■記号の説明・・・問=問合せ IP=IP電話 FAX=ファクス ■特集 未来につなぐ農業のために〜地域活性化起業人〜 (写真)湖東地区の読合堂営農組合では、地下水位制御システム(フォアス)が整備され、先進的な野菜の栽培が行われています。11月には、朝早くから立派に育ったみずみずしいキャベツが収穫されました。 ■考える農業の「これから」  本市では、時代の変化に対応した地域農業の発展を図っていくための指針として、「東近江市農村振興基本計画(アグリプラン)」を策定しています。「風土をいかし、みんなで育て未来につなぐ豊かな東近江市の農」を本市の農業・農村の将来像として、基幹産業である農業と豊かな歴史文化を有する農村を良好な姿で次の世代に引き継いでいく。そして、市民の皆さんが食べる農産物の大半が新鮮でおいしい東近江市産となるよう、農業・農村振興の取組を進めています。  今年度、その取組の一環として総務省の地域活性化起業人制度(3ページ参照)を活用し、民間企業から社員を派遣してもらう新たな農業振興事業をスタートしました。  本事業を進めるに当たり、野菜や果樹などの農産物の生産振興を強力に進めるため、一般公募によって人材を派遣してもらう事業者を募集した結果、京都市に本社を置くタキイ種苗株式会社に決定しました。8月1日からは、同社資材部の神出一昭さんに東近江市地域活性化起業人として従事してもらっています。  本市の基幹産業である農業を持続的に発展させていくためには、新鮮な市内産農産物の発信力・販売力を強化し、魅力ある農業を実現するとともに、農業・農村を将来にわたって担う「人財」の育成や確保が必要です。  神出さんは、地域農産物の生産力を高めるべく、地域農業の担い手である農業者や農業を志す新規就農者に寄り添う良き相談者として、民間企業で培ったノウハウや資材などの情報をいかしながら官民一体となった農業振興に取り組んでいます。 ■地域活性化起業人制度とは(企業人材派遣制度)  自治体が設定する地域独自の魅力や価値の向上、地域活性化につながる業務に対して、そのノウハウや知見がある企業人材を「地域活性化起業人」として企業から自治体に派遣することに国が支援する制度です。派遣される起業人は、自身の在籍する企業に籍を置いたまま、自治体で日々業務に従事します。 ■神出一昭さん(タキイ種苗株式会社:京都市)  このたび、東近江市の農業振興を図る、地域活性化起業人の委嘱を受けました。週4日、農業水産課地域商社支援室で勤務しています。タキイ種苗は、野菜や草花の種子の開発と販売、農業園芸資材の販売などを手掛けている会社です。社内では、滋賀県の営業を担当していたこともあります。現在は、資材部課長補佐として働いています。  東近江市は、市町村別の耕地面積が近畿最大ですが、農業産出額は近畿10位。農地の大半は水田で、収益の効率性に課題があります。この状況を改善するため、野菜や果樹の作付け、出荷の推進、栽培の相談、情報提供などに取り組んでいます。 【座右の銘】竹は節目で伸びていく 【好きな野菜】ネギ ■本市の農業の現状  本市は、近畿最大の耕地面積(約8,330ヘクタール)と滋賀県下最大の農業産出額(1,026千万円)、総農家数2,788戸を有しています。水田面積率は96・8パーセントと高く、水稲や麦、大豆が盛んに栽培されています。また、野菜や果樹の産地としても有名です。冬キャベツ・秋冬白菜が県内産地指定を受けているほか、きゅうりやトマト、すいか、ぶどう、梨、いちじく、メロン、いちごなどの栽培も盛んです。今後、タマネギやニンジンの栽培も増やしていく予定です。 ■地域活性化企業人の取組 神出一昭さんの活動に密着! 地域の特性を強みに、『一歩』を踏み出す ・新しい農業を考える  地域の農業は、農業者の高齢化や後継者不足、米価下落など多くの課題を抱えています。この状況を打開するため、本市では収益性の高い野菜や果物などの生産拡大を推進しています。  