東近江市立図書館中間答申

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ページ番号1007578  更新日 令和7年1月6日

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平成17年12月1日
東近江市図書館協議会

はじめに
このたび、図書館長の諮問を受け「東近江市立図書館計画(中間答申)」を策定しました。中間答申は「図書館の目標」「蔵書計画」「サービス水準の設定」によって構成されています。私たち図書館協議会委員は市民の代表として、行政・議会と市民の皆さんをつなぐ役割を持ち、図書館のあり方について考え、図書館づくりを進めていくため両者をつなぐ文書としてこの計画を作成しました。さらに各館の位置づけ、全域サービスのあり方などについて深めていきたいと考えています。

平成17年2月に東近江市が誕生し、さらに平成18年1月には能登川、蒲生両町を含む市となります。東近江の図書館のユニークな運営は注目を集めているところです。しかし、合併し一つの市となったこれからの図書館サービスを考えるとき、まだ十分でないサービス内容もあります。私たちは、これまでの経験を生かして、新東近江市全体で豊かな図書館活動が展開され、広がることによって、合併が市民にとってより実のあるものとなるよう行政関係者・住民の皆さんのお力添えをお願いするものです。

東近江市は「うるおいとにぎわいのあるまちづくり」を目指し、市民と行政がパートナーシップを発揮し、協働でまちづくりを進めていくこととしています。市民がこの役割をはたしていくためには、必要な情報が豊かに届き、知恵や想像力をはぐくむ場として図書館の役割はますます重要になっていきます。自治体財政をとりまく状況の厳しさが続くなかではありますが、市民との対話を深め、市としても図書館の発展に力を尽くしていただきたいと思います。

私たちも、単にサービスを求め、満足するだけでなく、市民とともに支えとなるよう努力してゆきたいと考えています。

平成17年12月1日
東近江市立図書館協議会会長 廣幡 和子

東近江市立図書館計画

東近江市立図書館の目標

近年の社会の変化や目まぐるしい技術革新の中にあって、生活をより豊かにするために新たな知識を身につけることが欠かせない時代となってきています。市民がその暮らしの場で、真に豊かな、生き生きとした暮らしを実現していくためには、世界のありよう、地球のありようまでを視野に入れた、市民一人ひとりの生涯にわたっての自己学習が欠かせません。世の中が生み出す大量の情報の中から必要な知識を選び生かしていく時に、図書館が果たす役割はきわめて大きいものがあります。東近江市立図書館は市民の資料要求に徹底して応えることですべての市民の豊かな暮らしの実現を目指します。

20世紀は、大量生産、大量消費と度重なる戦争の時代を経験し、その反省に立ち21世紀は循環型社会や共生型社会を目指した取組が進められています。このことから社会のあらゆる場面において生活の質や心の豊かさが大切にされるように変わってきています。図書館は、人と本、人と人との出会いの場を提供し、温かさややすらぎ、そしてやさしさを大切にした場づくりを目指します。

地方の時代と言われている今日、地方分権を支えていくのは自立した市民の存在なしには考えられません。住みよい、暮らしやすい街づくりは、自立した市民の知恵や想像力に支えられてこそ本物になります。図書館は考える力や想像力を育てる源である読書に親しめる環境を整え、すべての市民が市内のどこに住んでいても同じサービスが受けられるように努めます。中でも次代を担う子どもたちへの図書館サービスを重視します。

東近江市の現在を見つめ、市が将来像として描く豊かな自然や歴史文化を継承していく役割を果たすため、図書館は次の5つの目標をかかげ、その実現のための9つの指針を定めます。

  1. 豊かな暮らしにつながるための確かな情報を届けます
  2. 人と本、人と人との出会いの場をつくります
  3. 一人ひとりの居場所・憩いの場を保障します
  4. 思いやりのあふれる街づくりに役立ちます
  5. 市民と共に育ち、市民が育てる図書館を目指します

目標を実現するために

1.市民の求める資料・情報に、かならず応える図書館

  • 要求に必ず応え、求められた資料の提供に努める。
  • 貸出しをサービスの基本にすえ、読書相談に応じ、調査・研究への援助を行う。
  • 市立図書館に無い資料は、県立や県内外の関係機関との相互協力によって徹底的に応える。
  • 豊富で新鮮な図書や雑誌を収集し、市民の潜在的な要求を掘り起こす。
  • 視聴覚資料のほか、新しいメディアによる情報提供も視野に入れた多様な要求に応える。
  • 蔵書計画を策定し、資料費の確保に努め、蔵書の新鮮度を保つ。
  • 幅広い資料への要求に応えるため、開架書庫を含めた保存書庫を備える。
  • 考える力を生み出し、想像力を育てる活字資料を大切にする。

2.市民の生活に役立ち、地域の課題解決に役立つ図書館

  • 郷土の文化を継承するため地域の資料を収集・保存する。
  • 市民が地域の課題を発見し解決していくための資料を収集し、提供する。
  • 地域が生み出すさまざまな情報を生かし、企画行事や資料収集を行う。

