■記号は、時=日時 場=場所 対=対象 定=定員 持=持ち物 ¥=費用 申=申込み 問=問合せ IP=IP電話 ■まちの魅力を再発見 東近江万葉めぐり ■あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る                    紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも  ※現存する日本最古の和歌集「万葉集」を代表する額田王(上の歌)と大海人皇子の相聞歌です。  相聞歌とは、男女や親子または友人などの間の親愛の情を詠んだ歌のことです。 ■東近江市と万葉のつながり  今年5月、「平成」から「令和」へと改元が行われました。新元号は、初めて国書から採用され、その出典となった「万葉集」に注目が集まっています。  東近江市民憲章前文にも「〜万葉のころより綿綿と続く歴史・文化・伝統を大切にして〜」と謳われているように本市もこの万葉集ゆかりの地として知られています。  それでは、東近江市と「万葉集」のつながりをたどってみましょう。 ■万葉集を代表する相聞歌  今から1350年前、都が大津に移された翌年の天智7年(668年)5月5日、天皇は、弟の大海人皇子をはじめ群臣を引き連れて蒲生野に遊猟に訪れました。  ここに言う「遊猟」とは薬猟のことで、男性は鹿の若角を狩り、女性は野原で薬草を摘みました。  この中に額田王もいました。そして、この地で後に万葉集を代表する相聞歌が詠まれたのです。5月の野には、今では希少種となった紫草(東近江市の花)などの草花が咲き乱れていました。  昭和43年、相聞歌が詠まれてから1300年を記念し、八日市郷土文化研究会の前身である蒲生野顕彰会によって船岡山の山頂に相聞歌を万葉仮名で刻んだ歌碑が建立されました。  今回は、その歌碑がある「万葉の森 船岡山公園」、そして万葉集の代表的歌人、山部赤人が生涯を閉じた地とされる「山部神社・赤人寺」を紹介します。 ■万葉ロマンの舞台 万葉の森 船岡山公園  額田王と大海人皇子の相聞歌の舞台である蒲生野は、市内の市辺地区や隣接する近江八幡市安土町に「蒲生野」「蒲生野口」などの地名が残っていることから、箕作山・瓶割山・船岡山に囲まれた一帯の平野部を指すと考えられています。  このことから、船岡山は万葉集をテーマとした「万葉の森 船岡山公園」として整備され、自然の中で万葉文化に触れることができます。  船岡山の山頂には相聞歌の歌碑が建てられ、麓には相聞歌が交わされた薬猟の場面をイメージした巨大な陶板レリーフが設置されています。レリーフの隣には、万葉集に詠まれた数々の植物と歌を紹介した万葉植物園があります。  万葉植物園の梅の木には、万葉集巻五に納められている大伴旅人が詠んだ歌が紹介されています。  わが園に 梅の花散る ひさかたの 天より雪の 流れくるかも   この歌は、天平2年(730年)正月に大宰府の大伴旅人邸で催された宴で詠まれた「梅花の歌三十二首」のうちの一首で、新元号「令和」はこれらの序にあたる「初春の令月にして 気淑く風和らぎ 梅は鏡前の粉を披き 蘭は珮後の香を薫す」という、  気候がよく、梅が咲き誇りよい香りがただよう初春の情景を表した文言から引用されました。  所在地:東近江市糠塚町  【交通アクセス】  近江鉄道「市辺駅」下車徒歩約5分 駐車場有り ■八日市郷土文化研究会 会長 藤本長藏さん  地域の皆さんが改元をきっかけに、地元の歴史を学び、万葉の地のすばらしさを再認識してほしいと思います。  私たちは、今後も歴史研究と継承に努めるとともに、若い人にも関心を持ってもらえるような活動を展開していきます。 ■福井瞳学芸員  万葉植物園では爽やかな秋風が心地よく、ゆったりとした時間が流れています。一つ一つの草花や木が、歌とともに紹介されているので、情景や思いが伝わってきます。  万葉の詠み人たちと心を通わせられるのではないでしょうか。 ■山部赤人が生涯を閉じた地  山部神社 赤人寺  市内には万葉集ゆかりの地がもう一カ所。下麻生町にある山部神社・赤人寺です。赤人寺は、百人一首の歌人としても有名な山部赤人終焉の地と伝わり、山部神社には赤人が祭神として祀られています。  山部神社の創立沿革は不明ですが、中世には小松宮、江戸時代には小松大明神などと称されていました。このことから、古くは松の木を神木とする氏神であったと考えられていますが、明治時代に改名され、山部神社となりました。  山部神社本殿は、装飾がほとんど無い簡素な建物ですが、中世の建築技法がよく残っています。市内でも数少ない室町時代の神社建築であり、また主要な部材の保存状態も良好であることから、平成30年度に東近江市の文化財指定を行いました。  