○東近江市における開発工事に伴う埋蔵文化財発掘調査の取扱基準

平成17年2月11日

教育委員会訓令第11号

「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化等について」(平成10年9月29日付け庁保記第75号文化庁次長通知)を踏まえ、東近江市における開発事業に伴う埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査等に係る取扱いの基準を次のとおり定める。

第1条 目的

本基準は、東近江市において発掘調査を円滑に実施するために必要な事項を定める。

第2条 適用範囲

本基準の適用範囲は、東近江市において開発事業に伴って行う発掘調査とする。

第3条 基準の遵守

東近江市教育委員会(以下「教育委員会」という。)は、埋蔵文化財保護のための組織・体制の整備・充実に努め、本基準を誠実に遵守するものとする。

第4条 埋蔵文化財包蔵地の把握と周知について

周知の埋蔵文化財包蔵地は、法律によって等しく国民に保護を求めるものであるから、その範囲は可能な限り正確に、かつ、県と東近江市間に不均衡の無いものとして把握されなければならない。

(1) 埋蔵文化財包蔵地として扱うべき遺跡の範囲

埋蔵文化財包蔵地として扱うべき遺跡の範囲は、次に示す原則と要素に基づいて定める。

 埋蔵文化財包蔵地として扱う範囲に関する原則

(ア) おおむね中世までに属する遺跡は、原則として埋蔵文化財包蔵地として扱う。

(イ) 近世に属する遺跡については、東近江市において必要なものを埋蔵文化財包蔵地として扱うことができる。

(ウ) 近現代に属する遺跡については、東近江市において特に重要なものを埋蔵文化財包蔵地として扱うことができる。

 埋蔵文化財包蔵地として扱う範囲の基準の要素

遺跡の時代・種類を主たる要素とし、遺跡の所在する地域の歴史的な特性、文献・絵図・民俗資料その他の資料との補完関係、遺跡の遺存状況、遺跡から得られる情報量等を副次的な要素とする。

(2) 埋蔵文化財包蔵地の把握と周知の埋蔵文化財包蔵地としての決定

 埋蔵文化財包蔵地は、発掘調査を行わない限り、その所在・範囲を正確に把握し難い性格のものであるが、教育委員会は、できる限り、その範囲を把握するよう努めるものとする。

 埋蔵文化財包蔵地は、発掘調査・試掘調査・分布調査等の調査データのほか、地形的特徴や文献・絵図等の資料や口碑・伝承等に基づきながら、その所在・範囲を合理的判断によって把握するものとする。

 埋蔵文化財包蔵地は、教育委員会がその所在・範囲についての調整を行い、その時点で把握できた範囲を周知の埋蔵文化財包蔵地として決定するものとする。

(3) 周知の埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲の資料化と周知の徹底

 教育委員会は、決定された周知の埋蔵文化財包蔵地の所在・範囲を「遺跡台帳」等の資料に記載し、文化財保護担当部局等において閲覧可能な状態で常備するよう努め、必要に応じて、その内容を「遺跡地図」等の刊行物にして配布する等の方法により、周知の徹底を図ることとする。

 教育委員会は、発掘調査等の結果に基づき、「遺跡台帳」等の資料の内容の更新に努めるものとする。

 教育委員会が作成する「遺跡台帳」等の資料には内容にそごがないように、県及び近隣市町と情報交換に努めるものとする。

 「遺跡台帳」等の資料の作成にあたっては、埋蔵文化財包蔵地の範囲は、できる限り明確に示すように努めるものとする。

第5条 分布調査、試掘調査、確認調査について

周知の埋蔵文化財包蔵地の範囲の決定、開発事業と埋蔵文化財の取扱いの調整、又はその調整の結果必要となった記録の作成のための発掘調査の範囲及び調査に要する期間・経費等の算定のためには、あらかじめ当該埋蔵文化財の範囲・性格・内容、遺構・遺物の密度、遺構面の数と深さ等の状況を的確に把握しておく必要があり、このためにはこれらの情報を得るための調査を発掘調査に先立ち実施する必要がある。

このため、教育委員会は、以下の調査を積極的に行うよう努めるものとする。

(1) 分布調査

(2) 試掘調査(地表面の観察等からでは判断できない場合に行う埋蔵文化財の有無を確認するために行う部分的な調査で、調査対象面積の5パーセントまでを目途とする。)