3.知る自由を保障し、利用者の秘密を守る図書館

  • 市民の求める資料を提供することにより「知る自由」を保障する。
  • 利用者が何を読んだか、どのように利用したかは利用者のプライバシーに属するものであり、図書館はその秘密を守る。

4.市内のどこに住んでいても、だれでも利用できる図書館

  • 各館で積み上げてきた蔵書・サービスを生かしながら、それぞれの図書館が魅力を持ちつつ、相互に連携をしてより豊かなサービスを市民に提供していく。
  • 市内の隅々まで図書館サービスが均等に行き渡る全域サービスを行う。
  • 蒲生地区を含む全域サービスの態勢づくりに取り組む。
  • 図書館利用にハンディキャップを持つ市民へのサービスを行う。
  • 高齢者に合った、利用しやすく役立つサービスを、情報収集しながら関連施設とも連携を図り提供していく。

5.子どもへのサービスを重視する図書館

  • 子どもが楽しい本と出会い、本を通して豊かな育ちができるよう、その機会づくりのため、定期的なおはなし会、各種教室・行事に取り組む。
  • 子どもの読書についての理解を大人が深めるために学校・園・保健センターなどと連携をはかる。その具体化として職員研修会、出前おはなし会、ブックトーク、図書館見学、職場体験受け入れなどを計画的に行う。
  • 市の生涯学習課など関係機関と共に「子ども読書活動推進計画」を策定し、家庭、地域、学校で子どもが本に親しむ環境づくりを進める。

6.市民の“広場”としての図書館

  • 地域住民の交流、集会、発表の場を保障する。
  • 人と本、人と人の出会いを通し、文化の創造に役立つ場づくりをする。
  • 市民の憩いの場として、居心地のよい空間づくりに努める。

7.地球と人にやさしい図書館

  • 図書館の資料や情報を通して、豊かな自然に関心を持つ人々や団体との協力関係を広げ深める。
  • 自然や環境を考えるための多様な行事を行い、関連資料へとつなげる。
  • 温かさとやすらぎがあり、人にやさしい図書館を目指す。
  • 廃棄図書のリサイクル・リユースをすすめ、資源の有効利用に取り組む。

8.まちづくりを進める市民が育つ図書館

  • 職員はカウンターなど日常業務で得たさまざまな情報を生かし、資料収集・資料提供などの図書館サービスをとおして、まちづくりや市民活動のサポートに努める。
  • 行政に携わる職員や議員の政策立案や施策の実施に役立つ資料提供を行う。
  • 市民自治を支える地域・行政資料を整備し、市民のまちづくりに関わる活動に役立つ資料提供を行う。

9.自立した職員と市民が協働して作っていく図書館

  • 市民のために図書館サービスの充実をはかり、更に発展させるため一人一人が専門職としての自覚を持ち、自己学習に努め、市民に役立ち市民に信頼される司書職集団を作る。
  • 日常のコミュニケーション・情報の共有化を重視し、専門職集団としてのチームワークの向上に努める。
  • 専門職制度を維持する中で、持続して経験を蓄積し、その継承をおこなう。
  • 図書館協議会や市民と十分に意見を交換し、市民と協働して図書館づくりを進める。

東近江市立図書館 蔵書計画 その1

1.増加冊数の考え方 魅力的な蔵書を維持するために

先進的な図書館活動で知られている千葉県浦安市立図書館の「2002年度受入年別貸出冊数」調査によると、受入れ後3年後には半減し、7年が経過するとさらに落ち込み、ほとんど利用されないことが分かっています。図書館が市民に有効に活用されるためには、資料の新鮮度が生命線です。そこで、東近江市立図書館の年間増加冊数を以下のような考え方で設計しました。

  1. 新鮮な書架をつくるために
    収蔵能力の限界まで書架に収納すると、本は背だけしか見えず魅力的な棚とは言えません。書店では、新刊や話題の本、ロングセラーなど本の表紙を見せることで顧客の購買意欲を高めています。図書館も、新着図書や地域の特色を活かしたテーマ別展示、話題の本、社会的意義のある本など、利用者の知的好奇心を刺激する本の見せ方をすることが、「魅力ある棚づくり」につながると考えます。
    そこで、望ましい開架冊数を開架可能総数の7割程度と設定します。そして、浦安市立図書館のデータを参考に、7年ごとに資料の更新を実施すれば蔵書の新鮮度を保つことができると考えました。
  2. 高度で専門的な資料の充実のために12万都市となる東近江市の図書館としてふさわしい蔵書を構築するには、東近江市全体としての政策課題や高度化・専門分化する市民の資料要求に応えるために、基本的・専門的資料の充実を図る必要があります。近年増加する医療事故への救済資料や介護予防を促進する健康情報、裁判員制度導入に対応した法律関連資料、いわゆる団塊の世代が高齢化を迎え始める2007年問題を考慮した資料、市民による地域づくり・まちづくりに関連する基本的・専門的資料などが考えられます。
    そこで、東近江市の中心的な図書館である八日市館と、蔵書・貸出冊数が八日市館の次に多い能登川館を拠点図書館として位置づけ、両館の「望ましい開架冊数」(※1)で定義したもの)の1割を専門的資料として更新します。ただし、これら専門的資料は、一般に資料価値が長期間継続するので更新は15年に1度と設定します。

