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人と自然を考える会
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地元学をはじめよう その2

「記録映画で地元学」 

 記録映画「椿山 焼畑に生きる」上映会と対談

(2006年10月7日(土) 永源寺公民館ホール)
講師:姫田忠義 小貫雅男

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人間の営みには単純な条件はない

小貫:もう一つはね、たとえば昔みたいに材木とか炭とか薪、そういうものの林業を中心にしたエネルギー体系とか暮らしが変わってしまったから、おそらくそういう林業でない林業がありうるんではないかという時に、今言った牧畜業が閉め出されてしまった歴史から回復する、回復していく、そういうものが21世紀には可能ではないんだろうかと思うんです。

姫田:これは容易なことではないだろうと思いますが、同時にそこから出直さないと、日本の歴史が馬鹿な解釈で馬鹿な論法で終わってしまう可能性がいよいよ強くなってきたなと思いますね。というのはね、なぜかというと、物事が実現していくには、いくつかの厳しい条件がありますね。今おっしゃった一つの例ですけど、沖縄が高温多湿だという条件が、実は動物にとって非常に厳しい条件だとこれまで言われてきたんですよね。

 で、今ぼくは出雲の方の、島根県の斐伊川の流域の出雲風土記をやり始めているんですよ。ここでまず教えられたことは何かと言いますと、あそこでは有機酪農のパイオニアがおられますが、パスチャライズ牛乳ですか、低温殺菌牛乳をやっておられて、しかも山の草を食べさせる農場を中心に展開しておられる。要するに、多頭飼育を目標にした大量生産方式ではない方式で生命が育っていく、循環していくという道をやっておられる方なんですけど、その人にうかがったところではね、たびたび導入した牛なんかでも出雲の風土に合わないで病気になったりして、何度も試みたっていうんですね。

 大きな理由の一つには、湿気が多くてダニが多いって言うんですね。ダニにやられちゃうって言うんですよ。そういえば、日本列島みんなダニや。戦後我々はDDTをぶっかけられて、ダニだかなんだか非常に少なくなっているんですけど、それが農薬の形になっておるわけですけれども、そういう変化を起こしているもんだから、僕ら気が付かないんですけど。日本の高温多湿っていうか、この中でも僕のような瀬戸内海育ちでは今度は乾燥地帯という感覚がものすごく強いんです。だからため池をいっぱいつくったっていう。これは湖東地帯でもあるようですけど、そういう意味では、日本列島の条件っていうものが一概には言えないという面もあるけれど、ある種の共通項として持っている自然条件っていうのがあるわけですよね。それが動物を介在させて人間が生き延びていく方法をより難しくさせている面があるかもしれません。

 と同時に、そういう認識の仕方と、「難しいんだよ、日本は。だからダメなんだよ」という論法が一方にはありますが、人間の営みというのは、これはこれがいいんだよというそんな単純な条件なんていうのは絶対にないと思うんですよ。いつもせめぎ合って、これをやったんだけどうまくいかないから、と言ってやっているんですよ。

 椿山で一番学んだことはですね、トータルに自然と対応しているんです。どういうことかというと、焼畑というのはそもそも一定の場所を固定してしまわないんですよ。山である所を伐って焼きます。で、三年ぐらいしか作物をつくらないんですから。そこでそこを放棄して次の場所へ新しい焼畑の場所をつくるわけです。ずっと点々としていって、元の場所に戻って来るのは、椿山の例ですと大体20年周期です。20年頃に戻って来られると。戻って来られる条件がある。それは草木の育ち具合、つまり、地力の回復の度合いなんですね。肥料をわざわざ投入するっていうんではなくて、火を放つことによって、大地の活力と大地の持っているものを育てる力と、それだけに頼ってつくる作物づくりですから、それが3年ぐらいの周期で一つが減退すると、するとその力が戻ってくれるまでは待つということ。

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