(3) 確認調査(埋蔵文化財包蔵地の範囲・性格・内容等の概要までを把握するために行う部分的な調査で、調査対象面積の10パーセント程度を目途とする。)

第6条 開発事業に伴う埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査等について

(1) 発掘調査の要否等の判断

 周知の埋蔵文化財包蔵地における開発事業と埋蔵文化財の取扱いについて事前調整の結果、現状保存することができないとされた遺跡については、埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査その他の必要な措置を執ることとする。

この取扱いの判断基準は、第一にその工事区域が地下遺構の内容や状況等の観点で発掘調査を要する範囲に含まれるかどうか、第二にその工事内容が地下遺構に与える影響の観点で発掘調査その他の措置を必要とする場合に当たるかどうかの二点とする。

 教育委員会が埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査及びその他の措置を執るにあたっては、試掘調査・確認調査等により遺跡の性格や内容等を十分に把握した上、専門的な知識及び経験を踏まえて適切な調査範囲を決定するものとする。

 埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査を実施した結果、特に重要な遺構・遺物等が発見された場合には、教育委員会は別途、遺跡の保存のための協議を事業者等に求めるものとする。

(2) 発掘調査を要する範囲の基本的な考え方

 発掘調査を要する範囲は、試堀調査・確認調査等の結果に基づき、遺構・遺物の分布状況を把握することにより決定する。

 試掘調査・確認調査の結果により、遺構が存在せず遺物包含層のみが確認される場合は、遺物の出土状況に基づいて一定の量の遺物がまとまって所在する区域を発掘調査範囲とする。ただし、発掘調査範囲を決定するにあたっては、遺跡の時代・性格等を十分に考慮するものとする。

 遺構が確認された場合でも、規格性のある区画や類似する構成・性格の遺構が連続しており、一部の遺構の在り方から全体が推定できる場合には、地域性、遺構の残存状況、発掘調査で得られる情報の内容、考古学的情報以外の資料から得られる情報等の諸要素を総合的に勘案し、発掘調査範囲を判断するものとする。

第7条 発掘調査その他の措置を行う場合の基本的な考え方について

(1) 工事前の発掘調査を要する場合の基本的な考え方

工事の内容が地下遺構に与える影響の観点で、発掘調査を必要とするか否かは次の基準に基づいて判断する。

 工事により埋蔵文化財が掘削され、破壊される場合は発掘調査を行うものとする。破壊の及ぶ範囲とは、設計上の範囲に加えて、余掘り部分や、基礎等の構造物を埋設する場合にはこれを撤去する際に破壊される範囲等を含むものとする。

 掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合であっても発掘調査を行う場合とするのは、次の場合とする。

(ア) 工事によって地下の埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合には発掘調査を行うこととする。

なお、影響を及ぼすおそれがある行為とは、仮設道路設置等の付帯工事、杭打ち等による地盤改良、地盤沈下の可能性のある一時的・恒久的盛土、一時的な工作物の設置等が考えられる。ここでいう一時的な行為とは、一定期間後の撤去が確約されている場合を指す。

また、埋蔵文化財までの保護層(工事の施工に際して埋蔵文化財を保護するために設ける十分な厚さの土層等による緩衝層)が確保されない場合は、埋蔵文化財に影響のある行為とみなし、発掘調査の対象とする。保護層として必要な土層等の厚さについては、工事の内容や土質等の条件によって異なるが、おおむね30センチメートルを目途とする。

(イ) 工作物の設置等により相当期間にわたり埋蔵文化財と人との関係が絶たれ、当該埋蔵文化財が損壊したものと等しい状態となる場合には発掘調査を行うものとする。これを事業の種類ごとに、工事の性質・内容に即して具体的に示すと以下のとおりである。

a 道路・鉄道

道路については、原則として発掘調査の対象とする。ただし、以下のものについては埋蔵文化財に影響を及ぼさないと判断される場合には、発掘調査の対象から除外することができる。