また、隣接する赤人寺は、山部赤人が晩年を過ごしたところとされ、寺の本尊の如意輪観音は赤人が駿河(静岡県)の田子の浦から迎えたものであると伝わります。  また、本堂裏手にある石造七重塔は国の重要文化財に指定され、鎌倉時代に山部氏にゆかりの人が供養のために建てたと考えられています。  山部神社境内には有名な「田子の浦」の歌碑と共に「春野のすみれ」を詠った万葉歌碑も建立されています。  所在地:東近江市下麻生町214  【交通アクセス】  近江鉄道「朝日大塚駅」  下車徒歩約20分  近江鉄道バス「麻生口」  下車徒歩約10分   ■石岡昌一さん(下麻生町)  下麻生町は、山部神社と隣接する赤人寺と合わせて、平安時代末期からの宮座行事を現代まで受け継いでいます。  また、文献としても「山部神社文書」(市指定文化財)があり歴史文化の宝庫です。  地域の伝統文化を末永く受け継いでいきたいと思います。 ■東近江市博物館グループ企画展「東近江の万葉文化」  能登川博物館では、市内に残る「万葉集」ゆかりの地を紹介する企画展を開催中です。  ぜひ、お越しください。 ■秋の歴史イベント  ◆東近江市万葉歌碑(菓子)めぐり  東近江市内の万葉歌碑を巡りながら、元号 「令和」の出典となった万葉集について、わかりやすい解説で案内します。また、歌碑をめぐりながら、お菓子で一服。万葉にちなんだ銘菓を楽しめます。  案内ポイント=市神神社、薬師寺、万葉の森船岡山、山部神社 (赤人寺)、ガリ版伝承館  時=10月22日(祝)9:30〜15:30 (予定)  集合場所=近江鉄道八日市駅改札前  定=60人 (申込み先着順)    ¥=一人1,000円 (菓子代、保険代含む。)  別途、近江鉄道1日フリー切符900円  昼食代1,100円 (希望者のみ)  申=10月14日(祝)まで 歩行距離=約5キロメートル  問=近江商人博物館  電話=0748-48-7101 IP=050-5802-3134 ファクス=0748-48-7105  ◆国史跡百済寺境内指定10周年記念事業  国史跡百済寺境内 ー 近江屈指の山寺その実態に迫る ー  織田信長に焼かれた近江最大級の山寺・百済寺。これまでの調査結果から分かる巨大な中世宗教都市の姿に迫ります。  時=11月3日(祝)まで  場=能登川博物館  問=埋蔵文化財センター 電話=0748-42-5011 IP=050-5801-5011 ファクス=0748-42-5816  ◆雪野山古墳発掘30周年記念事業  @明治大学博物館展示「今甦る!琵琶湖に君臨した王 雪野山古墳」  弓矢の装飾矢筒である靫を始めとする主要な出土品を一挙公開します。  時=10月4日(金)〜27日(日)10:00〜17:00  場=明治大学博物館(東京都千代田区) 電話=03-3296-4448 ファクス=03-3296-4365 ホームページhttp://www.meiji.ac.jp/museum  Aバスツアー「雪野山と蒲生野の古墳を巡る旅」  国史跡 「雪野山古墳」などの蒲生野の古墳を堪能するバスツアーです。  時=2日間コース:11月2日(土)・3日(祝)(宿泊付き)、日帰りコース:11月10日(日)  定=45人 (最少催行人数20人)¥=2日間コース19,500円 日帰りコース5,000円  問=(一社)東近江市観光協会 電話=0748-29-3920  ファクス=0748-29-3922  B雪野山古墳原寸大レプリカ展示 発掘調査時に型取りされて作られた、迫力ある雪野山古墳竪穴式石室の原寸大レプリカを展示します。  時=11月2日(土)〜10日(日)10:00〜17:00 場=平田コミュニティセンター  問=歴史文化振興課 電話=0748-24-5677 IP=050-5801-5677 ファクス=0748-24-1375 ■歴史と文化に触れ秋を満喫  東近江市は、日本史に名を連ねる古代の歌人たちが活躍した場所です。野の花に安堵し、小鳥のさえずりに心癒され、また四季の移ろいを肌で感じ喜怒哀楽を表した歌を残しました。  蒲生野は、万葉の花々が咲きほこる野から田園風景へと姿を変えましたが、それでもなお、自然豊かな東近江市に住む私たちは、万葉の時代を生きた人々が五感で感じた情緒を同じように感じることができます。  令和最初の秋、万葉の香りを訪ねて、今年はぜひ市内を散策してみてください。きっと新たなまちの魅力に出会えることでしょう。  問=歴史文化振興課  電話=0748‐24‐5677  IP=050‐5801‐5677  ファクス=0748‐24‐1375 (取材:広報課 片山晴紀)