2.増加冊数の算出

  1. 一般資料
    各館の増加冊数の単価は、これまで各館が購入してきた資料の平均単価である2,000円とします。これを一般資料と呼びます。
  2. 専門的資料
    八日市館、能登川館で購入する専門的資料の単価は、4,600円とします。
    ※「出版年鑑」の『総記』の平均単価を参考。一般に専門的参考資料は総記の分類が多いため。
  3. 根拠数式
    • 望ましい開架冊数の算出=開架可能冊数×0.7・・・a
      専門的資料を購入しない館
    • 一般資料費の算出=a×1/7×@2,000
      専門的資料を購入する館
    • 専門的資料費の算出=a×0.1×1/15×@4,600
    • 一般資料費の算出=a×0.9×1/7×@2,000
八日市
  現有開架冊数 望ましい開架冊数 購入冊数 図書費
一般書

121,500

85,050

12,150

24,300,000

専門書

13,500

9,450

630

2,898,000

小計

135,000

94,500

12,780

27,198,000

能登川
  現有開架冊数 望ましい開架冊数 購入冊数 図書費
一般書

105,300

73,710

10,530

21,060,000

専門書

11,700

8,190

546

2,511,600

小計

117,000

81,900

11,076

23,571,600

その他
  現有開架冊数 望ましい開架冊数 購入冊数 図書費
永源寺
一般書

56,700

39,690

5,670

11,340,000

五個荘
一般書

31,590

22,113

3,159

6,318,000

愛東
一般書

12,390

8,673

1,239

2,478,000

湖東
一般書

70,470

49,329

7,047

14,094,000

全館合計
  現有開架冊数 望ましい開架冊数 購入冊数 図書費
合計

423,150

296,205

40,971

84,999,600

図書館サービスの水準設定[人口115.000人の場合]
  [目標値A]
現在日本の極めて高い水準
[目標値B]
現在日本の最高水準
貸出冊数目標値 12.0冊/人・冊 15.0冊/人・年
奉仕人口(想定) 115,000人 115,000人
貸出冊数  1,380,000冊 1,725,000冊
登録者 率 40% 50%
登録者 人数 46,000人 57,500人
開架 蔵書新鮮度 一般書1/7日・専門書 1/15  
開架 図書冊数 374,180冊
 *1
467,730冊
*1
年間購入冊数 51,760冊
*2
64,700冊
*2
住民1人当り図書費 934円 1,167円
職員数を想定して算定
貸出3.0万冊当り
46.0人 57.3人
職員数を想定して算定
貸出2.5万冊当り
55.2人 58.8人
  • ※1 平成16年度 開架図書回転数(貸出冊数÷開架図書冊数)により算定
  • ※2 開架図書冊数をもとにし、一般書、専門書が同じ割合で増加すること

平成の大合併が進められる中で、常に問われてきたのは「大きいことはいいことか」である。効率を求めることは、きめ細かなサービスが失われることではないのか。

また、平等とはみんな同じという事なのか。悪平等という言葉もある。どうサービスを共有するのがいいのか。
図書館協議会に参加して、まず思ったのがこの2点である。

なぜなら、東近江の図書館はそれぞれ地域に根差し、地域のニーズに応じた個性あふれる良い図書館作りがなされているからだ。

それぞれの個性を生かしながら、従来より良いサービスを共有することができる東近江の図書館づくりを願った。それを可能にするのは市民との協働ではないだろうか。

一方、あと2年で団塊の世代が退職をする年を迎える。まだまだ体力があり、経験も豊かなこの世代の退職後の自分の居場所、自分探しは、図書館から始まるのではないだろうか。カウンターでの会話から、人と本、人と人を結ぶ役割を図書館が果たし、ここから何かが生まれて街づくりにつながって来ることを期待する。

ところで近頃の若者はすぐキレルと言われる。それを裏付ける事件も多発している。活字を読むことは考える力を養うと言う。子どもと本、いや親と本を結ぶのも図書館。図書館の役割は大きい。

私達は有望な観光資源があり、多勢の人々が訪れる街を活気があってうらやましいという。いい街とは、一過性の観光客が満足する街だろうか。そうではなく、住民が豊かな文化に触れ、豊かな文化を生み出して行くその一翼を担うのも図書館。私の図書館に期待するものは大きい。
多くの市民が図書館を訪れ、語り、かかわり、私の夢が実現するのを願っている。

廣幡和子(図書館協議会会長)

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