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地元学をはじめよう その2

「記録映画で地元学」 

 記録映画「椿山 焼畑に生きる」上映会と対談

(2006年10月7日(土) 永源寺公民館ホール)
講師:姫田忠義 小貫雅男

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木地師のルーツ、蛭谷(ひるたに)

司会:じゃあ、すみません。先ほども姫田さんからご指名がありましたように、今台の上にも手引きろくろの小椋さんに上がっていただいておりますので、姫田先生を交えて若干説明もしていただきたいと思います。小椋さんよろしくお願いいたします。簡単で結構です。

小椋:すみません。1分30秒。なぜ私が呼び出されるかと言いますと、私の家の資料館から持ってきたの、あれどこかにあったなと見ていまして。永源寺町蛭谷という所をご存じの方はちょっと手を挙げていただけませんでしょうか。うれしいなあ! ありがとうございます。

 いろんな所でお話しさせていただきますけれど、大体木地師というのは何だというところからいつも始めないといけないんですよ。え、そんな所が滋賀県にあったのという話になって。今私で58代目と言われておりますが、文徳天皇の大弔事の藤原の勢力争いに巻き込まれて。省略しますけれども、藤原朝臣太政大臣小椋実秀の小椋から小椋はきておりますから。

 この方たちは全然ご存じない。だって愛知郡も神崎郡も区別つかないんだから、犬上郡も。だから、地元の人間としてね、この辺は昔は愛知郡東小椋村って言ったんですよね。愛知川から北は、今の湖東・愛東町が西小椋村なんです。永源寺、まあどっちかというとくにざとかな、今の東近江の本当の東の方は東小椋村と言ったんですね。まあ、それほど小椋の勢力は強かったんですけれども、没落して廃村間近ですからなんとか支えて下さい。

 これはですね、昭和30年代まで秋田の木地山で小倉久太郎さんという本当に人間国宝みたいな方がいらっしゃいまして、平成4年、僕はこっちの方にいなくて東京で仕事していた時なんですけど、その人が生きている間に一度本家を訪ねたいということで持ってこられた、その方の一党が使っておられたらしくて、もう木地師をお辞めになった時にうちの資料館に寄付していただいたものです。

 これ、どういう使い方をするかというのは単純で、回転の原理なんですね。これをくるくるっと回すことによってここに回転力が生じます。これをここに打ち付けまして、そしてこれが木挽きの道具ですね。いろんな道具がありますが、この道具も自分でつくられるんですけれども、大きいものですともう一人ではとてもじゃないけれど挽けませんから、4人も5人もかかって大きいお椀をつくる。ということで、庶民の生活の必需品、お茶を飲んだりご飯を食べたりね。そういう器物をつくるということで、木地師っていうのは全国蛭谷系がざっと言うと大体5万。君ヶ畑系が大体9千と言われているんですよね。それを支配しておった本家がこの永源寺に、蛭谷と君ヶ畑にありますよということなんです。

 どういうふうに支配していたかというと、ぶっちゃけた話、詐欺師みたいなことをやっていましてね。要するに、二つの特権を与えるわけです。一つの特権は関所のフリーパス、菊の御紋のご威光を利用した手形を発行してね、筒井公文所(つついくもんじょ)なんて書いてね。もう一つは、どこの山でも大体五合目と言われているんですよ。五合目以上の山の木の自由伐採権を与えるんですね。そして、転々と移住して行かれる。そして、その権利を与える代わりに上納金を集めに行っとったんですね、早い話が。

 上納金というのは、結局今みたいにインターネットで振り込むのもできないしね、郵便もないもんで、本当に東北から九州までずっと、要するに金集めにまわっとったんです。うちの先祖はそういう悪いことをやっていたという。まあそういう、冗談ぽく言うとそうですけれど。

 一つは精神構造としてね、天皇家が我々の上にいるんだという、一つは戸籍台帳的な機能もあったし、身分保障。そして、今から考えるとパスポート的なものですよね。全国の関所をフリーで動けるということで、非常に自由な、民俗学的には重要な価値があるということで研究の対象にもなっております。

 ということで、そういう文化がやはり山の文化につながっていきますよと。私も、去年姫田先生の『奥会津の木地師』という映画を見せていただいて、本当に感激いたしました。本当はその話をもう少し姫田先生の方からしていただきたいなという私のリクエストでお返ししたいと思います。どうも失礼しました。

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