(a) 一時的な工事用道路、道路の植樹帯、歩道等

(b) 高架・橋梁の橋脚を除く部分

(c) 道路構造令に準拠していない農道、私道等

(d) 道路の拡幅・改修の場合の既存道路部分

鉄道については道路に準じて取り扱う。

b ダム・河川

ダムについては堤体及び貯水池、河川については堤防敷及び河川敷の低水路は発掘調査の対象とする。

ただし、ダム貯水池のうちの常時満水位より高い区域と、河川の高水敷については原則として発掘調査の対象から除外する。

c 盛土・埋立て

盛土や埋立てにより、埋蔵文化財に影響が及ぶおそれのある場合は、発掘調査の対象とする。この場合の盛土・埋立ての深さは3メートル程度を目途とする。

ただし、城郭・古墳などのように地表に遺構が顕在している場合は、3メートル以下の盛土・埋立てであっても発掘調査の対象とすることができる。

d 建築物

建築物については、基礎工事・地盤改良・足場建設・進入路建設等の付帯工事を含め、工事が埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれのある場合は発掘調査の対象とする。

e その他開発行為

その他の開発行為を含めて、発掘調査の要否は別表に示したとおりであり、記載されていないものについては、前記の基準に基づいて判断し、必要があれば発掘調査を実施する。

 以下の場合については、事業者等の理解を求めた上で発掘調査の対象に含めることができる。

(ア) 前項において発掘調査の対象から除外できるとしたもののうちで、工作物等の将来的な利用計画及び地下埋設物・付帯施設の設置計画の有無・内容等を検討した結果、発掘調査を実施することが妥当と判断されるもの

(イ) 遺構を地下に残すことができる場合においても、残る範囲が狭小である、あるいは梯子状、格子状に遺構が分断された形で残され、遺跡の理解を妨げると判断される場合、あるいは、遺構を残すことにより発掘経費及び期間等の増大を招く場合

(2) いわゆる「工事立会い」・「慎重工事」を要する場合の基本的な考え方

発掘調査を要しない場合で、いわゆる「工事立会い」・「慎重工事」の措置を必要とする場合と、その内容は、次の基本的な考え方によるものとする。

 工事立会い

次に掲げるものは、工事の実施中に埋蔵文化財の専門職員が立ち会うものとする。なお、その際に遺構等が確認された場合は、適切な方法で記録作成等の措置を講じることとする。

(ア) 小規模な排水路、ガス・水道等の管埋設工事など、工事対象が狭小であり、通常の発掘調査の実施ができない場合で、原則として掘削幅1メートル以下の工事とする。

ただし、土質や遺構までの深さ等の理由により、掘削幅1メートル以上の工事においても、危険を伴う等、発掘調査の実施が不適当と判断される場合には工事立会いの扱いとする。

(イ) 周辺での調査データの蓄積から、工事による影響が地下遺構に達しないと判断される場合

 慎重工事

次に掲げる行為で、遺構の状況と工事の内容から、発掘調査・工事立会いとも必要がないと判断される場合は、埋蔵文化財包蔵地内での工事であることを十分認識した上で慎重に工事を実施し、工事中に遺構・遺物を発見した場合には教育委員会と速やかに連絡をとるよう事業者に指示するものとする。

(ア) 対象地が既工事により攪乱されていることが明らかな場合

(イ) 発掘調査終了部分での再工事の場合

(ウ) 周辺での調査データの蓄積から、工事による影響が地下遺構にまで達しないことが明らかであると判断される場合

 「工事立会い」「慎重工事」に際しての留意事項

これらを適用するにあたっての判断は、いずれも発掘調査データの蓄積の上に成り立つものであるので、教育委員会は発掘調査等による検出遺構のデータ蓄積はもとより、調査位置・遺構深度等の基礎的なデータの整理と検索の体制を整えるよう努めるものとする。

(3) 盛土等の措置とその際の留意事項

 開発事業との調整に際しては、建築物等の工作物や盛土の下であっても遺跡を良好な状態で残すことが可能で、調査のための期間や経費を節減し得る場合には、記録保存のための発掘調査を合理的な範囲にとどめ、盛土等の措置をとることを考慮するものとする。

 工作物や盛土の下に埋蔵文化財を残すこととなった場合においても、盛土等の施工後は地形や地貌が大きく変化し、周知の埋蔵文化財包蔵地であることを把握しにくくなり、試掘調査・確認調査等を行うこともかなり困難になるため、教育委員会は、盛土等の施工以前に、地下に残る埋蔵文化財の位置と範囲、遺跡の内容・性格等を記録するための試掘調査・確認調査を実施するよう努めるものとする。

