■記号は、問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファクス 特集 新春対談  株式会社招福楼 代表取締役 中村成実 × 東近江市長 小椋正清    聞き手 東近江スマイルネット キャスター 岡崎みゆき ●東近江市の魅力を生かした 観光施策と地域活性化の展望  鈴鹿から琵琶湖まで広がる多様な自然、奥深い歴史・文化・伝統を有する東近江市。本市の魅力を生かして、観光施策を進め、いかにまちの活性化につなげるか。  近江鉄道八日市駅前にある老舗料亭「招福楼」代表取締役の中村成実さんをゲストにお招きし、小椋市長と対談しました。 ●プロフィール 中村成実さん  昭和30年、東近江市(旧八日市市)生まれ。中学校卒業後、花園高校・大学で禅学を学びながら京都花園妙心寺山内霊雲院で7年間修行を行う。大学卒業と同時に得度出家する。  昭和55年秋に家業に戻り、神戸店厨房に入り店長を兼ね向板、昭和58年から本店向板、煮方を務める。平成4年9月から招福楼の四代目となる。  昭和58年から表千家山下恵光宗匠の下に入門し、今も茶の湯の指導を受け、懐石料理の原点を勉強し調理に携わる。 ●多様な自然、奥深い歴史が紡ぐ豊かな文化  小椋 明けましておめでとうございます。平成最後のお正月となり、4カ月には新しい時代が始まります。皆さんにとって素晴らしい年になりますようご祈念申し上げるとともに、引き続き市政に対するご支援ご協力を賜りますようよろしくお願いします。  中村 明けましておめでとうございます。本年が平和で皆さまにとって素晴らしい年になりますようご祈念申し上げます。  ― 東近江市の魅力をどのようにお感じでしょうか。―  小椋 東には日本列島を東西に分ける鈴鹿山脈、西には日本一の琵琶湖が広がり、森里川湖に多様な自然があります。また、その中には奥深い歴史があり、素晴らしい文化がつむがれてきました。     さらには、大阪、名古屋といった大都市に近接しているという地の利もあり、東近江市は豊かさが維持でき、今後も発展できる地域だと感じています。  中村 東近江市で生まれ、育ち、今は東京のお店にも出張もしています。東京から東近江市に帰ると気持ちがほっとします。山が見え、水が見え、本当に自然が豊かなまちだと感じています。食材もたいへん豊かです。さらに、買い物もできる場所が適度にあり利便性も高いと感じています。 ●魅力を発信し、「おもてなし」の心で迎える  ― そのような東近江市の魅力をどのように発信するとよいとお考えですか。―  小椋 まずは、東近江市の知名度を上げる必要があります。昨年はアイドルグループ「ももいろクローバーZ」のイベントを誘致し、全国から大勢の人にお越しいただきました。     また、株式会社モンベルと連携した「びわ湖東近江SEA TO SUMMIT2018」では、鈴鹿山脈から琵琶湖まで広がる本市の自然をフィールドとしています。     さらに、11月には「まるごと東近江」と題し、東京で東近江市の魅力を披露するイベントを行いました。近江商人姿で日本橋を目指すなどたいへん話題になりました。イベントの波及効果として知名度向上を目指していますが、今後は、宿泊施設や飲食店など東近江市を訪れた人を受け入れる体制の整備が必要であり、注力したいと考えています。  中村 私たちの世界では、「おもてなし」の心が一番大切です。おもてなしとは、お客さんのことを考え、その人の好みなどに合わせてお迎えの場所を掃除して、飾り付け、器を用意し、料理を出す、そのような気配り、心がけのことです。観光施策でも同じで、駅に来た人が迷わず観光地に行けたり、飲食店を見つけやすかったりするようなおもてなしの精神のある案内が必要と考えています。 ●多彩な食の恵みを、地域で感受できる仕組みを  ― 東近江市には魅力ある「食」もたくさんありますが、「食」に関する取組についての考えを教えてください。―  小椋 滋賀県の食文化は大変多様性のあるものです。鮒寿司、湖魚であるホンモロコ、鮎、新鮮な野菜、地酒、近江米、近江牛など全国に誇れる素晴らしい食文化があります。     東近江市にも、それらが多くあり、クオリティの高い食文化を形成してきました。東近江市では取れない海の幸については、一昨年に三重県南伊勢町と連携協定を結び、流通の仕組みづくりを進めています。     また、地域のスーパーに地元の新鮮な野菜が供給できるよう、昨年には、市と市内の農業協同組合が出資して、地域商社である「株式会社東近江あぐりステーション」を立ち上げ、地域内流通の仕組みづくりにも取り組んでいます。  中村 「御馳走」という言葉には、「食材を走り回って用意する」という意味があります。