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人と自然を考える会
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地元学をはじめよう その1

「心象図法で地元学」

(2006年9月30日(土) あかね文化センター小ホール)
講師:上田洋平

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既存の学問を超え、地域の全体を知る

 それからもう一つは、既存の学問、大学や学校の既存の学問だけでは、今、身近に連日起こっている地域の問題に対処できなくなってきているということがあります。環境問題一つとっても、水をきれいにするためには、薬を琵琶湖に撒いて中和させたらそれだけでええのか。実は環境問題の根っこは家庭排水とか農業廃水とか、家庭排水をきれいにするにはどうしたらいいかということで、石けん運動などが起こってきたわけです。あれは環境の科学の問題というよりは、生活の分野から環境を考えていこうとした運動でありました。実際にいろいろな問題を抱える地域を考えるためには、環境の科学、数字の科学だけではとてもダメだという方向になってきた。

 これまで日本は、明治の時代以来、よその国ですでに完成した知識を輸入してきて、それをちょっと入れかえて適応するということが多かった。でもそれは、クッキーの型を持ってきて、その型にはまる問題だけを見つけて、そこを解決していく。全体の解決になかなか結び付かないんだなあということが、もう少し前からわかってきました。

 これ、学問だけではないんですけれども、たとえば友だちを知る、家族を知る、親友を知るということは、毎日会って、話して、一緒に行動して、田んぼで作業したり、遊びに行ったりして、ケンカもしたりして、そういうふうにして知っていくという知り方があると思うのですが、それをこの○○さんの体重、あるいは身長はどのくらい、そういうふうにどんどん分解して数字を知ったところで、その友だちの全体を知ったことにはなりませんよね。友だちを知るということは、そうやって計ったり分解して知識として知っていくのではなくて、毎日その友だちと会って、しゃべったりして、生きて関わる中で知っていく。そういう知り方もあるのではないか。

 地域に対してもそうです。地域の中のいろいろな部分を細かく区切って、それを計ったりそこから問題を取ってきて、まあ西洋医学と東洋医学の違いのようなもの。西洋医学は患部を、ガンがあったらガンを直接取り除いて治す対処療法ですけれども、漢方の場合は、全体の調子を整えて患部を治していく。全体も治していく。そういう行き方もあるのではないか。学問の世界でも、そういうことが進んでいるというようなことになってまいります。地域学の背景というのは、そういうものであります。

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