■記号は、時=日時、場=場所、対=対象、定=定員、持=持ち物、申=申込み、問=問合せ、IP=IP電話 特集 人生100年時代 「みらいノート」で描く、第二の人生  平均寿命が延び、退職後や子育て、介護がひと段落した後の時間が長くなる傾向があります。  「みらいノート」を使い、第二、第三の人生について考えることで自分らしい暮らしが実現できます。  問=福祉総合支援課 電話=0748-24-5641 IP=050-5801-5641 FAX=0748-24-5693 ●自分らしい未来を作るためのノート  みらいノートは、自分の名前や生年月日などの基本情報に始まり、自分が歩んできた人生や、これからどのように過ごしたいかを書き込み整理することができるノートです。  現在、世の中には、介護などに関するさまざまな制度やサービスがあり、どういったものを活用するか自分自身で選ぶことが尊重される社会になっています。しかし、いざという時に自分自身でどのように人生を送りたいかを見つめ直し考えることは大変難しいことです。「終活」という  言葉が数年前にブームになり、自分の最期について考えるための「エンディングノート」がメディアで特集されたり書店に並んだりもしています。  みらいノートは、自分の最期に加え、これまでの人生を振り返り、これからの時間をどのように過ごしていきたいかを考えるきっかけになるようにとの思いで市が作成しました。内容をシンプルにして気軽に書き込めるようにしていますので、ぜひ取り組んでみてください。福祉総合支援課で配布しています。 ●「みらいノート」を作ろう!  介護者の支援を行う「ミモリの会」の皆さんと一緒にみらいノートを作成しました。まず、福祉総合支援課の職員が、みらいノートの必要性を説明しました。介護など支援が必要となったときに自分の思いを家族にうまく伝えられるよう、みらいノートは元気なうちに記入しておくことが大切です。  その後、項目ごとにみらいノートを埋めていきます。  「自分の人生を振り返るのはなかなか難しいな」「趣味は書ききれないほどあるな」「通帳の場所は確かに家族に伝えておかないといけないな」など、みらいノートの必要性を感じながら、和気あいあいと作業が進められました。 ●なぜ「みらいノート」は必要? ■平均寿命の延伸・家族形態の多様化  平均寿命の延伸により、「人生100年時代」と言われるようになっています。仮に、65歳で仕事を終え、100歳まで生きるとしたら35年もの時間があります。「老後」とひとくくりにするには長く、心身の状況もそれぞれ異なります。  独居や夫婦のみの世帯は増加しており、本人が意思を表示できなくなった際、本人の思いを代弁してくれる人は減っています。「迷惑をかけたくないから」と離れて暮らす親族に現状を話していなかったために、本人が動けなくなった時、急に連絡を受けた親族が何も分からないなか対応を求められ、困惑するという事例も増えています。  医療や介護の支援を受ける場合も、支援者が全てを勝手に判断することはできず、本人の希望に沿った支援を行うことが求められています。このことは、自己決定の尊重に基づくものですが、「本人がどうしたいと思っているのか」が分からなければ、支援自体が難しいものとなってしまいます。 ■自分らしさを見つけるために「みらいノート」の作成を!   元気なうちに、さまざまな場合を想定し、「自分はどのように考えているか」「どのように過ごしたいか」をイメージする必要があります。  「介護が必要になったら、施設に入れてほしい」と思う人は多いのですが、近年、さまざまな制度やサービスができ、住み慣れた地域や家で長く暮らせるようにもなっています。例えば、介護保険制度には「通所サービス」と呼ばれる日中施設に通うサービスもあります。  病気などの理由で、本人による手続きや契約などの法律行為を行うことが難しくなった場合は、成年後見制度など、法的に認められた代理人による支援を受けることも可能です。  これらは本人の意思を尊重した支援が前提となるので、元気なとき、介護を受けるとき、医療を受けるときに自分がどのような希望があるかを書き記したり、周囲の人に伝えたりしておくことがますます重要となっています。 ●私のみらいノート 〜自分らしく生きるために〜 ■「周りの支えがあって今がある」池田町在住 Kさん(80歳)  日野町で4人兄弟の3番目として生まれ、幼い頃に伯母の家の養女となりました。子どもが好きで将来は保育士になりたいと思い、高校卒業後は、当時、全国で数校しかなかった公営の保育専門学校に入学しました。卒業後は、東近江市周辺の幼稚園や保育園で勤務していました。当時は、車もなかったので自転車で片道1時間かけて通勤した記憶があります。  結婚し、子どもができたので退職しましたが、子育てが少し落ち着いた頃に復職しました。