中にしみ込んだ水分が土の抵抗力を弱め、大雨などの影響によって急激に斜面が崩れ落ちることをいいます。がけ崩れは、突然起きるため、民家の近くで起きると逃げ遅れる人も多く、死者の割合も高くなっています。 (写真:平成18年7月の大雨による被害(百済寺町)) ・土石流  土石流は、大雨などをきっかけに谷底にたまった土砂や山腹から崩れ出した土砂が水と混じり合って一体となり、下流へ一気に流れ下りる現象です。その流れの速さは規模によって異なりますが、時速20〜40キロメートルという速度で一瞬のうちに人家や畑などを壊滅させてしまいます。 ・地すべり  地すべりは、雨や地下水などをきっかけに山地や丘陵などの斜面で、地中のすべりやすい地層を堺に地面がゆっくり動き出す現象です。土の量が多いため、大きな被害が出ます。また、一度動き出すと、完全に停止させることは非常に困難です。 ◆防災気象情報をうまく利用しましょう  気象台からは、気象現象の推移や雨の降り方に応じて、注意報や警報などの気象情報が発表されるほか、リアルタイムで観測や予測の情報が提供されています。このような情報をうまく利用するには、それぞれの行動段階に応じた情報入手が必要となります。  行動の1日前から数時間前は、天気予報で気象情報や注意報・警報が発表されていないかをチェックしましょう。  行動の数時間前から行動直前は、インターネットや携帯電話を利用して、気象レーダーや降水短時間予報によって、行動地域周辺での雨域の様子をチェックしましょう。  行動中も、大気が不安定な状況や行動地域周辺で雨が降っていたり、降ることが予想されている状況では、携帯電話を利用できる場合は気象レーダー画像を随時チェックする、利用できない場合は周辺の空の状況に注意を払うなど、天気の急変に備えることが必要です。 ◆避難にあたって  ●市から避難勧告や避難指示が発表されたら速やかに避難しましょう。(避難情報とその際のとるべき行動については下記の表を見てください)  ●避難勧告や避難指示が発表されていなくても、危険な場所にいる場合、避難に時間がかかる場合は、早めに自主的に避難しましょう。  ●避難にあたっては、高齢者や障がいのある人などの災害時要援護者に配慮しましょう。  ●避難にあたっては、大雨が降っていたり、浸水している場合もあるので、慎重に行動しましょう。  ●万が一逃げ遅れ危険が迫った時は、近くの丈夫な2階建以上の建物に逃げましょう。また、電話や懐中電灯などで居場所を知らせ、救助を待ちましょう。                                              避難情報の種類=避難準備情報  発表の目安=河川の水位がはん濫注意水位に達し、災害の発生する可能性が高まった場合  みなさんのとるべき行動=いつでも避難できるよう準備を始めてください。特に避難行動に時間を要する人は、避難所などの安全な場所へ避難行動を開始してください。 避難情報の種類=避難勧告  発表の目安=河川の水位が避難判断水位に達するか、一定時間後にはん濫危険水位に到達することが見込まれるなど、災害の発生する可能性が明らかに高まった場合  みなさんのとるべき行動=身の安全を確保し、ご家族、ご近所で助け合いながら避難をしてください。 避難情報の種類=避難指示  発表の目安=災害の前兆現象の発生、堤防の決壊など危険が差し迫り、災害が発生する危険性が非常に高いと判断された場合や、災害が発生した場合  みなさんのとるべき行動=ただちに避難をしてください。避難が困難な場合は、できる限り生命を守る行動をとってください。    ◇   ◇   ◇  これからの時期は、局地的大雨や集中豪雨が発生する機会は少ないかもしれませんが、台風はまだまだ発生すると思われます。現に、平成2年に能登川地区(当時は能登川町)に大きな被害をもたらした台風19号も9月19日に日本に上陸しています。  起こる災害や警戒の仕方、避難の方法については、集中豪雨も台風も大きな違いはありません。ハザードマップやホームページを今一度ご確認いただき、油断することなく、普段から、災害は常に隣にあるという気持ちでいるよう心がけてください。   (平成2年の台風19号による被害 写真:県道大津能登川長浜線の橋梁破損 写真:冠水した道路(栗見新田町)) ◎防災情報・気象情報を知るには  ■洪水ハザードマップ   洪水災害の危険区域や避難場所が掲載されています。平成20年に全戸配布していますが、市役所で配布もしています。また、市ホームページでも閲覧できます。  ■市ホームページ   http://www.city.higashiomi.shiga.jp/   防災のポイントや避難場所などを掲載しています。  ■気象庁ホームページ   http://www.jma.go.jp/jma/index.html   各種気象情報が掲載されています。  ■川の防災情報   http://www.river.go.jp/   雨量や川の水位などが掲載されています。 ◎災害発生時には下記の媒体でも情報提供をします。  ■FMひがしおうみ(81.5メガヘルツ)   災害時には昼夜を問わず緊急放送が流れます。  ■東近江ケーブルテレビ   テレビの文字放送や音声告知端末機によるスピーカからの放送で、災害情報を提供します。 問い合わせ=道路河川課 電話=0748−24−5650 IP電話=050−5801−5650