○東近江市民の豊かな環境と風土づくり条例

平成18年3月27日

条例第7号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第6条)

第2章 良好な環境の保全に関する基本的施策

第1節 施策の策定等に関する基本方針(第7条・第8条)

第2節 環境基本計画(第9条)

第3節 環境上の基準(第10条)

第4節 良好な環境の保全のための行動指針(第11条・第12条)

第5節 良好な環境の保全を推進するための施策(第13条―第20条)

第3章 環境審議会(第21条)

第4章 雑則(第22条)

附則

東近江市は湖東平野の中央部に位置し、全体としては東西に長く、東側と西側で南北に膨らんだ鼓形つづみがたをした総面積383.36平方キロメートルの市域を形成している。市域の東側には三重県境に沿って鈴鹿山脈の山並みが横たわり、西側では一部が琵琶湖に面し、その大部分は沖積平野で占められている。また、鈴鹿山脈を源とする愛知川が市域のほぼ中央部を流下して琵琶湖に注いでおり、湖岸近くには西の湖に次いで大きな伊庭内湖もある。一方、山地部から山麓や丘陵にかけてはブナ・ミズナラ・カエデ類などの夏緑広葉樹林、シイ・カシ類の照葉樹林、コナラ・クヌギ・アベマキなどの落葉広葉樹林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林などの森林植生が分布し、沖積平野には社寺林や河畔林、湿生林、ヨシ群落などの多様な植生が生育している。こうした豊かな植生や自然環境に依存して、生態系の頂点に位置するイヌワシ・クマタカなどの猛禽類をはじめとして、特別天然記念物のカモシカなど、多種多様な野生動物が生息している。

悠久の昔から、この多様で豊かな自然の中で、人々は歴史的・文化的遺産を築き、固有の風土を発展させ、豊かな生活を享受してきた。しかし、急速な都市化の進展や自然の改変、また人々の社会活動や生活様式の大きな変化などによって、自然や風土を含めた環境に少なからぬ影響を与え続けた結果、さまざまな環境問題が地域のみならず、今や、地球規模の環境にまで及び、人類の生存基盤を脅かしかねない状況にある。環境問題はあまりにも広く、さまざまな課題が山積しており、それぞれの分野からの対応が迫られている。このため、その解決には発生源対策の徹底や循環型社会の形成、水源涵養・大気浄化・気象条件の緩和などの公益的機能をもつ森林を中心とした植生の保全・回復・創出、また生物多様性保全など、豊かな環境と風土を次世代に引き継いでいく東近江市民の行動が必要である。

ここに、市民による自主的、主体的な環境問題の解決を新たな文化の創造としてとらえた「環境文化」を推し進め、自然との共生を基本とした新しい環境観のもとに環境保全の基本となる方向性を示し、将来にわたる市民の健康で文化的な生活を実現するための良好な環境の具現化を目指して、この条例を制定するものである。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、本市における良好な環境の保全について、基本理念を定め、並びに市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本的事項を定めて、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、良好な環境を確保し、もって現在及び将来の市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 「環境文化」とは、環境問題の解決を目指しながら、健康で文化的な市民生活の確保による心の豊かさを追求し、自然環境を保全し、自然の中で生活と一体となって実現していくことをいう。

(2) 「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

(3) 「良好な環境」とは、市民が健康な心身を保持し、快適な生活を営むことができる生活環境及び自然環境をいう。「生活環境」とは、人の生活に関する環境をいい、人の生活に密接な関係のある財産並びに動植物及びその生育環境を含む。「自然環境」とは、自然の生態系をめぐる大地、大気、水及び動植物をいう。

(4) 「生物多様性の保全」とは、多種多様な野生生物との共生を図り、豊かな自然を将来世代へと引き継ぐことをいう。

(5) 「地球環境の保全」とは、人の活動による地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全をいう。

(基本理念)

第3条 良好な環境の保全は、市域の生活環境と自然環境が、人の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることに鑑み、次に掲げる基本理念により推進するものとする。

(1) 市民が健康な心身を保持し、安全かつ快適な生活を享受することができるような生活環境を確保するとともに、人の生存基盤である良好な環境が将来にわたって維持されるよう図らなければならない。

(2) 生態系を構成しているあらゆる生物は、自然の中で共生していることを認識し、生物多様性の保全を図るとともに、多様で良好な自然環境が地域の自然的、社会的条件に応じて体系的に保全されなければならない。

(3) 快適な地域環境を創造するため、水、緑、歴史、文化等、地域の地理的、歴史的及び文化的特色のある個性を生かした美しい景観の形成を図るとともに、伝統文化、歴史的遺産が保全され、並びに活用されることなどにより、良好な環境の保全が適切に行われなければならない。

(4) 地球資源の有限性と地球環境の重要性を認識し、自らの行動や事業活動を環境面から見直し、地球環境保全を視野に入れ、省資源、省エネルギーの徹底や資源リサイクルの推進などを行うことにより、環境への負荷の少ない循環型社会の構築を目指さなければならない。

(5) 良好な環境を確保するため、市、市民及び事業者がそれぞれの責務を自覚し、協働して環境保全型社会の実現に取り組むことにより、環境文化の推進を図らなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、基本理念にのっとり、良好な環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、自ら率先して良好な環境の保全に取り組むとともに、市民及び事業者の良好な環境の保全への取組みを支援するよう努めなければならない。

