特集 今、始まる 東近江市地域医療改革プロジェクト  写真:病院の廊下のイメージ  誰もが安心して、明日に希望を持って暮らせることは、市民のみなさんの願いです。しかし、地域医療は医師不足をはじめとした危機的な状況になっています。  この危機を乗り越え、地域医療を守るため、「東近江市病院等整備計画」に基づき、本市は一歩ずつ着実に、医療提供体制の確立を進めていきます。  写真:<1>小児科の診察 <2>看護師の打ち合わせ <3>検査風景  <1>優しい眼差(まなざ)しで診察にあたる(能登川病院)  <2>看護師の打ち合わせは重要(国立滋賀病院)  <3>万全の体制で検査を行う(蒲生病院) ●医療崩壊は、「しくみ」が原因。新しい「しくみ」づくりで、解決の糸口を見いだせる。  本市には、能登川病院、蒲生病院の2つの市立病院と、国立病院機構滋賀病院の3つの公立病院があります。  しかし、新医師臨床(りんしょう)研修制度が引き金になって医師数が減少し、救急の受け入れ体制や、小児科、整形外科、外科などの診療体制が弱体化(じゃくたいか)し、本市の医療は危機的な状況になっています。  こうした現状を打開するため、平成21年度から「東近江市立病院等整備委員会」において、課題の克服と市民が安心できる医療体制を再構築するための方策について、議論をしていただきました。 ●安心できる医療体制は、みんなの願い。公立病院の将来像が、具体的に見えてきた。  同委員会からの提言を受けて作成した「東近江市病院等整備計画」は、本市および東近江医療圏域内で地域住民が安心して医療を受けることができるよう、滋賀病院や2つの市立病院のめざすべき姿を明らかにしたものです。  具体的には、「寄附講座」と「病院の再編成」をキーワードに、市全体の医療提供体制を築くことで、市民のみなさんに安全と安心を提供し、信頼される地域医療を確立します。 ◆医療関係者の声 Voice01 ◇柏木厚典(かしわぎ あつのり)さん(滋賀医科大学附属病院 病院長)  本学に設立された寄附講座(総合内科学・総合外科学講座)のスタッフ14人を新たに国立病院機構滋賀病院に設立される東近江市総合医療センターへ派遣します。  これは全国でもめずらしい画期的な試みであり、中核病院内に医師臨床研修の活動拠点を設け、総合的医師研修病院として持続的な医師確保を図ります。  中核病院には総合内科・総合外科を一体化して、幅広い病気の診療にあたるとともに、二次救急を積極的に受け入れ、総合診療の研修を希望する若い研修医師が充実した臨床研修を積みうるマグネットホスピタルをめざします。さらに、圏域内および東近江市内の病院・診療所と連携して、地域住民のみなさんの安心・安全のまちづくりに積極的に貢献していきます。  写真:柏木病院長 ◇井上修平(いのうえ しゅうへい)さん(独立行政法人国立病院機構滋賀病院 院長)  当院は中核病院として本格稼動することになりました。この計画の実行には、建物や医療機器の整備、経営や職員確保など難関も多くあります。市民のみなさんに支えていただきながら、中核病院を整備する責任者として、魅力ある病院づくりに全力で取り組みます。  写真:井上院長 ●キーワード1【寄附講座】  医師は、待っていても来ない。寄附講座を中核病院内に開設し、医師確保のしくみをつくる。  現状のままでは、減ることはあっても増える見込みのない、医師不足の問題。本計画では、地域医療を担う総合医を育成するため、滋賀病院に整備する中核病院*1内に、滋賀医科大学の寄附講座*2を設け、内科系の医師9人、外科系の医師5人を派遣し、総合内科学講座、総合外科学講座を開設します。自治体が医科大学内に寄附講座を開設することはよくありますが、中核病院内に開設することは全国でもめずらしい事例です。  寄附講座には、大学の教授クラスの医師が教官として常勤しますので、研修医師の指導とともに市民のみなさんに安定的な医療をより一層提供することが可能になります。 *1 中核病院(ちゅうかくびょういん)(仮称:東近江市総合医療センター)  かかりつけ医では行うことが難しい専門的な検査や治療など、市内・圏域内のほかの医療機関ではできない機能をもつことで、地域の医療連携の中核を担います。 *2 寄附講座(きふこうざ)  通常は、資金を提供して医科大学内に講座を開設し、そこで得た成果を資金提供元に返します。しかし今回は、中核病院内に講座を開設するという、いわば滋賀医科大学の「総合内科」と「総合外科」の分校をつくるというめずらしい手法です。6月18日には、滋賀医科大学、滋賀県、独立行政法人国立病院機構、東近江市との間で、寄附講座の設置に関する協定を結びました。寄附講座は、今年度秋ごろに開設される予定です。 ◆医療関係者の声 Voice02 ◇角野文彦(かくの ふみひこ)さん(滋賀県健康推進課 課長)  東近江圏域が地域医療再生基金*3の対象地域に選定されました。