子どもと接するのは、本当に楽しく、情熱を燃やせました。  その後退職し、15年間、両親の介護を行いました。つらいこともたくさんありましたが、周囲のサポートや同じく介護をする人とつながり支え合い、最後まで介護することができました。  今は、孫の成長を楽しみながら、家やお寺の用事などをし、かつての介護仲間との交流や、介護をしている人のサポートもできる限り行っています。振り返ると、「人から支えてもらって今がある」と感じます。体が動くうちは仲間と交流をしながら、介護で悩む人のサポートをしたいと思います。 ■「人との出会い、縁を大切に」西中野町在住 Sさん(77歳)  東京都内で5人兄弟の4番目として生まれました。子どもの頃は、戦争の影響もあり、父の実家の境港市で過ごしました。高校卒業後は、看護師を目指し、広島市の病院で働きました。在籍中に、「アメリカの病院を見てみたい」と思い、友人と2人で半年間渡米したこともありました。今考えるとかなり冒険したと感じています。  24歳で結婚し退職。夫の仕事柄、転勤が多かったので、高崎市、三鷹市、岡山市、彦根市、横浜市、京都市など全国各地に引っ越しました。途中で看護師として復職し、各地で看護に関わる仕事もしました。  53歳の時、夫の実家がある東近江市に移り、その後、夫の母親の介護も行いました。  今までを振り返ると、本当に移動が多い人生でしたが、各地でさまざまな人と出会い、縁に恵まれたと感じています。今でも年賀状などで全国の友人と交流しています。  今はパソコンの勉強をしており、自分の歴史をしっかり残せるようにしたいと思っています。また、全国の友人との縁を大切にして、少しでも再会できる機会を作っていきたいです。 ●知って安心! 「成年後見制度」  成年後見制度は、認知症などの理由で判断能力が十分でない人の預金などの管理(財産管理)や、日常生活でのさまざまな契約など(身上監護)を支援する制度です。  制度のポイントを司法書士の福井秀男さんに聞きました。 Q1 成年後見制度ではどのような支援を受けられるのですか?  制度によって後見人となった人が、利用者本人に代わって財産の管理をするほか、入院や施設への入所などの契約を行ったり、本人のみで行った不利益な契約を取り消したりすることができます。  利用者の状態によって受けられる支援の範囲は異なります。判断能力が不十分な人が適応される「法定後見制度」と、判断能力がある人が将来のために利用する「任意後見制度」の大きく2種類あり、支援できる内容が異なります。  「法定後見制度」の中でも、利用者の判断能力の程度によってによって支援内容が異なります。 Q2 成年後見制度の利用の仕方を教えてください  制度を利用するには、家庭裁判所に申し立てる必要があります。家庭裁判所で、申し立てに必要な様式や証明書などのリストをもらえます。  利用者の家族の皆さんでも書類の記入や、証明書などを集めることもできますが、手続きなどを支援する市民団体もあります。近くでは、「NPO法人まちの相談室よりそい」(電話=0748‐56‐1085)と「東近江圏域サポートセンター」(電話=0748−46−8128)が支援を行っています。  また、私が所属している「(公財)リーガルサポート滋賀支部」(電話=077‐525‐1093)でも支援をしています。 Q3 後見人への報酬はどの程度でしょうか?  後見人として司法書士などの専門職が就任した場合は報酬が発生します。額は一年間の活動実績や利用者本人の財産の状況などから裁判所が決定しますので、それぞれのケースで異なります。  独り暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯の増加などにより、法定後見制度に関する相談件数は増えています。  元気なうちから将来のことを考えて任意後見制度について検討してみてはいかがでしょうか?  また、後見人だけで全ての支援はできませんので、後見人を含めて福祉、介護の関係機関や行政などとの支援の輪を作ることが重要です。 ●少しずつ、始めましょう。未来のために。  現代社会は「契約社会」と言われ、福祉制度についても一律ではなく、自分自身が選び決定する権利が認められています。  しかし、これは自分で選ばないといけないという責任も発生するものであり、20年程前までにはなかったことです。急激に時代と生活スタイルが変化するなかで、充実した人生を送れるよう、元気なうちから「自分がどのように生きたいか」と考えることが必要であり、そのきっかけとしてみらいノートを作ることは大変有効です。  みらいノートを記入するのには、少しエネルギーが必要です。「少しずつ関心のあるところから書き始める」「相談しながら記入する」「家族などと内容を共有する」など工夫して取り組むことが大切です。  みらいノートを使い、今後の人生を見つめましょう。