 教育委員会は、この措置に関する協議・調整及びそれに伴う分布調査・試掘調査・確認調査及び工事の具体的な範囲・内容などの記録を適切に管理・保管する仕組みと体制を整備するとともに、将来、別の開発事業に際し、盛土等の措置により保存した遺構が見落とされることのないよう、関係事業者や土地所有者に周知徹底するように努めるものとする。

第8条 その他

本基準は、社会状況や学問水準の変化等に応じて、教育委員会が、必要に応じて見直すものとする。

附 則

この訓令は、平成17年2月11日から施行する。

別表(第7条関係)

発掘調査の要否の判断基準

1 掘削により埋蔵文化財が破壊される場合

工事により埋蔵文化財が掘削され、破壊される場合は、開発事業の種別にかかわらず発掘調査を行う。

2 掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合

掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合の取扱いは以下のとおりとする

対応○ 発掘調査の対象とする場合

対応△ 掘削以外の要因により、埋蔵文化財に影響を及ぼすおそれがある場合には発掘調査を行う場合

対応× 発掘調査の対象から除外する場合

(注1) 保護層が確保できない場合は、地下遺構に影響を及ぼす行為として扱うこと。

(注2) 発掘調査の要否の判断は、周辺における過去の調査データ及び試掘確認調査の結果に基づく妥当性のあるものであること。

掘削が埋蔵文化財に直接及ばない場合の取扱例

開発行為

詳細

対応

一時的盛土

 

撤去が確約されているもので3m未満

一時的工作物

プレハブ

 

仮設道路

盛土3m未満

その他一時的工作物

撤去が確約されているもの

高速道路

広規格道路

国県市町村道

鉄道

道路敷・鉄道敷

新設の場合

橋脚

付帯施工部を含めて

橋梁・橋脚を除く部分

 

一時的な工事用道路

盛土3m未満

植樹帯

盛土3m未満

サービスエリア・パーキングエリア

盛土3m未満

拡幅・改修の既存部分

既存道路部分の改良を行う場合

既存道路部分の改良を行わない場合

×

歩道等の拡幅工事

 

農道・私道等

基幹農道・幹線農道

 

支線農道・耕作道

 

私道等

構造令に準拠する

構造令に準拠しない

拡幅・改修の既存部分

既存道路部分の改良を行う場合

既存道路部分の改良を行わない場合

×

河川・ダム・貯水池

堤防・堤体

 

河川敷

低水路

高水敷

貯水部

常時満水域

サーチャジェット水域

恒久的な盛土・埋め土

 

3m程度以上

3m程度未満

遺構が顕在する部分での盛土

建築物等構造物

(個人住宅を含む)

建物敷

地盤改良を伴う場合

地盤改良を伴わない場合

緑地・遊閑地・庭

 

公園・ゴルフ場・駐車場・グラウンド

管理施設

建物に準じる

道路部分

構造令に準拠する

構造令に準拠しない

舗装面・砂利敷面

 

トラック等整地面

 

緑地部分

 

宅地造成・区画整理

面造成部

切土部分

盛土3m以上部

盛土3m未満部(住宅建設時対応)

道路部分

 

施設埋設部

 

ほ場整備関連

面工事

切り土部分

盛土3m以上

盛土3m未満

施設部分

建築物に準じる

排水路

 

用水路

 

パイプライン

 

暗渠排水

 

各種管埋設工事

 

幅1m以上

 

幅1m未満

自然崩壊

 

 

災害復旧

応急措置

法第57条の5及び第57条の6に準じる

復旧工事・移転地造成

安全、生存権、生活権を優先

備考

1 この表に記されていない開発行為に関する対応は教育委員会が決定するものとする。

2 開発内容を検討した結果、発掘調査を要しないと判断した場合についても、埋蔵文化財包蔵地内での行為については文化財保護法第57条の2第1項及び第57条の3第1項の手続を確実に行うこと。

3 発掘調査を実施しない場合であっても、通知・届出に対して工事立会いの指示があった場合はこれを確実に履行すること。

東近江市における開発工事に伴う埋蔵文化財発掘調査の取扱基準

平成17年2月11日 教育委員会訓令第11号

(平成17年2月11日施行)

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第7編 育/第6章 文化財
沿革情報
平成17年2月11日 教育委員会訓令第11号