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人と自然を考える会
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地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

 地元学であるものさがし

(2006年10月9日(月・祝) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:結城登美雄

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ユンタクが大事

 二番目が「ユンタク」というものなんです。ユンタクってお茶のみ、おしゃべりということです。近江の人たちはおしゃべり最近していますか、お茶のみしていますか? いかがでしょう。僕がまわる東北も村は何のお茶のみもしていません。みんな兼業だからばらばらに暮らしています。僕はアポイントなんて取ったことなんて一度もないんです。船に乗せてもらうときだけは頼み込みにいきますけれども、それ以外はだいたい「ああ、麦がそろそろ刈り頃だ」ったら出かけて行き、「ああ、里芋の収穫だなあ」ったら出かけて行って、ただ他人の仕事の邪魔をしているみたいなものなのですが、30分ぐらいと思って話を聞いている間に1時間になり2時間になり、3時間になり、「お前さん昼飯は?」「いやどっかで」「じゃ、うちでごっそうしてやるよ」って、昼飯ご馳走になって、また話を聞いて、夕飯ご馳走になって風呂に入れてもらったりして、「もう電車がねえから泊まっていきな」みたいな。そんなのをずうっとやってきました。でも、その泊まったりするのはそう多くはありませんが、帰る頃になって「申し訳ない。今日一日の仕事をすっかりダメにしてしまって申し訳ない」、「いやあ、そんなことない。またおいで」って言ってくれる。そして、必ず多くの人が「ああ、俺は何年かぶりで他人とゆっくり話をしたなあ」って言うんです。

 同じ村に住み、同じ地域、同じ町に住み、そこに住み暮らす人とゆっくり話もしないで何が地域づくりでしょうか。どっかの先進事例だけを覚えればよい地域になりますか

 そんなの霞ヶ関がいっぱい資料をつくっているでしょう。大学も研究しているでしょう、そしたらよくなりますか?

 何よりも大事なことはユンタクをすること。これが沖縄のおばあ、おじいたちの第2のアドバイスであります。沖縄はユンタクしていますよ。ユンタクは朝6時から始まります。毎朝であります。長老の先ほどのイレカマドさんのところは23世帯か24世帯の集落です。朝6時ぐらいになるとみんな歯を磨きながら「おはよう」って来るんです。そこのお嫁さん、104歳のお嫁さんというのは78歳なんです。それは大変なもんであります。その78歳のが毎朝、縁側にポットに、おっきいポットに四つお茶をつくって待っているんです。お茶菓子は黒糖だけです、365日。「たまにういろう食いたい」なんて誰も言わないんです。もう決まっているんです。それをみんな飲みながらおしゃべりなんです。

毎日朝のユンタクで困りごとを解決

 どういうおしゃべりかというと、「おはよう」って来ると「おはよう」って言って、おばあが「カマ、ぐらぐらしてさ」って言うとおじいが「どれどれ」ってこう見てくれる。「なんだ釘がすこしゆるんでいるな、ワシが直してやるから10時ぐらいに取りにおいで」って言うと、これが直るわけです。で、別のおじいが「誰か、キャベツの苗、5、6本持っておらんかね?」とかって言うと、おばあが「ああ、あるよ。家に取りにおいでよ」と言う。それで5、6本手に入るわけです。さすがおばあはなかなかなもんで、「あんた、株ば狭くしたねケチだね」とかってやるんです。分かりますか?

 最初にちゃんと株間をゆるやかにやる予定がケチだから詰めて詰めて植えたから、あんた足りなくなったんだろうと、こう切り返すわけですよ。それでも分けてくれるんですよ。それでおじいの必要はそこで解決します。「あのおばあ、この頃おらんね」って「ああ、そうだね。どうしたんだろう」って。そうしたら別なおばあが「ああ、那覇までひ孫の顔を見に行ったよ。明後日帰るって」「ああ、じゃ元気だね、会えるね、また」って、これでだいたい分かるわけです。

 1年365日、台風以外の日、毎日朝のミーティングです。楽しいミーティングであります。これでほぼ1日2日ぐらいの困りごとはたいてい解決する。これがお茶のみ、おしゃべりなんです。それをしないで、「行政なんだ、予算ないのか」とか「もっとやれ、何やれ!」、こんなことばっかりになっちゃったんです。そうは言っていませんでしたがきっと、「本土のまちづくりはみっともないね」って、たぶん言うかもしれません。「何か困ると行政のせいにして、誰かのせいにして、行政は今度住民のせいにして」。キャッチボールばっかりでさっぱりよくなんねえ。「みっともないね」と沖縄のおばあなら言ってしまうんじゃないでしょうか。おしゃべりもしない。

 で、沖縄で教えられたことのもう一つは、地域とはありがたい所だけれども、実は面倒くさく煩わしいものなんだよって。日本は煩わしくて面倒くさいことを避ける民族になりました。全部金で解決しようとしました。みんなで堀払いをする草刈をする共同作業。「俺、忙しいんだよ」って、「誰かに任せろよ、業者にさ。5千円ずつ出そうや」って誰も集まらなくなってくる。そうやって「結い」もみんな消えていったわけです。煩わしさにつきあいきれない日本人、地域とは煩わしいものである。だがその煩わしさとつきあっていくことによって困った時に助け合えるありがたきものである。煩わしきものであるがありがたきもの、ありがたきものであるが煩わしいもの、それが地域というものなのだということを基本にすえつけなさい。それを「ご飯なんか炊かなくていい、うちで炊いてあげるから金だけ出しな」っていうご飯屋が現われたり、サービス業というのはそういうことではないですか、余計なおせっかいまでするようになりましたよ。地域とは煩わしくもあり、ありがたきもの。ありがたきものではあるが、煩わしきもの。そう受けとめて地域を考えていく。

 それをありがたいことだけを言う、普通考えたらウソでしょう、詐欺師でしょう、ありがたいことだけ、「だんな!」とか「奥さん!」とかっていいことばっかり言ったら普通疑うでしょう。なのに地域づくりだけはいいことだけ求めようとする。嫌なことはみんな避けようとする。うまく行くはずがないんです。それは沖縄で教えられました。

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