地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

　地元学であるものさがし

「高いビールはうまいんじゃ」

　沖縄の一番北、奥という集落に、ちょうど100年前、この10月6日。僕行けなかったんですが、招待されていたんですが行けなかったんですが、100年ちょうど前、明治39年にここに共同店というのが生まれました。そこが発祥の地でありますが、全員出資です、今なお。赤ちゃんからお年寄りまで全員出資です。で、それを、出資したお金でものを仕入れたり、昔は山で木を伐って林業で出す時にはこの共同店を経由で売っていきます。そうすると手数料が共同店に15％入ります。農産物も外に出す時にはそこからです。買う時は今度そこを経由して買います。

　中身はですね、なんというか、こんなもんなんですよ。別に、よろず屋です。おばあの好きなビゲンヘアカラーもDHCもあるし、カマもあるし、なんか、こんなもんです。当然ながらヴィトンのバックは売っていません。

　値段は高いんですよ。沖縄行かれました？　あんまり行った方いませんか、あるでしょう。オリオンビール飲みました？　飲みましたか。この共同売店のオリオンビールは定価で売っています。定価です。ロング缶230円です。それを先ほどのイレカマドさんという104歳が「あんちゃん、飲もう!」ってよく飲むんですよ。某大手スーパーが、ジャスコとかが、毎日チラシ入ってくるんです、ここにも。定価230円のビールが135円とか140円です。前にお座りのお父さんたち、どっち買いますか？

　一缶230円定価で買うか、135円のジャスコで買うかどちらでしょう。安い方ですな。高い方を買っている人いたら、手を挙げてください。日本人全員ジャスコで買います。ところが沖縄は買わないんですな。それで「飲め、飲め」と言うから、俺も「飲む。飲む」って飲んできますよ。「悪いな、俺買わなきゃ」って、「いやええの、うん」ってまた買ってきて、足りなくなると。「じゃ、飲もう!」ってこう。だから「おばあ、チラシでさ、135円って出てたよね」って言うと、「ああ、出てたねえ。安いねえ」って言うんだよ。「あっちだったら2缶の値段で3缶買えるよね」とかって、日本の男も情けないっす。「そりゃそうだね、まあ、ええから、飲みい」って言うんです。おばあは「あんちゃん」って。いつも「あんちゃん」と言う時には何か一言言われるんです。「あんちゃん、高いビールはうまいんじゃ」って。すごいなぁ…、しびれましたなぁ、酒飲むならそう言ってみたいですな、「高いビールはうまいんじゃ」。

　これが沖縄であります。県民所得は東京都420万、沖縄その半分の210万です。ヤンバル170万であります。この貧乏村が「高いビールはうまいんじゃ」って。ビゲンヘアカラーも安くないですよ。それで染めてますよ。「高いビゲンヘアカラーは美人になるんじゃ」とでも言っているのかな。それは分かりませんが。

　そうやって1年たつと店に利益が出ます。利益が出ます。当然です。でも船便賃が高い、だからそんなに引けないんです。安いものもあるんですが、大手が3割も5割も引いたり出来るところを1割引けたらもう限界です。それでも一生懸命、1割引こうとする商品もありますが、「高いビールはうまいんじゃ」というのに支えられて、100年続いています。沖縄に今78ぐらいの共同店があります。経営が苦しくなったりももちろんしていますが、みんなそこで買います。なにしろツケで買えるんです。ええですなぁ、みなさん最近ツケでなんかやった人いますか？

　日本人はツケを忘れましたなぁ。飲み屋のツケもありますが、踏み倒すヤツのほうが多くなって、信頼できる買い物、自分の稼ぎが出たときに精算する。ツケというのはね、もっと考えたら、信頼があるからツケられるんですよ。地域のお互いの信頼のシンボルなんですよ、ツケ。だからこういうノートがみんな残っていましてね、それに書いていくんですよ。その1年間の利益で明治39年に発足したのが、大正の始めに最初の利益が出ました。その利益で沖縄奥共同店の人たちは何を、230戸の村は最初の利益をどう使ったかということなんです。

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