■記号は、時=日時 場=場所 問=問い合わせ IP=IP電話 FAX=ファクス ■特集 住み慣れた地域を守るため医療が目指す道とは ■東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町で構成する東近江医療圏域には、さまざまな医療機能を備えた施設があります。  本市では、出張診療所を含め1病院7診療所を開設しており、私たちは住み慣れた地域で健康で豊かな人生を過ごしていただけるよう、日々良質な医療サービスの提供ができるよう努力しています。  医療機関を取り巻く環境は、近年大きく変化しており、現状では自治体が病院経営を行う場合、医師の確保が最大の課題となっています。また、医療機関として採算のとれる経営手腕も求められています。  このようなことから、本市では、専門的な知識を有する医療法人などに管理運営を委ねる指定管理者制度を導入してきました。  今回は、令和2年4月から新たに指定管理者制度を導入した東近江市蒲生医療センターをはじめ、市立の病院および診療所について紹介するとともに、新型コロナウイルス感染症対策について紹介します。    東近江市内の医療機関  公的医療機関  東近江総合医療センター 国立病院機構 320床  能登川病院 指定管理(平成27年4月から) 102床  蒲生医療センター 指定管理(令和2年4月から) 19床  永源寺診療所 指定管理(平成20年4月から)  永源寺東部出張診療所 指定管理(平成20年4月から)  あいとう診療所 指定管理(平成26年4月から)  湖東診療所 市直営  鋳物師診療所 指定管理(令和2年4月から)  長峰診療所 指定管理(令和2年4月から)  民間医療機関  病院 5カ所 1,013床  診療所 94カ所(医科52、歯科42) 18床 ■〜がん治療の圏域内完結率の向上に向けた取り組み〜  蒲生医療センター  ●がん診療施設を整備  東近江市蒲生医療センター(指定管理者 医療法人社団昴会)では、これまでの地域に根差したかかりつけ医としての役割や在宅医療に加え、滋賀県地域医療構想に基づく新たな取り組みとして、東近江医療圏域内での完結率(図1)が低いがんの治療および早期発見を目指した「がん診療施設」整備の提案を指定管理者審査会に医療法人社団昴会から提案され、承認しました。  ●放射線治療装置リニアック  放射線治療は、手術療法、化学療法、免疫療法と並ぶがん治療法の一つです。身体の外から放射線を照射して腫瘍をピンポイントで治療することで、正常な組織へのダメージを最小限に抑えることができるため、身体への負担が非常に少ないことが特徴です。  ●PET-CT  PET-CTとは、PET検査とCT検査を同時に実施することができる装置で、がんを検査する方法の一つです。PET検査では、検査薬を体内に投与することで全身の細胞のうち、がん細胞をより鮮明に描写することができるため、小さながんの発見が期待できます。また、CT検査を同時に実施することで、高精度に病巣の位置を判定することが可能となります。  この装置では、一度の検査で、ほぼ全身を調べることができ、初期段階のがんの発見に威力を発揮します。がんの可能性が疑われながら、ほかの検査で病巣が発見できない発病不明がんの診断やがんの早期発見、病期診断、転移、再発を調べる有効な検査です。なお、蒲生医療センターにはPET-CT専門の読影医が配置される予定です。  ●がん治療の完結率向上を目指して  がんは、滋賀県における死因の第1位であり、滋賀県地域医療構想においても、がん治療に係る東近江医療圏域内の医療需要が、今後さらに増加すると見込まれています。  今回、がん治療施設を整備することで、放射線治療を含む圏域内のがん治療の完結率向上を目指します。 ■〜眼科診療が充実〜  能登川病院  ●医療スタッフ・救急医療の充実  市立能登川病院は、平成27年4月に指定管理者制度を導入(指定管理者 医療法人社団昴会)し、5年が経過しました。これまで、医師をはじめとする医療スタッフの確保に努め、特に小児医療に係る専門医の配置や二次救急の輪番制による救急医療の充実など、安心・安全な医療を継続して提供するとともに、患者サービスの向上を図ってきました。  ●アイセンターを開設  常勤医師は19人体制となり、平成31年4月から眼科に特化した「昴会アイセンター」を開設しています。  これにより、今まで手術ができず、大学病院などを紹介していた患者さんも、アイセンターで白内障をはじめとするさまざまな眼科手術を受けていただけるようになりました。最近では、湖北や湖東地域からの来院者が急増しており、県外からも来院される信頼度の高い施設となっています。 ■地域のかかりつけ医として  ●かかりつけ医とは  健康に関することを何でも相談でき、必要があれば、専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のことです。  ●地域に根ざした診療所  地域のかかりつけ医としての役割を担う診療所として、永源寺診療所、あいとう診療所および湖東診療所があります。それぞれの診療所では、日常の外来診療のほか、高齢化に伴い需要が高まっている在宅医療をはじめ、予防接種や健康教室などの実施、産業医の受託など、幅広く活動を行っています。  また、医師を中心に地域の医療福祉関係者や地域住民など、多職種が立場を超えて連携し、地域の皆さんが安心して暮らしていける地域づくりを目指す地域包括ケアに積極的に取り組んでいます。  ●笑顔が見える診察  9月上旬、永源寺診療所の木田医師に同行し、吉村賢治さん(山上町)のお宅を訪問しました。「こんにちは」と木田医師の笑顔のあいさつからスタート。吉村さんは、7年ほど前から月2回、永源寺診療所の医師に訪問診療に来てもらっています。診察を終えた後もプロ野球の話などで会話が弾みます。吉村さんは、「一人では診療所に行けないので助かります。緊急時も対応してもらえるので安心です」と笑顔を見せました。 ■市立病院・診療所の新型コロナ対策  ●能登川病院発熱者専用の「発熱外来」を5月15日に能登川保健センター1階健診室に設置しました。その後、PCR検査対象者の増加に伴い、9月28日からドライブスルー方式をメインとしたPCR検査センターを開設しています。  現在、能登川保健センターの改修工事を行っており、11月上旬からPCR検査室の稼働を予定しています。  ●■蒲生医療センター・永源寺・あいとう・湖東診療所  「発熱外来」を設置しています。(※受診を希望される場合は、事前に電話してください。) ■地域で創る「総合病院」  今後、本市が目指す地域医療の姿は、市内の医療機関がそれぞれの特長や特化している診療科目をいかして連携し、地域で創る「総合病院」です。その体制を構築し、地域医療構想を達成していくための一つの方法として、「地域医療連携推進法人制度」があります。  この制度は、医療機関相互の機能分担および業務の連携を推進し、複数の医療機関が参画することで、競争よりも協調を進め、地域で質の高い効率的な医療提供を確保することを目的としています。  今後、市立病院や診療所も含めた地域の医療機関や医師会、歯科医師会および薬剤師会などの関係団体とより連携を密にし、地域医療を守っていくことこそが、私たちの住み慣れた地域を守るために医療が目指す道だと考えています。そのために、東近江医療圏域内での地域医療連携推進法人の設立をはじめ、地域で完結することができ、安心できる医療体制の構築を進めていきます。  問=地域医療政策課  IP=050-5801-5664  ファクス=0748-24-1052  (取材:広報課 片山晴紀 ■シリーズ『東近江医師会』からの提言 新型コロナと向き合う vol.1  一般社団法人 東近江医師会 電話=0748‐24‐1441 ファクス=0748‐24‐1444  今こそ地域の力を  ●当分、有効なワクチンや治療薬はできない  メディアでは、「ワクチンが治験に入った」、「日本がワクチンを何万本確保した」などの報道もありますが、決して安心してはいけません。現時点では、どのワクチンも、「本当に病気を防ぐのに有効なのか」が不透明だからです。むしろ、有効なワクチンは当分できないと思う覚悟が必要です。  ●病気を防ぐ唯一の方法は自覚を持った行動  治療薬もワクチンもない中、「病気をもらわない・広げない」唯一の方法は、皆さんの自覚をもった行動です。幸い、新型コロナウイルス感染症がどのような状況のときに多くの感染者がでるかは判明してきました。@マスク、A手洗い、B夜の街に飲みに行かず、多人数での宴会は当分控える、これらのことを守れば、知らない間に広がる感染症ではありません。  ●家庭内感染を防ぐことは難しい  最近の感染者の多くは、若年層です。若い人は、感染しても軽いかぜの症状か無症状の場合が多く、自分が感染したかどうかも分かりません。ただ、感染した若い人が祖父母と一緒に住んでいると、若い人から年配者に家庭内で感染して発症し、重症化する場合があります。感染者がいれば、家庭内で感染を防ぐことはかなり困難です。  ●マスクをできない人もいる  地域には、マスクや手洗いなどをすることが困難な人がいます。障害を持った子どもたちや認知症を患ったお年寄りなどです。こうした社会的弱者の事情を理解した上で、地域全体で守っていかなければいけません。障害を持つ子どものご両親などを想像してみてください。コロナ禍の状況で、マスクをさせたくても出来ずに不安な思いや肩身の狭い思いをされているのではないでしょうか。彼らを守るためには、大人が感染を広げないようにすることが大切です。  ●地域の力をひとつに  皆さんが感染しない・広げないように自覚を持った行動をとり、社会的弱者に十分な理解と思いやりを持ち、根拠のない誹謗・中傷をやめ、「この数年間は耐えるんだ」という気持ちで過ごしましょう。コロナ禍はいつまでも続くわけではありません。困難な時こそ力が試されます。今こそ地域の力をひとつにして頑張りましょう。