■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 特集 障害のある人の「働きたい」を実現できるように... 写真=障害のある人が通所する八身福祉会。一般企業への就職に向け、工場の下請けなどの部品の組み立て作業といった職業訓練に取り組む。 写真=社会福祉法人 八身福祉会(林田町) 写真=八身福祉会 施設長の小島滋之さん。「障害のある人も充実した社会生活を送って欲しい。そのためにも、雇用する企業が1社でも増えて、ともに働く社会が広がることを願っています。」  社会福祉法人 八身福祉会(林田町)では、障害のある人が一般企業への就職をめざす「就労移行支援事業」を展開されています。午前8時から午後5時までの長時間の作業ですが、日々、6人が働くために必要なマナーや習慣、技能を身につけながら、一生懸命に、そして和気あいあいと作業に取り組まれています。  一般企業に就職すれば所得が向上し、自立した生活を送る一助になることが大きなメリットですが、小島滋之施設長は「ほめられる。必要とされる。人の役に立つ。そうした労働の本質を感じられることも大切だと思っています。」と話されます。  同法人では、特に「働き続ける力」の育成に力を置いています。仕事の早さ、手先の器用さといった仕事をする上での能力も必要ですが、本人が働きたいという意思を持ち、勤務を続ける力を身につけることが大切だという思いがあるからです。通所者の一人からは「ここで勉強して、一つの仕事にしっかり向き合える職場に就きたい。」という声が聞かれました。「障害のある人を雇用する企業が1社でも増えて、ともに働く社会が広がっていけば」。小島さんはそう願っています。 写真=「難しいことだけど、自分に自信を持てるようになれば、困難も乗り越えることができる。」と、自分に言い聞かせるように話してくれた池之内彩加さん。神崎中央病院でパソコン事務などで活躍している。 写真=医療法人医誠会 神崎中央病院(五個荘清水鼻町) 写真=医療法人医誠会 人事部の堀美雪さん。「当法人も障害者雇用を積極的に始めたころは、うまくなじめず辞職されるなど、失敗もありました。でも雇用を続けることで経験やノウハウも蓄積し、今はより長く仕事を続けてもらえることに重点を置いています。」  医療法人医誠会 神崎中央病院(五個荘清水鼻町)で働く池之内彩加さん。パソコンの打ち込み作業や、同病院の広報紙「はなてんびん」の発送作業などを担当されています。八身福祉会の就労移行支援事業で身に付けた計算作業が役に立っているそうです。  障害者雇用を進める医療法人医誠会人事部の堀美雪さんは「命を預かる現場ということもあり、最初は慎重だった。」と振り返ります。しかし現在は法人全体で57人、そのうち、神崎中央病院では6人の障害のある人が働いています。「その人に合わせて、こなしてもらえる仕事、任せることができる仕事を選ぶことが大切です。池之内さんはとても真面目で仕事熱心。現場から『いてくれて助かる』との声を聞きます。」と話します。  冬が苦手と話す池之内さん。寒さが身にしみる原動機付自転車での通勤はつらかったそうですが、病院で働き始めて所得が増え、軽自動車を購入することができました。『仕事を頑張る』そう自分で決めたから。職場で「よく頑張ってるね。」と言われると、とても嬉しいそうです。「ミスをせず、今後も仕事をしたい。」という目標に向かって、しっかりと歩んでいきます。 ・障害者雇用の現状と本市の取り組み  障害のある人の「働きたい」という就労意欲は年々高まっており、就労支援や生活支援、職業訓練などの雇用対策が進められていますが、労働者全体に占める障害のある人の雇用率はまだまだ低い状況です。  本市でもさまざまな就労支援施策に力を入れており、市役所での職場体験実習の受け入れのほか、本年度から企業での職場実習を促進する「職場実習奨励金制度」の創設などに取り組んでいます。 ・ 障害者雇用促進法では、企業に対して、雇用する労働者の2.0%(従業員が50人以上の民間企業の場合)に相当する障害者の雇用を義務付けています。(障害者雇用率制度) ■障害者雇用状況(平成26年度) 実雇用率(目標値:2.0%) 達成企業割合 全 国 1.82%           44.7% 滋賀県 1.87%           54.9% ・就労移行支援事業 働き続ける力を身に付ける  就労移行支援事業は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつで、冒頭で紹介した八身福祉会のほか、市内では社会福祉法人あゆみ福祉会や社会福祉法人グローでも事業を展開されています。  就労を希望する65歳未満の障害のある人に対し、仕事をする上で必要なスキルなどを身に付ける職業訓練のほか、就職活動もサポートします。就労を支える生活支援についても、ほかの支援機関と連携し、個々の適性に合った就職をめざします。そして、就職後には長く働き続けられるよう職場への定期的な訪問を行います。 写真=作業場での作業の様子 ・東近江圏域の取り組み 障害のある人を支える33機関の輪  本市では、障害のある人の自立と安定した社会生活が実現できるよう、東近江圏域働き・暮らし応援センターや特別支援学校、ハローワーク東近江や企業などが連携し、就業および社会生活上の支援を行っています。  平成22年には、障害福祉に携わる33機関で「東近江圏域就労ネットワーク(いちおしネット)」を組織しました。障害のある人の雇用を考えている企業への情報発信や、すでに雇用されている企業へのフォローなどに取り組んでいます。また、障害者雇用についてのきっかけ作りや課題解決に向けた意見交換を行う「いちおしフォーラム」を毎年開催し、今年は23社の企業と各支援機関が参加しました。 ・「障害」と向き合い、「個性」を認め合う  障害者雇用は、障害のある人の得意なところ、不得意なところなどを見極め、それが生かせる場所を見つけ、サポートすることが大切です。これは、障害の有無に関わらず、誰でも自信のあること、苦手なことがあるように、それを「個性」として認め合い尊重することが、障害者雇用の第一歩となります。  近年、関係法令の整備とともに、障害者雇用に前向きな企業などが増えつつありますが、障害のある人が一般企業などで働くには、周囲の理解不足や職場環境の体制整備の遅れなど、依然として高いハードルがあります。  行政、企業、そして市民の皆さんが障害のある人の「働きたい」という意欲を尊重し、心と環境のハードルを低くするための理解を深めることが、誰もが暮らしやすい東近江市につながります。 問=障害福祉課 電話=0748−24−5640 IP=050−5801−5640 TOPICS1 ・障害を理由とする差別を禁止 「障害者差別解消法」 来年4月施行  この法律の特徴は、国の行政機関や地方公共団体および民間事業者による「障害を理由とする差別」を禁止していることにあります。この差別とは、障害を理由として、正当な理由なくサービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為をいいます。  また、障害のある人から、例えば筆談や読み上げといった何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、負担になり過ぎない範囲で合理的な配慮を行うことが求められます。こうした配慮を行わないことで、障害のある人の権利権益が侵害される場合も差別に当たります。 TOPICS2 ・人格と個性を尊重し支え合う 12月3日から9日までは障害者週間です  障害者福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害のある人が社会、経済、文化そのほかあらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるために設けられました。  障害についての理解を深め、人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」をつくっていきましょう。 画像:平成27年度障害者週間ポスター