○東近江市にぎわい里山づくり条例

平成18年9月26日

条例第34号

私たちの暮らしに、もっとも身近な自然であり、多様な生き物のすみかであり、なじみ深い風景でもあったもの―それが、里山です。

かつて、人々に利用されることによって成り立っていた豊かな里山の自然は、薪柴の採取や暮らしの中での利用がなされなくなって以来、手入れもされなくなり、また開発によって森そのものも消滅してきました。

本市の里山は、実に多様です。平地や山麓の里山にはアカマツ林が多く、また、コナラやアベマキなどのドングリの木が多い里山も見られます。そして、愛知川に沿って分布する平地の河辺林は、非常に特異な里山と言えます。

このような特徴的な里山がありながら、そこから人は去り、そしてまた生き物も去っていきました。

しかし近年、暮らしとの結びつきが薄れていた里山が、社会の中で大切なものだという認識に変わってきました。本市においても、多くの市民団体が里山保全活動を始めています。今こそ、市民一人ひとりが里山の恩恵を見つめなおし、里山保全活動を行うことで、里山に人のにぎわいだけでなく、動物や植物といった生き物のにぎわいを取り戻す絶好の機会です。

本市では、里山を保全するだけでなく、人と自然を結びつける場として活用することを、里山づくりと称します。この里山づくりを積極的に推進することが、生物多様性に富んだ里山を保全することはもちろん、保全活動で生じた資源を暮らしの中で使うことで循環型社会の構築に寄与し、さらにはその活動に関わる人も元気にし、それは里山とともに生きるよりよいまちづくりに結びつくものと信じて、ここに東近江市にぎわい里山づくり条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、東近江市民の豊かな環境と風土づくり条例(平成18年東近江市条例第7号)の基本理念にのっとり、集落の近くにあって、かつて人々が持続的に暮らしに利用していた、又は現在も利用している里山(以下「里山」という。)の保全及び多面的な活用について、基本方針を定め、市の責務並びに市民、土地所有者等及び里山保全活動団体の役割を明らかにするとともに、生物多様性に富んだ、暮らしと結びついた里山づくりを推進することによって、市民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 里山づくり 里山を保全し、多面的に活用することをいう。

(2) 土地所有者等 里山の所有者又は里山を使用収益する権原を有する者をいう。

(3) 里山保全活動団体 里山の保全に係る活動を主体的かつ持続的に行う団体をいう。

(基本方針)

第3条 里山づくりは、次に掲げる基本方針に基づき行わなければならない。

(1) 生物多様性の保全及び健全な里山の存続に配慮することで、里山が人々へ様々な恵みをもたらし、土、水及び空気の保全を始めとした多面的な機能を有するようにする。

(2) 市民が、里山を身近な自然として親しむことができるようにするとともに、里山を利用した環境学習及び体験学習を推進し、里山に対する認識を深められるようにする。

(3) 里山との関わりの中で育まれてきた優れた知恵、技、文化及び伝統を、人と自然とのつきあいが生み出した財産として、次代に継承する。

(4) 里山の景観が、風土に培われたなじみ深い風景となるようにするとともに、これを地域景観として将来に引き継ぐこととする。

(5) 里山保全活動によって生じる里山の資源を、農業を始めとした産業又は日常の暮らしの中で積極的に利用し、環境への負荷が少ない循環型社会の構築に寄与する。

(6) 市民自らが里山に主体的かつ持続的に関わることで、暮らしと結びついた里山となるようにする。

(7) 市民が里山保全活動に参加する中で、楽しみながら、人と人との交流を深め、健康づくりを進め、地域の自然をよりよく知ることによって、元気な人が育まれ、よりよいまちづくりにつながるようにする。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する里山づくりについての基本方針(以下「基本方針」という。)にのっとり、里山づくりに係る施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 市は、里山に親しむ機会を提供することを通じて、市民が主体的に里山保全活動に参加できるよう支援するとともに、里山保全活動団体が持続的に活動を行えるよう支援する。

(市民の役割)

第5条 市民は、基本方針にのっとり、身近な自然である里山に親しむことを通じて、改めて里山を見つめなおし、里山に対する認識を深め、その保全活動に主体的に参加するよう努めるものとする。

(土地所有者等の役割)

第6条 土地所有者等は、基本方針にのっとり、自らが所有し、又は権原を有する里山を積極的に保全するとともに、市が実施する里山づくりに関する施策及び当該里山で活動する里山保全活動団体に協力するよう努めるものとする。

(里山保全活動団体の役割)

第7条 里山保全活動団体は、基本方針にのっとり、自らが本市の自然を保全していくことを誇りとして、市が実施する里山づくりに関する施策と連携し、主体的かつ持続的に里山保全活動を行うよう努めるものとする。

(にぎわい里山づくり団体の認定)

第8条 市長は、本市の里山を対象として、基本方針にのっとり里山づくりを実施し、又は実施し得ると認められる里山保全活動団体を、規則で定めるところにより、にぎわい里山づくり団体(以下「認定団体」という。)として認定することができる。