将来、市民のみなさんに「ここに生まれてよかった、住んでよかった」と思ってもらえると確信しています。県としても、しっかりとした取り組みをしていきたいと思います。  写真:角野課長 ◇小鳥輝男(おどり てるお)さん(滋賀県医師会 副会長)  難しい地域医療問題の解決に向けて、何年も話し合ってきました。何よりも西澤市長と滋賀医科大学の情熱を感じました。さまざまな困難を乗り越えて市の総合医療センターが設立されることを心から祈ります。  写真:小鳥副会長 *3 地域医療再生基金  厚生労働省の地域医療の再生に向けた総合的な対策として、都道府県が「地域医療再生計画」を策定し、その内容に沿った事業を支援する基金です。今回、滋賀県に交付される50億円のうち、東近江医療圏域に18.4億円が使われることになりました。 ●キーワード2【病院の再編成】 病院を再編成し、長所を生かす。医療・福祉の連携体制により、在宅生活までの道すじをつける。  滋賀病院、能登川病院、蒲生病院の3つの病院を再編成し、滋賀病院内に東近江市の中核病院を整備します。滋賀医科大学の支援により今年度から医療体制の充実を図り、平成25年度には320床の新病院の開設をめざします。  この中核病院は、急性期(きゅうせいき)医療を中心に提供し、特に現在、本市で不足している救急の分野を充実させるとともに、小児科、産婦人科、整形外科などをはじめ下のような幅広い疾患に対応が可能な体制をつくります。能登川病院および蒲生病院は、中核病院をはじめとした急性期医療機関を後方支援する医療機関として整備します。  また、今回の病院再編成をきっかけに、下のようにそれぞれの医療機関の長所を最大限に生かした医療連携体制をつくります。このことによって、全国的にも評価の高い、医療と福祉が連携した東近江医療圏域の「地域連携クリティカルパス*4」がより一層充実し、在宅の生活まで切れ目のない最良な医療福祉を提供します。 *4 地域連携クリティカルパス  患者さんと医療・福祉などの関係者が連携し、理解を深めながら、在宅での生活までの道すじをつけるものです。  例えば、救急車で運びこまれた患者さんは、急性期の治療を行います。その後、早く家に帰れるように、リハビリに特化した病院へ転院します。そして最終的に、在宅介護サービスなども活用しながら、普段の暮らしに戻れるようにします。 ●3公立病院 再編成のイメージ ◇病院と診療科目 ※印は新たに設置する診療科目  ○中核病院 320床   総合内科・神経内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科・小児科・外科・整形外科・脳神経外科・呼吸器外科・心臓血管外科・泌尿器科・眼科・耳鼻いんこう科・放射線科・リハビリテーション科・歯科口腔外科・血液内科※・産婦人科※・精神科※  ○市立能登川病院 60床   総合内科・外科・整形外科・肛門外科・小児科・眼科・耳鼻いんこう科・リハビリテーション科・皮膚科  ○蒲生病院60床または0床   総合内科・外科・整形外科・脳神経外科・小児科・眼科・耳鼻いんこう科・リハビリテーション科・放射線科 ◇連携のイメージ図 滋賀医科大学・滋賀県・東近江市・中核病院の4者で寄附講座を設置し、滋賀医科大学から中核病院へ医師を派遣する。 中核病院は能登川病院・蒲生病院に医師を派遣し、能登川病院・蒲生病院は中核病院を後方支援する。 中核病院・能登川病院・蒲生病院・かかりつけ医・医療機関・介護サービスなどが連携する。 ◆医療関係者の声 Voice03 ◇中村喜久生(なかむら きくお)さん(東近江医師会 会長)  滋賀医科大学の全面的な協力が確約されたことで、医師不足から始まった医療崩壊を解消できる道すじが見えてきました。東近江医師会も、地域のかかりつけ医として、病院と診療所との連携を密にし、救急医療体制や在宅医療などの充実に協力していきます。 ●プロジェクトを進めると、「五方(ごほう)よし」が実現できる。地域医療を支えるものは、市民の意識。  この医療改革プロジェクトによって、次の「五方よし」が実現できると考えています。 <1>市民よし     医師不足解消により、安心して医療が受けられる。 <2>滋賀医科大学よし 寄附講座の開設で、研修医を派遣する拠点病院が確保できる。 <3>国立病院機構よし 滋賀医科大学からの医師を確保できる。 <4>滋賀県よし    滋賀医科大学を卒業した医師の県内確保に向けた具体策が見える。 <5>東近江市よし   近江八幡市立総合医療センターとともに、東近江圏域内での地域医療の責任が果たせる。  地域の医療を守るため、本市はこの計画を全力で推進していきます。そして、まちの医療を支えるのは市民一人ひとりの意識です。計画の実現に向けて、市民のみなさんのご協力をお願いします。 問=地域医療政策課・病院管理課  電話=0748-24-5685 IP=050-5801-5685