■記号は、時=日時 場=場所 対=対象 定=定員 持=持ち物 ¥=費用 申=申込み 問=問合せ IP=IP電話 ■特集 東近江市100年の森づくり ■森里川湖のつながる森づくり  東近江市の総面積は、約388平方キロメートル(滋賀県の総面積の約9.7%)で、高島市、長浜市、甲賀市、大津市に次ぎ県内で5番目に面積が大きな市です。  森林面積は、市域の56パーセント、甲子園球場約5,500個分となり、広大な森林を有しています。  また、東近江市の特徴は、鈴鹿山脈から湖東平野を経て琵琶湖に流れ出る愛知川に象徴されるように、森里川湖のつながりにより、多様な風土を有していることです。  こうした森里川湖のつながりを、今後の森林づくりや資源利用に一層生かすとともに、さまざまな生き物の生息・生育に配慮し、森林の多面的な機能を発揮できるような森林づくりをさらに進める必要があります。  今回は、現在進めている実践的な取組や今年1月に策定しました「東近江市100年の森づくりビジョン」の概要や策定過程などについて紹介します。 ■あらゆる場面で木を使うプロジェクト始動!  東近江市を中心とする地域の森林・林業・木材関係者が集結し、東近江市内産木材や木製品に触れ、その良さを体感してもらおうと「東近江市・木を使うプロジェクト推進協議会」が昨年5月に設立されました。  このプロジェクトの重点の一つに、地域材を活用し木と触れ合い、木に学び、木でつながるといった木育の推進があります。  取組事例の一つとして、平成30年の台風第21号により落下した昭和町にあるムクノキ(推定樹齢650年)の枝を活用した木製玩具「キツネのパズル」を制作し、中野むくのき幼児園に寄贈されました。5歳児の畑佳幸くんは、「キツネのパズルは、誰にでもできて、楽しいよ」と話し、みんなと仲良く遊んでいました。  11月には、市役所周辺で開催された「東近江秋まつり」や道の駅奥永源寺渓流の里など、市内のさまざまな場所でこのプロジェクトを紹介し、皆さんに木育などを体感してもらうことができました。  このように、広葉樹の新たな製品化の可能性を見いだし、子どもたちの情操教育に貢献する取組を続けています。  現在、市役所本館1階ロビーでこのプロジェクトに関する展示を行っています。この機会に、実際に市内産木材を見て・触れて、そして木の香りを体感してみませんか。  ※当推進協議会では、このプロジェクトで一緒に活動するメンバーを募集しています。詳しくは、林業振興課まで問い合わせてください。 ●地域産材を使って楽しく木育を!  東近江市・木を使うプロジェクト推進協議会 会長 川村克己さん  子どもたちは、夢中になって地域材で作った木製玩具で遊んでくれます。木づちなどを使ったことがない子どもたちも、お互いに使い方を教えあって、一つのものを作り上げる達成感を味わっています。  子どもたちが木に触れることで、周りの大人たちも自然と森林のことに関心を持ってくれます。これからも地域産材を使った木育を進めることで、地域産材への理解を広げていきます。 ■植樹活動を通じて自然を満喫  令和3年に滋賀県で開催される第72回全国植樹祭の植樹会場の一つに東近江市が選定され、昨年11月23日(祝)に政所町藤川谷と道の駅奥永源寺渓流の里でプレイベントを開催しました。  植樹活動には、約60人が参加し、広葉樹15種の苗木約500本を約1時間かけて植樹しました。  植樹活動を終えた参加者の皆さんは森林インストラクターの案内により、紅葉が進む山中を、東近江市の特徴的な広葉樹についての話を聞きながら、約2時間の森林ウォークを楽しみました。  家族で参加した藤田隆行さん(百済寺町)は、「植樹は、初めての体験でした。子どもと楽しい経験ができました。今回の植樹のことを話しながら、子どもと一緒にまた登山できることを楽しみにしています」と笑顔で話しました。  今回のイベントには、親子での参加も多く、豊かな森林資源を生かして、木を「伐って・使って・植えて・育てる」の循環型林業を体験、学びました。  次回は、5月頃に永源寺地区の新出町で植樹イベントを予定しています。詳細は、広報ひがしおうみおよび市ホームページでお知らせします。 ●100年後に残したい鈴鹿の森  東近江市には、「21世紀に残したい日本の自然100選」に選定された御池岳のオオイタヤメイゲツ林 (写真)のほか、竜ヶ岳や釈迦ヶ岳周辺のシロヤシオの群落、日本コバや岳の周辺に存在するモミ林、天狗堂や竜ヶ岳などの中腹に見られるアカガシの森など、多様で特徴的な森林が数多く存在しています。 ■100年先の森づくりを地域で考える   森づくりは、数年、数十年でできるものではありません。「森づくりビジョン」の策定の際には、実際に森林を所有する地域の皆さんと一緒に、100年先の地域、森づくりのあり方について検討を行いました。  永源寺地区の中でも人工林率が高い箕川町や君ヶ畑町では、地元自治会、東近江市永源寺森林組合、龍谷大学里山学研究センターの皆さんなど多くの関係者が集まりワークショップを開催しました。  箕川町では昨年2月、3月、6月の3回、君ヶ畑町では昨年9月と11月の2回開催し、昔の森、今の森の現状、将来を見据えて集落で森林をどう管理していくのかなど熱心な議論をしました。    ワークショップに参加した川嶋冨夫さん(箕川町)は、「将来の森林について考える貴重な機会となりました。樹木の挿し木など、地域でできることを進めていきます」と話します。  集落単位で今後の適切な森林管理を行うため、地域ワークショップで議論した内容をもとに、エリアごとに森林の利用や活用方針を定め、継続的に森林管理を進めていきます。 ■これからを考える森づくりビジョン  森林は、私たちの暮らしや生産活動に必要な水源として、住宅や家具などの材料となる木材生産の場として、また、さまざまな生きものの生息環境として重要な役割を果たしています。  しかし、先人たちが植えて育てたスギやヒノキなどの森林資源が十分に利用できていないほか、木材価格の低迷や山村の過疎化などにより、手入れが行き届いていない森林が増えるなどさまざまな課題が表れてきています。  これらの課題の解決を図り、東近江市の森林を健全な姿で次世代に引き継いでいくため、平成29年度に「鈴鹿の森おこし推進ワーキンググループ」を設置し、森林ビジョンの策定に向けた検討に着手しました。  また、令和元年度には「東近江市における森林ビジョン策定検討会」を設置し、委員の皆さんから意見を求め、「東近江市100年の森づくりビジョン」を策定しました。  ワークショップに参加した大谷真也さん(建部瓦屋寺町)は、「大学で森林をテーマに研究しており、興味があり参加しました。森林に関わる人と意見交換でき、とても新鮮でした。今回の経験を今後の研究に生かしていきたいです」と思いを語りました。  本ビジョンでは、おおむね10年後の森林づくりのあるべき姿として下記3点を掲げています。また、これらを実現するための今後5年間の取組として、間伐などによる森林整備の推進、木材をはじめとした森林資源の活用、生物多様性に富んだ森林づくり、森づくりを担う人材育成などの施策を盛り込んでいるほか、エコツーリズムなど従来の森林・林業の枠を超えた分野を取り扱っていることも特徴です。  詳しい内容は、市ホームページで公表しています。 ●森林づくりのあるべき姿  1 森里川湖のつながりを生かし、生き物の息吹が感じられる健全な森林づくりが行われている  2 森林や山村のさまざまな資源が有効に活用され、地域で資源や資金が循環する仕組みが構築されている  3 地域住民や多様な主体が参画し、今後100年先を見通して地域の森づくりや資源利用について自ら考え、共に取り組んでいる ●地域の皆さんと森林の将来を考える  東近江市永源寺森林組合 松尾扶美さん  森づくりビジョンの検討を通して、より多くの人と一緒に、地域の森林の将来を考えていけることを嬉しく思います。樹齢も樹種もさまざまな多様性のある森を育て、その材を活用していけたらと期待しています。  森林所有者の皆さんは、ビジョン実現を進めるため、「森林の境界に現地杭や紙面の記録を残す」「現時点での森林所有者の連絡先を森林組合へ登録」といった取組に協力をお願いします。  問=東近江市永源寺森林組合  電話=0748-27-0034 ■森づくりビジョン実現に向けて  東近江市の地図を見ると、市域の西部を市街地や農地が占め、東部のほとんどが森林になっています。普段、市街地などで暮らしている人にとっては、森林・林業が遠い存在になってはいないでしょうか。  本ビジョンは、学生の皆さん、林業関係者、学識経験者など幅広い分野から参加いただき、じっくり時間をかけて議論を重ねながら策定してきたものです。  これを契機に市民の皆さんにもっと森林や木材に触れていただき、今後の森林づくりについて考えていただく機会を更に作っていきます。  問=森と水政策課  電話=0748‐24‐5524  ファクス=0748‐24‐5560    問=林業振興課  電話=0748‐24‐5523  IP=050‐5801‐2188  ファクス=0748‐23‐8291  (取材:広報課 片山晴紀)