(市民の責務)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、自らの意識改革と日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めるとともに、良好な環境の保全に積極的に取り組み、市が実施する良好な環境の保全に関する施策に協力しなければならない。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、良好な環境の保全に関する自らの社会的責任を認識し、事業活動を行うに当たっては、良好な環境の保全に支障をきたさないよう努めなければならない。

2 事業者は、事業活動に伴う汚染物質等の環境への負荷の低減に努めなければならない。

3 事業者は、市が実施する良好な環境の保全に関する施策に参画し、協力しなければならない。

第2章 良好な環境の保全に関する基本的施策

第1節 施策の策定等に関する基本方針

(基本的施策)

第7条 市は、基本理念にのっとり、良好な環境の保全のために、次に掲げる施策を実施するよう努めなければならない。

(1) 人と自然との共生、生態系に配慮した自然環境の保全及び生物多様性の保全

(2) 公害の防止及び生活環境の保全

(3) 地域における循環型社会形成の推進

(4) 良好な景観の保全並びに歴史的及び文化的遺産の保全

(5) 地球温暖化の防止、オゾン層の保護等の地球環境の保全

(6) 前各号に掲げるもののほか、環境への負荷の低減に関する施策

(広域的な環境保全)

第8条 市は、自らが策定し、実施するより良い環境の保全施策について、広域的な観点から国及び他の地方公共団体に協力要請しながら、必要の範囲内において、その推進を図るようにしなければならない。

第2節 環境基本計画

第9条 市長は、良好な環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 良好な環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱

(2) 前号に掲げるもののほか、良好な環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、第21条に規定する東近江市環境審議会の意見を聴かなければならない。

4 市長は、環境基本計画を策定したときは、速やかにこれを公表しなければならない。

5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第3節 環境上の基準

第10条 市長は、良好な環境を確保するための望ましい環境上の基準を定め、良好な環境の保全に関する施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより、その基準が確保されるように努めなければならない。

2 前項の環境上の基準は、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。

第4節 良好な環境の保全のための行動指針

(環境行動指針)

第11条 市長は、良好な環境の保全等を誘導するため、市、市民及び事業者がそれぞれの立場で日常生活、事業活動及び施策の推進において環境に配慮すべき事項(以下「行動指針」という。)を定めなければならない。

2 市、市民及び事業者は、行動指針を遵守するよう努めるものとする。

(地域環境行動計画)

第12条 市民団体等は、基本理念にのっとり、その地域内の良好な環境の保全の確保のために、総合的かつ具体的な施策(以下「地域環境行動計画」という。)を策定し、市長に提出することができる。

2 市長は、前項の地域環境行動計画が提出されたときは、その計画を実施するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第5節 良好な環境の保全を推進するための施策

(森林資源及び水資源の保全等)

第13条 市は、森林及び植物の持つ二酸化炭素固定機能による温室効果ガスの削減、豊かな生態系の維持及び回復、防災機能の維持等、快適な地域環境の創造に取り組むため、良好な森林資源の保全と創出に努めるものとする。

2 市は、市民生活の基盤である水資源の保全及び確保のための施策を講ずるよう努めるものとする。

(身近な緑の保全及び創出)

第14条 市は、市民にとって身近な緑の保全及び創出のため、沿道及び公共施設等の緑化に努めるものとする。

(市の施策の策定等に当たっての配慮)

第15条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境に配慮し、適切に行うよう努めるものとする。

2 市は、前項の規定による環境への配慮について総合的に調整し、及び推進するために必要な措置を講ずるものとする。

(市民活動への支援)

第16条 市は、市民の良好な環境の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(環境学習の推進)

第17条 市は、市民及び事業者が人と環境とのかかわりについて理解と認識を深め、環境に配慮した日常生活及び事業活動ができるようにするため、良好な環境の保全に関する環境学習の推進、普及啓発事業の実施その他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(環境情報の提供)

第18条 市は、良好な環境の保全に関する教育及び学習が振興するようにするため、並びに市民及び事業者の良好な環境の保全に関する活動が促進されるようにするため、必要な情報を提供するよう努めるものとする。

(環境白書の作成)

第19条 市は、市の環境の現状及び良好な環境の保全に関して講じた施策の内容等について、これを公表するものとする。

(技術交流及び体制の整備)

第20条 市は、国、県及びその他の地方公共団体並びに大学、事業者、市民及び国際的に交流のある機関とも連携しながら、環境保全に関する情報交換及び技術交流に努めるものとする。

2 市は、環境の状況を把握し、並びに良好な環境の保全に関する施策を策定し、並びに実施するために必要な調査及び情報収集体制の整備に努めるものとする。

第3章 環境審議会

第21条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、市の区域における環境の保全に関し、基本的事項を調査審議するため、東近江市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 環境基本計画に関する事項

(2) 市民の環境を守るための条例に関する事項

(3) その他良好な環境の保全に関する重要事項

3 審議会は、次に掲げる者のうちから、市長が委嘱し、又は任命する委員20人以内で組織する。

(1) 環境保全に関し、学識経験を有する者

(2) 市民のうち環境保全に関し、識見を有する者

(3) 関係行政機関の職員

4 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第4章 雑則

(委任)

第22条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、平成18年4月1日から施行する。

(平成21年条例第31号)

この条例は、公布の日から施行する。

東近江市民の豊かな環境と風土づくり条例

平成18年3月27日 条例第7号

(平成21年12月21日施行)

体系情報
第8編 生/第5章 環境保全/第1節
沿革情報
平成18年3月27日 条例第7号
平成21年12月21日 条例第31号