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人と自然を考える会
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地元学を知る

「地産地消で地域の再生を」

 地元学であるものさがし

(2006年10月9日(月・祝) 愛東福祉センターじゅぴあ)
講師:結城登美雄

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働く場所があるから、待ってくれる人がいるから、元気

 これ、2月、極寒のマイナス10度。普段は食欲もないのが市に来ると、このばあさん、金谷チヨさん、当時77歳。今84ぐらいになったんですが、土方弁当ガッツガッツ食うんですよ。腹ごしらえしてから、それで朝の5時ぐらいから夕方の3時ぐらいまでここで店張っているんですよ。「すげえなぁ」って、「ばあちゃん、やっぱり体丈夫でねえとこういうことは出来ねえなぁ」って言ったら、「なあにバカこく、あんちゃん」。ここでも「あんちゃん」なんですよ。「丈夫だから働けるんじゃない」って。「働く場所があるから元気なんだ」って。「私を待ってくれる人がいるから、私はここに来るのが生きがいなんだ」って。丈夫だから元気ではない。待たれている場所があるから。

 今、町に60を過ぎて、70を過ぎて、その人の力を活かす場がどこにあるでしょう。そう考えた時に、こういうおばあちゃんたちの一言一言が僕たちの地域に、ね。

 このばあさんと話している間に「食の文化祭」という、九州とかいろんな所に広がっていますが…このばあちゃんです。鎌田のばあちゃんとおしゃべりした時です。

 「おらぁもう90だ。飯ばっかり炊いてきた」って。「二十歳で嫁に来て90の今も飯炊いている」って、家族6人分。「おお、んだな。大変だな」と俺は思った。「はたちか・・・」。1日3回家族のために飯を、店もない、全部採集、栽培した。多い時は12人家族があったそうです。1年に365日掛ける3回飯をつくる、1095回になります。10年で1万回、ばあちゃんに1095回って言ったら、「いや時々手抜きもする」って言うから、1000回はつくるそうです。その1000回を掛けていけば10年で1万回、はたちで嫁に来て、スーパーもデパ地下もない山奥で家族のために70年間、7万回の食事をつくるわけです。7万回の実力であります。

 これは菊の花を採ってナメコを採ったやつと合わせてお惣菜をつくっているところであります。この7万回の力の7万分の1の一つのおかずを1品、漬け物でもいいから出していただいたのが、「食の文化祭」の始まりです。東京の鉄人やシェフのような料理ではないが、家族がそれを自分のお袋の味としている、そのことをとにかく集めたものが、それが1300集まり、このおばあちゃんもびっくりしたわけです。

7万回も食事をつくる力が地域を支えている

 でもこのおばあちゃん、この頃会うたんびに、「おら、死ぬぞ」って言うんです。「いや、んなことないよ」って最初は言ったけれども、あんまり言うもんだから、「そうだな、死ぬな」って俺この頃言ってます。「ただ死ぬ前に、ばあさんや、請求書書いて死ねや」って言ってるんです。

 「なんだ、そらあ?」、「この頃はみんな外食だ」って。「ご家族のみなさま」って遺書代わりに請求書、書いた方がええと思っているんです。1食500円として4人家族さま、12人の時もありましたが、1食500円、4人で2000円1食、1年でなんぼになるんでしょう。7万回食事を出させていただきました。しめて1億4千万であります。「ただし掃除洗濯代は入っておりません」と但し書きを書いた方がよろしいだろうと。

 1億4千万、7万回の食事。その力が地域にある限り、私は地域は崩れないと思っております。そういうことを教えていただきました。食べる、大切であります。そういう意味でこういうおばあちゃんたちに教えてもらった話を長々ダラダラになりましたが地産地消、食育にはたして合うような話であったか分かりませんが。

その土地を生きてきた人たちの知恵をどう受けとめるか

 こういう所で精米したやつはうまいですな。8時間かけて3升ぐらいしか精米出来ないんですよ。でも、これがあるとみんな「来週は私の番」とか言ってやっているんですよ。近江米もこういうのでやったら、なおおいしくなるんではないでしょうか。

 ようく見て下さい、このばあちゃんたちみんなお互い持ち寄って来るんです。ここに豆なんです。ここに、杯あります。これでね、売っているんじゃないですよ、豆交換しているんですよ。同じ大豆でも連作障害があるために、他の土地の大豆を植えると連作障害が避けられるという、そういうことで、春になると4月の25日ぐらいに村々から集まって…市は売買だけじゃないんです。お互いの豆を交換して種を交換する場所、そういうものです。それが連作というリスクを超えていける知恵、こういうものがたくさんあります。そういう人たちの知恵をまだまだたくさんこの中に、その土地を生きてきた地元を生きてきた人たちの中の知恵を、私たちはまだもったいないぐらいそのままにしている気がするんです。それをどう受けとめていけるのか。

 これは根昆布です。昆布の根っこを干していく。いいダシ、昆布茶になります。

 ま、こんなのをちょっとお話をさせていただきました。ちょっと長くなってしまいました。ご静聴ありがとうございました。

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