神出さんには、積極的に集落営農法人や農業協同組合、県との農業者会議などに参加し、どうすれば農業で「もうかる」のかを一緒に考え、品種や資材、栽培方法などについて情報提供や、提案をしてもらっています。 11月7日に行われた高収益作物の推進に向けた関係機関会議では、今後の農業のかたちについて真剣に議論しました。 【東近江地区国営農地再編整備事業】  八日市地域16集落では、国直轄による大規模なほ場整備事業を計画しています。この事業では、従来の水稲・麦・大豆の栽培に加え、野菜などの高収益作物の生産拡大が要件のひとつとなっており、水田の大区画化や汎用化、スマート農業導入による「もうかる農業」の実現を目指します。  現在は令和7年度の事業開始に向け、対象地域の農業者が野菜の栽培技術を向上する取組を推進しており、神出さんには、専門的な知見をいかした技術支援をしてもらっています。 ・次世代を育てる  八日市南高等学校の農業科に依頼して、土壌改良の実証実験をしています。校内農園の土壌に問題を抱えている学校側と、土壌改良材の組み合わせなどの実証実験がしたい資材メーカー側の要望が合致し、主に2・3年生の授業に組み込んでいます。  実証実験では、資材メーカーから資材のサンプルを提供してもらい、生徒たちは、資材の違いで成長速度や味の違いがあることなどを実感しているほか、資材選びなどについても学んでいます。  学校では、新しい技術や情報を得ることが難しく、従来の農法で授業を進めることが多いため、生徒に新しい栽培方法に触れてもらう機会にもつながっています。先生からは、「技術面や資材などの相談ができてありがたい」と感謝の声もいただいているようです。 ・農家に寄り添う  新規就農者や株式会社東近江あぐりステーションに出荷する市内の農家を中心に訪問し、栽培に関する相談や情報提供などを行っています。神出さんは、できるだけ多くの農家の皆さんに寄り添って、これからの東近江市の農業を盛り上げ、地域の活性化を図りたいと、毎日市内を走り回っています。 ●VOICE 柴田達也さん(青野町)  今年から新しく就農しました。稲作の後で野菜を作ることは難しいですが、神出さんからたくさんのアドバイスや、提案をしてもらって大変助かっています。アスパラガスの栽培を始めたいと相談したときも、香川県の先進的なアスパラガス農家を紹介してもらって視察に行きました。そのほかにも、農家とのつながりを作ってもらって、農家同士のネットワークが広がりました。神出さんのおかげでより広い視野でより多くの情報を得ることができ、色々試行錯誤しながら農業に取り組むことができています。 (神出さん)11月4日に開催された農林水産まつりでは、東近江市地産地消推進協議会のブースで地場産野菜を販売しました。まつりが始まると大勢のお客さんが押し寄せ、用意した新鮮野菜はあっという間に完売。地域農業の可能性を感じました。 ●CHECK 株式会社東近江あぐりステーションとは  市とJAが連携して市内の野菜生産を拡大し、地域の人が地域の新鮮な野菜を安定して食べられるように販売を担う県内初の地域商社です。  東近江あぐりステーションでは、地域内の野菜生産販売の拡大に向けて一緒に取り組む生産農家を募集しています。詳しくは公式ホームページを確認してください。 ■未来につなぐために  本市の広大かつ肥沃な農地、農村景観は、長きにわたり先人から受け継がれてきた貴重な財産です。これを次世代に引き継いでいくため、地域の農業・農村を支える農業者の「もうかる農業」の実現に向けて、農産物の生産振興を地域活性化起業人の協力を得て推進しています。  農業を取り巻く環境が大きく変化する中、新たな栽培技術や資材などの技術革新も進んでいます。日々の栽培の課題や新たに生産したい作物の悩み、今後就農してみたいなど、頼れる相談者として地域活性化起業人にお尋ねください。 問合せ 地域商社支援室(東近江市八日市公設地方卸売市場内) IP電話 050‐5801‐1176 ファクス 050‐5801‐8265