2 前項の規定による認定を受けようとする里山保全活動団体は、規則で定めるところにより、市長に申請しなければならない。

3 認定団体は、認定を受けた事項に変更が生じたときは、速やかに市長に届け出なければならない。

4 市長は、認定団体が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、認定を取り消すものとする。

(1) 認定団体の行う活動が、基本方針と著しく異なると認められるとき。

(2) 認定団体が、次条の規定による助言又は指導に対し、正当な理由がなく明らかに反した行為を行うとき。

(3) 認定団体が、偽りその他不正の手段により、認定を受けたとき。

(4) 認定団体が、認定の取消しを求めるとき。

(認定団体への支援)

第9条 市長は、認定団体の活動を支援するために、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

2 市長は、必要があると認めるときは、認定団体に対し、里山づくりに関して必要な助言又は指導を行うことができる。

(守り育てたい里山の指定)

第10条 市長は、次代に継承すべき里山を効果的に保全するため、次の各号のいずれかに該当する里山を、守り育てたい里山として指定することができる。

(1) 生物多様性の保全及び向上並びに健全な里山の存続のために、保全していくことがふさわしい里山

(2) 市民が身近な自然として親しめる場並びに環境学習及び体験学習の場として利用するために、保全していくことがふさわしい里山

(3) 里山との関わりの中で育まれてきた優れた知恵、技、文化及び伝統を継承するために、保全していくことがふさわしい里山

(4) 風土に培われたなじみ深い風景として、将来にわたって引き継ぐ地域景観とするために、保全していくことがふさわしい里山

(5) 農業を始めとした産業又は日常の暮らしの中で、人と里山の良好な結びつきを示す範とするために、保全していくことがふさわしい里山

(6) 前各号のほか、特に市長が保全していく必要があると認める里山

2 市長は、守り育てたい里山を指定するに当たっては、土地所有者等の同意を得なければならない。

3 市民及び土地所有者等は、第1項各号のいずれかに該当すると認められる里山について、同項の指定をするよう、市長に提案することができる。

4 市長は、第1項の規定により指定した守り育てたい里山の状況が、市の推進する保全の方向性と著しく異なる状況になり、その回復又は保全が困難であると認めるときは、指定を解除するものとする。

(守り育てたい里山の公表)

第11条 市長は、前条第1項の規定により守り育てたい里山を指定したときは、当該守り育てたい里山について次に掲げる事項を公表するものとする。

(1) 指定年月日、所在地、面積及び土地所有者等の氏名(ただし、土地所有者等の氏名は、本人の同意があるときのみ公表するものとする。)

(2) 主な特徴及びおおむねの生物相

(3) 指定の理由

(4) 市が推進する保全の方向性

(5) 里山保全活動団体の活動状況

(6) 認定団体の活動受入れの可否

2 市長は、前項の規定により公表した事項に変更が生じたときは、速やかに変更内容を公表するものとする。

(守り育てたい里山の保全)

第12条 守り育てたい里山は、土地所有者等が自ら保全するように努めるものとする。ただし、土地所有者等による保全が困難な場合又は土地所有者等から申し出があった場合には、市長は認定団体に対して、当該守り育てたい里山を活動場所として斡旋することができる。

2 前項の規定による斡旋を受けた認定団体は、守り育てたい里山の土地所有者等と里山づくりに関する協定を締結するとともに、市長が公表する保全の方向性に沿って、里山づくりを実施するものとする。

3 前項の里山づくりに関する協定には、規則に規定する事項を定めなければならない。

(里山保全活動によって生じる資源の利用推進)

第13条 市長は、里山保全活動によって生じる資源の利用を推進することで、農業を始めとした産業と里山との結びつきを再構築するとともに、市民の暮らしの中で地産地消及びバイオマスエネルギーの利用を進めることによって、環境への負荷の少ない循環型社会の構築に寄与するよう努めるものとする。

2 市長は、里山保全活動によって生じる資源の利用を推進するために、市民が、薪ストーブその他の里山保全活動の結果生じる伐採樹木等を有効に利用する機器等の購入に要する費用について、その一部を補助することができる。

(市民による里山保全活動を推進するための措置)

第14条 市長は、市民が里山に対する認識を深め、その保全活動に主体的かつ持続的に参加できるようにするため、里山に関する広報活動の充実、市民が里山に親しむ機会の提供、里山を活用した環境学習及び体験学習の実施その他必要な措置を講ずるものとする。

(調査及び研究並びに意見の聴取)

第15条 市長は、里山づくりを推進するため、里山に関する調査及び研究を行うとともに、その内容について、認定団体その他の関係者から意見を聴取し、これを里山づくりに関する施策に反映させるものとする。

(里山以外の森林保全活動との連携)

第16条 市長は、里山保全活動団体が、里山以外の森林保全活動を行う個人、法人その他の団体と、人、技術及び資源の交流を図れるよう施策を講じ、もって相互の保全活動を効果的に推進することで、里山を含む多様な自然が、健全に存続するよう配慮しなければならない。

(委任)

第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

東近江市にぎわい里山づくり条例

平成18年9月26日 条例第34号

(平成18年9月26日施行)