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地元学をはじめよう その1

「心象図法で地元学」

(2006年9月30日(土) あかね文化センター小ホール)
講師:上田洋平

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地域学がめざすもの

 一応、私のやっております学問についてご紹介申し上げます。

 私は、地域学とか地域文化学というようなことを日々研究しております。これは、地域学といったら地域の地元学もそうですが、そういう言葉でいろいろな学問、あるいはそれに類する運動というものが、最近盛んになってまいりました。いろいろな地域、各地域、日本全国の地域で、地元から地元のことを考える、そういう地域学という学問が盛んになってまいりました。

 ただ、地域学というのはまだ大変新しい言葉でありまして、新しい学問分野であります。ですから、地域学って何だ、地元学って何だといっても、その定義がまだ定まっていないということなんです。ですから、ちょっと分かりにくいかなと思いますが、ただ、大まかに申し上げますと、地域のことを、借り物でない、よそからのお仕着せでない、地域に根ざした知というもので、それに基づいて自分で生きている地域、あるいは地域から地球世界に対する自分たちの見方でありますとか、あるいは生き方を組み立て直して、よりよい将来をつくりだそうというようなことをいっている学問なんです。借り物でない、よそから持ってきたものでなくて、自分たちがもともと持っている知恵や文化、そういうものから生活を見直して、これからの社会を見直していこう。こういう運動であるかと思います。

 一応、大きな資料の一番上の一番にも書いてありますが、地域学の目的とは、地域に根ざした知、英語では、Area Based Knowledgeといいますが、地域に根ざした知から考え直すといいますが、これ、僕も言っていてなかなか難しいのですけれども、地域に根ざした知恵とか知識というものから地域を考える。地域について、地域の人と、地域の現場で考えていく。そういう学問であります。僕は、人の言葉を使うのがいやなので、これをもう少し言い換えまして、「うぶすなの知」と言っております。うぶすなの神様とかいう言葉がございますね。その土地で生まれたその土地の神様。「うぶすなの知」ということを申し上げております。

「うすぶなの知」よ、甦れ

 スローガンとしては、今ちょっと下火になっている「うぶすなの知」よ、もう一度甦ってくれ、と。地域本来の文化よ、もう一度甦って力をつけて、社会をよくしていくことに貢献してくれと、こういうことを考えております。

 あるいは、このうぶすなの知、地域に根ざした知といいますと、これまでのように大学の中で、あるいは学校の中で、教科書の中で考えられるようなもの、教えられるようなもの、それだけではない。いわゆる知識と言われているものは、大学で習うとか学校で習う、本を読んで勉強するということが考えられているわけですけれども、もう一つ、地域にはそれだけではない、今、申し上げました、一番上の身識というものがあるのではないか。この体に宿っている、その地域で生きて働いている、生活をしている体の中、その生活そのものの中に隠されている、蓄積されてきた知、知恵や知識というものがあるのではないか。そういうものを仮に考えまして、一人一人の体の中、体験の中から、地域を考えていこう。こういうことを言っております。

 まだこの学問は新しくて、定義も定まっておりませんし、いろいろな人がいろいろなところで、それぞれの立場から地域学、地元学とはこういうものだろうということを言ったり、また実践をしているわけなんです。ですから、それをどう実現するか。今、申し上げました地域そのものの力をもって地域を考える、その方法もいろいろあるんです。

 ただ、私が考える地域学といたしましては、これは本来、大学の研究者がリーダーになって、主体となってやるのか。それだけではないだろう。専門研究者が何か専門の知識、あるいは情報を地域に対して与えるとか、そういうことであってはならないと私は考えている。今、私が考えている地域学というものは、それぞれの地域に生きる人自らが、自分の体験、生き方、その積み重ねに基づいて、自らの将来を実現していく。大学や研究者といったものは、それをお手伝いすること。地域のことを地域において、地域の人とともに考える。そういうことが必要になってくる。

 私はまた別の言葉を言いますが、「地域の知恵の地産地消」。地産地消といいますと、食べものなどで最近流行ですけれども、知恵とか文化というものも、地域の中で生まれ、地域の中で活かされていく。地域や文化を消費するといったら何か変ですけれども、地域で育まれた知恵を地域の中でまわしていく。そしてよりよい地域をつくっていく。こういうことが必要になってくるのではないか。

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