東近江市には、ホンモロコ、鮎、近江カブラなど大変素晴らしい食材がありますので、お客さんのことを考えながら食材を取り寄せています。     かつては、市内にも新鮮な魚や野菜を扱う商店がたくさんありましたが、少なくなってしまいました。産地にある新鮮で一級品の食材が、地域内で流通できるよう、例えば毎月定期的に新鮮な食材が集まるマーケットが開催できるようになればいいと思っています。そうすることで各家庭でも地域の食材を使った家庭料理を作ることができるようになり、子どもの食育にもつながります。幼い頃から新鮮な一級品を食べることは必要なことだと考えています。  小椋 東近江市は、滋賀県を象徴する食のほかにも、メロンや梨、ブドウ、イチゴなど果物の栽培も大変盛んで、道の駅あいとうマーガレットステーションには、新鮮な果物を求め、多くのお客さんが訪れます。おいしいものがあれば、遠方からもわざわざお客さんが来てくれます。  中村 便利になった世の中だからこそ、家で料理をしてほしいですね。一番のおもてなしは、お客さんを家に招いて手料理を振舞うことです。私たちの世界では、庭園、建築、室内の装飾、料理のすべてがお客さんをおもてなしする道具です。お客さんのことを考えておもてなしの準備をし、お客さんもそのおもてなしに感謝する、そういう茶道の精神、禅の精神を日常にも取り入れられるとよいと考えます。そのような精神は、まちづくりにも生かすことができると思います。 ●中心市街地を核として、地域の宝物を結び、豊かさを実感できるように  ― 招福楼もある中心市街地、にぎわいが出てきたと感じますが、今後の展開やアイデアを教えてください。―  小椋 近江鉄道八日市駅周辺は、全国屈指の商業地域でしたが、大都市への集中が進み、商業施設の流出が続きました。商業中心性指標(注)も0.85で消費が地域外に流れていることが分かります。人口11万5千人の東近江市に若い人が集え、楽しめる場所を作るため、地方創生の枠組みの中で取り組んでいます。東近江市で生涯にわたり暮らし、幸せだと実感できる自己完結能力の高いまちをつくるためにも、中心市街地の活性化は必要不可欠です。今後も、経済界と一体となって取り組んでいきます。  中村 昨年から市が取り組まれている延命新地地区の整備にあわせ、駅を降りた人が気軽に入れるようなお店を開店させました。     今後は、交通インフラを強化するなどして、より中心市街地の利便性を高めることが必要と感じています。無人バスの運行もひとつのアイデアだと思います。     また、市内には、多くの資源が点在していますので、それらをつなぐ取組も必要だと考えます。  小椋 中村さんがおっしゃるとおり、市内には宝物が点在しているので線で結びPRすることが必要です。まずは、市民の皆さんが宝物の価値に気付き、まちに誇りを持つことが重要です。  中村 全国からお越しくださるお客さんと話をすると、改めてまちの良さに気付けます。外から見るということも大切です。東近江市内は広いので、市内全域を観光しようとすると時間がかかります。長期滞在ができ、地域の食材を自分で調理ができる滞在型の宿泊施設も必要だと考えます。  (注)商業中心性指標とは、(市内小売業年間販売額/市の人口)/(県内小売業年間販売額/県の人口)で算出され、ある市の小売業がその市の属する県の顧客をどれだけ吸収しているかを示すもの ●将来を見据えて継続性のあるまちづくりに ― 市政に期待することがありましたら教えてください。―  中村 おもてなしをする際と同じで、まちづくりにはマニュアルがなく、臨機応変に対応することが必要だと考えています。行政の取組はどうしても年度ごとの取組になりがちですが、継続性をもって臨機応変に対応できるようにしていただきたいと思います。     また、東近江市内は広いので、車を運転できない市民の皆さんも、地域内をスムーズに移動できるように、地域内交通にも力を入れていただきたいと思います。 ― 市長から市民の皆さんへメッセージをお願いします。―  小椋 まちづくりは、10年先、20年先を見据えて今やるべきことを考えることが必要です。地方創生の枠組みを使って取り組める期間も残りわずかとなりましたので、今は全力で取組を進めます。全国の自治体間で地域間競争が激化する中、必死に取り組まなければ取り残されてしまいます。今年も、東近江市の発展のため頑張りますので、ご理解、ご支援をいただきますようお願い申し上げます。 ●新春対談の様子は東近江スマイルネットで放送します。(15分番組) ◆1月1日(祝)8:00、13:00、18:00 1月2日(水)10:30、15:30、20:30 1月3日(木)8:00、13:00、18:00、23:00 ※1月4日(金)〜7日(月)も放送します。 ※詳しい放送予定は、東近江スマイルネットの番組表をご覧ください。