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地元学をはじめよう その1

「心象図法で地元学」

(2006年9月30日(土) あかね文化センター小ホール)
講師:上田洋平

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「GNH」ーーブータンの豊かさのものさし

 ブータンというアジアの国ですが、ブータン王国というところでは、国の力、国の豊かさを示すものさしの言葉に、GNPというのはみなさんよく耳にされると思います。Gross National Product 国民総生産。その一年間にその国の国民が新しくどれだけものをつくったか。その総計をGNP。どれだけ一年がんばって働いてものをつくったかというので国の力を計る。それはもう、どんどん毎年毎年高まっていかなければ、とても不安で仕方なくなる。

 今、多くの世界はそういうものさしで見ているわけですが、実は、ブータンという王国は賢いですね。こんなことを考えている。Gross National Happiness。日本語に直しますと、国民総幸福量ということで言うております。これは1972年に即位された現ブータン国王さんが、国民総生産をもじって導入された。経済的な豊かさに加えて、環境保護、伝統文化の維持発展をどれだけ重視したか。

 ブータンの大臣はこんなことを言っています。「環境や文化、家族、地域共同体の絆までを犠牲にするような経済成長は、人間を幸福にはしない」。あるいはブータンのある研究センターの所長は、「ペットボトルの水の需要はGDPを高める。その一年にペットボトルがどれだけつくられ、またそれを買って飲んだ国民がいるかということは、国のGDPを高めるが、しかし、よく考えてみましょう。川や泉の水がそのまま飲めるということと、一体どちらが幸福だろうか」。こういうことを言い出しているわけです。

 よそから輸入した水、消毒した水しか飲めなくなる。それをお金で買う。確かにそれは経済の指標として高まっていくでしょうけれども、よく考えてみると、そこに流れている小川の水が飲めるのと、どっちが幸せなんだろう。物質的な豊かさと精神的な豊かさを、今こそ両立させたアジア初の新しい世界の標準をつくりたい。ものとかお金だけではなくて、心や環境、そういうものも考えに入れた、新しいものさしをアジアから、日本から、地域から提示していきたいということを言っている人たちもいる。

地域学で見直す地域、世界

 だから、私たちの地域学、地元学というものも、ひいてはそういうことにつながっていくのだろうと思うわけです。地域には地域の多様な価値観があって、その尺度がある。時間も、単純に仕事の時間だけではなくて、命に関わる時間もある。お金で1時間なんぼというだけではない、文化の時間、命の時間。

 尺貫法というものがございました。昔の尺。あれ、今、日本で使ったら法律違反になります。あれを使って家具をつくったら、上から「こら」って怒られる。その尺貫法の鯨尺というものを使って、伝統的な家具をつくる職人さんがおられる。アメリカにおられます。アメリカ人の方です。日本では使ってはいかん。そういうことが起こっているわけですね。もう全部メートルでなければいけない。メートルは世界共通ですから、いいんです。合理的です。話も通じやすいですけれども、だからといって、日本が生み出したそういうものを大事にしなくていいのだろうか。そういうことも起こっている。

 とにかく、地球上にはいろいろな価値観を持った人がいる。いろいろな社会がある。いろいろな豊かな自然生態系との関わりの中で、いろいろな社会が生まれて文化が生まれてきた。それを考えの最初に置いて、いろいろな地域のいろいろな文化、価値観を明らかにしていこう。自分たちの生き方を見直していこう。これが地域学、地元学の考え方。

 だから、地域のことを考えるということは、単にそこだけがよくなっていくことを考えるのではなくて、実は世界全体がどうやって生きていくかということを考えている学問でもあるということになります。これは大きなことのようですが、実は一人一人から始められることだということも、これからだんだんお話していこうと思います。その辺が「地域学とは」ということですね。

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