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地元学をはじめよう その2

「記録映画で地元学」 

 記録映画「椿山 焼畑に生きる」上映会と対談

(2006年10月7日(土) 永源寺公民館ホール)
講師:姫田忠義 小貫雅男

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狩猟行動に蓄えられた知恵

 さらに言えば、この頃問題になりますのは、狩猟行動というのは本当に問題にならない。狩りをするっていうか動物のハンティングですね、これはもう産業としても全然認められないわけですよね。ところが、あの狩猟行動の中にどれだけの知恵が、動物との対応関係の中での知恵があるかっていうのはね、僕はそういうこともマタギの衆だとかそういう人たちに通じて教わるんですけれど、山の村の人たちも知っているんですよ。

 それでね、狩猟行動の場合に一番重点になるのは、「待つ」という姿勢なんですよ。姿勢と方法、論理なんです。自然の動きを待つという。今の我々は何でも手を出してね、何でも自分でできるように思っているからこうやっているわけですけれど、その挙げ句、しっぺ返しをがんがん受けていると思うんですけど。「待つ」っていうんです。

 これは今でもそうですけど、日光の山の村の方で記録した時に教えられたんですけどね、ハンティングを、鹿狩りなんかするんですけど、鉄砲を持った人がぐるっとある場所に点々と待つわけですね。その人たちがどのようにして待つかという時にね、「木化け」っていう言葉を教えられたんです。木に化けるっていう。斜面がここにあって木が立っているとして、勢子が下から追い上げてくると、その時に木の側で待っているんだというんですね。それでね、「鹿はどっちから来るんですか」って聞いたらね、「こっちの下からだよ」って言う。そうしたら、木があったら、僕は陰に隠れて待つんだと思ったんですよ。違うんですよ。前におるんですよ。

小貫:それはどういうことですか?

姫田:前におってじっとこうしていろって。そのかわり絶対に動くなと言うんです。で、動くなっていうのはね、僕はね、ピレネー山脈のバスク人の鳩狩りの時に怒鳴りつけられたことがあるんです。「動くな」って。「動いたら人間だと分かるから鳩が逃げちゃう」って言うんですよ。

 これは空のあれですよ。一方は動物ですけどね。「待つ」って言うんですよ。そして、一瞬、向こうが悟るか、こっちが悟るかどっちかが早くないといかんわけですけど、その時に木陰に隠れててひゅっなんて。今あんた映画でもなんでもやるじゃないですか、こうやって構えた兵隊たちが体をすっと出してひゅっとやってるじゃない。あんなものは遅いわけですよ。本当にそうなんですよ。

小貫:じゃあ、木に化けておるんですか。

姫田:化けてるわけです。木化けっていうのは、自分が木になってるということなんです。驚きましたね。それで、「化けるというのはお化けの化けと書くんですか」と言ったら、「そうだ」って。まあ、そうだよなって。

 そんな意味でね、動物と対応する時に人間の能力のあり方をちゃんと心得ていると思うんです。動物と一緒に走ったって負けますよ、山は。魚と一緒に泳いだって、負けますよ、水の中じゃあ。空は飛べませんしね、人間は。そういうあり方で、非常に基本的なところで人間にはものの考え方とそれに対応して自分の生命の糧を得る知恵というか、努力をしてきていると思うんですよね。

 日本列島は、あらゆる側面でできる条件を持っていると思います。これは外国に行った人はみんな感じるんじゃないかと思いますよね。それを「美しい国だ」なんてね。(会場笑)もうねえ、そういう表現でなんかこう分かったように言っているのは、まあそれは拍手したいけど、それではすまんのですよ。どこが美しいんだ、どこがいいんだ。それをきちっとしていかないとダメだと思いますけど。

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